2023年04月24日

IPO準備企業における経理の役割・転職メリット・キャリアパスを紹介!

管理部門・士業の転職

「大企業からスタートアップへ、そんな転職をする人の数は3年前より約7倍も増加した」
最近日経新聞のCMでこの言葉を見かけた方もいらっしゃるかと思います。
スタートアップの多くが目指すとされるIPO( Initial Public Offering)準備企業とは、株式を新規に証券取引所に上場させ、資金調達や市場からの信頼獲得などを目指している企業のことです。
今回は、IPO準備企業における経理の重要性、実際にどのような経理業務を行うのか、IPO準備を経験するとその後のキャリアにどのように影響するのか、について解説します。

IPO準備企業における経理の重要性

各フェーズにおけるIPO

・N-3期(上場達成の3期前)
監査受入を可能とするための人材確保や監査法人によるショートレビューを受け、株式上場に向けた課題の全体像の把握から改善を行い、監査法人契約を結びます。

・N-2期(直前々期)
監査法人に加え主幹事証券の選定や経理をはじめとした管理体制の構築を行います。経理で言いますと、例えば業務の内製化、決算早期化、規程やフローの整備・構築などです。

・N-1期(直前期)
N-2期に引き続き上場会社と同様の管理体制を期首から運用することが求められ、また、Ⅰの部やⅡの部といった上場申請書類の作成や内部統制整備等も始まります。

・N期(申請期)
証券審査と東証の審査を行う、株式上場に向けた申請の時期です。
審査は、証券審査を経て、東証の審査へ移るプロセスです。

このように新規上場には時間とコストをかけて所定の基準を満たすことが求められます。
基準の中には企業の収益基盤なども含まれているため、「経理業務」が果たす役割は大きいといえるでしょう。

IPOを実現するには、取引所が行う公認会計士監査をクリアする必要がありますが、この監査では、対象となる企業の決算書が取り上げられます。決算書は企業の財務状態と事業活動の結果が定量的に記されている書類で、その作成プロセスには正確・適切な経理業務が欠かせません。

IPO準備作業では、会計以外にも満たすべき要件は多数ありますが、企業活動を明確に公表する義務が上場企業にあるため、会計の精度向上は必須事項です。IPOにおいて経理が果たす役割は大きいといえるでしょう。

次に具体的な経理の業務内容を紹介します。

IPO準備企業の経理業務

IPO準備企業における主な経理業務は以下の業務です。

財務諸表の作成

年間の企業の財政状況を示す財務諸表の作成を行います。
決算公告は非上場企業であっても必要ですが、四半期単位で公開する決算短信や有価証券報告書は上場企業でのみ必要となります。
また、これらの書類の開示体制を整えることも大切です。

経理規程の作成

経理と財務に関わる内部統制の構築~評価を行う必要があり、規定に則って運用されているかを確認します。

監査法人への対応

IPO準備企業では、公認会計士に上場直前1期分の財務諸表の監査を受ける必要があります。
また監査前に問題点を改善することも経理の役割です。

証券会社と証券取引所による審査対応

上場には、証券会社と証券取引所からも審査を受ける必要があります。
この審査の対応や指摘内容に対しての改善を行うことも経理の役割です。

フロー整備(決算の早期化、プロセス設計、API連携など)

上場企業は非上場企業に比べて、決算までの手間が多くなります。
その為、決算前の監査を早期に完了させて決算の早期に進めることが重要となります。

必要に応じたシステム導入

監査対象となる財務諸表を作成するための会計システムなど、IPO準備段階で必要となるシステムの導入が必要となります。

企業の状況などにより業務内容が異なる場合はありますが、上場に向けて必須となる経理の業務だけでも責任重大な内容と言えます。


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時代に合ったIPO準備企業経理の働き方

IPO準備企業の経理は、通常業務に加えてIPO準備をするため、忙しく休みが取れない、働きづらいというイメージを持っている方もいるかもしれません。

しかし、実はIPO準備企業であっても育休・産休の取得やリモートワーク、フレックス制度の導入など、時代に即した働き方ができる企業も多数あります。
IPO準備・達成後のプロセスでは、管理体制の充実が求められるため、育休取得後も同じ部署に復帰しているケースや、復帰後は時短やフレックス・リモート等で同じ職種を続けているケースもよく見かけます。

その他、IPO準備企業の代表自身が育休を取得していたり、社員の育休による増員募集を行っていたりする企業もあります。
一方で会社の方針やDXの進捗によっては、〇〇ポジションは出社メインというような会社もあります。

IPO準備企業でやりがいを持って働いてみたいけど、働き方の融通が利かないという点で思い留まっている方であれば、一度応募企業の働き方について企業や転職エージェントに相談してみると良いかもしれません。


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IPO上場企業で働くメリット・デメリット

IPO準備企業の経理で働くメリットとデメリットを紹介します。

メリット

・上場までの流れを経験することが出来る
IPO準備企業の経理は、必要に応じたシステムの導入や内部統制、監査法人・証券会社との対応など、既に体制が整っている上場企業では経験できない業務に携わることができます。
IPO準備に必要な多様なタスクに取り組む経験を積み上げることで、自分自身のキャリア形成に役立つと言えるでしょう。

・ストックオプションによって収入アップを目指せる
ストックオプションとは、企業が従業員や取締役に対して、事前に決められた金額(権利行使価格)で、株式を取得できる権利のことです。
ストックオプションを得た後、企業が上場を果たし、業績がアップして株価が急上昇すれば、権利行使価格と実際の株価の差を利益として得ることができます。
しかし、上場に至らなければストックオプションの価値はなくなる為、注意も必要です。

デメリット

・時期やフェーズによって激務になる可能性がある
申請期前後やIPO直後は、一時的に業務が多くなりやすいとされています。
また、企業の人員が不足していると1人当たりの業務量が多くなってしまうなど、企業の状況によっても忙しさは異なります。
しかし、IPOフェーズによって対応する難易度や業務量は変わりますので、IPO準備中は慢性的に残業多くなる、という可能性は少ないでしょう。

・上場出来ない可能性がある
経理として上場準備の経験を積みたいという思いでIPO準備企業に転職しても、実際には全てのIPO準備企業が上場できるというわけではありません。
上場企業と同様の管理体制の整備、運用を行うN-2期でIPO準備が止まったり、最終的には上場準備から撤退するというケースもあります。
IPO準備企業に転職をする際には、応募する企業の上場準備に対する思いや事業の成長具合などの確認をしておくことをお勧めします。


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IPO準備企業の経理は高年収!?

一般的に、大手企業の方がベンチャー企業に比べて年収が高く、好待遇と考えられていますが、昨今では、22年12月の日経新聞で「スタートアップ年収、上場企業を7%上回る 650万円」などの記事が話題にもなりましたが 、実際ベンチャー企業の年収が上がっており、大手企業よりも年収が高いというケースもあります。

IPO準備企業も同様の傾向があり、数年前と比較してCFOや経理部長などの管理職であれば、年収1,000万円以上も狙うことができるほど年収が上がっています。
また、大手企業と比較すると少数精鋭の企業が多く上が詰まっていないこともよくあり、自身の努力次第でさらに上の役職にチャレンジする機会もあります。

スタッフ層など一般職の場合でも業界平均程度の年収になるため、IPO準備企業の待遇は良くなっているとされています。なお、これらはIPOを目指す会社の資金調達環境が以前より良くなっていることも影響しています。


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IPO準備企業を経験した後のキャリア

IPO準備企業で経理の経験を積むことは、その後のキャリア形成にとっても重要な経験になります。

しかし、IPO準備企業の経理の経験といっても、N-3期~N期のどこのフェーズを経験したかや、そのフェーズの中で何を任されたか等により、身に付くスキルとその後のキャリアも変わってきます。
下記はあくまで一例です。

・IPO準備企業の経理

「IPO準備からまたIPO準備?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、例えばN期手前で入るとあまりIPOをやった実感がもてず、もっとアーリーフェーズでやりたい、という気持ちになることがあります。
逆にIPO中止となってしまい、次はIPO達成確度の高い会社に行きたいという思いが芽生えることもあります。
またN-1期以降になると、ポジションによっては上場企業出身者を求める求人が出るなど、フェーズや募集背景によって求めるスペックも様々です。

・上場企業や上場企業の子会社の経理

IPO準備企業で経験できる経理の業務は、上場企業の経理業務の基盤になります。
IPO準備企業で経理の経験を積むことで上場企業や上場子会社へ転職していくことも可能になります。

・経理以外の職種

IPO準備企業での経理経験を積むことで、多岐に渡る経験を積むことができるため、経営企画やIR等の他職種への転職も考えられます。経理以外にもキャリアの幅を広げることが可能です。


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IPO準備企業の転職市場は?

日本国内において上場企業数は2011年から毎年増え続けていることから、上場を目指す企業も年々増加していることが考えられます。
(参照: 東京証券取引所
その為、IPO準備企業の経理ポジションの求人数も増加しておりますが、その分求人の見極めが重要となります。
興味のある業界の企業を目指すのか、キャリア形成の為にIPO達成の経験を積みたいのかによって求人を見るポイントが異なりますので、活況なIPO転職市場であっても慎重に行動することが重要です。
また、自分一人で求人の見極めができないという場合には、転職エージェントに相談することをお勧めします。


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経理の求人情報

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IPO準備企業は○○な人材を求めている

IPO準備企業は○○な人材を求めている

ここまでIPO準備企業の経理の仕事内容やキャリアを紹介しましたが、 実際にIPO準備企業の経理で採用されるのはどのような人材なのでしょうか。
まず業務経験者は、IPO準備企業に限らずどの企業でも求められる人材となります。
転職では即戦力を求める傾向にありますので、IPO準備企業での経理経験がある場合は転職先の幅も広がるでしょう。
また、経理業務未経験の方でもIPO準備に挑戦したいという意欲の高い方は実際に採用へ繋がっています。

また、IPO準備企業では既存のモノの運用よりも新しいモノの構築などが多くなるため、「0→1にした経験、志向がある人材」は高評価へ繋がります。裁量を持って就業したい方や0→1に挑戦したい方、経営の近くで働いていきたい方はIPO準備企業を狙ってみても良いかもしれません。


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まとめ

財務諸表の作成と開示業務、監査法人への対応、証券会社による審査対応など、IPO準備企業において「経理」が果たす役割は大きいです。
また、IPO準備企業は企業規模を大きくしていく段階のため、経理部門の方でも経営企画や人事、マーケティングなど多様な業務に携わることも可能です。
IPO準備企業だからこそ挑戦できるという業務は多く、IPO準備企業での実務経験は、自分の市場価値を高め、年収アップを図っていくというキャリアにも繋がるでしょう。

この記事を監修したキャリアアドバイザー

圓鍔 忍

大学卒業後、旅行代理店にて法人営業を約3年。20代でMS‐Japanへ入社。
企業の採用支援(リクルーティングアドバイザー)を約8年、求職者の転職支援(キャリアアドバイザー)を約5年経験。
両ポジションでチームマネジメントを経験し、キャリアアドバイザーとしては複数回にわたり支援実績数NO1を獲得。リクルーティングアドバイザーにおいても入社1年半後にチームマネジメントを経験させていただきました。現在は子育てと両立しながら、常に社内でトップ10以内の採用支援実績を維持。

経理・財務 ・ 法務 ・ 役員・その他 ・ IPO ・ 公認会計士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!

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