経理の転職で求められる実務経験とは?経験が浅い場合は何をアピールすればいい?
経理の転職市場では、経験者が優遇されやすい傾向ですが、実際の優遇度合いは、企業によって異なります。
この記事では、経理の転職で求められる経験年数と、経験年数に応じた年収目安についてご紹介します。
また、経理経験が浅い場合の自己アピール方法についても解説していきます。
経理が実務経験を重視する理由
まずは、経理の転職市場では経験者が優遇される理由について解説します。
高い専門性が求められる
企業のお金の流れを管理する経理は、企業活動において必要不可欠な部門です。しかし、利益を直接的に作らない部門であるため、大手企業を除き少数精鋭体制で運営されています。
また、経理業務は日次・月次・年次の締切日に合わせてスピーディーに仕事を片付けなければならないため、新入社員に一からレクチャーする時間を取れないケースも一般的です。
企業規模や業種で業務内容が異なることがある
経理は、企業の規模や業種などによって、業務内容や処理ルールが異なる場合があります。
例えば 、建設業では「建設業経理士」という独自の資格があるほど、業界特有の勘定科目・計算方式などが存在しています。
また、中古車販売を行っている企業であれば、在庫の自動車税をまとめて支払うなどの手続きも必要です。
さらに、大企業と中小企業では、決算の規模、納税額も異なります。
多くの企業は消費税の課税対象者ですが、課税売上高が1,000万円以下の零細企業であれば、基本的に消費税納税義務の対象外です。
経理担当者には、簿記・会計に関する基礎知識を踏まえた上で、社内ルール・業界ルールを理解することが求められるため、既に基礎知識を備えている経験者のニーズが高くなると考えられます。
経理に求められる実務経験
転職市場で経理経験者に求められる主な実務経験は「決算業務」「財務」「管理会計」の3つです。
弊社MS-Japanが提供する管理部門・士業特化型転職エージェント「MS Agent」で調査した「【2023年上半期】経理の求人傾向」をもとに、経理に求められる実務経験を詳しく解説します。
決算業務
2023年上半期に掲載された経理求人の70%が決算業務の経験を求めていました。
決算業務経験の内訳としては、月次決算が33%、年次決算(実務経験3年以上)が32%と高い割合を占めています。
決算業務には現金出納・売掛金管理・請求書支払・取引仕訳など、日々の正確な管理が求められます。基本事項でありながら、複雑で処理工数の多い業務を早く・正確にこなせる経理は、どの企業からもニーズが高い人材だと言えるでしょう。
1ヶ月・1年の総まとめである月次決算や年次決算に加えて、単体決算や連結決算などを経験することで、経理としてのキャリアアップにつながります。
財務
財務とは「事業計画に基づいた資金繰り」を担う業務です。そのために、金融機関からの借り入れや、個人投資家や投資ファンドへの融資依頼、社債の発行など、売上以外でお金をつくる役割を果たします。
一方で経理は、お金の流れを記録して報告することが主な業務になります。中小企業や事業規模感がさほど大きくない企業では、経理部が財務業務を兼ねていることも珍しくありません。
経理としてキャリアアップを目指す方は、財務業務にチャレンジすることで、市場価値の向上につながるでしょう。
管理会計
管理会計は、予算に対する結果や、費用に対する収益など、情報を組み合わせながら経営課題を抽出する業務です。経理の立場から経営陣へ解決策を提案したり、営業販売部門・経営企画部門・経営戦略室などに情報を伝えたりする役割を担います。
管理会計を経験者は、決算資料の作成だけでなく、分析や課題発見、解決策の提案などの経理に関する深い知見があると評価されるでしょう。
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「【2023年上半期】経理の求人傾向」を徹底解説!
実務経験と年収目安
続いて、一般社団法人人材サービス産業協議会による「転職賃金相場2023」より、経理財務における実務経験と年収目安の関連性についてご紹介します。
主に実務経験の年数がポイントですが、経験・スキルによっても、年収が異なります。
実務経験3年未満
実務経験3年未満の人材は、基本的に役職なしの担当者レベルで、未経験者も含まれます。年収額は概ね300~399万円の範囲となっており、年齢は20代後半~30代前半であることが一般的です。
実務経験3年以上5年未満
実務経験3年以上5年未満の人材は、経理財務・IRなどで経験を積んでいるレベルで、上場企業・管理職での経験が豊富だと年収も上昇傾向にあります。いずれも月次~年次決算を完結できるなど一定のスキルを満たしており、リーダー候補や分析担当者などは400~599万円、部長候補・課長・リーダー経験などのある人材は600~799万円に分類されます。
なお、年齢は20後半~40代と幅広いのが特徴です。
実務経験5年以上10年未満
経理の実務経験が5年を超えてくると、経理財務・決算・IR・管理職経験など豊富な経験を積んだ人材が目立ちます。人材の傾向としては、管理職経験のある人材・30代後半~50代で、同職種から転職している人も少なくありません。
年収は800~999万円の範囲に分類され、公認会計士など国家資格を有している人材も見られます。
実務経験を積んだらキャリアの考え時!?
ここまでご紹介してきた通り、実務経験は経理の転職市場で高く評価されますが、実際に転職を決断するのは勇気がいることです。
慣れている環境から離れ、新たな道を歩む場合、それ相応のストレスが生まれるでしょう。
経理として高年収を目指す場合は、役職の有無が関係していますが、一般的に企業内の役職者数は限られています。
そのため、実務経験は豊富なのに職位が上がらない・これ以上は上がる見込みがないと判断した場合、年収を増やすためには転職が必要です。
経理職として現状に満足できないなら、キャリアを活かしてより良い待遇で迎え入れてくれる企業を探した方が、人生の満足度を高められるはずです。
経理の経験が浅い場合、転職時にどんな風にアピールできる?
一般的に、経理 の転職市場では、実務経験が5年以上あれば有利となり、3年以上あれば「経験者」と見なされます。実務経験3年未満の場合、経験不足と捉えられる可能性が高いと言えるでしょう。
しかし、未経験者あるいは実務経験3年未満の人が、経理として転職することは不可能ではありません。
自分がこれまで取り組んできた業務の中で経理に活かせそうな経験や、経理業務に役立つ資格などをアピールすることで、転職活動が円滑に進む可能性は大いにあります。
経理や会計データを使った業務経験をアピール
他職種の経験であっても、経理業務に活かせるスキルを身に着けることができます。
たとえば、営業経験をアピールする場合、「原価を考慮した提案で契約件数と利益の最大化を図ってきた」「コスト削減に関する提案を上司に行い、実際に採用された」などと伝えることで、経理視点を持っていると評価されるでしょう。
その他の業務に従事していた人でも、経理や会計データを活用した提案や業務改善を実施したことがあれば、選考で積極的にアピールすることが重要です。
経理経験が3年未満の人は、その間にどんな経理業務を担い、どんな成果を出したのかを具体的にアピールしましょう。経験回数や頻度、実績などは数値を根拠に伝えることが重要です。
また、担当業務で業務改善やマニュアル作成の経験を行った場合はアピールポイントになります。
日商簿記2級以上をアピール
日商簿記2級は、試験を実施する日本商工会議所によって「高度な商業簿記・工業簿記(原価計算を含む)を修得し、財務諸表の数字から経営内容を把握できるなど、企業活動や会計実務を踏まえ適切な処理や分析を行うために求められるレベル」と定義されています。
つまり、日商簿記2級を取得しているということは、企業で経理の実務をこなせる知識とスキルを有していることの証明となると言えるでしょう。
また、日商簿記2級の合格率は1~3割程度と決して高い数値ではありません。目標のために努力を積み重ね、結果を出すことができる人材のアピールにもなるでしょう。
経理に必要なその他のスキルをアピール
経理業務に役立つスキルは、日商簿記だけではありません。例えば、外資系や海外展開を広げる企業では、英語力や国際会計基準の知識が評価されます。DX化に積極的な企業では、ITスキルが評価されるでしょう。
また、経理業務をチーム体制で行っている企業では、コミュニケーションスキルを重視しているケースも多く見受けられます。
目指す転職先で求められるスキルに合わせて、自身の実績や資格をアピールすることが重要です。
経理経験が浅い方向け日商簿記以外のおすすめ資格
ここでは、経理経験が浅い方向けに、日商簿記以外のおすすめ資格をご紹介します。
TOEIC
TOEICは、英語スキルをスコアによって可視化できます。経理を含め、ビジネスの場では、600点以上取得すると評価されやすい傾向です。
外資系企業だけでなく、海外出張・海外との取引がある企業でも評価されるでしょう。
公認会計士
企業の財務諸表が適切に記載されているかどうかをチェックする監査業務を独占業務とする国家資格です。
取得の難易度は高く、合格までは4,000時間程度で年単位の学習が必要です。
税理士
国税審議会が主催する、税務の代理業務や税務書類の作成、税務相談などの独占業務を持つ国家資格です。
資格取得するには会計学2科目、税法に属する3科目に合格する必要があります。
一度に5科目合格しなくても、1科目ごとに合格していって最終的に5科目合格すれば税理士に登録可能です。
合格までは3,000時間程度で、公認会計士同様に年単位での勉強時間を確保する必要があります。
USCPA
アメリカの州ごとに認定を行っている公認会計士資格です。
日本の公認会計士資格よりも取得の難易度は低いと言われていますが、試験はすべて英語で行われ、専門用語も英語による理解が必要です。
海外企業の経理・会計部門に就職・転職する際に高く評価されます。
FASS検定
経済産業省の委託事業として、一般社団法人日本CFO協会が主催する検定です。
経理・財務部門で働く際の、実務スキルのレベルを測定することを目的としています。
合否ではなく、テストの得点によりAからEまでの5段階で評価が行われます。
給与計算検定
検定合格の学習を通して、給与計算の方法を基本事項から体系的に学べます。
1級と2級とで構成され、2級の合格率は60~70%程度、1級の合格率は40~50%程度です。
公式テキストがあるので、それを使ってしっかり学習すれば、独学でも十分合格を狙えます。
ビジネス会計検定
会計に関する基本的な知識を身につけることを目的とした検定で、貸借対照表、損益計算書の内容を理解できるようになります。
学習を通して、企業の実態を会計の視点から読み解く力を得られます。1~3級があり、2級だと5割、1級だと2割程度の合格率です。
未経験から実務経験を積む方法
経理へのキャリアチェンジを目指している場合、まずは未経験から実務経験を積める可能性が高い職場に転職するのが近道です。
以下に、未経験から実務経験を積むための方法についてお伝えします。
派遣から経験を積む
経理として手っ取り早くキャリアを積みたい方は、派遣会社に登録して、スキルレベルに応じた企業で派遣社員として勤務することが近道です。
未経験者はアシスタント業務からスタートできる求人も多く見受けられます。
登録した派遣会社によっては、未経験ながら大手企業を経験できるチャンスもあるでしょう。
会計事務所を狙う
経理の現場で高く評価される職歴の一つに、会計事務所での勤務経験があります。会計事務所では、クライアントの決算業務に携わることができます。
また、事務所によっては経営分析なども行う機会もあるでしょう。
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まとめ
経理の転職市場では、実務経験者が有利ではありますが、経験が浅い場合でも転職は可能です。
経理経験はアピールできなくとも、前職で経理にかかわる実績がある場合や、資格を取得している場合は、その点を強みとして伝えることで転職成功につながります。
資格を取得する場合は、取得したい資格の難易度を踏まえて計画的に学習を進めましょう。
この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、新卒で人材会社へ入社し福祉業界の派遣営業として従事。
退社後海外留学やカスタマーサポート業を経験し、MS-Japanに入社。
キャリアアドバイザーとして企業の管理部門、会計事務所などへの転職支援を担当しています。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 会計事務所・監査法人 ・ 社会保険労務士事務所 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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