経理の仕事はなくなる?経理の将来性ってどうなの?【現役キャリアアドバイザー監修】
「将来なくなる仕事」の中に経理職がランクインするなど、経理の将来性を考える方も増えています。
クレジットカード・通帳情報を自動で読み込み、取引が自動で仕訳されるような会計システムなどの導入も進み、小規模な会社は、あえて経理職を雇わないというスタイルをとっているところもあります。
また、クラウドソーシングなどを使って、経理の仕事をアウトソーシングするケースも増えてきました。
この記事では、「将来なくなるかもしれない仕事」として危惧されている経理の将来性について解説します。
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経理がなくなるといわれている理由
経理は企業経営において、業種業態を問わず不可欠の業務の一つです。
では、なぜ「経理がなくなる」と言われているのでしょうか。
その理由としては、以下の2点を挙げられます。
AIやRPAによる代替
AIは、処理作業を行う中で学習していき、人間に代わって自分で判断を行います。
経理は日々の取引額の集計やお金の流れの確認といった定型業務が多数あります。また正確性が求められ、人為的ミスの発生を極力減らすことが必要です。
これら経理業務がもつ特性はAIとの親和性が高く、業務内容の多くがAIに取って代わられるとの指摘があります。
またRPA(ロボティックプロセスオートメーション)の導入も経理にかかる業務工程を大幅に減らせ、人間の代替が可能といわれています。
RPAとは、人間がパソコンを使って行う業務をソフトウェアのロボットが代行する仕組みのことです。AIのように自ら判断することはできないものの、事前に行うべき作業をプログラミングすれば、確実に業務を遂行できます。
このRPAも経理業務の自動化に大きく貢献でき、経理職がいらなくなる大きな要因の一つといわれています。
ペーパーレス化に向けた法整備
現在日本では国を挙げてDX化を推し進めており、それにともない実現されるのがペーパーレス化です。
経理部門でペーパーレス化が進むことで、これまで紙で行っていた請求書、納品書、領収書などはデジタルデータのやり取りだけで行われるようになり、金額のチェックなどもデータのみで可能です。
紙での処理や保管、整理などが必要なくなるため、経理部門で必要な人手が減少します。
また国の法律もペーパーレス化に向けた動きが加速化しています。1998年には電子帳簿保存法が制定され、経理部門の資料の電子化によるデータ保存が可能となりました。
その後2005年にはe-文書法が成立し、スキャンしたデータも資料として保存が認められるようになりました。
そして、2022年1月からは改正電子帳簿保存法が施行されました。
これにより電子化の要件が大幅に緩和され、さらに電子取引における電子データの保存が義務化されています。
ペーパーレス化に向けた法整備は現在進行形で進んでおり、将来的に経理部門に必要となる人材は着実に減っていくともいわれています。
テレワークを導入している企業も増えているため、今後もペーパーレス化は進んでいくと考えられます。
経理が完全になくなる可能性は低い
経理職の仕事は、技術革新とともに姿を変えてきました。
現代において、中小企業ではアナログな仕事を残しているところも珍しくないものの、大手企業では紙媒体での請求書を用いないことを徹底するなど、よりアナログな要素が排除されていきました。
しかし、中小企業においてもやはり手仕事を極力排していきたいという思惑はあり、アルバイト・パートタイマーに任せているような「人の手」による作業を、将来的には極力なくしていきたいと考えている経営者は多いです。
その理由の一つとして、人件費の問題があります。
情報の判断ではなく集積・管理の面においては、与えられた命令のもと完璧に処理を行うコンピュータに比べて、時として間違えるリスクのある人間の存在は、費用対効果を考えると省かれていくのは避けられない流れです。
そのため、近年期待されているAIの技術革新は、将来的に人間の能力を追い抜いてしまう可能性があるものとささやかれています。
しかし、この表現自体には語弊があり、結局のところいくらAIが大量の情報を迅速に処理できたとしても、それが正しい内容かどうかを判別する人材は必要です。
よって、将来的には経理職の従事者が減少する可能性はあるものの、完全になくなる可能性は低いでしょう。
AIやRPAに代替される経理業務
経理業務は、AIやRPAによって自動化されるもの、自動化されないものの2種類があります。
自動化されるのはデータ入力のような、同じ作業を繰り返す業務です。
そもそも経理とは、企業が事業活動を展開していく上で、お金の流れを正確に記録・管理する業務です。
これらの業務にはミスや遅滞が許されませんが、反復的・定型的作業が多いため、経理作業は自動化できる業務範囲が広いのは間違いないでしょう。
たとえば、資材を購入して代金を支払うという業務では、請求書のやり取り、発注内容との突き合わせ、支払い手続き、購入先への通知といった作業が必要です。
こうした作業はこれまで、担当の経理職が行うのが通例でした。
しかしAI・RPAの導入により、人の代わりに人工知能・ロボットが業務を担い、デジタル化されたデータを用いて一連の作業はすべて自動化が可能です。
一方で、資金状況についてわかりやすく経営陣に報告すること、財務状態から会社の今後や事業内容について考えることは、AIやRPAでは代替しきれません。
自動化できる部分はあるもののすべてではなく、経理の専門職でなければ取り組めない業務は確実に残るのです。
人の手が必要な経理業務
経理の通常業務においても、以下の点においては引き続き人手が必要となります。
イレギュラーな対応
四半期決算などイレギュラーな経理業務については、将来的に人間の手で行うことになるでしょう。
イレギュラーな業務はテンプレート化されておらず、AI・RPAでは対応しきれないからです。
また、バックオフィス業務では、紙の書類でなければ成立しない状況もあります。
たとえば受発注関連書類については、中小企業の多くにおいて今なお紙媒体でやり取りしているのが現状であり、取引先・得意先がペーパーレスに対応していなければ、それに合わせることも必要です。
さらに経営陣がITに疎い場合、月次報告書や決算報告書などを紙媒体で提出するよう求められることもあります。
最終確認
AI・RPAは正確性の高い処理を行うものの、人間が設定する定義、手順自体にミスがあれば、精度は低下します。
つまり通常業務は自動化できても、最終的に本当に問題がなかったのかを確認する作業が、別途必要にもなるのです。
将来的にさらに技術開発が進み、経理分野におけるAI・RPA、OCR(画像データのテキストを認識し、文字データに変換する機能)、自然言語処理(NLP:人間の日常言語をコンピュータに処理させるための技術)の精度も高まっていくでしょう。
それでも、最終確認の必要性は当分なくなることはないと考えられます。
将来経理として生き残るために必要な4つのスキル
AI・RPA、ペーパーレス化の時代が本格的に到来しても経理職として生き残るには、以下のようなスキルを身に付けることが重要になってきます。
1.経理・会計・税務の専門知識
実際のところ経理の仕事は、一朝一夕で身につくものではありません。
決算業務に関わる知識をはじめ、確定申告や税務申告の際に必要となる税務知識、資金・財務の状況について経営陣に情報提供を行う能力も求められます。
これら業務で経験・スキルを身につけていくには、基本的知識として最低でも日商簿記検定2級以上を取得するのが望ましいです。
また経理職としてステップアップを図るなら税理士、公認会計士などの難関資格も取得しておくと有利です。
2.財務分析力・判断力
AIが発達するにつれ、伝票入力・集計作業に代表される経理の定型業務についてはコンピュータによる代替が進んでいくことでしょう。
そのため、人間に求められることは、その情報をタイムリーに経営戦略に取りいれる財務分析力・判断力です。
実際、経理職には経営陣に対して、経営戦略に関わる財務面の将来予測を報告することも求められます。
具体的には、決算書の内容を検討した上で現在の経営状況を把握し、それをわかりやすくまとめ、伝える業務です。
経営陣は財務・経理の専門家ではないことが多いため、財務分析だけでなく伝え・説明する力も欠かせません。
また、自社のみならず取引先・得意先の財務状況についても、現在・将来の両面から把握し、経営現場に活かせる分析力・判断力も必要となります。
さらに今後の事業戦略について財務面から仮設を立てて、それを検証できる能力も重要です。
3.M&Aの知識
経理には簿記・会計の専門的知識・スキルが不可欠ですが、求められる能力はそれだけではありません。
AI・RPAに業務の多くが代替される可能性がある中、簿記・会計以外の個別性・専門性の高い高度な知識・スキルを身に付けることも有効です。
その代表例ともいえるのがM&Aに関わる知識です。
M&Aとは合併・買収を意味する言葉で、狭義と広義の2種類の意味合いで使用されています。
狭義の意味では、合併とは他社を吸収するもしくは一緒になって新規に企業を興すこと、買収とは株式の譲渡・交換・第三者割当増資などの方法で他社を買い取ることです。
広義の意味では、合弁会社の設立や資本参加などの方法で行う事業多角化戦略のことを指します
かつてM&Aというと、資金力が豊富な大企業が行う経営戦略でした。
しかし現在では、中小企業において継承者不足が深刻化し、跡継ぎがいないオーナー社長の企業を、M&Aによって同じ中小企業が買い取るというケースが増えています。
つまりM&Aに関する知識は、企業規模を問わず重要になりつつあるのです。
4.ITリテラシー
経理部門でAI・RPAを活用する場合、そのための専門家も必要です。
実際、経理部に「電算課」などの名目で、IT・プログラミングに強い人材を配置している企業もあります。
そのため、ITリテラシーのある経理職に対する需要は、今後ますます高まるのは確実です。
ITリテラシーは、情報を正確に処理する能力である「情報基礎リテラシー」、IT機器を設定・操作する能力である「コンピュータリテラシー」、ネットワークの仕組み、セキュリティ対策に関する能力である「ネットワークリテラシー」の3要素があります。
これら能力に関する知識やスキル、経験を積んでいくことで、AI・RPA・ペーパーレス化の時代が来ても必要とされる人材になれるでしょう。
経理の転職成功事例
上場企業のグループ会社に転職し年収アップ
Mさん 28歳・女性 資格:簿記3級
転職前 IT系ベンチャー企業(経理)/年収360万円
転職後 大手上場企業100%出資子会社(経理)/年収420万円
大手商社グループ企業の幹部候補にキャリアアップ
Hさん 31歳・男性 資格:簿記2級
転職前 大手グローバル企業(経理)/年収440万円
転職後 大手商社グループ企業(経理)/年収500万円
IPOを見据えた優良ベンチャー企業へ大幅年収アップ
Aさん 39歳・男性 資格:公認会計士
転職前 大手監査法人/年収780万円
転職後 ベンチャー企業(経理マネージャー)/年収1,000万円
まとめ
「AI・RPA・ペーパーレス化の時代が到来することで、経理職は必要なくなる」とまことしやかにいわれています。
しかし現実の経理の状況を踏まえて考えると、人手がいらなくなる業務がある一方で、人手が不可欠となる業務があるのも事実です。
また、経理・会計・税務の専門知識、財務分析力・判断力、M&Aの知識、ITリテラシーなどの専門知識を身に付けることで、AI・RPA・ペーパーレス化の時代が来ても経理職として十分に活躍できるでしょう。
この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、ウェディングプランナー、業界大手で求人広告の企画提案営業を経て、MS-Japanへ入社。
企業担当のリクルーティングアドバイザーを経験した後、現在は転職を考えられている方のキャリアアドバイザーとして、若手ポテンシャル層~シニアベテラン層まで多くの方の転職活動のサポートをしています。
人材業界での経験も長くなり、いつまでも誰かの記憶に残る仕事をしていたいと思っています。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 会計事務所・監査法人 ・ 役員・その他 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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