2023年10月16日

J-SOX法とは?目的や特徴、会社法との違いを簡単に解説!

管理部門・士業の転職

J-SOX法とは、上場企業が事業年度ごとに行う財務報告の内部統制について定められた企業会計の透明性と信頼性を確保するための法規制です。
この記事ではJ-SOX法の目的や特徴、そして会社法との違いなどを解説していきます。
J-SOX法対応の進め方についてもステップごとに説明しながら取り上げていきますので、J-SOX法について知りたい方はもちろん、これからの上場を考えている企業経営者、その準備を担当されている方も是非参考にしてください。

J-SOX法とは

J-SOX法(内部統制報告制度)は、アメリカの「サーベンス・オクスリー法」(SOX法)をもとに定められた法規制です。
「サーベンス・オクスリー法」(SOX法)は不正会計事件をきっかけに生まれた法律であり、投資家保護の観点より、企業の会計および財務報告の信頼性を高めるために成立しました。
J-SOX法は「サーベンス・オクスリー法」(SOX法)の日本版ともいえる法規制であり、上場企業が事業年度ごとに行う財務報告において、組織が適切にコントロールされているかどうかを確認するための内部統制の手段が定められています。

これにより、不正会計のリスクが軽減され、財務報告の信頼性が高まることによって、投資家が投資判断のために必要な正確な情報を得られるようになることから、投資家の利益の保護を実現しやすくなるほか、安心して投資のできる市場づくりにもつながっていきます。

J-SOX法は金融商品取引所に上場している企業すべてに適用されるものであり、本社だけでなく子会社や海外子会社も対象となりますので、連結ベースで決算を行う場合には注意が必要です。
本社が上場している場合でも、非上場の子会社の自社評価は不要となることもあるなど、統制の範囲はその企業によって異なってきます。


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J-SOXの目的

J-SOX法の第一の目的としているのが、財務報告の信頼性の確保です。
これは企業の内部統制によって実現されます。
内部統制の導入は財務報告の信頼性を確保する以外に、不祥事の防止、業務の効率化、資産の安全な取り扱いといった多岐にわたる利点をもたらすため、経営者にとって会社を効率的かつ健全に運営するための仕組みづくりにもつながっていきます。
例えば、リコール隠しや表示偽装などの不祥事はコンプライアンスに厳しい今日の社会において企業経営を大きく揺るがすものとなりますが、内部統制を徹底することで、これらの不祥事を未然に防ぎやすくなります。
こういった背景より、J-SOX法はより好ましい経営環境づくりという目的にも寄与するといえるでしょう。

内部統制は、統制環境・リスクの評価と対応・統制活動・情報と伝達・モニタリング・ITへの対応の6つの要素で構成されています。
したがって、内部統制をしっかり機能させるために、経営者はこれら6つの要素が上手く噛み合うようにプロセスを整備し、運用することを意識しなければなりません。
これらが連携することによって、健全な経営環境づくりが促され、財務報告の信頼性が保たれることによって自社への社会からの評価も高まっていきます。


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J-SOXの特徴

J-SOXにおける日本独自の5つの特徴について、それぞれご説明します。

トップダウン型のリスクアプローチ

全社的な内部統制の有効性を先に評価し、その結果に基づいて財務報告に関連する重大なリスクに焦点を当て、必要な業務だけを評価します。
このアプローチは、業務ひとつひとつを評価するのではなく、総合的な判断から絞り込んで業務を評価するため、企業側の負担軽減と効率的な内部統制の整備・運用が可能となります。

不備の区分を2つに簡素化

アメリカのSOX法との違いとして、J-SOX法では内部統制の不備の区分を「開示すべき重要な不備」と「不備」の2つに簡素化しています。
この簡素化により、評価にかかる負担を軽減し、全社的な内部統制の充実を促進することができるため、子会社や関連会社を含めたより広範な管理が可能となります。

ダイレクトレポーティング(直接報告制度)不採用

J-SOX法では、ダイレクトレポーティングは不採用とされています。
この制度は外部監査人が内部統制の有効性を直接評価するもので、米国では採用されていますが、二重評価の問題が生じることがあるため、J-SOX法では採用されていません
経営者による内部統制評価結果の監査が外部監査人の役割となります。

内部統制監査と財務諸表監査の一体的実施

J-SOX法では、内部統制監査と財務諸表監査を一体的に実施するため、同一の監査人がこれらの監査を実施し、情報を相互に利用することができます。
この一体的な実施により、信頼性の向上や監査の効率化が期待されるほか、内部統制報告書と財務諸表監査報告書の連携も強化されます

外部監査人と社内監査役・内部監査人の連携

外部監査人と企業内の監査役・内部監査人の連携も、J-SOX法の特徴のひとつです。
この連携によって外部監査人の調査に係る負担が軽減され、監査の効率化が図られます。さらに、適切なコミュニケーションを交わしやすくなるため、企業内の不正や不祥事の防止・抑止が促進され、企業全体としての信頼性と透明性の向上にもつながっていきます


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J-SOX法と会社法における内部統制の違い

”J-SOX法と会社法における内部統制の違い“J-SOXと会社法による内部統制の違いを表にまとめます。

  J-SOX 会社法
対象企業 上場企業等、特定の規模を有する企業 全ての会社(一定規模以上の会社では特定の規定が適用)
対処の目的 財務報告の信頼性向上、投資家保護 企業統治の側面、株主保護
内部統制の実施範囲 財務諸表に関連する内部統制が中心 経営全般にわたる内部統制、経営の効率化と効果的な監査の実施
監査・評価の方法 トップダウン型のリスクアプローチ、外部監査人との連携等 会社法上の監査等、経営者や内部統制部門等による監査等
不備の区分 「開示すべき重要な不備」と「不備」の2つに簡素化 会社法上の規定に基づく評価
報告書の提出 内部統制報告書の提出が必要 一般的には内部統制報告書の提出義務はなし(規模によって異なる)
適用基準 財務業務、情報などの基準に基づく 会社の規模、業態などに応じて異なる規制が適用

J-SOXは主に上場企業などの財務報告の信頼性を高めるための法規制である性質上、財務報告に特化した内部統制が求められます。
一方、会社法に基づく内部統制は、会社組織全体の経営効率と法令順守を強化する視点からの規制となっており、より広範で一般的な企業に適用される規制となっています。


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J-SOX法対応を進める5つのステップ

J-SOX法によって新規上場企業にも内部統制報告書の提出が義務付けられているため、これから上場を目指す企業はJ-SOX法への対応が必要不可欠です。

以下に、J-SOX法に対応するための進め方を5つのステップに分け、それぞれについて解説します。

1. 評価範囲を決定する

J-SOX法対応を始める際、最初のステップとなるのが、評価範囲の決定です。
具体的には、全体的なビジネスプロセスの理解と、事業拠点、子会社、重要な勘定科目に関連する業務プロセスの選定を行います。
評価範囲を決めるには、企業の規模、業態、リスクプロファイルなどに基づいて適切な範囲を設定する必要があります。
範囲が広すぎるとリソースが浪費される可能性がありますし、狭すぎると重要なリスクエリアを見逃す危険があるためです。

2. J-SOX法(内部統制)3点セットで業務プロセスを可視化する

J-SOX法対応においては、業務プロセスを文書化する際に3点セットを作成することが一般的です。
具体的には、フローチャート、業務記述書、リスク・コントロール・マトリクス(RCM)の3点を作成し、業務プロセスを明確化します。
これによって、内部統制の評価と監査の効率・精度が向上するため、必要な是正措置をスピーディーに特定するための基盤づくりができます。

3. 内部統制を評価・是正する

内部統制の評価は、不備の早期発見と是正のために欠かすことができません。
評価の結果、不備が発見された場合、可能な限り期末までに是正措置を実施するよう努めます。
未改善の不備については、金額的・質的重要性に基づき、開示すべき重要な不備に該当するかどうかの評価を行ったうえで、必要に応じた適切な対応をとります。

4. 監査法人・公認会計士に監査を依頼する

内部統制報告書を作成した後は、監査法人または公認会計士による監査が必要となります。このプロセスは、企業が評価した結果と文書化された内部統制について、専門家が精査することで適正であるとの評価を得ることが目的です。
監査法人との円滑なコミュニケーションと情報共有を意識することで、このプロセスをより効率的に進められるようになります。

5. 内部統制報告書を金融庁に提出する

監査法人・公認会計士の監査を受け終えた報告書は、各事業年度末に有価証券報告書に添付して財務局および金融庁に提出します。
J-SOX法への対応は新規上場企業にも必要であり、企業が信頼性と透明性を高め、投資家保護に寄与する重要なステップとなります。


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まとめ

J-SOX法への対応は、企業の内部統制を強化し、企業会計の透明性および財務報告の信頼性を確保する重要なプロセスであり、適切に対応することで投資家からの信用を得られるほか、社会における企業価値の向上にもつながっていきます。
また、不祥事の防止、業務の効率化、資産の安全な取り扱いなどのメリットも期待できるため、J-SOX法への対応は経営戦略の一環として積極的に取り組むべき課題であるといえます。
導入を進めるためのステップは決して単純なものではありませんが、上場企業はJ-SOX法への対応が義務付けられており、対応が不十分な場合には罰則が設けられていますので、必要時には専門家にも依頼するなどして、適切に対応するよう意識してください。

この記事を監修したキャリアアドバイザー

森澤 初美

カナダ州立大学卒業後、新卒でMS-Japanへ入社。求人企業側の営業職を経験した後、2014年にキャリアアドバイザーへ異動。2016年からは横浜支社にて神奈川県内の士業、管理部門全職種を対象にこれまで3000名以上のカウンセリングを担当。現在は関東全域を対象に経理・財務・経営企画・CFO・公認会計士・税理士・税理士補助スタッフなどの会計系職種を幅広く担当。

経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 外資・グローバル企業 ・ 会計事務所・監査法人 ・ 役員・その他 ・ IPO ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ USCPA ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!

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