【税理士の年収の現実】規模別・年代×経験年数別の年収や開業税理士の年収も比較!



独占業務を持つ国家資格である税理士について、高年収のイメージを持つ方が多いでしょう。
しかし実際は、所属する会計事務所・企業の規模や独立開業するかどうかによっても年収水準が大きく異なります。
この記事では、そんな税理士の年収の現実について、所属する会計事務所・企業の規模別年収や年代×経験年数別年収、開業税理士の年収など様々な角度から解説します。
【勤務先の規模別】勤務税理士の年収
まず、勤務税理士の年収について見ていきましょう。
勤務税理士の年収は「どこで働くか」によって年収水準が異なります。
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」における企業規模別の平均年収は以下の通りです。
(以下の表は千の位を切り捨てて算出しています。)
企業規模 | 10~99人 | 100~999人 | 1,000人以上 |
---|---|---|---|
きまって支給する現金給与額 (1ヶ月分) |
46万円 | 47万円 | 45万円 |
年間賞与その他特別給与額 | 110万円 | 146万円 | 222万円 |
年収額 | 673万円 | 713万円 | 772万円 |
「10~99人」と「1,000人以上」では、年収額に100万円近い差がみられます。所属する企業・会計事務所の規模が大きいほど、年収水準も高くなると言えるでしょう。
ただし、上記の年収データは税理士だけでなく、公認会計士も含まれていることに注意が必要です。税理士・公認会計士の割合も公表されていないため、税理士の正確な年収ではないと考えられます。
【年代×経験年数別】勤務税理士の年収
同じく、「令和5年賃金構造基本統計調査」から、税理士の年代別・経験年数別年収をご紹介します。
(以下の表は千の位を切り捨てて算出しています。)
年齢 | 0年 | 1~4年 | 5~9年 | 10~14年 | 15年以上 |
---|---|---|---|---|---|
~19歳 | - | - | - | - | - |
20~24歳 | 373万円 | 367万円 | 359万円 | - | - |
25~29歳 | 368万円 | 511万円 | 598万円 | - | - |
30~34歳 | 382万円 | 527万円 | 611万円 | 773万円 | - |
35~39歳 | 491万円 | 548万円 | 710万円 | 852万円 | 899万円 |
40~44歳 | 374万円 | 597万円 | 526万円 | 691万円 | 981万円 |
45~49歳 | - | 494万円 | 586万円 | 986万円 | 831万円 |
50~54歳 | 219万円 | 590万円 | 1,037万円 | 462万円 | 884万円 |
55~59歳 | 349万円 | 644万円 | 673万円 | 514万円 | 581万円 |
60~64歳 | - | 306万円 | - | - | 851万円 |
65~69歳 | - | - | - | - | 722万円 |
70歳~ | - | - | - | - | 685万円 |
全体 | 376万円 | 501万円 | 664万円 | 825万円 | 804万円 |
上記の表を見ると、税理士の年収は年齢よりも経験年によって大きく左右されることが分かります。
最高年収は「50~54歳」の「5~9年目」の1,037万円ですが、同じ年代であっても、経験年数が減ると平均年収も大きく減少しています。
勤務税理士が年収を上げる方法とはためには
前述したデータからも分かる通り、勤務税理士として年収をあげる場合は、Big4あるいは中堅どころの大手税理士事務所を目指したいところです。
町事務所のような数名規模の会計事務所は、抱えるクライアントの数も少ないことから年収水準も低い傾向にあるため、仕事は多いのに年収は少ないといった状況に見舞われるリスクも少なくありません。
それなりの金額で安定した収入を得たいと考えているなら、税理士事務所・会計事務所にこだわらず、大手企業の社内税理士として働くのも魅力的な選択肢です。
どのような選択肢を選ぶにせよ、自分が無理なくキャリアアップできる環境で働くことが、成功への王道と言えるでしょう。
開業税理士の年収
開業税理士の年収のデータは、当然ながら一般人に公開されるケースは少なく、開業税理士・日本税理士会連合会などが収集したデータを確認する必要があります。
古いデータとしては、2004年時点での日本税理士会連合会の「開業税理士の年収」に関するアンケートがありました。その中で年収500万円未満と回答した税理士は26%にのぼります。
一方で、年収2,000万円以上と回答した税理士は合計して40.5%となるため、稼げている税理士が相応の割合で存在していたようです。
しかし、近年では年収500万円に満たない開業税理士が半数近くを占めるだけでなく、年収2,000万円を超える開業税理士の割合は5%前後に留まっていると言われています。
残念ながら開業税理士として稼ぐことは決して簡単ではないと言えるでしょう。
開業税理士の報酬相場とは
税理士とクライアントとの顧問契約は、一般的に以下のどちらかのパターンです。
- (A)月額顧問料 + 決算処理代行料 + 各種オプション処理
- (B)決算処理代行料 + 各種オプション処理
(A)は毎月の会計処理と、年に1回の決算処理を請け負うパターンで、(B)はスポット的に決算時期にすべての会計処理をまとめて行うパターンです。決算に関わる業務を一括で請け負う分、(B)のパターンの方が決算処理代行料は高めに設定されます。
決算処理には試算表や納付書の作成が含まれ、仕訳入力や年末調整などはオプション扱いです。また毎月の顧問料の中には、事業主からの相談やコンサルティングなども含まれます。(月に相談できる回数によって顧問料や契約プランが変わるケースもあります)。
旧税理士報酬規程が廃止された現在では税理士が自由に顧問料を決めることができますが、月額顧問料の相場は1ヶ月に3万円前後、決算処理代行料は20万円前後が目安になるでしょう。ただしこの金額はクライアント企業の規模によっても異なり、通常は規模が大きくなるほど料金設定も高めになります。
年収が高い開業税理士と低い開業税理士の違い
開業税理士の年収は、顧問契約するクライアントの数と、クライアント1件あたりの契約料によって決まります。
クライアントの年間売上に比例して顧問料が高く設定されているケースが一般的ですので、大規模なクライアントを多く持っている方が、報酬額も高くなります。
年収が高い税理士は、規模の大きいクライアントを持っていることが多く、クライアントからの信頼を得られれば、顧問以外のスポット業務を依頼されるケースも多いでしょう。M&Aや組織再編等の高度な税務・会計知識が必要となる業務であれば、それだけ報酬を高く設定することも可能です。
一方で年収が低い税理士は、税金計算などのコストを抑えた依頼が主要な業務です。クライアントから相談を受けるような機会がなければ、業務の幅を広げることはできません。
つまり、開業税理士の収入は、会計処理以外の業務を増やせるかどうかによって左右されるのです。基本的な会計業務で顧問契約を結び、クライアントの信頼を得て付随する業務を増やすこと、そして同様のクライアントを増やすことが、収入アップのポイントだと言えるでしょう。
税理士の年収は開業の有無で大きく変わる
税理士として高年収を目指す場合、勤めている企業・事務所の規模によって年収水準が左右される勤務税理士では、なかなか難しいのが現実です。
企業に勤務するより、開業したほうが高年収を得やすいのではないでしょうか。
ただし、近年は独占業務である「税務代理・税務書類の作成・税務相談」の三本柱だけで十分な収益を上げることは難しいと考えられています。コンサルティング・アドバイザリー業務など、よりクライアントの会計に携わることが、年収を増やす条件だと言えるでしょう。
例えば、中小企業の税務申告や記帳代行だけを取り扱う場合、単価が低いため、より多くのクライアントを得る必要があります。薄利多売の状況が続き、稼げる収益に限界が来るでしょう。
もちろん、勤務税理士であっても、大手税理士法人上級クラスである年収1,000万円を超える可能性は十分にあるでしょう。
青天井の世界を目指すのか、ある程度の収入を安定して得たいと思うかによって、働き方の選択肢が変わると言えます。
税理士が独立開業するために身に着けておくスキルは?
税理士が独立開業するためには、税理士事務所で勤務するよりも多くのスキルが求められます。一般的には、以下で解説するようなスキルが必要だと言われます。
身に着けておくべきスキル
現代のビジネスでは、他者とは異なる個性が求められています。税理士も独立して成功するためには、基本的な税務スキルはもちろんのこと、専門分野に特化したスキルを身につける必要があります。
その中でも、今後ニーズが広がる分野をターゲットにすることが重要です。例えばグローバル化が進む企業のために、国際税務のスキルを高めておけば、新規クライアントを開拓することにもつながるでしょう。
また、企業の事業承継問題もこれから増加すると予測されています。そのため、組織再編やM&Aのスキルを身につけておけば、税理士が活躍する場はさらに広がるでしょう。
個人レベルでも、相続税対策や資産運用の相談が増えると考えられるので、資産税に関するスキルを高めておくと、クライアント獲得のチャンスが広がるかもしれません。
もう1つ、独立する上では営業スキルも外せません。ただし、物を売る仕事ではないため、クライアントに最適な税務サービスを提案したり、適切なアドバイスで経営サポートしたりするスキルが重要になるでしょう。
独立準備に最適な勤務先は?
一定の準備期間を設けて着実に独立開業を目指すなら、目標に合わせて勤務先を選び、実務経験を積みながらキャリアアップを図るという方法もあります。
前述したように、今後ニーズ拡大が予想されるグローバルビジネスや、組織再編、M&Aなどの業務でキャリアを積むのであれば、Big4税理士法人が最適な職場です。専門性が高い仕事を経験でき、後々のキャリアにもプラスに作用するでしょう。
中堅以上の税理士法人では、通常の法人顧問業務に加えて、資産税や組織再編などの経験を積むことができるでしょう。部門ごとに異なる業務を担当したり、法人によっては事業部をまたいで案件ベースでアサインしてもらえるケースもあるため、理想のキャリアを積むための法人選びが重要です。
さらに専門分化したスキルを身につけるなら、専門特化型税理士法人も選択肢に入るでしょう。特定の業務だけでなく、特定の業界に絞ったクライアントを相手に、専門的なスキルを磨くことができます。
まとめ
どの業界でも共通することですが、開業税理士と勤務税理士にも、それぞれにメリットやデメリットはあるものです。
勤務税理士には収入が一定水準で抑えられるという面がありますが、安定的に収入を得られるという利点もあります。対する開業税理士は、クライアントの獲得が収入に直結するため、顧客を増やせれば収入アップにつながる反面、収入が不安定になるリスクもあります。
しかし、どちらの働き方を選ぶにしても、自身のスキルを高めることにより収入アップを図ることは可能です。近年税理士が担当する業務の幅が広がっていることから、専門分野に特化したスキルを身につけておくと、高収入の業務を依頼される可能性が高まります。
収入アップに成功するためには、税理士としての能力やスキルを積極的に伸ばすことが重要だと言えるでしょう。
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参考URL
・賃金構造基本統計調査 /令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種
この記事を監修したキャリアアドバイザー

大学卒業後、カーディーラ・小売業を経験し、2008年からMS-Japanでリクルーティングアドバイザーとキャリアアドバイザーを兼務しております。
会計事務所・監査法人 ・ コンサルティング ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ USCPA ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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