税理士の転職は何歳まで?「転職35歳限界説」は税理士も同じなのか?
税理士試験は難易度が高く、必要な学習時間も長いため、合格時点で30代を超えているというケースは少なくありません。
しかし、その場合に気になるのが、「税理士資格取得後の転職活動で、年齢を理由に不利にならないか」という点です。
そこで今回は、税理士の転職は何歳まで可能なのかについて掘り下げて考えてみます。
税理士の転職希望者・決定者の年齢分布
まず、弊社MS-Japanが提供する士業・管理部門特化型転職エージェント「MS Agent」における2023年の税理士の有資格者データを見ていきましょう。
転職を希望している税理士と、転職決定した税理士の年齢分布は以下の通りです。
年代 | 転職希望者 | 転職決定者 |
---|---|---|
20代 | 4.2% | 11.5% |
30代 | 25.2% | 21.3% |
40代 | 31.2% | 41.0% |
50代以上 | 39.4% | 26.2% |
税理士の転職決定者で最も割合が高い年代は40代の41.0%でした。
このことから、税理士の転職市場では、「転職は35歳まで」という一般的な年齢制限の考え方が適用されないと考えられます。
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「転職は35歳まで」が税理士に当てはまらない理由とは
前述した通り、税理士は年齢を問わず転職が可能です。その理由としては、以下の点が挙げられます。
資格取得までに時間がかかる
税理士は
資格取得までに時間がかかる資格です。
税理士試験に合格するには、「会計学に属する科目」である簿記論と財務諸表論の2科目、さらに「税法に属する科目」(所得税法、法人税法、消費税法もしくは酒税法、相続税法、国税徴収法、固定資産税、住民税もしくは事業税)の中から選択した3科目、合計5科目の試験をパスする必要があります。
簿記論と財務諸表論は必修科目、さらに税法に属する科目については、所得税法か法人税法のどちらかは必修です。
一般的に、税理士資格を取得できるまでにトータルで4,000時間程度の勉強時間が必要といわれています。大学で税の勉強をしていた場合など、予備知識があればもう少し短くなる可能性はありますが、それでも年単位での時間がかかるのは確実です。昼間は税理士事務所・企業などで働きながら、コツコツと勉強していくことになります。
税理士試験は一度に5科目合格する必要はなく、1科目ずつ合格を重ねていき、5科目そろった時点で税理士試験合格とみなされます。この科目合格制度も、資格取得が長期化する理由のひとつです。
最終合格までに年単位の時間がかかるため、税理士の平均年齢は必然的に上がります。日本税理士会のデータによると、登録税理士で一番多い年代は60代であり、30代や40代でさえも「若手」扱いされるのが実態です。
そのため、若手世代である30代、40代、さらには50代が転職することも、税理士業界では一般的だと言えるでしょう。
知識と経験の積み重ねが評価ポイントである
税理士の業務において重要なのは、若さではなく税務の知識と現場での経験です。年齢が高くなっても、最新の制度状況を含めた税法に関する豊富な知見を持ち、それを実際の業務に活かせるスキル・経験を有していれば、税務の専門家として転職市場では重宝されます。
また、税務においてはクライアントにどれだけ丁寧に、かつわかりやすく説明できるか、というコミュニケーション能力も重要です。年齢が高くても、求められるスキル・経験を有していれば、転職市場で高評価を受けられるわけです。
【年代別】税理士の転職におけるポイント
「税理士の転職希望者・決定者の年齢分布」でも解説した通り、税理士の転職市場は、他の職種と比較して年齢による制限が少ないと言えるでしょう。
しかし、年齢によって求められるスキルが異なる点は税理士でも同様です。
まず、20代の税理士は非常に少ないため、業界全体でも貴重な存在です。キャリア不足ではあっても、ポテンシャルで転職活動を有利に進められるでしょう。
30代でも税理士業界の中でもまだ若手として扱われます。しかし、20代と比較するとポテンシャルのみで評価されるケースは少ないため、複数の科目合格や会計事務所での経験があると評価させます。
また、一般企業の年齢制限とも言われる35歳以降も、若手と判断されるでしょう。しかし、35歳以下と比較すると経験や税務知識が求められるため、ある程度の実務経験や実績が蓄積されていれば、経験値に比例して希望の職場に転職できる確率も高くなるでしょう。
40、50代は十分な知識やスキル、経験値があれば、即戦力性を求められる税理士業界においてニーズが高い傾向です。それまでのキャリアによっては、管理職・マネジメント職への転職の可能性も出てくるでしょう。
そのため、実務スキルだけでなく、ヒューマンスキル面(マネジメント能力面)も求められます。
税理士の転職は、年齢による制限は比較的ありませんが、年齢ごとに求められる経験やスキルが異なります。
もしも転職するにあたって、自分は年齢に見合った経験やスキルがあるのか不安に感じている場合は、一度転職エージェントに相談してみましょう。
税理士は何歳まで働ける?勤務先別に解説
税理士の転職では、事実上年齢は致命的なネックにはなりません。
では実際に税理士は何歳まで働くことができるのでしょうか。
実は税理士の平均年齢は65歳以上というデータもあり、独立すれば実質的に定年もありません。
健康で仕事ができる限りは、就業可能です。
また、税理士の年齢は働き方によっても異なります。それを2つのケースに分けて紹介しましょう。
勤務税理士の場合
大手、中小税理士事務所に勤務する場合、定年制度の対象になるため、決められた年齢で引退することが考えられます。
しかし最近は、定年後の再雇用制度も広がってきており、税理士業務の特性からも業務を延長して続けるケースが増えています。
もしも所属する事務所が人手不足であれば、定年後も長期間にわたり税理士を続けることが可能になるでしょう。
開業税理士の場合
一方で独立して開業した税理士の場合、定年という仕組みそのものがないので、何歳まででも働き続けられます。
とくにクライアントとの絆が深くなると、可能な限りは顧問を務めることになるでしょう。
事実上税理士に年齢の上限はない、ということになります。
税理士の年代別オファー年収
弊社「MS Agent」を利用して2023年に転職決定した税理士の年代別オファー年収をもとに、税理士の平均年収を解説します。
オファー年収とは、内定時に提示される年収額を指します。
上記の表では、税理士の平均オファー年収で最も高い金額となるのは40代の649万円で、50代以降は下降傾向にあります。転職で年収アップを目指す場合、現在の年収と年齢を考慮することが重要です。
また、会計事務所とインハウスを比較すると、インハウスが100万円近く高いオファー年収であることが分かります。
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35歳以上の転職成功事例
35歳以上の税理士の方が転職に成功した事例を2つご紹介しましょう。
40代で4法人から内定し、キャリアアップと柔軟な働き方を実現した転職事例
転職前の勤務先は中堅税理士法人で年収は約600万円でしたが、一時期に複数名のまとまった退職があったために業務負担が増加しました。残業や休日出勤が増加し、家族と過ごす時間が減ったことから転職を決意するに至りました。
プライベートな時間を確保しつつ、それまで培ってきた相続や資産税案件の実績を活かせるような転職先を志望し、転職活動を開始します。
転職活動時の年齢は40代でしたが、経験豊富な税理士ということで複数の法人からオファーをもらうこととなり、最終的に4つの法人から内定を得ました。
最終的に転職先として選んだのは、自身のキャリアにとってプラスになると同時に、柔軟な働き方を受け入れてくれる事務所(個人会計事務所、年収約650万円)でした。
休みの取り方の自由度が高く、実際に休みを取得している従業員も多いという点が、選択上の決め手となったといいます。
40代であっても専門性の高い能力・経験を有していれば、かなり有利な条件での転職が可能になることを示すケースです。
ワークライフバランス重視の転職に成功した40代女性の事例
転職前の個人会計事務所では、子育てと両立しながら専門的な知識を活かして就労し、年収は約450万円でした。しかし勤務先の所長が高齢のために事務所をたたむことになり、転職を余儀なくされました。
転職活動を始める上での希望条件として、「ワークライフバランスが取れること」「勤務地が自宅から近いこと」「働くママさんへの理解度があること」の3点を設定しました。
希望条件に合った求人はいくつかありましたが、より待遇のいい2~3社へと絞り込んだ上で面接に臨みました。
それまでに培った専門的な知識・経験が評価され、さらに面接対策を入念に行ったこともあって、その中の1社(事業会社、年収約500万円)から内定を獲得しました。
転職エージェントの担当者から情報収集をしっかり行い、面接の準備に取り組んだことが転職成功の大きな要因といえます。
シニアも歓迎!税理士求人の例
ここではMS-Japanの転職エージェントサービス「MS Agent」で取り扱う税理士求人のなかから、年齢問わず経験者を歓迎している求人をご紹介いたします。
税理士 ※シニア歓迎/有資格者求人
仕事内容 |
・決算、申告書作成 ・訪問監査 ・国際税務 ・相続・資産税業務 ・年末調整 ・経営支援コンサル(M&A、事業再生、組織再編 等) ご経験・スキルに合わせて幅広い業務を担当していただきます。 ※お客様の割合は、法人7:個人3 程度 ※個人ずつの担当制ですが、担当件数に応じてアシスタントを付けることも可能です。 ※顧問先への訪問の際は、社用車を使用していただきます ※将来的には管理職として同法人の柱となってくれる方を求めています。 |
必要な経験・能力 |
<必須条件> ・税理士資格/公認会計士資格をお持ちの方 ・普通自動車免許※AT限定可 ・Excel・Wordを使用した簡単な文書作成 |
想定年収 |
500万円 ~ 800万円 |
税理士:社内でのレビュー担当募集【シニア歓迎/リモート・フレックス導入/週3~の勤務も相談可能/残業も少なく定着率も◎】
仕事内容 |
・申告書レビュー ※一般的なレビューに加え、複雑な論点についてのアドバイス ※申告の件数ボリュームは 法人税>所得税>相続税 ※クライアント担当と兼務も可 ※クライアント担当とレビュワーを兼務/レビュワーのみなどご志向や能力によって業務内容相談可能 現在68歳の方も勤務されており長く働ける環境です! |
必要な経験・能力 |
【必須】 ・税理士 ・会計事務所での経験が10年以上ある方 ・法人税・所得税の幅広い知識 【歓迎】 ・相続税の幅広い知識 ・マネジメント経験不問 |
想定年収 |
800万円 ~ 900万円 |
税理士の求人情報
大手税理士法人〜中小希望の事務所、ブティック、コンサル、
事業会社など税理士資格を持っている方を求めている求人をまとめております。業界最大級の求人数から求人検索できます。
弊社のみが扱っている求人も多いため、ぜひご確認ください。
まとめ
税理士業界では30代でも若手と呼ばれ、50~60代でも現役で活躍している方が多いです。
一般的なビジネスパーソンの場合だと「転職は35歳までに」との見方もありますが、少なくとも税理士の場合、35歳以降でも問題なく転職が可能です。
ただし年齢が関係ない分、本人がもつ税理士としてのスキル・経験が重視されます。実際に転職活動を始める場合は、それまでのご自分の税理士としての経歴、実績をまとめ、応募先の事務所・企業に効果的にアピールできるように入念に準備しておくことが大切です。
この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、食品メーカー営業を経て2005年MS-Japan入社。企業側営業担当を1年半経験し、以降はカウンセラー業務を担当。若手中堅スタッフの方から、40~50代のマネージャー・シニア層の方まで、年齢層問わず年間500名以上をカウンセリングさせていただいています。
企業管理部門全般~会計事務所など士業界、会計士・税理士・弁護士資格者まで弊社の特化領域全般を担当しています。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 会計事務所・監査法人 ・ 役員・その他 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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