2024年04月12日

国際弁護士とは?国際弁護士のなり方、メリットや年収について解説!

管理部門・士業の転職

弁護士がキャリアアップするには、法律事務所内で経験を積むほか、転職や独立、企業内弁護士として働くなど多様な選択肢があります。国内で活動する弁護士の中には、グローバルな案件に携わる「国際弁護士」を目指すことでキャリアアップを図る方もいます。
しかし実際には、国際弁護士という資格は存在しません。日本の弁護士資格や他国の弁護士資格(外国法事務弁護士)を取得した上で、海外の案件を手掛ける弁護士を国際弁護士と呼んでいます。

この記事では、国際弁護士の概要、日本国内または海外で弁護士資格を取得するまでのステップ、平均年収について解説します。

国際弁護士とは

国際弁護士は「日本の資格だけを有する弁護士」と「日本の資格を持たず海外の資格だけを有した弁護士」という2つのパターンに分けられます。

日本の資格だけを有する弁護士

日本の資格を持つ国際弁護士は、さらに「日本の資格のみを保有する弁護士」と「日本と外国の資格を保有する弁護士」という2つのパターンに分かれています。

日本の資格のみを保有する弁護士は、日本に拠点を置きながら企業の依頼を受けて海外との交渉などを中心に手掛けているのが特徴です。
他国で弁護士として活動するには、国ごとの資格を取得しなければなりません。法に基づいた事務業務を担うため、法律が州によって異なるアメリカのような国では、各州の資格を取得する必要があります。
日本と外国の弁護士資格を持つ弁護士は、幅広い案件を手掛けているため知識も豊富です。

日本の資格を持たず海外の資格だけを有した弁護士

日本の資格は持たずに海外の資格のみを有する国際弁護士が、日本国内で弁護士として活動するには、所定の手続きが必要です。
法務大臣の承認を受けたのちに「日弁連(日本弁護士連合会)」に備えられた「外国法事務弁護士」へ登録されると、外国法事務弁護士として活動することが認められます。

外国法事務弁護士が扱う主な案件は、外国法に関連した法律的な事務、国際仲裁事件に関する事務などが中心です。
日本の法律やサービスを扱うことは認められていないため、裁判における訴訟代理人や行政庁への申立代理人といった業務は扱えません。ただし、日本で行われる国際的な案件であれば、日本の弁護士と同様に当事者の代理として活動することが可能です。

次項からは、日本の資格を有する国際弁護士に焦点をあて、実際にどのような業務を手掛けているのか詳しく紹介します。

参照元:
外国法事務弁護士 承認・指定申請手続の概要 | 法務省
外国法事務弁護士の登録について | 日本弁護士連合会

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国際弁護士のメリット

ここであらためて、国際弁護士が担当する具体的な業務の一例を挙げてみましょう。

  • 海外企業との業務提携、M&Aなどの手続き
  • 特許や商標に関わる手続き
  • 外国語による諸手続き
  • ソフトウェアライセンスに関わる手続き
  • 国境を越えた弁護士業務

こうした業務を行うためには、海外の法律に精通していることと、各種手続きなどを国を超えて行うための語学力が求められます。
逆に言えば、それらの知識やスキルを身に付けていれば、一般的な弁護士と比較して活躍できる場を広げられるはずです。 特に大手企業では国際的な取引が多く、さらにグローバル化が進んでいるため、国際弁護士の需要は高まっています。そのため、国際弁護士として活躍できれば、大手企業へ転職できるチャンスが巡ってくるかもしれません。

また、大手企業への転職にこだわらなくても、国際弁護士の業務経験を積むことにより、キャリアの選択肢を増やせる可能性はあります。
例えば、新興ベンチャーのように、積極的に新しい事業に乗り出している企業では、国際弁護士の業務で実績を上げることにより、CFO(最高財務責任者)やCIO(最高情報責任者)など、経営に関わるポジションに就けるかもしれません。
いずれにしても、一般的な弁護士よりも活躍の場が広がることにより、国際弁護士の方が高い年収を得られる可能性は高まります。収入が増え、社内で重要な人材として評価されることが、仕事に対するやりがいやモチベーションアップにつながると考えられます。

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国際弁護士になるには留学が必要?

上述したように、国際弁護士という資格は存在しません。
そのため、国際弁護士を目指すのであれば、国内または海外で弁護士資格を取得したのち、資格に合わせた業務に携わることが大半です。

日本国内で弁護士資格を取得する場合

まず国内で弁護士として働くためには、司法試験合格後に1年間の司法修習を経て、研修後の試験に合格してから各地の弁護士会へ登録する必要があります。
その後は、国際的な案件を扱う法律事務所などに所属して実務面から国際的な案件に関わり、実績を重ねるケースが一般的です。

もちろん、英語またはその他の言語に習熟することも求められます。日本国内で英語などの資格試験を受ける方法もありますが、短期で実務レベルの語学力を身に付けるためには、留学したほうが効率的です。

外国で弁護士資格を取得する場合

一方、外国で弁護士資格を目指す際は、取得したい国のロースクールに通い、必要な知識を身に付けるのが一般的です。例えば、アメリカには、JD(Juris Doctor)LL.M(Master of Laws)という2つのロースクールがあります。

日本人が留学して資格取得を目指す場合、通常3年間のJDよりも、1年間という短期コースのLL.Mを利用します。
国内で英語のベースを仕上げておく必要がありますが、現地で1年間英語だけの生活を続ければ、ほとんどの人が実務レベルの英語力を身に付けられるでしょう。
日本国内で勉強するよりも、留学して学ぶほうが、短期間で国際弁護士に転職できる可能性は高くなります。国内の法律事務所や企業の中には、キャリアアップのために留学をサポートしてくれるところもあります。
一度転職してから、そのサポートを受けて留学することもひとつの選択肢です。

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どこの国の弁護士資格を取得するか?

海外の弁護士資格を取得したい場合、初めにどこの国の弁護士資格を取得するかを決めなければなりません。
もっともポピュラーなのはアメリカですが、アメリカ以外にも、フランスなどのヨーロッパ、シンガポール、中国、東南アジアなどの各国で資格を取得する道もあります。

例えばヨーロッパでは、EU内で弁護士資格を相互承認しているため、EU内の国において弁護士資格を取得すれば、EU全域で弁護士業務を行うことが認められています。
最近では、中国をはじめアジアとの取引も増えているため、中国で資格取得を目指す弁護士が今後増えるかもしれません。
アメリカの弁護士資格を取得する際は、どこの州で資格を取るか決める必要があります。アメリカの弁護士資格は、州ごとの単位となっていることが理由です。

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アメリカの場合の弁護士資格取得方法は?

弁護士資格を取得する国が決まったら、次にその国の弁護士になる方法を調べましょう。例えば、多くの日本人弁護士が米国弁護士資格を取得する際に選択する、アメリカ・ニューヨークで資格を取得する方法は、以下のとおりです。

予備試験のないアメリカ・ニューヨークでは、司法試験の受験資格を得るために、ロースクールを修了しなければなりません。ロースクールを卒業したのちに司法試験(bar exam)を受験し、合格すると弁護士資格が取得できます。
ロースクールに通う期間は、3年のJDコースと1年のLL.Mコースから選択できますが、日本国内の大学に通い法学部を卒業した方や法科大学院の卒業生、弁護士資格を保有している方であれば、LL.M.コースの卒業で司法試験の受験資格が与えられます。

上述したように、アメリカでは州ごとに法律が制定されていることから、受験に対するハードルの高さが異なります。
例えば、多くの日本人が受験するニューヨーク州の司法試験における初回外国人受験者の合格率は、2022年7月が約52%、2023年7月は約54%です。一方、国内の司法試験合格率は、2022年が45.52%、2023年が45.34%という結果でした。
一見、日本国内と比較してニューヨーク州のほうが合格率が高い印象を受けるかもしれません。
しかし、ニューヨーク法科大学院・州外のABA認定法科大学院・米国弁護士会認定ロースクールの卒業生の合格率は2年ともすべて80%台となっているため、合格者内での比率としては、日本人の合格率は決して高いとは言い切れません。

参照元:
令和4年司法試験法科大学院等別合格者数等 | 法務省
ニューヨーク州法審査委員会(The New York State Board of Law Examiners)2022年

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国際弁護士に求められるスキルとは


日本国内で海外の案件を扱う国際弁護士には、さまざまなスキルが求められます。その中でキャリアアップのキーポイントとされるのは、以下の3点です。

日本の法律知識(弁護士資格)

日本を拠点に活動する国際弁護士が扱う代表的な法律事務は、国内企業と海外企業間の契約交渉M&Aなどの案件です。いずれの業務であっても、日本の法律に対する深い知識が欠かせません。
また、弁護士として活動する上で、法律を解釈する能力や各事例に応じて対応するスキルも求められます。

海外の法律知識(弁護士資格)

活動拠点が日本であっても、外国の法律に対する深い知識は必要です。複数国の案件を取り扱う大手事務所の場合、必要に応じて対象となる国の法律を学び、正確に理解することが求められます。
海外の法律知識が豊富な国際弁護士ほど、手掛けられる案件の幅は広がります。

語学力

外国の法律を理解する上で必須とされるのは、高い語学力です。
法律には数億の専門用語が存在しますが、それらを正しく理解する能力が求められます。スムーズなコミュニケーションを実現するために、日常会話はもちろんビジネス英会話のスキルも身に付けておかなければなりません。
語学力に長けた国際弁護士は、さまざまな海外案件に対応できる弁護士として重宝されます。

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国際弁護士資格を日本で活かす方法

いわゆる国際弁護士として認められれば、日本国内で活躍できるフィールドも大きく広がります。 特に外国企業と取引がある国内企業にとっては、さまざまな契約手続きなどを日常的にこなす上で、国際的な法律の知識がある弁護士の存在が極めて重要です。

また現在のビジネスでは、技術またはソフトウェアのライセンス管理が複雑になり、国際的なライセンス管理のニーズも高まっているため、外国弁護士の業務は今後ますます増加すると考えられます。
アメリカ、EU、中国など、世界経済の中心的な国との間で、自身の能力や知識をフルに活用できます。そういった業務に携わるためには、国際的な案件を扱う法律事務所に所属する以外に、企業内の顧問弁護士になるという方法もあります。
海外との取引が増えるにつれ、さまざまな業務をこなすことになり、企業内で重要なポジションを任せてもらえるチャンスを掴めるかもしれません。

国内業務だけに従事する弁護士と比べた場合、収入面でもワンランク上を目指せるだけでなく、幅広い人脈を築くことも可能になるはずです。 国際弁護士の道を選択することは、キャリアアップへ大きく貢献すると考えられます。

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国際弁護士の平均年収

国際弁護士の年収に関する詳細なデータは公開されていないものの、日本・アメリカで活動する弁護士の年収を参考に、国際弁護士の年収を想定してみました。

日弁連が公表している2020年のデータによると、日本の弁護士の平均年収は2,558万円、所得の平均は1,119万円となっています。
拠点を日本に置く国際弁護士の大半は、大手事務所や外資系事務所に所属しています。国際弁護士の多くが所属する外資系法律事務所、大手と言われる日本の5大法律事務所の年収は、おおよそで初年度が1,000万円超、3年目には1,200万円超と言われています。
その後も年次で増え続け、5年目という比較的早い段階で2,000万円以上に達するケースも少なくないようです。
この数値を見てみると、案件や実績次第で日本の弁護士全体の平均年収や所得の平均を上回る職業だと判断できます。

参考までに、ABA(アメリカ法曹協会)が調査した2021年度1月時点の大手弁護士事務所における初年度基本給の中央値を以下にまとめました。

年数 基本給(ドル) 基本給(円)
1年目 165,000ドル 2,438万円
2年目 170,000ドル 2,512万円
8年目 225,000ドル 3,324万円

※1月31日時点 1ドル147.78 円で計算

この数値から、国際弁護士として勤務する際は、アメリカで働く弁護士のほうが日本国内の弁護士よりもさらに高い報酬を得ていることが読み取れます。

参照元:
近年の弁護士の活動実態について | 日本弁護士連合会
全米弁護士雇用協会(NALP)

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まとめ

国際弁護士という呼び方は世間に浸透しているものの、国際弁護士として活動するための資格は存在しません。
他国の弁護士資格を取得し、外国法事務弁護士として日本の弁護士会へ登録することで、日本国外でも活動が可能です。
日本で弁護士資格を取得し、グローバルな案件に携わるか、他国で弁護士資格を取得したのち正規の登録の上で国際的な案件を担当する弁護士が国際弁護士と呼ばれます。国際弁護士になるためには、試験勉強以外にも資格を取得するためのコストがかかります。

しかし、外国法事務弁護士として実績を上げられれば、日本国内案件のみ扱う日本の弁護士より活躍の幅が広がり、収入もアップする可能性が高まります。かかった分のコストは、十分に回収可能です。
今後はさらなるグローバル化とともに、ビジネスの世界で弁護士が必要になるシーンがいっそう増えると予測されます。国際弁護士が活躍できるチャンスも、さらに広がると期待できます。

この記事を監修したキャリアアドバイザー

濵田 翔平

大学卒業後、大手信用金庫に入庫。個人・法人営業及びビジネスマッチング等に従事。
MS-Japanに入社後は、横浜支社の立ち上げに加え、経理・人事・法務・経営企画・公認会計士・税理士等、幅広い職種のマッチングに従事。
2021年より東京本社へ異動後は、公認会計士・税理士・弁護士・社労士等の士業を専門とするJ事業部の管理職を務める傍らプレイヤーとしても従事。

会計事務所・監査法人 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 税理士科目合格 ・ USCPA を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!

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