公認会計士が一般企業に転職したら?年収と仕事内容、転職活動の進め方など
公認会計士が自身のキャリアを考える際に、一般企業への転職という選択肢は、近年では決して珍しくありません。
公認会計士による高度な会計知識と専門スキルが、一般企業のさまざまな分野で求められているためです。
一般企業に転職する公認会計士の年収や仕事内容、就活ポイントなど、働くメリット・デメリットも含めて解説します。
一般企業に転職する公認会計士が増えている
近年、公認会計士が一般企業に転職する傾向が増加しています。
従来、公認会計士は主に監査法人やコンサルティングファームでのキャリアが一般的と考えられていましたが、公認会計士法の改正以降、社会的使命の拡大や企業ニーズの変化により、一般企業でも活躍の場が広がっています。
公認会計士は、高度な会計・財務スキルを有しており、企業の経営戦略やリスク管理において重要な役割を果たせるため、企業はその専門性を活かした人材を求めるようになりました。
一般企業では経理部門や内部監査部門において、公認会計士のスキルを活かしやすく、業務経験と専門性を追求できる点が魅力的です。
多くの公認会計士が一般企業の「インハウス会計士」として活躍している背景には、志向の変化や働き方の多様化も影響しています。
転職希望者の中には、監査業務だけでなく企業の内部事情や業界に深く関わり、財務・経営において企業に貢献したいという思いに傾いた人が少なくありません。
また、一般企業は監査法人よりも残業時間が少ないことなど、労働環境の利点も転職を検討する動機となっています。
公認会計士の一般企業への転職によってWin-Winな関係性が広がり、多様なキャリアが公認会計士に開かれつつあると言えます。
一般企業で働く公認会計士の年収
MS-Japanは、公認会計士をはじめとする士業と管理部門に特化した転職エージェント「MS Agent」を提供しています。
ここでは、「MS Agent」の2023年上半期における公認会計士の登録データを元に、公認会計士が一般企業で働いた場合の年収に焦点を当てます。
平均年収を業種別に比較したデータ結果は、「一般企業」が1,164万円、「監査法人」が960万円となっており、200万円以上の差がつきました。
公認会計士が監査法人から一般企業に転職すると、年収が下がる傾向にあると言われていますが、データの結果ではむしろ上昇しています。
年収の変動要因として考えられるのは企業の規模やポジションです。
例えば、大手企業や上場企業でのポジションアップがあれば、年収が向上する可能性があります。
また、一般企業でのインハウス会計士の役職や責任の大きさも、年収に影響を与える要因となり得るでしょう。
ただし、一般企業によっては、インハウス会計士であっても他の従業員同様の給与規定が適用されることもあり、必ずしも年収が上昇するとは限りません。
また、監査法人という組織の特殊性も要因として考えられます。
公認会計士は最初の就職先に監査法人を選ぶケースが多く、スタッフ層の若手がマネージャー層に対して多くなっています。一方で、企業の場合は若手の会計士が複数在籍しているというケースは少なく、企業に所属している会計士は年次に関係なく転職活動をします。
つまり、監査法人で働く公認会計士は若手が多い傾向にあり、企業で働く公認会計士の年代は幅広いことも、要員の一つです。
データからは一般企業での年収が高い傾向が見受けられますが、具体的な条件や個々の事情によっては異なる可能性があるため、慎重な検討が必要です。
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公認会計士の雇用実態レポート【2023年上半期】
公認会計士が一般企業で担う仕事内容
公認会計士が一般企業に転職した場合、担当する仕事内容は監査法人とは異なり、企業内でのインハウス会計士としての役割が求められます。
以下に、その主な仕事内容を見てみましょう。
まず、一般企業のインハウス会計士は、企業の財務管理を担当します。
これには、決算書の作成や予算管理、財務分析などが含まれます。
資金調達や投資プロジェクトの財務面でのサポート、経営陣への財務報告や提言なども業務の一環です。
特に、月次・年次の決算業務は、大手企業を中心にインハウス会計士に求められるスキルの筆頭に挙げられます。
また、内部監査やリスク管理も担当領域になります。
企業が適切な内部統制を維持し、リスクを最小限に抑えるためには、インハウス会計士が積極的に監査を行い、改善策を導く必要があります。
事業のあり方によっては、M&Aに関する会計・監査担当や、IPO準備の専任者として起用されることもまれではありません。
インハウス会計士は企業内で経営陣と連携し、ビジネスの健全な発展に寄与する立場として期待されているのです。
公認会計士の採用が多い業種とは?
ここでは、「MS Agent」が独自調査したインハウス会計士の求人・雇用実態データをもとに、公認会計士の採用ニーズが高い業種について掘り下げます。
指標となるのは、インハウス会計士の求人を実施した「求人業種」およびインハウス会計士が勤めた経験のある「経験業種」の2つです。
公認会計士が働く一般企業の業種において、求人業種・経験業種ともに最も多いのは「製造」でした。
製造業がトップの割合を占めた要因は、生産や製品管理における厳密な財務管理が必要とされるためと考えられます。
求人業種では、次いで「IT・通信」「サービス」「金融」「流通・小売」と続きます。
IT・通信業界では技術の進化やグローバルな事業展開に伴い、財務・経理が複雑化するため、公認会計士の専門知識が必要です。
また、サービス業もさまざまな分野で会計業務のニーズが異なり、公認会計士の広範で柔軟なスキルが重宝されます。
一方、経験業種において「製造」の次に多かったのは、「金融」でした。
金融業界ではメガバンクや証券会社での経理・内部監査が主要な職務となり、公認会計士の高度な専門性が求められます。
特に、M&Aやコンサルティングに関与した経験がある場合、インハウス会計士としての採用評価は一段と高まるでしょう。
公認会計士を採用する一般企業の業種は、いずれも経理・会計領域での専門性やリスク対応が要求される分野です。
そのような背景がインハウス会計士の採用ニーズに直結していると言えます。
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公認会計士が一般企業で働くメリット・デメリット
公認会計士が一般企業でインハウス会計士として働く場合、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
メリット
一般企業は、残業が比較的少なく、働き方への配慮が浸透しています。
公認会計士が抱える仕事の多忙さやストレスが軽減され、ワークライフバランスが保ちやすいことが利点です。
加えて、従業員の健康と生活へのサービスに重点を置く傾向があり、特別休暇や社会保険、子育て支援、退職金制度などが整っています。
公認会計士はこれらの充実した福利厚生を享受できる点が魅力的です。
さらに、一般企業では異なる業界・業種との接点が多く、さまざまな価値観や人間関係の広がりにも期待できます。
デメリット
転職時のマイナス面としては、一般企業の規模やポジションによっては、監査法人よりも年収が下がる可能性があることです。
また、一般企業では監査法人のように同じ目的意識や知識を持つ仲間に恵まれる機会はほとんどありません。
周囲に会計士がいない環境では、専門的な業務で理解を得ることが難しくなり、業務上のコミュニケーションは監査法人ほどスムーズではないかもしれません。
さらに、一般企業特有の部署異動や転勤といったジョブローテーションも考えられます。
異なる部署でも会計・経理に携われるならともかく、まったく別の職務に移された場合、自身のキャリアに大きな影響を及ぼします。
公認会計士登録に必要な実務経験は一般企業で満たせる?
公認会計士として正式に登録できるようになるには、資格試験合格後に3年間の実務経験が必要とされています。
この実務経験は、監査法人で働くことによって満たされることが通例です。
しかし、一般企業での就労は、公認会計士登録に必要な実務経験としてカウントされない可能性があります。
公認会計士は高度な会計知識や財務スキルを要求される職種であることから、専門的な訓練と経験が不可欠です。
一般企業における業務は、これらの知識・スキルを十分に養う環境を提供するとは言い難いため、実務経験として評価されにくいでしょう。
また、公認会計士は修了考査に向けて、日常業務の負担を減らしたり、労働時間を短縮したりすることで準備を整えていきます。
こういった修了考査の日程に配慮してくれるようなサポートが、一般企業では得られにくいことも実務経験先としての適性を欠く要因です。
公認会計士が一般企業へ転職する際のポイント
公認会計士が一般企業に転職する際のポイントとして、就活のタイミングや注意すべき点に着目してみましょう。
まず、転職活動の時期については、一般企業で働く部門の繁忙期を避けることが賢明です。
一般企業は3月の年度末決算が多いため、経理部門であれば4〜5月、経営企画部門であれば2〜3月が繁忙期となります。
これらの繁忙期を避け、適切なタイミングで応募することで、企業側もゆとりを持って面接や選考プロセスに対応してもらえます。
大手企業への転職では、監査経験だけではなく、経理の実務経験が求められることに留意が必要です。
公認会計士の場合、監査法人での経験が豊富でも、経理の実務が不足していると評価が低くなる可能性があります。
また、大手企業でキャリアを積みたい場合は、30歳前半くらいまでに転職を実現するのが理想的です。
上場企業や中堅企業の場合、公認会計士の知識とスキルが重宝される傾向にありますが、40歳以上での転職は給与が下がりやすくなります。
ただし、ワークライフバランスを重視するのであれば、中堅クラスの上場企業が選択肢として有力です。
一方、ベンチャー・スタートアップ企業では、若手世代が好条件で採用されるケースが少なくありません。
30代前半でCFOとして迎えられる事例がある反面、企業の成長ステージによってはバックオフィス業務全般を求められることもあります。
ベンチャー・スタートアップ企業は成長リスクも考慮しながら転職活動を進めることが肝要です。
転職で年収を下げたくない方は転職エージェントにご相談ください
公認会計士が転職を考える際に、年収を下げずに理想のポジションを見つけるためには転職エージェントの活用がおすすめです。
特に、重要なポジションや高い要件が求められる求人は、一般的な転職サイトではなく、転職エージェントの非公開求人を利用する企業が増えています。
理由としては、非公開にすることによってその企業が求めている人材以外は採用プロセスを省くことができ、マッチングの精度を高められるためです。
転職エージェントのMS Agentが提供する非公開求人は、企業と転職者双方が条件を満たす場合にのみご紹介しています。
これは、非公開求人のメリットであるマッチングの精度が一層高まることに期待できるしくみです。
MS Agentが転職者のスキルや希望する年収を丁寧にヒアリングし、その条件に見合う企業をご紹介するため、年収維持・年収アップでの転職も可能です。
また、MS Agentでは求人紹介だけでなく、キャリアカウンセリングや応募書類の添削、面接対策などの転職支援も提供しています。
内定後の条件すり合わせや交渉においても、MS Agentが代行としてサポートすることが可能です。
監査法人から一般企業への転職が初めての場合、転職活動を効率的に進めることができるでしょう。
公認会計士向け一般企業の求人例
ここでは、「MS Agent」で取り扱っている公認会計士向けの一般企業求人から、その一部をご紹介します。
成長率261%の医療ベンチャーの財務経理責任者候補(フレックス・リモートワーク有)
仕事内容 |
・月次・四半期・年次決算業務 ・子会社連結決算対応 ・税理士、監査法人の対応 ・有価証券報告書等の決算開示資料の作成・チェック ・管理会計業務(事業計画、取締役会の予実資料作成・チェック)など |
必要な経験・能力 |
<必須>以下を すべて 満たす方 ・公認会計士資格を持ち、上場企業(市場・規模不問)での勤務経験3年以上 ・リーダーや管理職のご経験がある方 <歓迎> ・大手監査法人での監査対応業務、J-SOX対応業務 |
想定年収 |
700万円 ~ 1200万円 |
上場ネットリサーチ企業の経理マネージャー~部長募集(フレックス有)
仕事内容 |
<リーダーまたはマネージャー候補> ・単体(日本法人)の経理財務業務(決算業務含む)のリード ・連結決算業務、開示資料作成業務、海外法人の経理業務等へ業務範囲を広げたり、チャレンジしていただくこともできます <シニアマネージャー~部長候補> ・単体(日本法人)の経理財務業務(決算業務含む)の統括 ・連結決算業務、開示資料作成業務、海外法人の経理業務等の統括 |
必要な経験・能力 |
<必須> ・公認会計士の資格をお持ちの方(事業会社へのキャリアチェンジ希望者歓迎) ・日常会話レベルの英語力 ※リーディング:ビジネスレベル、ライティング:翻訳アプリ使用して対応可能なレベル以上 <歓迎> ・事業会社にて経理財務経験がある方 |
想定年収 |
550万円 ~ 1200万円 |
無料会員登録により、希望条件に合った非公開求人の紹介が可能です。ぜひお気軽にお問い合わせください。
まとめ
公認会計士の一般企業への転職が増加している背景には、企業ニーズの変化や多岐にわたる会計知識・スキルを必要とする実情がうかがえます。
企業側では、自社の健全性や信頼性を向上させるために、公認会計士有資格者を採用する動きが広がっています。
一方で公認会計士自らも、従来の監査法人や会計事務所だけでなく、インハウス会計士として企業の財務管理や経営戦略、リスクマネジメントなどでキャリアを構築できると認識し、転職を積極的に検討するようになっています。
ただし、転職活動においては、企業の将来性だけでなく、給与体系や福利厚生なども十分に調べて把握することが重要です。
また、転職エージェントを上手に活用することも、自身にマッチした転職先を見つけるための有用な手段となるでしょう。
この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、不動産会社にて個人向けの営業を経験。その後MS-Japanへ入社。会計事務所・コンサルティングファーム・監査法人・法律事務所・社会保険労務士事務所等の法人側担当として採用支援に従事。現在はキャリアアドバイザーも兼務し一気通貫で担当しております。
会計事務所・監査法人 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 税理士科目合格 ・ USCPA を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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