常勤監査役とは?業務内容や役割など、基本から分かりやすく解説します!

「監査役」という言葉は、株式会社やビジネスの世界では馴染みのある用語です。
文字通り「監査を実施する役割」ですが、実際にどのような立ち位置で、何に対して監査を行い、具体的にどういった役割を担っているのでしょうか。
ここでは、「常勤監査役」の業務内容や役割について、権限や設置するメリットなども含めてわかりやすく紐解いていきます。
そもそも監査役とは?
監査役とは、取締役の職務や組織運営の健全性を監督する立場の役職です。
株主総会で選任される監査役は、会社の重責を担うことから会社法で役員と定められています。
まずは、その業務内容や種類に着目してみます。
監査役の業務内容
監査役の役割は、取締役の職務執行状況を監視することです。
取締役が法令違反や不当行為を行っていないかをチェックし、経営判断が株主総会の決議に従っているかどうかなども確認します。
監査業務は、主に「業務監査」と「会計監査」の二つです。
業務監査は、前述のとおり取締役の職務執行が法令や定款に適合しているかを監査することで、適法性監査とも呼ばれています。
会計監査は、計算書類や財務諸表の内容について正当性を確認するための監査で、株主総会の前に実施されることが特徴です。
監査役の種類
監査役には、「社内監査役」と「社外監査役」の2種類です。
今回解説する常勤監査役は、一般的には、企業内から選任される社内監査役が務めることが多いようです。
社内監査役は、その企業で雇用されていた経験があり、一定の職責を務めた経験を持つ社内出身者です。一方で、社外監査役は、非常勤として外部から選ばれ、過去10年間にその企業や子会社で執行役員などの職歴がないことが条件です。
それぞれの特徴を説明すると、社内監査役は、内部事情や人間関係に理解があるため、事業や業務、組織を理解している点で監査を実施しやすいという利点があります。一方で、社外監査役は、第三者視点や他社での知見を活かして社内出身者とはことなる観点で監査を実施しやすいという利点があります。
「監査」に求められる特性上、客観的な視点は重要で、会社法においても、社外監査役が全監査役の半数を占めなければならないと定められています。
常勤監査役の役割
常勤監査役とは、株主総会によって選任され、社内業務に関する監査を日常的に行う監査役を言います。
主な役割は、自社の財務報告書や経営の透明性を担保するため、法令遵守とリスク管理が適切に行われているかを確認することです。
常勤監査役の「常勤」とは、他に常勤の職務を持たず、原則としてその会社の監査役に専念することを指します。
会社法においても、「監査役会は、監査役の中から常勤の監査役を選定しなければならない」と規定され、その役職には常勤性が求められています。
常勤監査役は、社内出身者としての経験や知見を活かし、自社に精通した立ち位置で効率的に監査業務を行うことが可能です。
常勤監査役はリスク管理のアドバイザーでもあります。
自社の将来的リスクを評価し、有用な対策や戦略を提案することも業務の一環です。
企業の持続可能な成長のために必要なステップを助言し、長期的な視点で経営の方向性をサポートします。
また、常勤監査役は状況報告と説明責任も担います。
株主や経営陣、監査役会とのコミュニケーションを円滑に行い、監査の進捗状況や課題点を明確に報告する重要な役割です。
会計監査では、自社運営の健全性を示し、ステークホルダーに対する説明責任も担っています。
どういう会社が常勤監査役を設置する?
続いて、常勤監査役を設置する義務のある会社について、詳しく解説します。監査役の設置基準
監査役の設置基準は、会社法によって規定されています。
設置が定められているのは、資本金5億円以上または負債総額200億円以上の「大会社」や「取締役会」を持つ企業です。
規模が大きい会社ほど複雑なガバナンス機能を適正に保つ監査が求められるため、常勤して業務執行を監視する監査役を設置する必要があります。
設置期間に当たる監査役の任期は4年ですが、非公開株式会社では最長10年まで延長が可能です。
4年の任期は取締役よりも2年間長く、監査の設置に実効性を持たせる狙いがあります。
設置人数は、大会社かつ公開会社の場合、原則3名以上で、その内1名は常勤監査役を置く決まりとなっています。
常勤監査役を設置するメリット
常勤監査役の設置には会社側にいくつかのメリットがあります。
独立した立場の監査役は、組織の内部を客観的に監査することで、不正や法令違反の早期発見と予防に努めます。これは、会社側にとって大きなメリットだと言えるでしょう。
また、常勤監査役の存在は会社の信頼性とイメージ向上にもつながります。
公正で透明性のある監査活動が、ステークホルダーからの信用を高め、競争力を高める要因となります。
加えて、経営戦略やリスクマネジメントに有益な助言も、常勤監査役を設置するメリットと言えるでしょう。
常勤監査役の権限
常勤監査役は会社法で定められた権限を有しています。
例えば、取締役の職務に不正がないかを独自で調査できる独任制は、監査役の役割や立ち位置に欠かせない権限です。
加えて、取締役に対する事業報告請求権や企業の業務・財産状況の調査権、違法行為に対する差止請求権なども持ちます。
また、取締役と企業が対立した際の訴訟代表権や、取締役が被告となった場合、被告側へ企業が補助参加する同意権も保有しています。
この他にも、常勤監査役には監査役会としての権限も与えられています。
監査役の選任に関する議案同意権や議題提案権、会計監査人の選任・解任に関する決定権のほか、取締役と会計監査人から報告を受ける権限などがあります。
さらに、会計監査人の報酬に対する同意権も持っています。
これらの権限は、企業内での透明性と責任を確保するための重要な仕組みです。
監査役と監査役会の存在は、取締役会の機能が不十分な場合や馴れ合いが起きた際に、企業全体の利益と規律を維持するためのバックアップとなります。
その権利を滞りなく行使できるように、実効力の範囲が権限によって定められているのです。
常勤監査役に向いている人は?
常勤監査役は、監査に求められる専門知識だけでなく、経営に対する理解と責任感を兼ね備えた人が適任です。
特に、法務経験者や公認会計士、内部監査経験者は、常勤監査役にふさわしい人材とされています。
その根拠となるバックグラウンドを見ていきましょう。
法務経験者
「企業法務」の経験者は、会社法と関わりの深い監査役に適しています。
法務経験を活かして、法的な規制と企業の実態を対比させ、適法性を評価することが可能です。
企業のコンプライアンスやガバナンス体制を整備する役割にも期待できるでしょう。
また、法務関連資格の最高峰である弁護士や、司法書士や行政書士、社会保険労務士などの法務関連資格の保有者も、企業のニーズによっては適合する場合があります。
公認会計士
企業の財務管理や会計監査の専門家である公認会計士は、監査役としての適性は申し分ありません。
公認会計士は、財務諸表の監査を「独占業務」とする唯一の国家資格です。
多くの企業では、財務状況の透明性や財務報告の正確性は、外部監査として公認会計士が所属する監査法人よっても立証されます。
特に、会計監査は粉飾決算などの防止に重要であり、公認会計士はその専門知識を活かして会計監査を適切に実施します。
内部監査経験者
内部統制の強化やリスク管理、業務プロセスの改善といった「内部監査」の経験者は、その知見を常勤監査役として活かすことができます。
内部監査とは、業務の不正防止や効率化を目的に、企業が任意に設置する内部監査部門によって実施される監査のことです。
常勤監査役に求められる資質では、組織内部に切り込む厳しい視線と全体を俯瞰するセンスが重要です。
内部監査を通じて培われた注意深さや責任感は、業務上で見落とされがちな問題点の発見に役立つでしょう。
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まとめ
常勤監査役は、独立した立場で自社の適法性や健全性を担保することが主な役割です。
業務監査では、取締役の職務に法令違反や不当行為がないかしっかりチェックし、報告する責任を担います。会計監査では、財務書類の内容を精査し、問題点の指摘を求められます。
監査役を設置することで、会社側は不正・法令違反の早期発見と予防、企業の信頼性とイメージ向上などのメリットを得ることができます。


この記事を監修したキャリアアドバイザー

大学卒業後、新卒でMS-Japanに入社。
法律事務所・会計事務所・監査法人・FAS系コンサルティングファーム等の士業領域において事務所側担当として採用支援に従事。その後、事務所側担当兼キャリアアドバイザーとして一気通貫で担当。
会計事務所・監査法人 ・ 法律・特許事務所 ・ コンサルティング ・ 金融 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 税理士科目合格 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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