法務なら当然知ってる?株主総会、業務内容と市場価値
株主総会の対応は総務担当が対応するのが一般的でした。 しかし、最近は法務担当に株主総会の対応経験を求める求人募集が増えてきています。 そこで、法務が知っておくべき、株主総会の業務内容をまとめました。 併せて株主総会経験の求人事例もご紹介しているので、ご参照ください。
企業法務の株主総会対応とは
株主総会は会社の最高意思決定機関として会社法に定められているもので、これを適法に運営することは会社にとって非常に重要です。
株主総会で行われた決議に重大な瑕疵があった場合は、その決議は取り消されます。
その場合、たとえば取締役選任決議が取り消されれば会社を運営する人がいなくなってしまいますし、配当議案が取り消されれば、支払い済みの配当を株主から返してもらわなければならなくなります。
このような事態になれば、会社は大混乱に陥ります。
企業法務の株主総会対応における最大の役割は、株主総会を適法に行い、会社の混乱を防ぐことです。
そのほかにも、株主総会において企業法務が留意しなければならないポイントは以下の様なものがあります。
・株主からの質問に対して会社が説得力のある回答をし、株主からの会社の信頼を高めること。
・取締役会が提出する議案が可決されること。特に安定株主だけで必要な議決権数を確保できていない場合には、可決に大きな努力が必要。
・会社とのトラブルを抱える株主により、株主総会が撹乱されないようにすること。
以上のように、株主総会において企業法務は重要な役割を果たすこととなり、株主総会は企業法務のメイン業務といわれることも多くあります。 株主総会対応の経験者は、企業法務としての転職を有利に進めることもできます。
株主総会対応の具体的な業務
株主総会対応時の企業法務の具体的な業務を見ていきましょう。
スケジュールの策定、会場選び
最初にしなければならないのはスケジュールの策定と会場選びです。
招集通知などの発送期日は法律で定められていますので、間違いなく行えるよう余裕をもったスケジュール作りが必要です。
会場も、出席する株主の数をあらかじめ想定し、全員が入場できる会場を選ばなければなりません。
招集通知の作成発送
招集通知は、非公開会社は1週間前まで、公開会社および書面投票・電子投票を行う非公開会社は2週間前までに発送しなければならないと会社法で定められています。 また、記載事項についても定めがあります。
招集通知が期日までに発送されなかった場合、あるいは記載事項に誤りがある場合には、株主総会の招集に瑕疵があったとみなされ、総会での決議が取り消されることがあります。
また、取り消されないまでも、株主総会の運営に混乱が生じる元となり、会社の信用を低下させることになりかねません。
招集通知の作成と発送に際しては、企業法務による十全なリーガルチェックが欠かせません。
シナリオ・想定問答集の作成
シナリオおよび想定問答集の作成も、法務の重要な役割です。
近年では、個人株主の増加や、株主総会の情報開示と透明性の確保を求めるコーポレートガバナンス・コードの日本取引所グループからの公表、「責任ある機関投資家」を求めるスチュワードシップ・コードの金融庁による策定などがあり、株主総会での株主からの質問は増える傾向にあります。
シナリオや想定問答集をあらかじめ作成しておくことにより、株主に対する適法・適切な回答が可能となります。
リハーサル
リハーサルも必ず行う必要があるでしょう。 質問への対応に実際に時間がどれだけかかるかリハーサルで把握しておくことで、当日の円滑な議事進行が期待できます。
株主総会に関わる法務の求人例
株主総会に関わる法務の求人例を見てみましょう。
法務(管理職候補)/ジャスダック上場企業
【年収】~700万円
【仕事内容】
・株主総会・取締役会などの会議体運営
・契約書の作成・審査・管理
・コンプライアンス関連業務
・社内法務の相談対応
・トラブルや訴訟等の紛争処理
法務スタッフ~管理職候補/東証一部上場企業
【年収】450万円~800万円(経験に応ず)
【仕事内容】
・株主総会対応
・国内・海外の契約検討・審査
・国内・海外の法律問題対応
総務法務(未経験者応相談)/マザーズ上場企業
【年収】420万円~550万円(経験に応ず)
【仕事内容】
・株主総会運営・株主管理・株式実務などの株式関連
・取締役会運営
・規程管理・リスク管理などの内部統制
・契約書作成審査・法務相談・弁護士窓口などの各種法務
IPO準備企業でスキルを磨く
法務としてのスキルを磨くためには、IPO準備企業への転職も有力な選択肢のひとつです。 IPO準備企業では、株式上場までの3年程度の期間の中で、IPO実現のための膨大な業務を行わなければなりません。 限られた人手でさまざまな案件を処理しなければならないため、幅広い知識と経験が身に付きます。
IPO準備企業への転職は、IPO準備経験者が有利です。 しかし、IPO準備企業の求人のすべてが、IPO準備経験必須ではありません。 株式関連の実務経験がある場合には、チャレンジしてみるのもよいでしょう。
まとめ
法務の業務範囲は年々広がっています。その中で、株主総会も法務の業務になりつつあります。 法務求人の多くが上場企業やIPO準備企業に集中していることを考慮すると、株主総会への対応経験の有無は転職の際に評価される要素の一つになります。 株主総会や商事法務、株式事務の経験を積み、法務人材の中で差別化を図ってはいかがでしょうか。
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