公認会計士がM&A業界に転職するには?転職先一覧や必要な経験・スキルなど
財務会計・監査の専門家である公認会計士には、M&A業界で活躍している方が多数います。M&A業界は動くお金・経済に与える影響力が大きく、そのスケール感に魅力を感じている公認会計士の方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、公認会計士がM&A業界で働く場合に求められる経験・スキル、さらに候補となる転職先などについて詳しく解説します。
M&Aとは?
M&A(Mergers and Acquisitions)とは「企業の合併と買収」を意味します。M&Aを行う買い手側にとっては、企業をさらに成長させたり、事業を拡大させたりするのが主な目的です。一方、売り手側にとっては、事業の売却や事業承継など、主に既存事業からの撤退を目的として行います。
近年、M&Aは日本企業において増加しつつあります。2013年当時では日本企業同士で行われるM&Aの件数は2,000件程度でしたが、2023年には約4,000件まで増えています。
増加の要因の1つが、中小企業におけるM&Aの増加です。かつてM&Aは大企業が事業多角化戦略の一環として行うのが通例でしたが、現在では中小規模の企業でも企業成長・新規事業開拓などを目的に実施されています。
そして何より大きいのが、中小企業で深刻化しつつある事業承継の問題です。経営者兼オーナーが高齢となり、後を継いでくれる子どもがいない場合などに、企業自体は存続させるために他社に売却するのです。その場合、買い手側からすればそれはM&Aの実行となりますが、そうした目的で実施されるM&Aが増えつつあります。
M&Aにおける公認会計士の役割・業務内容
M&Aを行うにあたって、その準備のために欠かせない業務がデューデリジェンスです。合併や買収の相手先としてふさわしいかどうかを、M&Aの当事者が行う調査です。
デューデリジェンスには大きく分けて、財務調査と法務調査があり、財務調査では公認会計士も重要な役割を果たします。
デューデリジェンスにおける財務調査(財務デューデリジェンス)では、相手方の企業価値を客観的かつ正確に把握することが最も重要です。過去の業績がどのように推移してきたか、その裏づけも含めた「収益性分析」や、設備投資・運転資本の具体的な分析などを行います。
また、純有利子負債があれば、その具体的内容を正確に把握しておかなければ、M&Aの実施後に思わぬ損害を被る恐れがあります。
係属中の訴訟や、保証債務など、貸借対照表には表れないものの、将来的に負債となりうる潜在リスクも「簿外債務」などとして洗い出しておく必要があります。
こうした財務デューデリジェンスには高い会計分析能力が必要ですので、会計系で最難度の国家資格を保有する公認会計士の力量が求められるのです。
M&A業界に転職したい公認会計士におすすめの転職先
公認会計士としてM&Aに関わることができる職場として、以下が挙げられます。
FAS系コンサルティングファーム
公認会計士がM&Aに関われる職場を探す場合、FAS系コンサルティングファームは最有力となる選択肢です。M&Aアドバイザリー業務の経験、具体的には買収する側もしくはされる側の企業に対する財務デューデリジェンス、バリュエーションなどを積むことができます。
監査法人
監査法人公認会計士の主な業務は財務諸表監査ですが、M&Aに関するアドバイザリーのような非監査業務も仕事内容に含まれます。実際、非監査業務の売上が伸びている監査法人は多く、たとえばBig4では有限責任監査法人トーマツが非監査業務の売上高で他を圧倒し、監査業務よりも非監査業務の方が売上は大きいです。M&Aのような非監査業務が、今や主力事業になっているわけです。
監査法人業界では今後もビジネス拡大に向けて、会計監査以外にも、M&Aアドバイザリーのような非監査業務を増やしていく傾向が続くと見られます。公認会計士にとっては監査法人内での実務経験に幅ができるので、キャリア構築の点からも望ましい動きといえるでしょう。
会計事務所
事務所においても、M&Aアドバイザリー業務は多いです。とくに中小企業をクライアントに多くもつ事務所の場合、事業承継や事業再生を目的としたM&Aに関わる業務が多くなっています。
一般企業
上場企業で働くいわゆるインハウスの公認会計士も近年増えつつあります。この場合、公認会計士に任される主な業務は経理・財務、経営企画、内部監査、内部統制などですが、M&Aや組織再編が頻繁に起こる企業の場合、その仕事を担当するケースも多いです。
M&A仲介会社
M&A業界には、M&A仲介会社と呼ばれる企業があります。その主な業務は、買収する側とされる側の間に入って、両者の言い分を調整しながらM&A案件がスムーズに行われるようにサポートすることです。また、企業が独自にもつ業界内のコネクションや情報網をもとに、買収相手とのマッチングも行っています。
こうした企業においても、M&Aアドバイザリー業務の経験をもつ公認会計士へのニーズは高いです。
金融機関・投資銀行
融資先の企業がM&Aを実施する場合に、そのサポートを行うことがあります。クライアントはメガバンクであれば大手企業、地方銀行であれば中小企業がメインとなります。銀行業務で長年培われたネットワークを活用し、M&Aのマッチングも行います。
M&A業界における公認会計士の働き方
M&A業界で公認会計士が働くことには、以下のメリットがあります。
高収入を得られやすい
M&Aは企業にとって、その命運を決するほどの重要な決断・節目となります。その準備のために経験・スキル・知識を発揮してくれる公認会計士へのニーズは大きく、それだけに報酬額も高いです。
FAS系コンサルティングファームだと、シニアアソシエイトクラスで年収が1,000~1,200万円程度になることもあり、監査法人から転職する公認会計士の方も多数います。
常に新鮮な気持ちで取り組めるので、やりがいをもって働ける
たとえば監査法人の監査業務の場合、その業務の進め方は定型的で、ルーティンワークとなりがちです。一方でM&Aは、多額の資金が動く中、状況適合的に適切なアドバイス・サポートを行う必要があります。責任やプレッシャーが大きい反面、やりがいをもって働くことができ、M&Aを成功裏に終わらせたときの達成感は大きいです。
ワークライフバランス重視の人よりもキャリアアップ重視の人におすすめ
公認会計士がM&A業界で働くと、会計事務所などで働くよりも責任量・業務量ともに多くなりますが、さらなるキャリアアップを目指せる点では大きな利点があります。
財務デューデリジェンスやバリュエーションに関するスキルは、業種・業態を問わず応用できます。経験を積んでいけば、将来的に業界大手の企業の経営企画部や大手監査法人の金融機関などへの転職の道も見えてきます。
M&A業界で公認会計士に必要な経験・スキル
公認会計士がM&A業界で働く場合、求められる経験・スキルとして以下が挙げられます。
M&A関連の知識
M&A業界に転職する際、最低限求められるのがM&Aに関する専門知識と実務経験です。
M&Aの業務では、会計や税務に関する専門知識も必要ですが、それらは外部の会計事務所に任せることも可能です。しかし、外注して得られた情報の中から、どれがその企業にとって重要なのかをピックアップして活用する能力は、M&Aの担当者・アドバイザーが自ら保有する必要があります。
そのため公認会計士がM&A業界で働くなら、情報を分析して活用できるだけの専門知識・経験が求められます。転職活動をする場合は、「外注ではなく雇用しないと得られない能力」をもつことをアピールする必要があります。
交渉力
M&Aでは買収する側とされる側、すなわち買い手と売り手との間での交渉が不可欠です。交渉の場では、買収価格はもちろん、買収後の従業員の待遇のあり方も含めて幅広い議論が行われます。買い手と売り手はそれぞれが利益を最大化しようとするので、スムーズに交渉が進むことは少ないです。それを調整するだけの交渉力が、M&A担当者・アドバイザーに求められます。
こちら側の要望を一方的に伝えるだけでは、議論が平行線となって話し合いはまとまりません。とはいえ、相手側の言い分を聞き過ぎると、自社が不利となります。妥協できる部分については条件を提示した上で受け入れる、妥協できない部分は相手を説得するなど、高度な交渉スキルが求められます。
分析力
M&Aによって自社にどの程度利益が生み出されるのかを計算する、最新・今後の法改正の状況に対応するなど、アドバイザーには高度な分析力が必要です。また、それら分析結果をまとめ、わかりやすく提示・プレゼンできるスキルも不可欠といえます。
対応力
M&Aでは、相手企業のM&Aアドバイザー、自社・相手の取引先、金融機関など、多様なステークホルダー(利害関係者)が関わります。場合によっては意見・利害の対立によって、ステークホルダーとの間にトラブルが生じることもあるので、速やかにそれら問題に対応し、その解決にあたる必要があります。
M&Aを行う場合、当然ながらスケジュールが組まれます。トラブルが生じてスケジュールに遅れが出てしまうと、M&Aに関わる人間の責任とされます。想定外のことが起こっても迅速かつ冷静に対応し、予定通りにM&Aを成功させる力量が求められます。
M&A業界に転職したい公認会計士向けの求人例
弊社MS-Japanは、管理部門と士業に特化した転職エージェント「MS Agent」を提供しています。ここでは、「MS Agent」で取り扱っているM&A業界の求人をご紹介します。
大手金融グループのコンサルファームよりM&Aアドバイザーの求人
仕事内容 |
【業務内容】
・M&Aアドバイザリー業務 ・M&A戦略立案、ビジネスDD、PMI支援、資本政策 ・グループ組織再編コンサルティング |
必要な経験・能力 |
【必要な経験・スキル】
下記よりいずれかのご経験 ・M&Aアドバイザリー等のFAS業務に携わったご経験(3年以上) ・公認会計士、税理士もしくはそれに準ずる経験・知見をお持ちの方 |
想定年収 |
【想定年収】
516万円 ~ 1,250万円 |
大手監査法人にてアドバイザリー担当者を募集
仕事内容 |
【業務内容】
・IFRS・新会計基準への対応コンサルティング ・M&Aに係る会計処理対応、M&A後の財務会計統合(PMI)コンサルティング ・国内外でのIPO、米国ファイリング(F-4等)の財務会計コンサルティング ・決算早期化、管理会計の高度化などのプロセス改善コンサルティング ・RPAやその他の会計ツール導入サポート など |
必要な経験・能力 |
【必要な経験・スキル】
以下のいずれかに当てはまる方 ・国内外の公認会計士資格保有者もしくは科目合格者 ・会計監査業務もしくはアドバイザリー業務経験 ・経理実務経験(資格不問) ・ビジネスレベルの英語力をお持ちの方や、簿記1級など高いポテンシャルをお持ちの方(実務経験・資格不問) ・英語力:TOEIC600点以上 ・MS Office(Word、Excel、PowerPoint)の実務操作スキル |
想定年収 |
【想定年収】
450万円 ~ 1,500万円 |
監査法人のグループ企業/M&Aアドバイザリー
仕事内容 |
【業務内容】
・フィナンシャル・アドバイザリー業務 ・財務DD ・価値評価業務 ・PMI |
必要な経験・能力 |
【必要な経験・スキル】
公認会計士、USCPA 、会計系コンサル経験をお持ちの方 |
想定年収 |
【想定年収】
500万円 ~ 1,200万円 |
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コンサルティングの求人情報
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まとめ
M&Aでは多額の資金が動きます。スケールが大きく、社会経済に与える影響力も大きいので、その点で魅力を感じる公認会計士の方は少なくありません。報酬も大きく、年収アップを図りやすい点も大きなメリットです。
その一方で、責任量・業務量ともに大きく、求められるスキルのレベルは高いです。実際に転職活動を進める場合は、自分が培ってきた経験やスキル、専門知識を整理してまとめ、それを存分にアピールすることが重要になります。
弊社MS-Japanは、M&A業界で活躍する公認会計士の転職実績も豊富です。もし転職を考える場合は、ぜひMS Agentのサービスをご活用ください。
この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、大手信用金庫に入庫。個人・法人営業及びビジネスマッチング等に従事。
MS-Japanに入社後は、横浜支社の立ち上げに加え、経理・人事・法務・経営企画・公認会計士・税理士等、幅広い職種のマッチングに従事。
2021年より東京本社へ異動後は、公認会計士・税理士・弁護士・社労士等の士業を専門とするJ事業部の管理職を務める傍らプレイヤーとしても従事。
会計事務所・監査法人 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 税理士科目合格 ・ USCPA を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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