2023年01月12日

インハウスローヤー(企業内弁護士)への転職のポイント

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法曹を目指した経験があれば多くの方が一度は耳にしたことがあるであろう「インハウスローヤー(企業内弁護士)」。
以前であれば弁護士としての活躍のフィールドは、法律事務所であることがほとんどでしたが、ここ10年程でインハウスローヤーが非常に増えています。
今回はそんなインハウスローヤー(企業内弁護士)への転職のポイントについて触れていきます。

インハウスローヤー(企業内弁護士)とは

インハウスローヤー(企業内弁護士)は、企業の法務部門や戦略部門、役員などとして業務にあたっている弁護士のことを指します。
所属する部署や企業によっても異なりますが、主な業務は契約法務を中心とする企業法務、コンプライアンス関連、知財関連、戦略法務など多岐にわたっています。
司法修習を経てそのまま企業に就職される方も少なからずおられますが、現在のところは法律事務所での勤務を経て、インハウス弁護士に転身されるケースが多くなっています。

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インハウスローヤー(企業内弁護士)の増加の要因


出典:日本組織内弁護士協会(JILA)組織内弁護士の統計データ 上図のようにインハウスローヤー(企業内弁護士)が大きく増えている要因としては、下記のような点が挙げられます。

法曹人口の増加

2004年に法科大学院が開校して以降弁護士の数は一気に増加し、インハウスローヤーの数もこの10年間で4倍以上になりました。その中で女性の割合も大きく伸び(インハウスローヤーの約40%)、個々のキャリアに対する考えも多様化し、従来の法律事務所でパートナーを目指すといったキャリア以外で、当事者としての業務経験やワークライフバランス重視などの選択をされる方が増加しました。

企業の危機管理・情勢の変化

ビジネスのフィールドがよりグローバル化し、海外に拠点を構えたり、多くの海外企業と取引したりすることが当たり前になる中で、各国の法律への対応やカントリーリスクへの対応など、これまで以上にその分野へのニーズが高まっています。
また、テクノロジーの進展や競合の出現により従来のビジネスだけでは勝ち残れないという企業が、新規ビジネスにチャレンジしたり積極的にM&Aを行ったりとする中で、より専門性を持った人材の獲得が必要になっています。
さらに、昨今強く叫ばれているコーポレートガバナンス(企業統治)やコンプライアンス(法令遵守)の観点から、弁護士を採用する企業が増えていることも要因の一つです。

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インハウスローヤーが多い企業ランキング

日本組織内弁護士協会(JILA)の調査によれば、インハウスローヤーが多い企業ランキングTOP20は以下のようになっています。

順位 企業名 インハウスローヤーの人数
1 ヤフー 49人
2 三井住友信託銀行 31人
3 アマゾンジャパン 27人
4 丸紅 26人
5 LINE 25人
6 三井物産 24人
7 野村證券 23人
7 三井住友銀行 23人
9 三菱UFJ銀行 22人
9 三菱商事 22人
11 双日 21人
12 KDDI 20人
13 みずほ証券 18人
14 住友電気工業 17人
15 三菱UFJ信託銀行 16人
15 第一生命保険 16人
17 豊田通商 15人
18 アクセンチュア 14人
18 NTTドコモ 14人
18 シャープ 14人

日本組織内弁護士協会(JILA)「企業内弁護士を多く抱える企業上位20社の推移」

2022年6月時点の情報では、日本国内ではヤフーが1位となっています。同社のインハウスローヤーの数は49人と、2位の三菱住友信託銀行に18人もの差をつけるなど、圧倒的な数値です。
ちなみに同調査によれば、ヤフーは2013年から「1位」もしくは「2位」の成績となっており、2017年から数えて6年連続の首位獲得になります。
ランキングのTOP20全体を見てみると、ランクインしているのは、いずれも日本で有数の大企業です。三菱住友信託銀行などの金融業や、三井物産などの総合商社のランクインが目立ちます。

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インハウスローヤー(企業内弁護士)のメリットとデメリット

各々の価値観、優先順位等によるものですので正解はありませんが、インハウスローヤーのメリットとデメリットについてまとめます。

●メリット

①企業内部の当事者として業務・ビジネスに関われる

何か問題が起こってからではなく、問題が起こる前から検討に関わり、法的観点からのアドバイス・リスク管理ができるというのは企業内部にいるからこその大きな魅力です。また、法務だけでなく企業経営に関わる業務にも携わるチャンスがあります。

②ワークライフバランス

やはり法律事務所、特に企業法務系の法律事務所とは働き方や勤務時間は大きく異なり、改善されることがほとんどです。何か大きな問題やプロジェクト等がない限りは、定時に近い時間帯で帰社出来るようです。
また、コロナウイルスの影響で一気に加速したテレワークについても、法務部門は他部署よりも浸透性が高いように感じられます。

③安定性・福利厚生

会社員となるため自分で営業を掛ける必要はなく、毎月一定の給与がもらえることになり、収入が安定します。定期昇給制度が設けられている場合も多く、長い目で見ても収入面での安定を想定できます。
また、給与以外の部分でも企業によっては住宅手当や家族手当、確定拠出年金、各種社会保険、大型連休制度などが整備されており、安心して就業できる環境であることが多いです。

●デメリット

①自由度・裁量

組織の一員として働くことになるため、法律事務所で個人事業主的に働く場合と比べると、やはり自由度・裁量の観点から少し窮屈に感じられる方もおられます。チームとして何かしたい、他部署とも多く関わりを持ってやりたいといった志向の方であれば特に気にならないかもしれません。

②年収

会社の人事制度に則った賃金テーブルとなるため、やったらやった分だけ給与が上がる訳ではありません。従って、法律事務所や開業弁護士に比べると給与の伸びは緩やかになっています。
ただし、最近は副業可とする企業も少しずつ増えてきており、今後もその流れは広がっていくと思われるため、ご自身で案件を獲得してやっていくことも可能だと思われます。

③キャリアパス

会社内で出世したり希望通りの部署に異動したりするためには、やはり成果を残して評価される必要があります。ただ法律事務所のように売上目標などがある訳ではないため、企業の法務部員にとっては、人事評価につながる成果を残すことは簡単なことではありません。
また、インハウスローヤーが増えてきているとはいえ、日本ではまだ歴史的には浅く社内に多くのポジションが用意されてはいません。日本でも弁護士の方がCLOや役員などに就くケースも増えてきましたが、ごく一部に限られます。どのような成果を出して、どう評価されて、どんなキャリアが可能なのかといったことが描きづらい現状と言えます。

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インハウスローヤーの年収事情について

インハウスローヤーの年収事情が気になっている方も多いでしょう。年収(総支給額)としては、750万円〜1,000万円のレンジがボリュームゾーンとなっています。また1,000万円以上、2,000万円以上の人材もいるため、平均年収は1,000万円を超えるでしょう。
国税庁や各種民間の調査によって異なりますが、日本国内全体の平均年収は、400万円程度とされています。弁護士として働くということもあり、一般的な仕事に比べれば、とても高い水準にあると言えるでしょう。

インハウスローヤーの年収は、「年齢がどれくらいなのか」「弁護士としての実務経験がどれくらいあるのか」など、さまざまな要素によって変わってきます。弁護士経験が5年未満であったり、年齢が30歳未満であったりする場合は、500万円〜750万円のレンジが多くなります。
一方で「弁護士経験20年以上」「45歳以上」などの人材は、年収1,000万はもちろん、年収2,000万や年収3,000万円に達するケースもございます。

また年齢や実務経験だけでなく、「どの業種で働いているか」「どのポジションにいるか」によっても変わります。もちろん業種だけでなく、企業によっても大きく変わりますが、金融業は比較的高めの傾向にあるようです。
ポジションとは、一般従業員や管理職、役員・ジェネラルカウンセルなどを指します。当然、一般従業員よりも管理職や役員などの方が、年収が高い傾向にあります。

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転職のポイント

転職においては職種に関係なく、ご自身の転職理由を明確にしたり、優先順位をつけたり、企業研究をしたりすることが必須になりますが、それとは別にインハウスローヤーを目指すにあたっての転職のポイントについてまとめます。

①なぜインハウスローヤーを希望するのか?

面接で必ず聞かれると言っても過言ではありません。この質問に対する答えを自分なりにしっかりと持ちましょう。これがある程度固まれば、自ずとどういう企業に行きたいのか、どんな業務をやりたいのかなどにつながってきます。

②タイミング

法律事務所から企業への転職の場合、どのような法律事務所でどれくらい経験を積んで来たかにもよりますが、基本的には30代前半までの転職の方が優位に働きます。 30代半ば以降の転職の場合は、これまでのクライアントの業種との親和性や特定分野への専門性の高さ、マネジメントスキルなどをより見られることになります。特に金融系はその傾向が強いです。

③立ち位置・スタンス

インハウスローヤーに期待される役割としては、「専門家」としての〇 ×の判断ではなく、「法務部員」として、どうすればそのプロジェクトやビジネスが進められるのか、ひいては企業の成長につなげられるのかを考え、周りと協力して推進していくことです。当然弁護士として訴訟代理人になったり、取引先との交渉の場に赴いたりすることもありますが、前提をしっかりと理解しましょう。

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インハウスローヤーの求人例

MS-Japanで扱うインハウスローヤーの求人をご紹介します。

ベンチャー企業のグループ会社での弁護士(CLO候補)求人/給与上限1200万円

・企業の特徴:完全週休2日制、急成長のIPO準備企業
・業界:WEB・インターネット全般
・ポジション:弁護士(CLO候補)
・年収:800万円~1,200万円(月収57万円~85万円)
・業務内容: IPO準備をメインに、公開準備のための管理体制の整備などもCFOと常勤監査役予定の弁護士と共にご担当いただきます。法務として社内体制の強化を検討しております。業務内容は、契約書関連、コンプライアンス関連、商事法務や新規ビジネス立ち上げに関する法的リスクまで「攻・守」にわたりご活躍を頂きたいと考えております。

東証プライム上場企業メーカーの法務求人です!

・企業の特徴:フレックスタイム制、リモートワーク可
・業界:製造全般
・ポジション:法務
・年収:700万円~1,200万円(月収42万円~71万円)
・業務内容:コンプライアンス、国内外の係争案件の対応、M&A等、当社グループの企業活動へ法務面で支援する業務。主に、担当案件の調査や分析、交渉。また、契約書等の文書作成、グループ内の法務研修のほかトレーニングの講師も担う。

設立から約30年。売上1000億円のIPO準備企業から、弁護士の求人です。

・企業の特徴:完全週休2日制、人材派遣を中心とした総合人材サービス業
・業界:サービス全般
・ポジション:社内弁護士
・年収:600万円~1,500万円(50万円~125万円)
・業務内容:「国内外のリスクマネジメント、コンプライアンス、ガバナンスに関する業務」「各種プロジェクトの推進」「M&A」「新規事業、新規サービスの立ち上げサポート」「IPO準備業務」「契約書のレビュー(英文契約含む)」など

急成長中経営コンサルファームから弁護士求人です!

・企業の特徴:フレックスタイム制、成果報酬型経営コンサルティング企業
・業界:コンサルティング全般
・ポジション:社内弁護士
・年収:700万円~1,000万円(月収50万円~71万円)
・業務内容:「コンサルティング業務」「契約関連業務(契約書作成・審査・交渉支援)」「新規事業 サービスのリスクチェック」「対外交渉 内部統制 契約書作成」「審査 特許出願」「出願準備 自社のM&A」など

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インハウスローヤーの転職事例

インハウスローヤーの転職事例

MS-Japanでインハウスローヤーに転職成功した事例をご紹介します。

Sさん(35歳女性)

Sさんは35歳女性であり、国内準大手法律事務所から一部上場メーカーに転職しました。当初は情報収集程度の気持ちで転職エージェントに登録しましたが、昔から愛着を持っている企業の求人に偶然出会い、一社限定で応募しています。
Sさんは自分の経験を話すだけでなく、企業をより深く理解することを重視しました。相手からの質問に答えやすくなるだけでなく、自分から質問ができるようになり、見事に内定を獲得しています。

Aさん(40歳男性)

Aさんは40歳男性であり、一般民事系法律事務所からプライム市場企業に転職しています。法律事務所に勤務する中で、一般事業会社の企業法務に携わったことがきっかけとなり、インハウスローヤーを検討するようになりました。
法律事務所でキャリアを歩むかどうか迷いつつも、自身の特性や志向を整理する中で、インハウスローヤーを選択することを決めたようです。40歳での転職活動にはなりましたが、高度かつ専門的な知見を持つ人材として、見事内定を獲得しました。

Sさん(35歳女性)

Sさんは35歳女性であり、上場メーカーから上場グローバルメーカーに転職しています。転職前は、国内企業が主な取引先である、一部上場中堅メーカーに勤務していました。キャリア志向の企業風土もあり、残業が続く中で、ワークライフバランスの充実を求めるようになったそうです。
残業時間や育児に関する休暇など、女性が働きやすい企業に絞って転職活動を開始しました。英語力の高さがアピールポイントとなり、グローバルメーカーからの内定を獲得しています。

Fさん(36歳男性)

Fさんは36歳男性で、法律事務所から上場メーカーに転職しています。大手法律事務所に勤めており、月100時間以上の残業をこなす中で、「家族との時間を大切にしたい」と考えたことが転職のきっかけとなりました。
当初は法律事務所を希望していましたが、ワークライフバランスを実現するのが難しいと判断し、「インハウスローヤーを検討する」方向に変えました。年収は少し低くなってしまいましたが、残業や休日出勤から解放されることが決め手となり、上場メーカーへの転職を決意しました。

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まとめ

これまで述べたものについては、インハウスローヤーの傾向を一般化したものであるため全体像の把握に参考になるものですが、企業規模や業界などによっても多少異なるところがあるため、事前にしっかりと研究し、面接においてもきちんと確認することはとても重要です。
インハウスローヤーの増加傾向は今後も続いていくと思われます。その中でさまざまなポジションが生まれ、インハウスローヤーがより魅力的なキャリアの一つになっていってもらいたいものです。

弊社では、インハウスローヤーを希望する弁護士の転職もサポートしております。
これまで東証プライム上場を含めた大手企業や、新興上場企業、ベンチャー企業など様々なフェーズの企業の転職をサポートしてきた実績があります。弁護士専任のアドバイザーも在籍しておりますため、一般論ではなく具体的なご経験やご希望を基に、より的確なご提案をさせていただきます。

またすぐの転職を希望されていなくても、今後のキャリアに不安や悩みがある方からのご相談も受け付けております。 ご希望の方は、会員登録をお願いします。

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この記事を監修したキャリアアドバイザー

町田 梓

大学卒業後、新卒でMS-Japanへ入社。企業側を支援するリクルーティングアドバイザーとして約6年間IPO準備企業~大手企業まで計1,000社以上をご支援。
女性リクルーティングアドバイザーとして最年少ユニットリーダーを経験の後、2019年には【転職する際相談したいRAランキング】で全社2位獲得。
2021年~キャリアアドバイザーへ異動し、現在はチーフキャリアアドバイザーとして約400名以上ご支援実績がございます。

経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 法律・特許事務所 ・ 役員・その他 ・ 社会保険労務士事務所 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!

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