2021年05月24日

Withコロナ時代の上場準備(対談:KIYOラーニング株式会社・秦野様)

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MS-Japanでは、2020年に上場達成した企業のキーパーソンとのインタビューを通じて、コロナ禍での上場成功の秘訣をシリーズでお伝えします。
今回のゲストは、「世界一『学びやすく、分かりやすく、続けやすい』学習手段を提供する」というビジョンを掲げ、オンライン資格講座などを提供するKIYOラーニング株式会社取締役CFOの秦野氏にお話を伺いました。

Youtubeにて今回のインタビュー動画を公開しておりますこと。
合わせてこちらもご確認ください。
動画のリンク先:https://youtu.be/AD5FDA2QIEI


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ゲスト


KIYOラーニング株式会社 取締役 管理部長
秦野 元秀 様


1967年生まれ。泉証券株式会社(現SMBC日興証券)にて引受業務や金融商品の販売に従事。2001年より(株)イーコンテクストにて経営企画業務及び上場準備を行い2006年に大証ヘラクレス(現JASDAQ)上場を果たしたのち取締役就任。2008年より(株)駅探にて管理部門担当の取締役として、管理部門全般の構築および上場準備を行い、2011年に東証マザーズに上場。その後、資本政策や人事・総務責任者として各種制度構築、ISMS認証取得などに取り組む。2016年より㈱Gunosyにてコーポレート本部・経営管理部長として人事労務・経理・子会社管理・総務及び市場変更プロジェクトに携わり、同社は2017年に東証マザーズから東証一部へ市場変更。 2018年にKIYOラーニング(株)に入社、管理部長として管理体制構築及びIPO準備を推進、同年6月に取締役に就任。

モデレーター


株式会社 MS-Japan常務取締役
藤江 眞之


2006年4月 当社入社
2013年11月 執行役員経営管理室長
2015年6月 取締役経営管理部長
2017年4月 取締役経営管理本部長兼経営企画グループ長
2019年4月 取締役経営管理本部長兼経営企画室長
2019年6月 常務取締役経営管理本部長兼経営企画室長
2020年7月 常務取締役メディア事業本部長 兼 経営企画室長(現任)

KIYOラーニング株式会社が展開するサービス

——秦野様は日本で3社上場、1社市場変更というIPO業界の方からすると先生のような存在です。上場を必ず達成する会社を見極めるポイントというのはありますでしょうか?

秦野様:いや、決して自分が上場させたというわけではなく、社長や会社の業績、業態、地位など色々なものが組み合わさって上場しました。色々経験しましたが、社長の強い想いやお人柄などが大きく、自分とマッチする人がたまたまそういう熱い想いを持たれていたというところで、熱い思いを分け与えて頂いたという認識ですね。

——確かにトップの人や現場の方とのパートナーシップが上場準備には欠かせない作業だなと思います。まず初めに、KIYOラーニング株式会社様の事業や会社についてのご紹介をお願いします。


秦野様:社長が2008年に創業して、そこから2010年に会社となりました。KIYOラーニングのKIYOは社長の綾部貴淑の"きよ"から取っておりまして、想いとしてはウォルトディズニー様やブリヂストン様のように名前から取った会社は大きくなっているところが多いというところで、本人の熱い想いが込められています。
「学びを革新し誰もが持っている無限の力を引き出す」というミッションと、「世界一『学びやすく、分かりやすく、続けやすい』学習手段を提供する」というビジョンを達成するために日々頑張っているところでございます。
サービスは、主に2つです。1つは、『スタディング』というサービスで、個人向けです。主に、難関資格を対象として弁護士の司法試験や中小企業診断士のような個人の資格、総じて士業の資格を取るためのオンライン資格講座です。明らかに違うのは、学校に通うものではなく、パソコン・スマートフォン・タブレットを使用して自分のペースで勉強が可能で、試験日程に合わせたカリキュラムを設定することが出来ることから、非常に多くの方にご利用頂いております。問題集や質問も、オンラインで完結するのでそこが良いサービスかなと思っています。現在、27種類の講座があります。
もう1つは、エアコースというサービスで、BtoB向けのサービスです。主に社員研修や社内のノウハウの伝授という場面でご利用頂いており、163コース見放題です。例えば、MBAやコンプライアンス、階層別研修など幅広く受講が可能です。

——スタディングは、「資格を勉強する方は予備校に通う」という世界観をまさに変えていらっしゃいますね。

秦野様:昨年と比べて2倍近く伸び率ですし、コロナという環境下も勉強の仕方を見直すきっかけになったと思います。ライフタイムバリューという考え方で、「自分の価値をどう活かすのか」ということに力を入れた結果、オンラインに決めギアチェンジした結果、年々受講者が増えており、ここ2〜3年は急増しています。

——エアコースは、リモートワークや学習手段の導入を検討している企業にとってはまさしくぴったりで、弊社でも導入させて頂いているのですが、営業メンバーもこれを見れば仕事のことを覚えられるので、非常に役立っています。

秦野様:ありがとうございます。私も過去に社員研修をやっていたのですが、出席者をどう確保するのか、成果のテストはどうやるのか、会場はどうするのか、大手の研修会社の場合は講師に誰を選ぶのか、という様々な手間がかかって大変でした。そういった時にエアコースを見て非常に感銘を受けました。出欠管理や履歴の管理もできるし、そういった意味で管理部門の中でも特に人事部門の研修業務を見た時に一気に楽に出来るサービスだと思っています。

——IPO後は、インサイダー研修も全社員で受けないといけないですよね。

秦野様:そうですね。過去の会社では中途入社の社員がいる度にインサイダー研修を行っていたのですが、当社はインサイダー研修を録画して社内のエアコースに載せることも実施しています。一定期日までに見てもらうという管理も出来るので、いざという時にちゃんと研修をしていたというデータも出せるので非常に安心ですね。

マザーズ上場の目的

——ここからはIPOについて深くお伺いしていきます。まず初めに、KIYOラーニング株式会社様は2020年7月に上場されましたが、その目的からお伺い出来ますでしょうか。

秦野様:上場準備自体、非常に長い期間かかるものですが、会社としてかなり業績が伸びてきていました。ただ、KIYOラーニング株式会社という会社の知名度は低く、資格を取ろうとすると伝統的に実績のある通学型の講座を受ける方が多かったです。その中で、ビジネスモデルとしてはオンラインということで時代にマッチしてきていましたし、我々としては自信を持っていました。
しかし、知名度や採用の部分で、「KIYOラーニングって何?」「怪しくないか」のような情報がオンラインだけだと出てしまい、その点ではマスコミを使ったプレゼンや社長の知名度を一気に上げていき、結果的に業績を拡大させるための資金石として上場しようとなりました。大きな意味で言うと、資金の調達、知名度向上、それに合わせた採用の強化がしやすくなるようにという点で上場しました。

上場前後で変わった点

——確かに御社のファイナンスや株式情報見るようになりましたね。上場前と上場後で変わった点もお伺い出来ますか。

秦野様:これをご覧になる方は上場前の方が多いかと思いますが、僕自身、「上場とは何か」と聞かれた時は「定期的な会社の健康診断」と答えています。何度かIPO経験をさせて頂いた中で、上場前と上場後で大きく違う点は、上場後は3ヶ月ごとに決算をして公表をしないといけないという点です。単に自分達で締めて公表するだけでなく、監査法人や税理士のチェックを経て、数字を固めた上で、世の中に公表して株主さんや投資家の方に説明をする義務が生じます。業績の結果によっては、株価が変動し、大きな損を被る可能性もあります。このように、長いマラソンを3ヶ月ごとにずっとやり続けるというのが、上場前と上場後で大きく違いますし、結果が株価や時価総額という形で自分達に返ってくるのが、上場後は大きく違い点だと思います。
良い点は、3ヶ月ごとに決算のプロや税理士さんからチェックを受けるということは、良くも悪くも会社が健康診断を受けるということになります。何かおかしな不正の予兆があるかどうかや、自分達の業績の推移を確認することができます。
我々で言うと有料会員はどうなっているのか、売上に相当する物はどうなっているのか、経費の使い方はどうだったのか、などを3ヶ月に一回見直すことが出来ます。そのため、会社としては非常に健康体ですし、悪い何かが見つかればすぐに対処が出来るので、結果的に長い目で見ることができる会社になれると思います。

——健康診断っていう話は、私もIPO周りについて色々回らせてもらっていましたが初めてお伺いしましたね。

秦野様:そうですよね。開示ルールって複雑ですがそれぞれにちゃんと理由があって、それが毎年更新されていくわけですよね。ルールは厳しいですが、そういうところで自分達の状況に気付けるものになっていると思います。上場前は会社法のみで良かったところ、上場後は会社法、金商法、東京証券取引所規則とそれぞれに別の書類を作らなければならず、それぞれに意味があって、延々と作り続ける大変さと、それによって見つかってくる良さや悪さがあると思っています。

——私も昨年6月まで管理部門の方で役員をやっていたのですが、今はメディア事業部の方にいて、事業サイドとしては3か月おきに受ける健康診断があると、いつまでに何をやるかの計画を明確に立てやすくなりますよね。

秦野様:そうですね。予算の立て方も毎回同じように3ヶ月ごとに立てていきますし、管理部門でも採用スケジュールを立て、常に予測して計画していくので、年末に何か埋め合わせれば良いとはならないので、上場したことによるプラスは大きいと思っています。

上場準備を進める中での注意点

——次に、上場準備を進める中での注意点を教えてもらえますか。

秦野様:過去色々な収益モデルの会社で上場してきましたが、一番大切なことは「何が何でもスケジュール通り上場しきる」ということです。
例えば、2013年に上場すると決めたのであれば、絶対にそのポイントをずらさないということです。これは、もちろん売上や他の要因もありますが、それも含めて、特に管理部門の方々は、そこまでに決められていることを明確に動くことが大切です。ちょっと管理部門の体制が整わないから一年延ばしたり、マーケットの環境が良くないから一年延ばしたりと、人為的にコントロールできることにおいて予定をずらすのは絶対にうまくいかないと思います。
去年のコロナのような状況下や、以前私が経験したのは上場1週間後に東日本大地震が起きてしまいました。コロナや災害など、一生懸命やってもずれてしまうこともあると思います。対外的な要素でずれてしまうのは仕方ないと思いますが、自分達が決めたスケジュールを自分達が延ばした時に、永遠にゴールテープが先に行ってしまい、「永遠の上場準備企業」になってしまいます。そういった会社は、恐らく上場できないかなと思います。
逆にそこでできなかったら諦めるということも大切です。上場にはすごくお金がかかってしまうので、そのお金を別のところに使うという選択も必要になってくるかなと思います。とにかく、なりふり構わず一回決めた目標の日付をずらさないというのが一番大きな上場する際のポイントかなと思います。

——確かにおっしゃる通りですね。東証から要求される是正方法について、社内で納得できない時とかもありますよね。そこに対して、社内で工夫している時に、それをやると上場が延びてしまうという状況になった場合、経営サイドとしてどう判断するのか。従って是正するのか、そうでない決断をするのか、大事ですよね。

秦野様:そうですね。ここまででも分かるように、とにかく上場準備は面倒くさいんですよね。また、すごくお金がかかります。ざっと見積もっただけでも、監査法人へ1000万〜2000万円、経理の人を採用したり、証券会社のコンサル費用もかかったり、2年半〜3年で1億円では収まらないです。それだけの費用がかかるなら他のことに使いたいという社長さんもいらっしゃると思いますので、1億円使ってしまって結局ズルズルいってしまうということよりも、1億円使うので3年間で走り切るということをきちんと決めることの方が大事かと思います。

規定や制度設計する上で工夫した点

——本当におっしゃる通りですね。続いては、人事や運用周りの部分についてお伺いします。就業規則や制度設計をしていかなければいけませんが、御社が独自に工夫された点などがあれば教えてください。

秦野様:どの会社においても規則や設計はあると思いますが、今までの手慣れで作ることが多いと思います。その点で、我々は専門家に全て見てもらっていました。自分達の就業規則のおかしい部分がないか、場合によっては気付かずに労基法違反している可能性もあるので、見てもらいました。
上場していなければあまり問題にもなりませんが、上場していて問題が発覚すると、東証や証券会社から法律違反と言われてしまいます。そのため、社労士の先生などに見てもらったり、証券会社から内部監査規定をもらったり、監査法人から経理規定をもらったりと、まず専門家の方から書類を集めることをしました。ネットに転がっているのは危なっかしいので、やめましたね(笑)制度設計においては、「規定に沿って運用されているか」のみ大事になります。そのため、その規定が正しいかどうかが一番大事になってきます。規定を変えると社内の運用が変わるので、今までやらなかったことをやるようになったり、社内で反発が起きたりします。
これは、どこでも必ず起きることだと思いますが、そこを管理部門が呼吸をするようにうまくルールを浸透させるのが大切で、いきなり証券会社から要求されたルールを1〜10まで浸透させるのは無理なので、段階的に浸透させていくべきです。その際に一番大切なのは、上場を目指していて、ルールを守らなければ上場できないということを明確にして社員に伝えなければなりません。ルールが浸透することでより会社もより良い環境になるということ、上場ができるということを管理部門の人は社員へすり込んでいく必要があります。
私が最初に行ったのは、勤怠です。よくExcelで管理している会社がありますが、上場するにあたり基本的にはアウトです。そこで私がKIYOラーニングに来てからは、ICカードで勤怠管理が出来るシステムを導入しました。決して高いものではないので是非導入して頂きたいと思います。

——IPOの終盤になってつまずくケースの大半は、勤怠や給与未払いですよね。

秦野様:おっしゃる通りですね。未払いは、2年以上遡って請求されますので、残業の未払いがあるだけでアウトになってしまいます。上場準備の3年間の間できちんと整理することと、少なくともそういったことがない体制を作っていくことが大切になりますね。総じて、労務管理ですね。後になると時間が足りなくなってしまうところなので、最初に着手すべきかと思います。

コロナ禍の上場準備

——それでは次に、コロナ禍での上場準備において、何か今までのIPOと変わったフローはありますか。

秦野様:過去のIPOの経験と比較して、まず、東証の上場審査がリモートになりました。1回目は一度お会いしてご挨拶をしたのですが、それ以降はオンラインの画面を見ながらでもなく、アナログな電話で行いました。セキュリティの問題もあり、お互い同じ書類を見ながら電話にて審査を進めました。深いツッコミをしにくかったかもしれないですが、逆にお互いに事前に資料を読んでおくことで理解が深まったのは良かったです。
ただ、電話の会議は非常に体力を使います。そういったところで、東証も大変でしたでしょうし、我々も非常に大きな変化でした。
もう一つは、以前のIPOでは、上場の審査資料を大きなファイルで、議事録一式、規定一式、役員会資料一式の3つで1セットの3セット作りました。自社用、東証提出用、主幹事証券用の3セットなのですが、今回は、オンラインでこちらからPDFでアップロードする形だったので、印刷業務や冊子のズレがないかの確認業務がなかったのは非常に良かったです。東証の日々の進化を感じました。

n-2、n-1、n期の管理部門の組織変化

——それでは次に、管理部門の組織についてお伺いできればと思います。上場の申請期をnとして、n-1を直前期、n-2が直前々期と言いますが、それぞれの期での管理部門の組織変化について教えてください。

秦野様:KIYOラーニングの2017年末時点での管理部門は非常に小さく、役員含めて3名で、経理1名、総務1名の体制でやっていました。正直2名で回しており、ファミリー経営に近い形でした。
直前々期にあたる2018年末から本格的に上場準備を開始し、私を含めて4名の体制になりました。私以外には経理が2名、総務が1名でした。直前期にあたる2019年末には5名体制になり、私と、経理が2名、総務が1名、人事総務系の派遣社員が1名でした。
上場後の2020年末には、6名体制になり、私以外に経理3名、総務2名となりました。そういった形で、未上場の頃の管理部門は雑用全般をやるイメージがあると思いますが、東証の審査の中では、今後必ず管理部門を強化してくださいと言われています。万が一、経理の方が入院して決算ができなかったり、総務の方が入院して入社ができなかったりといった事態が起きてしまってはいけないので、そこはかなり東証からコミットを求められました。今後は、強化をする中でMS-Japanを頼らせて頂きたいと思っています(笑)

——すみません。宣伝して頂きまして、ありがとうございます!
実際に管理部門を採用していく際、業務の割り振りが難しいと思うのですが、今お話頂いたメンバーの方々にはどのような業務を割り振られたのでしょうか。

秦野様:基本的には、経理の2名には、財務と経理を分けるように言われていたので、そこで分けました。仕訳をする業務を担う経理とお金を扱って送金する財務を分けないと何でもできてしまうんですよね。お金を送金しておいて、経費に計上することや、経費に計上しておいてお金を抜くことも出来てしまいます。そういった意味で、財務と経理は上場準備の過程の中で分けていきました。
総務と人事の方も、まだ小さいのですが、給与計算の業務においては、人の給与の評価を見てしまうので、経理と一緒ではまずいです。総務の業務においても、会社の備品を買うなど、会社の資産を使う人が経理と一緒だと勝手に物を買ってしまう可能性もあり、まずいです。我々は全ての支払いや契約はワークフローを使用しています。ワークフローの承認を得たものを、総務が発注するとしても、事前に承認を得て、請求書が来たものをチェックして経理が払うというようなフローを構築して、役割分担をしています。 経理と総務の役割分担もそうですし、経理の中でもお金を払う人と処理する人を分け、それらを統括的に役員や上司がチェックするというフローが上場準備には求められますので、それなりに人がいないと役割分担が出来なくなってしまいます。
周辺には会計士や顧問弁護士、顧問社労士もいますので、我々のような小さな会社ですと社内で全て抱えきれないこともありますので、そういった場合には外部の親しい先生方に当社に合った契約書や契約書のチェックをお願いしております。全部自前で行うのはなかなか厳しいので、そこの役割分担は経理と総務、人事、それらをチェック出来る体制としての上司や専門家がいることが一番大事だと思います。

管理部門で採用しておきたかった人材

——管理部門の人材採用において、こういう人材を採用して良かったなということや、こういう人材を採用しておけば良かったなということがあれば教えてください。

秦野様:今、上場準備をするのが厳しくなっています。それは、上場準備を始める時点で、上場企業と同じことをできるかが問われるためです。決算短信が作れるか、有価証券報告書を作れるか、会社法に沿った招集通知を出せるか、などです。ただ、未上場での経理と、金商法や会社法、東証で必要となる法律は全く違うんですね。
そうなると1番のポイントは、決算短信のような開示書類を作れる人を予め採用しておくこと、さらには、上場会社で経理の統括経験がある人を採用しておくことが絶対条件になります。かなり大変なのですが、これらができないとそもそも上場申請に入れないこともあります。そのため、予めできる人を採用しておくことが最重要事項かなと思います。

——当社の場合は若手の会計士が未経験から行いましたが、会計士もありかもしれないですね。

秦野様:会計士良いと思いますね。会計士であれば、金商法や会社法のルールについてしっかり理解していると思いますので、必ずしも上場会社の経験が無かったとしても、充分に知識や経験が通用すると思います。会計士は非常に難関資格ですので、中々来てくれるかは分からないですが、そういった方と一緒にやっていかないと監査法人と会話ができなくなります。監査法人と会話が出来ないと証券資料の作成が出来なくなります。まさに、会計士や経験の長い方を採用していくのが非常に重要かなと思います。
もう一点、経理以外で言うと、私自身も名刺を英語で書くとCFOになるのですが、ファイナンスの専門家で、株式市場や資金調達の専門家にあたる人は私個人の経験や意見では、緊急で要らないと考えています。 上場後には、もちろんいた方が良いのですが、実は上場準備は、議事録の作成や規定作成、労務管理、資産管理などあらゆる管理の契約書を作成する管理業務がメインになります。これらは、CFOのFの知識はほとんど不要で、きっちり業務を行える方というのが大切だと思っています。時価総額や株価についてのファイナンスの話は、上場準備において最後の最後です。カレンダーで言うと、クリスマス終わってお正月を迎えるまでの間というイメージです。その時期になってくると、証券会社のプロが株価の査定や類似会社との比較など、全部計算してくれますので、そこは彼らに任せてしまっても良いと思います。
最後はプロが付いてくれますので、Fの部分に力を入れるというよりは、管理を出来る方や会計士の資格を持つ方、上場会社の開示経験がある方などの採用に力を入れた方が良いと思います。

——おっしゃる通りですね。確かに審査において、ファイナンスのスキル要らないですね。

秦野様:全く要らないですね。ご経験があればできることもたくさんあります。

今後の事業計画・採用方針

——ここまでたくさんのお話をお伺いさせて頂きましたが、今後のKIYOラーニング様がどのようなビジョンを持って事業を進められていくのかについて教えてください。

秦野様:IR資料にもありますが、現在はスタディングとエアコースという2つのサービスがあります。今後の事業の拡大としてはグローバル事業も視野に入れており、それぞれの事業を伸ばしていきたいと考えております。
まず、スタディングにおきましては、まだまだ我々が続けるべきことがあります。現在27ラインナップありますが、もっと数を増やして縦軸を深くしていき、さらには横軸としては、英語や習熟できるスキルを広くしていきたいと考えております。
次にエアコースについては、顧客基盤の強化を目標としており、たくさんのプラットフォームを作成するために、当社のコンテンツを作成し、多くの方にサービスをご利用頂くことでサービスのブラッシュアップをして、需要拡大していきたいと考えております。

——ありがとうございます。また、今回は求職者の方も見ていると思いますので、KIYOラーニング様の今後の採用方針についてもお話頂ければと思います。

秦野様:当社はまだ上場して1年経ちませんが、今後ステークホルダーが増えていくと思います。社員もそうですし、株主の皆様、投資家の皆様もそうだと思います。そのためにまず、我々は管理部門のバックヤードをしっかり作っていきたいと思っております。さらに連結を増やしていくための経理の方の採用、経営企画や数年後には新卒採用も考えて採用予算を増やしていきたいと思っております。

——最後に秦野様より今後上場を目指す会社様へメッセージをお願い致します。

秦野様:決して上から目線ではなく、たまたま上場できただけなwので、皆様の努力を否定するわけではないですが、新聞を見ると頻繁に新規上場の記事を見ます。簡単に上場出来るのではないかと錯覚したり、逆に焦ってしまったりすることもあると思います。
しかし、上場を目指している会社はすごくたくさんあり、その中で新聞に載れる会社は一握りだと思います。運も含めて、会社の業績、社員のモチベーション、モラル、監査法人の先生が就いてくれるかどうか、税理士がいるかどうかなど、色々なものが合わさって最後の最後にぽっと火がつくものだと思っています。 諦めずにしっかりやり続けること、最初にも申し上げましたがスケジュールをしっかりと守り切ること、そして走り切るということをやって頂ければ、上場できるのではないかと思いますので、ぜひ頑張って頂ければと思います。

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