Withコロナ時代の上場準備(対談:株式会社カラダノート・平岡様)
MS-Japanでは、2020年に上場達成した企業のキーパーソンとのインタビューを通じて、コロナ禍での上場成功の秘訣をシリーズでお伝えします。
今回のゲストは、「家族の健康を考え笑顔をふやす」をミッションとして、『ママびより』『陣痛きたかも』『ステップ離乳食』等の家族の入り口であるママへ向けてのサービスを始め、家族全体の健康を考えるヘルステック企業である株式会社カラダノート。今回は同社取締役CFOの平岡氏にお話を伺いました。
Youtubeにて今回のインタビュー動画を公開しておりますこと。
合わせてこちらもご確認ください。
動画のリンク先:https://youtu.be/ojrBscTyiBc
ゲスト
平岡晃
株式会社カラダノート 取締役CFO
2010年3月 関西大学大学院会計研究科卒業
2010年4月 株式会社日立製作所入社
2013年8月 BCホールディングス株式会社入社
2015年7月 株式会社ミクシィ入社
2017年2月 株式会社カラダノート入社コーポレート部長就任
2018年7月 株式会社カラダノート取締役コーポレート本部長就任(現任)
モデレーター
株式会社 MS-Japan 取締役
山本 拓
2010年2月 あずさ監査法人(現有限責任あずさ監査法人)入所
2013年9月 当社入社
2015年4月 経営管理部経理財務ユニットマネージャー
2019年4月 経営管理本部管理グループマネージャー
2020年4月 経営管理本部管理部長
2020年6月 取締役経営管理本部管理部長
2020年7月 取締役経営管理本部長 (現任)
株式会社カラダノートが展開するサービス
——家族向けに多角的にサービスを展開しているカラダノート様ですが、御社のご紹介をお願いできますでしょうか?
平岡様:弊社の主な事業は、ファミリー向けにマーケティング支援を行なっています。主なターゲットであるママとシニア層へ向けて、アプリケーションの提供とユーザー様へのタッチポイントを作りながら、我々との接点を作って頂きつつ、その時期のユーザー様にあったレコメンドを出し、そこでマーケティング支援をしています。
——まさに個人のライフスタイルに沿ったサービスを展開されていると。
平岡様:そうですね。マーケティング支援はもちろん、元々弊社は、パーソナルヘルスレコードという健康記録サービスが発端で、元々アナログ・紙でそういう記録されていたものを、デバイスやタブレットを介して記録を追いつかせていきたいというのがあります。シニア向けや産前産後のママさんに対しての記録ツールの提供を主に行っています。
——健康管理のアプリや、お薬飲もうというアプリ、また出産された方向けのアプリなど様々なサービスを展開されていますね。
平岡様:ニーズとしても非常に高くて、シニア層向けの血圧とかお薬のアプリもランキング1位ですし、ママ向けも8割くらいは弊社のアプリを使ってくださっているので、何かしらユーザーとの接点が大きいかなと。
上場準備をするうえで工夫したこと
——改めて、そういった事業を展開されながら2020年に東証マザーズへ上場されましたが、この点についていくつか質問をさせてください。上場準備を進める上で、人員の増加や今までなかったような制度を設計するなど色々テコ入れをしていかないといけなかったと思いますが、御社独自で工夫された点などはありますか?
平岡様:今でも30人超えるくらいの小規模企業ではあるのですが、私が入社した2017年で17-18名くらいの会社で、当時から人に対して考える組織的な文化はあったなと思っています。会社の組織図もそうですが、評価制度も完璧なものを作るのは難しいので、半年に一回くらいテコ入れしながら今の状態まできています。
——半年に1回のペースで変えられてるんですか!?
平岡様:そうですね。大きく変更したところでいうと、私が入った時は全社員裁量労働制で、そもそも法的に裁量の設定が難しいとは思うのですが、今では全員フレックス制度に移行しています。弊社はママさんも多いので、働き方という意味合いで言うと、正社員だけでなく短時間正社員も雇用形態として導入していて、色んな方に働いてもらいやすい環境作りをしています。
また、しっかりと社員を評価するのも成長促進のためには非常に重要なことかと思っています。私が入社した頃は360℃評価という皆さん仲間内で評価していた文化でしたが、上席の権限が曖昧になってしまう懸念があったので、責任と権限を明確にしていくためにも、グレード制に移行しながら少人数な中でも責任持った立場で色々やってもらえるような体制作りをしてきたのがこの4年間です。
——やはり上場準備をするにあたって、人の働き方とか評価制度の整備はスピード感をもって進めていきましたか?
平岡様:そうですね。元々そういう組織文化というのもありますが、スピード感を持って会社を成長させていくためには、形にこだわるよりもその時点で最適と思えるようなものにしていこうというのが社長含めた方針なので、結構見直しの頻度は高いかなと思います。
上場準備中の管理部門の体制
——ありがとうございます。非常に興味深い話ですね。 これまで制度について伺ってきて、その中で人員が増えたという話があったと思います。創業から上場準備を始めるまでに大体18年。そこから上場準備を始めて今では30名半ばほどの社員の方がいると思うのですが、どういう方を採用し、管理部門の体制構築をしていきましたか?
平岡様:上場準備の中で採用したのは事業サイドの人員でした。管理部門としては、元々私が入った時は女性が1名で、私が入って2名でした。管理部門には、もっと人数が欲しいというのはもちろんありましたが、会社の方針として生産性を高くやっていきたかったので、上場準備も2名で始めて、準備途中に1名採用させてもらい、最終的には3名でした。
——本当に最低限の人員でというイメージですよね?
平岡様:そうですね。それぞれの負担はこの期間は大きかったなと思います。
——そうですよね。まさに皆さんがイメージしていらっしゃる上場準備の大変さなのかなと思うのですが、この3人の三角形は財務と経理を分離するために1人採用したという感じですか?
平岡様:そうですね。一番初めに、期首残高調査をすると思うのですが、当然、その体制が整っていないということを監査法人から指摘がありました。「早く採用しろ」というプレッシャーももちろんありましたが、我々としては会社のビジョンに合った人を採用したいというところで、時間がかかってしまいましたね。
——最低限の人員で上場準備を進める中で負荷的に一番重かったのはどの時ですか?
平岡様:やはり証券審査が始まった時は一番負荷が重かったですね。なぜかと言いますと、質問が来る量が多くて、なおかつ質問に回答する期限もかなり短くて、それを3-4回こなさないといけなかったのが一番負荷的に重かったですね。
——そうなると、今の体制では財務経理が分かれてはいると思いますが、それ以外は全部平岡さんが回しているのでしょうか?
平岡様:そうですね。2人に振れないものは基本的に全部自分で吸収してやるしかないなと心に決めてやってました(笑)
コロナ禍特有の課題
——コロナ禍で色々制限が加わったり、審査の過程で何か変化が発生したりと様々な論点が考えられるかと思いますが、御社はコロナ禍特有の論点や審査の過程で問題になったことは何かございましたか?
平岡様:コロナ禍で申し上げると、弊社のビジネスモデルが広告のマーケティング支援を行っている関係もあるので、コロナ初期の2020年4.5月はかなり業績が悪かったというのが事実です。そうなると我々が上場したのはマザーズなので、"成長性"にフォーカスが当たる部分が正直あり、コロナ禍を超えたときに「本当に業績が戻ってくるのか」「今後回復する見込みはあるのか」というところは証券会社並びに東証からも言われたところですね。あと、上場時に今後の業績に関する見通しを開示しないといけないのですが、それをどのように開示するかは会社の中でもかなり議論しながら数字を決めていきましたね。
——事業計画は、元々、ある程度KPIを抑えながら設定していくと思うのですが、コロナ禍だとなかなか不透明ですよね。それこそかなり保守的に見積もっていくように指摘を受けましたか?
平岡様:そうですね。実現可能性がある数字という意味で保守的にならざるを得ない部分はありましたね。
——ただでさえ業績予測について指摘を受けることが多いですよね。その辺はやはりこれから上場準備をされる方は、予め見通しを立てて計画していった方が良いかもしれないですね。
平岡様:そうですね。自分の中で特に意識していたのは、何か一時的に発生した時にプラスでもマイナスでも、すぐに修正できるような体制を作っておくことが重要なのではないかと思っています。
——なるほど。何か起きた時にってことですよね。上場準備の観点で主幹事の審査や東証の審査、またその過程で色々な当局とのやり取りがあったと思いますが、その過程で何かあがった論点など話せることはありますでしょうか?
平岡様:証券審査で一番記憶にあるのは、法務的なご指摘を頂いたところです。
具体的には、弊社は少人数で、私が管理部の部長でありながら法務も兼務していたのですが、私はバックグラウンドが法務ではないので、会社としてリーガル的な側面で本当に事前にリスクを予知して体制や仕組み作りが出来るのかということを指摘されました。当然私自身としてはできるように動いていたものの、中々それを証明するのが難しかったです。
セカンドオピニオン的なかたちで、外部の弁護士事務所に入っていただき、個人情報保護と下請け法の2つの観点から指摘をいただきました。個人情報保護の観点では元々我々でも温度感を高く見ていたので、リーガル的なリスクはほとんどなかった一方、逆に下請法という観点がかなり抜けており、法律面で定められた必要書類の準備がその時点においてはできていませんでした。そこを証券審査の中で指摘されたため、法務人材の採用ときちんとワークフローに乗せるような仕組み作りを急ピッチでやらないといけませんでした。これはコロナ禍での影響ではないですけど、本当にやらなければいけないところでした。
東証の審査で言うと、今の話と共通する部分もありますが、個人情報の管理という点で、問い合わせの対応だけでなく、風評被害に対する会社として対応を、どのように把握して対応していくのかをかなり深く確認されました。この辺はトレンド的な新しい論点になりつつあるのではないかなと思います。
——最小限の管理部門を構成して、上場準備をしようとしている方にとって有益な情報なのかなと思います。まず皆さん、財経分離が頭にあって、とりあえずそれ以外は自分が出来ればやってしまおうという発想になりがちですが、御社は当時、法務専任人材はいなかったので、法務リスクの洗い出しやエデュケーションリスクへの対応を指摘され、そこの体制を整えるようにしていったということですよね。
平岡様:そうですね。全くできていなかったわけではないですが、さらに良くするというところと、上場はその後の方が長いので、その後きちんと会社として回していけるような仕組み作りをするよう言われましたね。
——非常に重要な点ですね。平岡様が優秀な方なので自分でやってしまおうとなってしまうと思いますが、やはりそこはしっかり線引きした体制整えてってことですよね。
平岡様:そうですね。流石に法務まわりは私じゃ対応できないですね(笑)
今後の事業展開や採用計画について
——ここからは御社の今後の事業展開やビジョン、それにあたってどのような方に参画いただきたいかという採用計画についてお伺いしたいと思います。
平岡様:今後の会社の方向性としては、まず、現在我々が展開している事業の中で大きな部分を占めるのが、ユーザー向けのアナログを電子化して効率良くしていくというユーザー向けのDX支援と、主な収益の柱となっている企業とユーザーのマッチング支援があります。そして、今後大きくやっていきたいことで申し上げますと、我々がマーケティング支援させて頂く中でユーザー様とコミュニケーションを取っていると、各段階でユーザー様がお申し込みする過程でコミュニケーションロスが発生していたり、もっと業務フローを改善できるのではないかと感じる部分があったりしたので、我々もサービス提供側にも入っていこうと思っております。
家族向けのサービスを提供して、産業のDXも力を入れていきたいなと思っています。ユーザー様向けのDXと業務向けのDX、それらを併せたマッチングの支援を我々としては注力していきたいと思っています。
採用については、我々は基本的にバンバン採用していくような会社ではないので、我々のビジョンに共感して頂いて、成長意欲の高い方はぜひ今後ジョインして頂けたらと思います。
ただ、管理部門は絶賛募集中です!
経営企画と管理部のポジションでそれぞれ1名ずつ増員を考えていますので、ぜひMS-Japanさんにご協力頂きたいなと考えています。
——もちろんでございます!お力添えさせて頂きます!
それでは最後に、今後上場を目指す会社の方々、もしくは御社にジョインしたいと考えている方に向けてメッセージお願いします。
平岡様:上場を目指している会社様に対して一言申し上げさせて頂くと、上場は難しそうなイメージがあると思いますが、上場準備という観点で言うと結構やることが決まっています。ただ、それが期限的にタイトで、事業の成長を阻害させないように準備していくという点でバランスを取るのが難しいとは思いますが、そんなに上場準備自体に対しては難しいと捉えないで欲しいなと思います。色々な会社がどんどん上場していくことは日本の経済にとっても良いと思いますので、たくさんの会社が上場して一緒に色々な悩みを共有出来るとありがたいなと思っています。
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