2023年03月17日

税理士から公認会計士にキャリアチェンジするべきか?業務や年収の違いは?

管理部門・士業の転職

現行法においては、公認会計士であれば日本税理士連合会に申請をして税理士登録を行うことで、「自動付与」の制度により税理士試験を受けずに税理士としての活動を行えます。
しかし、税理士の場合、自動付与によって公認会計士資格は得られません。
会計士として活動する場合、公認会計士試験に合格して資格を取得する必要があります。
この記事では、税理士と公認会計士の違いを紹介し、税理士から公認会計士を目指すべきなのかについて解説しましょう。

税理士から公認会計士へキャリアチェンジしたい方は多い?

税理士である程度の実績を上げてから、公認会計士への転職を目指すケースは多いとは言えません。MS-Japanの転職事例の中でも、かなり稀なケースです。その理由としては、大きく二つが考えられます。

まず、税理士から公認会計士を目指すためには、あらためて公認会計士の資格取得に向けた準備をする必要があります。しかも、試験で税理士資格により免除される科目はほんの一部です。
税理士資格を得る場合にも、長期間勉強して税理士試験に合格し、一定の実務を経験しなければなりません。その上で、さらに同じような苦労を繰り返して公認会計士を目指すことは、チャレンジ精神が旺盛な人でも難しいでしょう。

もう一つの理由は、税理士の高齢化問題と関わりがあります。現在税理士の平均年齢は60歳前後であり、40代でも若手と見なされる状況です。
ここから見えてくるのは、1度税理士としてキャリアを形成した場合、そのまま持続的に税理士のキャリアを重ねるケースが多いことです。

さらに、現在税理士試験の受験者年齢も高くなっており、最も多い年齢層は41歳以上です。また、合格者数でも30代以上が過半数を占めることから、新たに税理士というキャリアをスタートさせる年齢層が、全体的に高くなっていることがわかります。
つまり、税理士になってからある程度の経験を積むころには、転職が難しい年齢に達してしまうのです。それなら、あえて公認会計士への転職を目指すよりも、税理士としてのキャリアを充実させることを選択するでしょう。

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税理士から公認会計士へのキャリアチェンジを希望する理由

税理士が公認会計士へとキャリアチェンジを希望する理由の一つが、税理士資格に対する将来的な「不安」です。
たとえば現在、税務におけるIT化・RPA(Robotic Process Automation)化が急速に進展しつつあり、以前は税理士が行っていた税務申告業務や仕訳業務が、企業の経理担当者によって会計ソフトで簡単に行えるようになりつつあります。
そのため、税理士に税務をわざわざ依頼する必要はなくなり、今までよりも報酬が減少していくことが考えられるのです。さらに、税務に関する情報もネットですぐに調べることができるため、税理士に頼らなくても、必要な知識を得やすくなっています。

さらに、中小規模の税理士事務所の多くが、中小・零細企業を顧客としていますが、近年ではオーナー経営者が引退して廃業するケースや製造拠点を国外に移転する企業も増えており、地域によっては顧客獲得をめぐって税理士事務所の競争が激しくなってきているのが実情です。
このようなことから、税理士の将来性に不安を感じ、仕事の幅を広げようと公認会計士へとキャリアチェンジしようとする税理士がいるのです。

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税理士と公認会計士の違い

では、具体的に税理士と公認会計士との間にはどのような違いがあるのか、資格取得、業務内容、年収などに注目してご紹介しましょう。

資格取得の違い

税理士資格を取得するには、税理士試験に合格する必要があるほか、関連分野における実務経験が2年以上必要です。
受験資格は「大学、短大、高等専門学校を卒業し、法律および経済学の科目を1科目以上取得している者」、「大学3年時以上で、法律および経済学の科目を一定数取得している者」、「司法試験に合格している者」、「公認会計士試験短答式試験の合格者(平成18年度以降に限る)」、「日商簿記1級合格者」のいずれかを満たしている必要があります。
受験科目は、必修科目の簿記論と財務諸表論、選択必修科目(1科目以上を選択)の所得税法と法人税法、選択科目の相続税法、事業税、住民法、固定資産税、消費税法、酒税法、国税徴収法のうち、5科目を選択して合格しなければなりません(合格率は各科目約10%、科目合格制度あり)。

一方、公認会計士資格は、公認会計士試験に合格した後、3年以上の業務補助に従事し、一定期間の実務補習を受けて修了考査に合格することで取得できます。
試験は年齢や学歴に関係なく誰でも受験できますが、必須科目として財務会計論、管理会計論、監査論、起業法、租税法、選択科目として経営学、経済学、民法・統計学から1科目を選択して受験し、合格しなければなりません。
試験はマークシートによる短答式と論文試験とがあり、全科目同時合格が必要で、出題範囲は広範囲にわたります。

独占業務の違い

税理士の場合、業務の中心は税務であり、各種税務署類を作成すること、法人や個人事業主の確定申告に関する税務相談を行うのがメインです。
一方、公認会計士の場合、上場企業を対象とする監査証明やコンサルティング業務が中心となり、経営上の財務相談や決算書の作成業務、財務関連の調査や立案、あるいは監査人として財務書類が正しく作成されているのかを証明する業務などを行います。

年収の違い

厚生労働省が毎年発表している「賃金構造基本調査」では「税理士・公認会計士」と両者を含めての賃金状況が報告されており、2017年の「公認会計士、税理士」の平均年収は「1,044万円」となっています。
公認会計士は大企業との取り引きが多いため、総じて公認会計士の方が税理士よりも年収は多い傾向にあると言えそうです。

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公認会計士になるためには

ここで、公認会計士の資格を取得する流れを解説しておきましょう。公認会計士になるためには、以下に挙げるように二つのステップを踏む必要があります。

① 公認会計士試験の合格

公認会計士試験には、「短答式試験(年2回)」と「論文式試験(年1回)」とがあり、この二つを順番に受けて合格しなければなりません。
短答式試験はマークシート方式で、総点数の70%以上で合格します。論文式試験は記述式で、総点数の52%以上が合格基準です。

短答式試験に合格すれば、論文式試験に不合格になっても、2年間以内であれば短答式試験免除で、論文式試験を受験することができます。
税理士資格を保有している場合、一部科目免除(財務会計論)となりますが、受験科目はかなり幅広いため、準備期間に相当な量の勉強時間が必要です。一般的には1年半から2年間の学習期間が必要と言われています。

②公認会計士としての登録

公認会計士試験に合格すると、次に登録要件を満たした上で公認会計士として登録される必要があります。通常は合格後に、監査法人に就職するのが最も有利です。
会計事務所や一般企業に就職した場合には、就職先が特定の条件を満たす必要があるからです。

登録のためには、まず監査法人などに就職して3年間以上の「業務補助」を経験します。同時に週1~2回実務補習所に通い「実務補習」を受けます。そこで必要な単位を取得し、最後に修了試験に合格すれば、晴れて公認会計士として登録されるのです。

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公認会計士の就職先

公認会計士試験に合格した場合、そのほとんどは監査法人に就職します。ただし現在は公認会計士にとって売り手市場であり、監査法人以外でも人材ニーズが高まっています。
それらを含めて、主な公認会計士の就職先をまとめてみましょう。

監査法人

公認会計士の専門分野は監査業務であり、企業の財務諸表をチェックして適性かどうかを評価できるのは、公認会計士の独占業務です。国内監査法人にはBig4をはじめとした大手監査法人と、それに続く準大手、そして中小監査法人があります。規模の違いが収入に直結するとは言えず、主に業務内容が異なると考えた方がよいでしょう。

事業会社のCFO・経理・財務職・経営企画

財務に関する知識やノウハウが豊富な公認会計士は、事業会社で経理・財務を担当するケースもあります。その中で実績を積み能力が認められれば、直接経営企画に携わったり、CFO(最高財務責任者)のポジションに抜擢されたりすることもあります。

内部監査

監査法人ではなく一般企業に就職した上で、その企業を内部から監査する業務は「内部統制監査」と呼ばれます。企業のコンプライアンスやガバナンスが重視される中で、今後広がりが期待される業務です。

コンサルティングファーム

企業の経営管理全般にアドバイスを行うのがコンサルティングファームです。特に公認会計士は、会計・財務分野のコンサルティングで活躍しています。

会計事務所

組織から離れて独立する場合は、会計事務所を開くことが一般的です。また小規模な会計事務所で、専門的な業務を担当してキャリアアップをはかるという選択肢もあります。

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公認会計士の求人事例

MS-Japanで扱っている公認会計士求人をご紹介します。

監査法人

大手監査法人 監査職(マネージャー~シニアマネージャー)
年収800万円~年収1,300万円
業務内容
監査業務
(法定監査業務 ・財務諸表監査・内部統制監査・IFRS関連業務)
・金融機関向け監査業務 (国内・外資銀行、証券会社等)
・パブリック業務
・IPO (株式公開)業務

会計事務所

大手~準大手会計事務所 経営企画担当
年収600万円~年収1,200万円
業務内容
1)国際会計ネットワーク関連業務
①ネットワーク本部との日常的な各種連絡業務(英語が必要)
②事務所の国際化、国際業務拡大のため、ネットワークの有効活用をはかるための社内でのPR活動
③同ネットワークの教育・研修マテリアルの事務所内有効活用
④同ネットワークの各種内部統制ルールに準拠するための社内業務フロー・ルールの整備

2)事務所の次世代に備えた活動
①全社規定の再整備
②事業承継のための財団の設立・運営
③会計事務所、法律事務所、コンサルティングファーム等で参考とすべき経営管理手法調査、展開
④他社のビジネスモデルの分析、ファインチューニングに向けた提言

3)全社事業計画の策定
 ・社内の各種課題(人・ビジネスモデルなど)に対する調査検証、改善案立案、現場を巻き込んだ施策の実行

コンサルティングファーム

中小・ブティックコンサルティングファーム
年収800万円~年収1,500万円
業務内容
・デューデリジェンス
・バリュエーション
・会計コンサルティング(決算早期化、管理会計他)
・IPOコンサルティング 等

事業会社の経理担当

東証プライム上場企業 建築・不動産業界 経理・経営企画、計画スタッフ
年収800万円~年収1,500万円
業務内容
・経営計画業務
・予算、実績計画対比業務
・IR計画の見直し業務
・税務業務全般統括
・マネジメント、メンバー管理

事業会社のCFO

IPO準備中企業 医療・福祉業界 CFO候補
年収900万円~年収1,500万
業務内容
・内部体制の構築~整備
・証券会社、監査法人対応
・財務会計、税務会計、管理会計
・経営戦略/財務戦略/組織戦略/事業戦略策定
・中期経営計画の策定
・予算立案および管理、予算実績差異分析等
・業務フロー整備、構築 ・規定関係整備構築、改定 等

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税理士から公認会計士は目指すべきか?

税理士から公認会計士は目指すべきか?

税理士よりも公認会計士の方が、年収や従事できる業務の幅広さという点では魅力的であるかもしれません。
ただ、最も重要なのは、自分自身のやりたいことや適性です。
地域社会を支える一員として、中小規模の商店や個人事業主の経営・税務を支えたいと考えているならば、税理士資格でも十分その役割を果たせるでしょう。

一方、上場企業を対象に、経理・財務、あるいは監査を行いたいのであれば、公認会計士資格は必須です。
自分にとって望ましい仕事は何かをしっかりと考えた上で、キャリアチェンジを目指すべきかどうか考えることが重要でしょう。

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まとめ

税理士から公認会計士を目指す場合、資格試験の合格を目指す必要があるため、かなりの労力が必要なのは間違いありません。
働きながらの勉強はもちろん大変ですが、やはり重要なのは、「自分がどのような将来像を持っているか」という点です。
「公認会計士としてどのような仕事をしたいのか」について明確なビジョンがあるなら、長時間の学習も、自分の知識・スキルを高めるための重要な機会と思えるでしょう。
キャリアチェンジを考える場合、まずは自分自身の将来像を第一に考えることが大切です。

この記事を監修したキャリアアドバイザー

篠原 義樹

大学卒業後、不動産会社にて個人向けの営業を経験。その後MS-Japanへ入社。会計事務所・コンサルティングファーム・監査法人・法律事務所・社会保険労務士事務所等の法人側担当として採用支援に従事。現在はキャリアアドバイザーも兼務し一気通貫で担当しております。

会計事務所・監査法人 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 税理士科目合格 ・ USCPA を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!

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