司法書士の転職【徹底解説】未経験でもOK?司法書士からの転職先は?
司法書士、もしくは司法書士事務所での勤務経験者が、企業法務として転職するケースが増えているようです。
司法書士試験は科目が広範囲にわたるため暗記の量が多く、合格するには高い記憶力と問題処理能力が求められます。合格者は法律の取り扱いに関する知識・経験が深い人材と判断され、採用に意欲を示す企業も少なくありません。
この記事では、司法書士・司法書士事務所勤務経験者が、企業法務として転職活動をスムーズに進める方法をご紹介します。
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目次
- 法務の求人情報を確認したい方はコチラ
- 未経験でも司法書士になれる?
- 司法書士試験とは
- 試験合格後は司法書士事務所への就職が多い
- 司法書士の転職先は「企業法務」が人気
- 司法書士の転職先企業の選び方
- 司法書士が企業法務に目指す際の注意点
- 司法書士の転職には転職エージェントがおすすめ
- 司法書士の求人例
- まとめ
未経験でも司法書士になれる?
未経験でも司法書士にはなれますが、例年合格者が4~5%といわれる難易度の高い試験に合格する必要があります。司法書士試験は年齢や学歴など関係なく、誰でも受験ができる試験です。試験合格者は司法書士会に入り、研修を受講して実務のノウハウを身につけます。例年12月から翌年3月にかけて開催される新人研修を受講した後、日本司法書士連合会の司法書士名簿に登録し、司法書士として活動を開始します。
司法書士は扱える業務範囲に制限があり、簡裁訴訟代理等関係業務は認められていません。そこで業務範囲を広げるなら、簡裁訴訟代理等関係業務が認められる認定司法書士を目指す必要があります。特別研修を受講し、簡裁訴訟代理等能力認定考査に合格すると、晴れて認定司法書士として活動できます。
日本司法書士連合会の調べでは、全国にいる司法書士の会員数は23,059人ですが、うち78%にあたる18,027人が認定司法書士です(2023年4月1日時点)。扱える業務範囲が広がるので、司法書士から認定司法書士を目指す人が増えています。簡裁訴訟代理等関係業務が付与されたのは、2002年の司法書士法の改正以降です。
司法書士試験を受験しなくとも、指定官職に10年または5年以上従事する者は、法務大臣の認定を受ければ司法書士になれます。裁判所事務官・法務事務官・検察事務官・裁判所書記官は10年以上、簡易裁判所判事・簡易裁判所副検事は5年以上従事していることが条件です。特定のキャリアを積んだ人のみが選択できる方法のため、司法書士を目指すなら試験を受ける方法が一般的です。
【参照】
日本司法書士会連合会
司法書士試験とは
司法書士試験は、法務省が実施する国家試験です。誰でも受験でき、受験料は8,000円かかります(令和5年時点)。筆記試験は例年7月に行われ、合格者のみ10月に開催される口述試験の受験資格を得ます。受験する者は、5月半ばの期日までに申込が必要です。合格発表は10月下旬から11月上旬にかけて行われます。以下に司法書士試験の出題科目・合格率・必要な勉強時間の目安を紹介します。
出題科目
司法書士試験は全11科目が出題され、出題数が多い主要科目は民法・商法・会社法・不動産登記法・商業登記法です。主要科目は全53問出題され、全科目計210点のうち配点が159点と全体の約7割以上を占めます。出題数が少ない科目は、民事訴訟法・憲法・刑法・供託法・司法書士法・民事執行法・民事保全法で全17問です。配点は51点で、全体の約2割にあたります。出題数が多く、配点が高い主要科目に力を入れることが合格への近道です。
合格率
司法書士試験の合格率は例年4~5%で推移しています。令和4年度は出願者数15,693人、受験者数12,727人で、うち合格者数は660人です。筆記試験は280点満点中216.5点以上獲得した者が合格しました。ただし、午前の部の試験は105点満点中81点以上、午後の部の多肢択一式問題は105点満点中75点以上、記述式問題は70点満点中35点以上を獲得しなかった者は不合格となりました。受験者の平均年齢は40.65歳で、最低年齢は20歳、最高年齢は71歳と幅広い世代が受験しています。
合格に必要な勉強時間目安
司法書士試験は出題範囲が広く、全11科目の勉強が必要です。合格まで必要な勉強時間の目安は3,000時間で、1年後の合格を目指すなら最低でも1日8時間の勉強時間を確保しなくてはなりません。個人差があるためもっと少ない勉強時間で合格できる人もいますが、余裕をもって勉強を始めるべきです。
【参照】
令和4年度司法書士試験の最終結果について
試験合格後は司法書士事務所への就職が多い
司法書士として活動するなら、司法書士事務所への就職が一般的です。独立開業を目指す人も、まずは司法書士として経験を積み、実績を残して自信をつけてからチャレンジする傾向にあります。司法書士事務所の規模によって業務範囲が異なるので注意が必要です。自身にとって外せない条件を絞り込んだうえで、就職活動を始めることをおすすめします。司法試験合格後に新人研修を受けた司法書士事務所に就職するケースも少なくありません。
他にも、司法書士を雇用する法律事務所や、税理士など他の士業と一緒に業務に従事する合同事務所が働き口として挙げられます。また、法律の知識を必要とする一般企業の法務部や不動産業界に就職する人もいます。
就職活動を始めるタイミングは、試験合格後・新人研修中・研修終了後とさまざまです。研修終了後にすぐに働きたい場合は、試験合格後や新人研修中から活動を始めます。特に、人気がある司法書士事務所は募集を早期に終了するケースもあり、活動開始時期には注意が必要です。司法書士試験に合格したタイミングで方向性を決めておくと慌てずに済みます。
司法書士の転職先は「企業法務」が人気
司法書士事務所で勤務経験を積んだ人の転職先として人気なのは企業法務です。日本組織内司法書士協会の調べでは組織内司法書士60人のうち、法務専門部門で働く司法書士が26人、法務を含む管理部門で働く司法書士が15人でした。組織で活躍する司法書士のうち、法律にかかわる現場に勤める司法書士が7割近くを占めました。組織で働く司法書士の多くが、専門性を生かせる企業法務に従事しています。なぜ企業法務が働き口として人気を集めているのか、その理由を解説します。
ワークライフバランスが整う
司法書士事務所で働く場合は、仕事の納期はクライアント次第で、残業や休日出勤が発生するケースが少なくありません。特に、規模の小さな事務所であれば、対応できる司法書士が限られているので、仕事のペースをコントロールしづらい点がデメリットとして挙げられます。その点、企業法務なら組織で働くため、勤務時間が決まっていて、労働時間が短くなる傾向があります。実際に、日本組織内司法書士協会の調べでは、現在の組織で勤務する理由として勤務時間の短さを挙げている人が15人と全体の25%を占めました(回答者60人)。
企業規模によっては年収が上がる
企業に勤める司法書士は、安定した収入を得られる傾向にあります。企業の規模によっては昇給制度や賞与、福利厚生が充実しており、年収が上がるケースも珍しくありません。司法書士会員3,181人を対象とした第2回司法書士全国調査によると、全体の80.4%にあたる2,557人が開業司法書士であり、売上金額(収入)に対する回答で最も多かったのは1,000~4,999万円で35.0%、次いで200~499万円で10.2%を占めました。
事務所の経営者のため、高額な収入を得る人が多い結果となりました。同調査において経営者でない司法書士は624人であり、年収については300〜400万円未満との回答が最多です。
一方で、日本組織内司法書士協会の調べでは、組織内司法書士の年収は750~1,000万円との回答が最も多く、32.8%を占めました。次いで500~750万円が27.6%を占めており、全体の60.4%が500万円以上の年収を得ている結果となりました。この結果を見ると、企業法務に従事する司法書士は年収が高い傾向にあると分かります。
幅広い業務の経験を積める
司法書士事務所で働く場合と比べると、組織内で働く司法書士はさまざまな経験を積めます。日本組織内司法書士協会の調査によると、組織内で働く司法書士の60人のうち、業務のやりがいを働く理由として挙げた人が29人と最も多く、48.3%に上りました。そのほか、自由裁量が高いといった意見や、登記以外にも幅広く職域を広げたいなどの意見が上がっています。枠にとどまらず幅広く経験を積めることが、企業法務が人気の理由です。
【参照】
組織内司法書士の活躍できる職種
司法書士白書 2021年版
組織内司法書士の労働条件(収入)
司法書士の転職先企業の選び方
司法書士や司法書士事務所での勤務経験者の転職先としては、法律の知識を活用できる場所、専門知識を生かせる法務部のある企業をおすすめします。また、自分が過去にどのような業務に携わってきたのかを考慮して働き口を探してください。
過去に対応したクライアントの業種から転職先を選ぶのもひとつの方法です。自分が業務内容を想像しやすい業種を選ぶと、転職後のギャップを減らせます。複数の同業他社の事情を把握していれば、仕事の流れをつかみやすくなります。
また、法務部を立ち上げたばかりの企業で働く場合には注意が必要です。新しい部署のスタートアップを任せられるため、企業法務で働いた経験がないと大抵は務まりません。司法書士事務所と一般企業の業務範囲は異なるので、司法書士として働くときに求められるスキルでは不十分です。
司法書士事務所での勤務経験しかない場合、今までの業務経験に加え、リーダーシップやマネジメントなど、組織において役立つスキルをアピールすることが重要です。同じ法律に携わる職種ですが、働く環境が違うことを考慮して転職活動を進める必要があります。
司法書士の転職先として多いのは、不動産業界・金融業界・債権回収事業などが挙げられます。どのような業務を担当するのか詳しく解説します。
不動産業界
不動産の所有権移転登記の申請や抹消の手続き、契約書の法務確認を行います。不動産売買の登記は司法書士が独占的に業務を行う分野のため、司法書士を採用する企業は少なくありません。
金融業界
個人が住宅ローンを組むときの抵当権の設定登録手続きや、事業用に融資された担保として根抵当権の設定登記手続きを行います。そのほかに住宅ローンなどの契約書の法務確認や、謄本処理、相続関連業務など、活躍の場は多岐にわたります。
債権回収事業
司法書士が代理人となり未払金を回収します。具体的には、家賃や商品代金、工事代金などの支払いが滞ったときに相手に連絡し催告書を送付します。また、内容証明便で督促し、支払われない場合は通常訴訟、強制執行手続きまで担当するので専門知識が必要です。企業は滞納があっても売上に計上する必要があり、課税対象のため額が大きいほど損失になります。経営上のリスクを低減させる目的で、企業が司法書士を雇用する場合があります。
司法書士が企業法務に目指す際の注意点
司法書士が企業法務を目指すときに知っておくべき留意点を紹介します。転職を成功させるには以下の点を踏まえて、効率的な転職活動を行う必要があります。
「企業内司法書士」として雇いたい企業は少ない
企業内司法書士として雇用するには一般社員よりも良い待遇を提示しなければならず、積極的に雇用する企業は少ない状態です。また、司法書士は活躍できる業界が限られています。コネクションがない状態で、転職先を一から探すのは至難の業です。
法務求人自体が少ない
企業内司法書士の求人は少なく、雇用条件が良いことから応募者が殺到する傾向があります。中小企業でも募集しているケースがありますが、大半は大手企業が募集しています。狭き門を突破するには、司法書士としてのスキルに加え、企業法務や人を束ねた経験が必要です。
法律資格としては弁護士が優位
法律の専門家である弁護士と競合するとなると、司法書士資格を持っているとはいえ採用される可能性が低くなります。弁護士と競合するリスクも踏まえて、自身の条件に合う転職先を探す必要があります。
司法書士の転職には転職エージェントがおすすめ
司法書士が一般企業に転職する場合、企業法務の求人数はかなり少ないため、なかなか採用までこぎ着けない可能性があります。大手企業での司法書士の募集は例年1人前後で、企業法務の経験者が優位に立ちます。法務を始めとした管理部門でも募集がありますが、募集人数の少なさに対して転職希望者がとても多い傾向です。倍率は求人にもよりますが、50~100倍前後になるケースも珍しくありません。競争が激化しているので、特別な経験やスキルがないと狭き門を突破するのは難しくなります。
ただ、特別なスキルがないからと諦めるのは早く、競合の少ない求人に応募する方法があります。応募者が殺到するため、転職サイトへの求人掲載を避ける企業も少なくありません。採用活動が困難になるのを見越して、非公開求人で採用活動を進める企業は増えています。
非公開求人で採用活動を進める企業にアプローチするには、転職エージェントの利用をおすすめします。条件にマッチする企業と司法書士をつなぐ転職エージェントを利用すれば、一般公開していない求人ともめぐり合うチャンスが増えます。
司法書士の求人例
ここでは、司法書士の求人情報を一部紹介します。どのような求人情報があるのか、応募する際の参考材料にしてください。
準大手会計事務所において司法書士の募集です
正社員の求人で、フィナンシャルソリューション部で管理する、SPCに関する登記をメインとした仕事です。企業を相手にした業務で、フロント部隊からの申請書に基づいて登記業務を行います。英語案件もあるため、英文契約書の読み込みができるような語学力があると業務の幅が広がります。
必要資格や能力は、司法書士資格、商業登記経験あるいはストラクチャード・ファイナンスに関する業務経験、社会人経験5年以上です。想定年収は450~790万円で、想定月収は20~66万円となります。年1回の賞与があります。
外資系大手のローファーム東京オフィスで司法書士を募集
業務委託の司法書士を募集しており、パートナー弁護士とチームを組み、会社等設立・株主総会・登記事務・取締役会等コーポレート事務などの経験を積みます。徐々に幅広い案件をこなせるように、スキルアップを目指します。
必要な資格や能力は、司法書士資格や行政書士資格です。外資系大手企業のため、語学力が求められます。想定年収は300~800万円で、想定月収は25~67万円です。
都内でも急成長中の司法書士法人より資格者を募集します。
正社員で不動産登記をメインに行う司法書士を募集しています。不動産登記業務が9割で、業務の一部分を分業するなど、効率的に作業できる環境が整えられています。実務に携わる前に、司法書士業務の知識研修やビジネス研修を2カ月間受講します。
必要な資格は司法書士資格で、語学力は求められません。想定年収は402~600万円で、想定月収は27~40万円です。
法務の求人情報を確認したい方はコチラ
法務の求人情報
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サイト上で公開されている求人はごく一部です。そのほかの求人情報は会員登録することでご確認いただけます。
まとめ
司法書士の資格取得者や、司法書士事務所での勤務経験者は、司法書士事務所や企業法務など活躍できる場が多くあります。受験資格がないので誰でも目指せる職業ですが、合格率は低く、高難度の受験を突破しなければなりません。
試験合格後はまず経験を積むために、司法書士事務所へ就職するのが一般的です。その後、年収や勤務体系を改善するために企業法務へ転職する人もいます。企業法務で働く場合、司法書士資格を持っていれば優位に立てるイメージがありますが、競争が激しく求人倍率も高いので注意が必要です。スムーズに転職できない可能性があるので、競合が多い求人は避けて、非公開求人を扱う転職エージェントに頼ってみませんか。
この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、新卒でMS-Japanに入社。
法律事務所・会計事務所・監査法人・FAS系コンサルティングファーム等の士業領域において事務所側担当として採用支援に従事。その後、事務所側担当兼キャリアアドバイザーとして一気通貫で担当。
会計事務所・監査法人 ・ 法律・特許事務所 ・ コンサルティング ・ 金融 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 税理士科目合格 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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