経理の業務委託とは?働き方やメリット・デメリット、必要なスキルなど
経理のフリーランスとして独立を目指す場合、業務委託という働き方があります。近年では、効率性や人的コストの面から、経理業務を外部に委託する企業が少なくありません。
需要が高まっている業務委託とは、具体的にどのような働き方なのでしょうか。
ここでは、経理の業務委託としての働き方について、メリット・デメリット、求められるスキルなども含めて解説します。
そもそも業務委託とは
業務委託とは、事業主と雇用契約を結ばず、委託された仕事の結果に対して報酬が支払われる働き方です。
主にフリーランスで多く見られる契約形態ですが、法的には「業務委託契約」という名称は存在せず、「請負契約」と「委任・準委任契約」の2つを総称して「業務委託契約」と呼ばれています。
請負契約は、労働にかかる時間や過程などを問わず、完成した成果物を納品することで報酬が発生する契約です。
一方、委任・準委任契約は、成果物ではなく業務の遂行自体が報酬の対象となります。
また、業務委託とは別に、派遣会社が他の企業に労働者を派遣する「派遣契約」という働き方も普及しています。
それぞれの違いを整理すると、以下のとおりです。
請負契約 | 委任・準委任契約 | 派遣契約 | |
---|---|---|---|
契約形態 | 業務委託契約 | 業務委託契約 | 雇用契約 |
雇用主 | なし | なし | 派遣会社 |
求められるもの | 成果物 | 業務の遂行 | 労働力 |
指揮命令 | 不可 | 不可 | 可 |
勤務時間 | 制約なし | 制約なし | 制約あり |
労働の対価 | 報酬 | 報酬 | 給与 |
業務委託できる経理業務
では、実際にどのような経理業務が委託できるのでしょうか。
定期的な会計処理
具体的な例として、まず定期的な会計処理が挙げられます。
会計ソフトウェアを活用してデータ入力や整理を行い、委託元企業のお金の動きを管理する業務です。
これには勘定科目の記帳や仕訳の作成、月次・四半期・年次の決算業務、給与計算、社会保険料の計算・申告が含まれます。
具体的には、給与明細の作成、源泉徴収税の計算、社会保険料の支払い手続きなどが該当します。
請求書や支払い処理など
さらに、請求書や支払い処理などの財務業務も委託できます。
売上請求書の発行や入金管理、仕入れ請求書の処理、支払い管理、資金繰り分析などがその一環です。
これらの業務は、正確さとタイムリーな処理が求められますが、外部委託することで効率性が向上します。
一方で、常駐が求められる業務や判断を必要とする業務は、経理の範囲であっても業務委託ができません。
また、現金を直接扱う業務や機密性の高い業務も、セキュリティ上のリスクとコンプライアンスの観点から、外部への委託は不可です。
近年、経理の業務委託の需要が高まっている背景には、IT技術の発展があります。
クラウド会計ソフトウェアやセキュリティシステムの進化により、外部に委託した場合の安全性が確保しやすくなりました。
コスト削減や業務効率化を図りたい企業にとって、安心して経理業務を外部に委託できる環境が整ってきたのです。
業務委託で働くメリット
経理の業務委託として働く上で、メリットとデメリットを把握しておくことは大切です。
まずは、主なメリットに着目してみます。
自分のペースで働ける
経理業務は細かな数字の取り扱いや複雑な帳簿管理など、個々のスキルによって作業ペースが異なります。
業務委託として働く最大のメリットは、得意分野を活かしつつ、自分のペースに合わせて仕事に取り組めることです。
会社からの指示や勤務時間に縛られることなく、自らスケジュール管理を行い、柔軟に働くことができます。
また、特定の業務に精通している場合は、効率的に処理できるため、時間の節約にもなるでしょう。
条件に合わない案件を受ける必要もないため、自分の目指す経理に集中できる点も大きなメリットです。
仕事とプライベートが両立しやすい
自分の時間を柔軟に管理できるということは、仕事とプライベートの両立においても有益です。 家庭の都合に合わせて仕事を調整できるため、ワークライフバランスを保ちやすくなります。
特に育児や介護の必要がある場合に、スケジュールを調整しやすいことは業務委託ならではのメリットです。 仕事に集中しつつも家族や趣味に充てる時間を確保することで、生活の質の向上につながるでしょう。
実力次第で高収入を得られる
スキルや実績に応じて高い報酬を得やすいことも、業務委託として働く魅力です。
経理業務は専門的なスキルと知識が求められるため、その能力が高ければ高いほど、より高単価で仕事を請け負うことが可能です。
委託元からの評価が高ければ、案件の単価を交渉するアドバンテージになります。
また、営業やマーケティングにも力を入れ、委託元を複数獲得することで収入を伸ばすこともできるでしょう。
自らの裁量によって収入アップが目指せるため、モチベーションを保ちながら仕事に向き合えます。
業務委託で働くデメリット
続いて、気になるデメリットを見てみましょう。
労働基準法が適用されない
業務委託の経理として働くデメリットの一つは、労働基準法が適用されないことです。
従業員として雇用される場合とは異なり、業務委託契約は法的には独立した事業者としての取引と見なされます。
そのため、労働基準法に基づく雇用保険や福利厚生などの社会的な保護が受けられません。
保険の加入や確定申告などを個人で対応する必要があります。
収入が安定しない可能性がある
もう一つのデメリットは、収入面での不安定性です。
経理の業務委託は企業の決算前や会計業務の繁忙期に集中することがあり、年間を通じて常に安定した需要があるとは限りません。
委託元からの案件が途切れたり、契約が更新されなかったりすると、収入が途絶えるリスクもあります。
経済的に不安定な状況が続いた場合、日常生活への影響は少なくないでしょう。
契約や手続きを自ら行う必要がある
仕事の契約や事務的な手続きを自ら行う必要があることも難点と言えます。
個人事業主として契約を結ぶ場合、契約内容の確認や交渉も含めて、法的に適正な契約書を作成しなければなりません。
また、仕事量の調整やスケジュール管理、保険の手続きなど、事務的な負担も自ら負う必要があります。
このような雑務が重なると、本来の経理の仕事に集中できず、貴重な時間を取られることにもなるでしょう。
経理の業務委託を受けるために必要なスキルとは?
経理として業務委託を受けるためには、どのようなスキルが必要なのでしょうか。
以下に、主なスキルを取り上げてみます。
会計の専門知識と実務経験
経理業務では、日々の取引処理から月次・年次決算までの一連の作業を正確に遂行できる専門知識が欠かせません。
例えば、日商簿記2級以上の資格を持つことで、会計の専門知識を有している証明となります。
業務委託を受けるためには、知識だけでなく実際に経理業務に携わった実務経験も問われます。
業務を効率良くこなし、問題が生じても柔軟に対応できるようになるには、最低でも3年の実務経験は必要でしょう。
このような知識と経験は、委託元の信頼やニーズに応える上でも重要です。
ITスキルとリテラシー
現代の経理業務では、ITスキルがますます重要になっています。
ソフトウェアやシステムを活用して、取引の記録、帳簿の管理、決算作業を効率化するスキルが求められます。
そのためには、Excelをはじめとするさまざまな会計ツールの操作に慣れていることが大前提です。
さらに、高いセキュリティ意識を持ち、委託元の機密情報を適切に管理・保護する能力も必要です。
ITリテラシーを身につけることで、効率的な業務遂行だけでなく、情報のセキュリティやリスク管理にも貢献できます。
営業力とコミュニケーション能力
独立した立場で業務委託を目指すのであれば、自ら営業活動を行うスタンスも重要です
収入の安定につながる委託元を確保するためには、自身の強みや特長を的確にアピールする必要があります。
これには契約条件や報酬にかかわる交渉力も含まれます。
併せて、一度契約した相手と継続的な信頼関係を維持するためのコミュニケーション能力も欠かせません。
業務委託の経理職は、数字に長けているだけでなく、対人関係にも注力しなければならないのです。
フリーランス経理として業務委託を受ける方法
フリーランスの経理として業務委託を受けるためには、前述のとおり自ら契約案件を獲得していかなければなりません。
例えば、前職での人脈を活かしたり、営業活動を積極的に行ったりするなど、地道な努力が必要です。
しかし、ひとりでできることは限られており、時間と労力を勘案すると効率的とは言えません。
近年では、転職サイトや転職エージェントで「フリーランス経理」の求人案件を見つけることも可能です。
特に、経理に精通した転職エージェントのサポート利用がおすすめです。
経験豊かなキャリアアドバイザーが、カウンセリングを通じて個々の強みを引き出し、効果的なアピールの仕方をアドバイスしてくれます。
求人紹介だけでなく、交渉に臨むポイントなども指導してもらえるので、安心して業務委託企業を探すことができるでしょう。
まとめ
経理の業務委託が増加傾向にあることは、経理フリーランスとして働ける機会が広がりつつあることを裏付けています。
独立した立場で働くことは、自己管理や案件獲得などの負担を強いられる一方、自分のペースで取り組める柔軟性やプライベートと両立しやすいことがメリットです。
加えて、実力や経験に応じた報酬を得られることも魅力でしょう。
業務委託という働き方に期待できるのであれば、「経理で独立」という方向は明るい選択肢になるかもしれません。
この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、航空会社に新卒で入社し国内外各地へのフライト業務に従事。
その後キャリアアドバイザーとしてMS-Japanへ入社。
現在は主に経理財務や会計事務所などの会計転職希望の方を中心に担当。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 会計事務所・監査法人 ・ 税理士科目合格 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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