税理士も営業力が必要?営業手法や失敗例についても解説!
営業活動とは顧客が求めているもの、あるいは顧客がまだ気づいていないニーズを見つけ出し、それを提供・販売し、売上・利益を上げることです。
民間企業であれば必ず行う必要がありますが、実は独立開業した税理士にとっても、営業活動は非常に重要といわれています。
顧客を獲得し、サービスを提供するという基本的な構図は、会計事務所も民間企業と何ら変わりません。
そこで今回は、税理士が持つべき営業力について、営業方法の種類や失敗例などを解説します。
税理士にも営業力が求められる
会計事務所は、何もしなくても顧客が集まり、顧問料を頂けるわけではありません。
近年では、インターネットを使って地域内の税理士をすぐに調べることができるため、比較的容易に顧問税理士を選び直すことが可能です。
そのため、既存顧客を確保し続けたり、新規顧客を獲得したりするためには、サービスの質や顧問料などの面で優れていることを強くアピールする必要があります。
顧客から請け負っている業務を単純作業のように繰り返していくだけでは、新規顧客を獲得できるどころか、既存の顧客も離れていくでしょう。事務所を維持し、成長させていくには、税理士も営業力を持つ必要があります。
税理士の営業方法
税理士としての能力がいくら高くても、そのことを世間にアピールしなければ顧客の獲得にはつながりません。特に独立開業したばかりの税理士の場合、事務所で待っていても顧客は訪れないでしょう。自ら積極的に営業を行い、自分のことを認知してもらう必要があります。
では、税理士はどのような形で営業集客を行えば良いのでしょうか。
現在、多くの新規顧客を得ている会計事務所が採用している方法としては、紹介や営業、ホームページ、SNS、セミナーなどの方法があります。それぞれ以下で詳しく説明しましょう。
既存顧客や同業者からの紹介
既存の顧客、あるいは知人の税理士などのコネクションにより、顧客を紹介してもらうという方法です。この場合、顧客を紹介してくれた人の信用を裏切らないためにも、契約後は真摯に顧客に向き合うことが求められます。
ただし、紹介の場合は、顧客は紹介者に促されて契約を結ぼうとしているだけで、その会計事務所のサービス内容や価格を十分に吟味しているとは限りません。
そのため、実際に契約を結ぶ前に、サービス内容や顧問料などについて、念入りに伝える必要があります。
金融機関からの紹介
企業への融資などを行う銀行などの金融機関では、自社の顧客に税務や会計のサポートが必要となった場合に、提携している税理士を紹介することがあります。このような金融機関から顧客を紹介してもらうのも、新規顧客を獲得する手法です。
金融機関から紹介される税理士は、「金融機関に信頼のある税理士」と認識されるため、新規顧客からの信頼も獲得しやすいというメリットがあります。また、金融機関からの紹介による顧客は、質の高い企業だと評価されている場合も少なくありません。すでに事業を展開している顧客は購買力が高く、長期的な取引が見込める可能性も高いでしょう。
一方の金融機関にも、顧客に税理士を紹介するメリットがあります。税理士が顧客企業の経営者にアドバイスをすることで、経営状況を維持・拡大し、金融機関にとっても安定的な融資運用ができるのです。
税理士も金融機関も、経営を支援するという役割は同じなので、つながりを持っていて損はありません。既存顧客に取引先の金融機関を紹介してもらうなど、ネットワークを広げていきましょう。
士業交流会
士業交流会とは、税理士や弁護士、公認会計士などの士業の有資格者やその関係者が集まり、情報交換などを行うイベントです。
士業交流会は、多くの人とつながりを持つことができます。他の仕業や業界関係者と直接コンタクトを取ることで、新たな顧客を獲得できる可能性もるでしょう。また、交流会は信頼関係を築く場でもあります。信頼できる税理士だと印象付けられるように、良好な人間関係を構築しましょう。
さらに、知識や情報の共有ができることもメリットの一つです。業界の最新動向や法律の改正などについて様々な見解を得ることは、専門知識が向上や新たなサービスの創造につながる可能性があります。また、自身だけでは対応が難しい顧客や案件も、他の専門家と連携することで解決できる場合があります。交流会には経験豊富なベテランが出席していることもあるので、そういう人からアドバイスをもらえることもあるでしょう。
このように、士業交流会は関係構築や知識向上に有効な手段です。普段から他の士業とつながりを作っておくことで、他士業者からの紹介を顧客獲得経路のひとつにしている税理士もいます。ただ、士業交流会の種類は多く、趣旨も参加費もそれぞれです。一度交流会に参加しただけですぐに成果が出るわけではないので、自身の目的にあった交流会に継続的に参加することがおすすめです。
訪問営業
訪問営業とは、税理士が自分の足で企業を回り、経営者の方に売り込みをかけることです。事前にアポイントメントを取って面会し、その企業の税務・会計上の課題をヒアリングし、解決・貢献できることがないかを検討します。
もし、その企業の抱えている問題が、自分(もしくは自分の事務所)で解決が望めるものであれば、ビジネスチャンスです。
ホームページ
独立開業した場合、ホームページの作成は必要不可欠と言えるでしょう。創業したばかりの新規企業が顧問税理士を探す場合も、特別な紹介・コネクションがなければ、WEBを使って情報収集するのが一般的です。ホームページ作成代行企業に作成を依頼しても良いですが、IT関連に詳しければ自身で作成しても良いでしょう。
また、WEB集客には、WEB広告とコンテンツマーケティングがあります。
費用をかけてでも短期間で顧客を獲得したいならWEB広告が有効ですし、中長期にはなりますが、ターゲットユーザーが困っている情報の解説などのコンテンツを更新するコンテンツマーケティングも有効的です。
SNS
現在、代表的なSNSとしてはFacebookやX(旧Twitter)、LINE、Instagram、TikTokなどがあります。ホームページでは事務所の概要やサービス内容、料金、税理士としての目標や理念などを紹介できますが、リアルタイムで日々新しい情報を更新するのは手間がかかります。SNSであれば発信したい情報を一日に何度でも簡単にアップすることが可能です。
税理士がSNSに投稿する情報は幅広いです。事務所の普段の様子や無料相談会のお知らせ、税務関連のおすすめ情報、最新の税制事情、さらには地域のお祭りなどのイベント情報なども発信しています。
ホームページに加えてSNSを通してアピールを行えば、知名度も上がりやすく、新規顧客につながりやすいでしょう。
セミナー
税理士が経営者向けに行うセミナーも集客の場となりえます。企業が顧問税理士を検討する際は、直接連絡を取る前に、どのような税理士なのかを事前に把握したいと考えるでしょう。セミナーは、その税理士の人柄や考え方を知る上での最適な機会です。セミナーで説得力のある講演を行えば、「この人になら顧問をお願いできる」と考えてくれる経営者の方が現れるでしょう。
さらに、セミナーは多数の人を一度に相手にできるので、紹介や直接の営業よりも効率が良いです。ただ、魅力的なセミナー内容にしないと、かえって評判を落とすことになりかねないので、注意しましょう。
近年は、会場に人が集まるセミナーの他に、オンラインで行うセミナーであるウェビナーが主流になっています。ウェビナーはWEB会議ツールを利用して、場所を選ぶことなく多くの人に情報を提供できます。チャット機能やアンケート機能を活用すれば、参加者とリアルタイムでコミュニケーションを取ることも可能です。
ウェビナーは、会場へ向かう必要がないこと、スマートフォンやタブレットからも参加できることから、集客率が比較的高い傾向にあります。開催側としても、会場や設備の手配が不要なのでコスト削減につながります。ただ、気軽に参加できる反面、途中で離脱することも容易です。開催者からは参加者の表情が確認できないため、一方的に話して参加者を置きざりにするウェビナーにならないようにしましょう。
専門記事の執筆・監修
一般事業会社が発行する雑誌やオウンドメディアで、専門記事の執筆や監修を行うことは、税理士の顧客獲得にも効果的です。
記事の読者は、記事の情報に正確性を求めていますが、全てのライターが専門知識を持っているわけではないため、誤った情報が掲載されることも少なくありません。誤った情報提供を防ぐために、運営企業は専門家に記事の執筆や監修を依頼することがあります。
専門家が執筆・監修した記事では、権威性を担保するために執筆者・監修者の名前や事務所の情報が記載されることが多く、読者から大きな信頼感を得られます。
そのため、多くの読者に自身の専門知識やスキルの訴求や認知度向上にもつながるだけでなく、事務所のホームページへのリンクを入れてもらうことで、SEO対策も可能になります。
また、業界関連の雑誌やオウンドメディアは、その業界に関心がある読者をターゲットとしています。記事の読者にアプローチをかけることで、自社のサービスによりマッチした顧客を獲得できる可能性があるでしょう。
税理士紹介サービス
税理士紹介サービスは、税理士業界に特化した専門プラットフォームやWEBサイトを通じて、顧客と税理士をマッチングするサービスです。顧客は税務や会計における自身のニーズや要件を登録し、最適な税理士を探すことができます。一方、税理士は自己プロフィールや専門分野、経験などを登録して新規顧客からの問い合わせを待つシステムです。
顧客と税理士のマッチングは、紹介会社が行うこともあればシステムが行うこともあります。顧客の要望と税理士のスキルを照らし合わせてあるため、自身の経験やスキルを大いに活かせる顧客を獲得できる可能性が高いでしょう。
しかし、自身に合わないと感じた案件の場合は依頼を断ることもできるため、ミスマッチによる契約解除や関係悪化を防ぐことが可能です。
また、サービスに満足した顧客がレビューをしてもらうことで、さらなる顧客獲得につながっていきます。
顧問先が増えない…典型的な失敗例
前述したように、税理士の営業手法には様々な種類がありますが、「何をしても顧問先がが増えない…」と思い悩む方も多いのではないでしょうか。
多くの税理士が陥る営業の失敗例には、以下のようなものが挙げられます。
1.専門分野に特化しすぎている
他社との差別化のために、専門分野に特化したサービスを売りにする手法は一般的だと言えます。しかし、顧客のニーズは多様性を増しており、中にはいくつもの要素を含んだ複雑な相談もあるでしょう。
専門分野にこだわりすぎて他の分野への対策が甘いと、顧客のニーズに適した提案を行えず、契約に至る可能性が低くなります。既存顧客が別のサービスを求めた場合にも対応できなくなり、顧客離れにつながるリスクも考えられるでしょう。
さらに、特化している専門分野の需要が減少したり、競合が増えたりといった市場変化によって、事業に大きな影響が及ぶおそれがあります。
専門分野を持つことは重要ですが、ある程度幅広いニーズに応えられる汎用的なサービスも用意しておくことが大切です。自身の専門分野だけでは解決できない場合に備えて、他の専門家や事務所とパートナーシップを築いておくのも良いでしょう。さらに、ニーズの多様性と変化に対応していくために、常日頃から業界のトレンドや税制改正などの情報を収集し、知識をアップデートしていくことも重要です。
2.安定的・長期的に顧客を獲得できるチャネルの開拓をおろそかにする
紹介などの「今すぐ客」ばかりに対応して、安定的・長期的な顧客開拓ができていない状況も、典型的な失敗例のひとつです。紹介で増えた顧客は、紹介元の信頼によるものであるため、いつ途絶えるか分かりません。紹介顧客の依頼が一時的な仕事であった場合、契約終了後も継続して依頼を受けられるとは限らないでしょう。
集客を行う際には、短期的に顧客を獲得できるチャネルと長期的に顧客を獲得できるチャネルの双方を構築することが大切です。
過去に契約が終了した顧客だけではなく、一度コンタクトを取って契約に至らなかった顧客もリストにまとめておき、定期的に連絡を取ってつながりを維持しておきましょう。時期が変われば、依頼を受ける可能性があります。安定的かつ長期的に顧客を獲得するためには、このような地道な営業活動が必要です。
3.クライアント獲得のための投資が不十分である
当然ながら、会計事務所を開設しただけでは顧客の獲得は難しいです。個人や事務所の認知度を上げて顧客数を増やすためには、積極的にマーケティングへ取り組むことが必要です。しかし、マーケティングへの投資が不十分だと、自身の専門性やサービスを適切にアピールできず、競合他社との差別化やブランディングも難しくなるでしょう。
単純にホームページを運用したり、メルマガなどを送ったりするだけでは、顧客の目に留まることはありません。十分な市場調査の上、潜在顧客のニーズをキャッチアップし、ターゲットに合わせたメッセージやコンテンツを作成する必要があります。
マーケティング戦略を適切に展開するには、外部委託やコンサルティングなど、相応のコストがかかりますが、顧客を獲得するために投資を怠らないようにするのがおすすめです。
税理士の営業に必要な4つの要素
顧客の獲得に向けて営業を行う場合、以下の4つの要素が求められます。
1.コミュニケーション能力・交渉力
コミュニケーション能力と交渉力は、顧客との信頼関係を築き、ビジネスの成果を上げるための必須要素です。
コミュニケーション能力が高い税理士は、顧客と円滑なやり取りができます。一方的にサービスを勧めるのではなく、双方向的なコミュニケーションを心掛けることで、顧客のニーズや要望を把握できるでしょう。把握した情報をもとに適切な提案を行い、相談しやすい雰囲気を維持することで、顧客満足度と獲得率が向上につながります。
また、顧客との商談には、交渉力も求められます。顧客を獲得するために、全ての要望に応じていると、結果的に自社に不利益な契約となることもあるでしょう。現実的ではない納期や予算を提示された時などは、双方にとって満足のいく妥協点を見つけることが重要です。
最終的にWin-Winの関係となれるように、相手の要望を取り入れつつも自社に過度な負担がない提案を行えるようにしましょう。
これらのスキルを高めるためには、ロールプレイなどのトレーニングが効果的です。
架空のシナリオを想定して商談練習をすることで、実践的なスキルを身につけることができます。その際に、第三者に相手役になってもらい、フィードバックを受けることが大切です。第三者からの意見を真摯に受け止めて改善に取り組むことで、スキルの向上につながります。
また、コミュニケーションや交渉に関する書籍やセミナー、ワークショップに参加し、新たな知識やテクニックを積極的に取り入れましょう。常に学び続ける姿勢が、スキルの成長につながります。
2.ヒアリング力・傾聴力
顧客に合った提案を行うためには、顧客が持つ課題や要望を引き出すヒアリング力が重要です。そして、顧客の立場や依頼の背景などを理解するためには、相手の話に真剣に耳を傾ける傾聴力が必要になります。これらのスキルを高めることで、良好な関係構築や的確な問題解決が実現できます。
顧客からの相談を受ける際は、相手の話を真剣に聞く姿勢が何よりも大切です。顧客の考えを否定せず、相槌や仕草で共感や関心を示すように心掛けましょう。
顧客の意図を理解することに重きを置き、質問を交えて話を深堀します。顧客に寄り添う姿勢を徹底し、「自分のことを理解してもらえた、この人にもっと話を聞いてもらいたい」と思ってもらうことが重要です。
また、話を聞こうとする意識はあっても、態度が横柄であったり、目線があちこちに動いたりすると、相手は自分の話を聞いてもらえていると感じません。
ヒアリング力や傾聴力もまた、ロールプレイなどで練習を繰り返すことで向上が見込めるでしょう。相手と同じ動きをするミラーリングや、相手の言葉を繰り返すバックトラッキングといった傾聴テクニックも存在するので、徐々に身につけていくと良いでしょう。
3. 課題発見力と提案力
顧客の立場や依頼の背景を把握した後は、解決すべき課題を見つけ、適切な解決策やサービスを提案します。
顧客の本質的な課題を発見し、適切な提案をするためには、十分な情報収集と分析が必要です。市場動向や競合情報を分析することで、顧客の事業をより多角的に俯瞰し、顧客自身も気づいていない課題を発見できる可能性もあるでしょう。
また、収集情報や分析データに基づく提案は信頼性が高く、顧客に受け入れられやすくなります。提案内容を論理的かつ体系的に説明するロジカルシンキングが身についていると、提案の根拠やメリットに説得力が生まれ、より大きな信頼感を獲得できるでしょう。
課題発見力と提案力を高めるには、まずノウハウを蓄積していく取り組みが必要です。情報収集を怠らずに知識を最新にしておくことはもちろん、過去の事例やベストプラクティスを学び、新しいアプローチを模索しましょう。提案に対する顧客からのフィードバックや、チームメンバーからの意見など、多様的な視点からの知識を取り入れることもスキルの向上につながります。
4.他社との差別化
顧客が税理士への案件依頼を検討する際には、大抵いくつかの類似サービスを比較しています。他社との差別化ができていないと、顧客にとって魅力的なサービスだとは思われず、選んでもらえないおそれがあります。
他社との差別化は、様々な領域で図ることが可能です。サービスそのものに独自性を持たせることもひとつの手段ですが、相談のしやすさや対応の丁寧さなどの面も差別化できる場合もあります。対応できる会計ソフトの種類や連絡手段が多い、必要に応じて土日や夜間にも相談を受け付けてくれる、返信が早くて的確な解決策を提示してくれるとなどのサービスの質も大きな判断基準です。
次章では、自社の強みの分析方法をご紹介します。市場やターゲットのニーズと照らし合わせて、自社の強みを最大限に発揮できる領域で、他社との差別化を図りましょう。また、市場動向や顧客のニーズは常に変化しているので、常に改善を行い、時代に合った価値を提供することが大切です。
事務所の強みを把握しておこう!
税理士は独立しやすい仕業であり、競合が非常に多いことが特徴です。令和5年3月末日時点で日本税理士会連合会に登録されている税理士は80,692人で、その内の約70%にあたる55,847人が開業税理士です。
数多くある会計事務所から自社を選んでもらうためには、自社の強みを明確化して顧客に強くアピールする必要があります。
ここでは、自社の分析をする方法の一つとして、「SWOT分析」をご紹介します。
強みを把握するためのSWOT分析
SWOT分析は、組織や事業の現状を把握し、戦略的な意思決定に役立てるためのフレームワークです。SWOTはStrengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)の頭文字を取ったもので、自社を取り巻く要因を下記のように分解して分析します。
SWOT | 説明 |
---|---|
Strengths (強み) | 組織やプロジェクトが持つ、内部環境の優位性や利点です。優れた技術力や優秀な人材などが挙げられます。 |
Weaknesses (弱み) | 内部環境の欠点や弱点です。業務の遅れや資源不足などが挙げられます。 |
Opportunities (機会) | 自社に有利な外部環境の要素です。新しい市場の拡大やテクノロジーの進化などが挙げられます。 |
Threats (脅威) | 外部環境による潜在的な悪影響です。競合他社の台頭や法規制の変更などが挙げられます。 |
SWOT分析の主な目的は、組織や事業を客観的に評価することにあります。自己分析を通じて組織の強みを明確化し、戦略の立案に役立ちます。また、弱みや脅威を可視化することで、改善策を考えるきっかけにもなるでしょう。
SWOT分析のやり方は?
SWOT分析は、以下の3ステップで実施します。
1. 目的の設定
まずは、SWOT分析を行う目的を明確に定義します。
新サービスを立案するためなのか、現在の事業を拡大するためなのか、法改正や市場の変化に対応するためなのか、目的によって強みや弱みの解釈が異なります。
目的が定まれば、組織全体を分析するのか、特定の事業やサービスに絞って分析するのかといった、分析範囲や調査項目も明らかになるでしょう。
2. 外部環境分析:Opportunity(機会)・Threat(脅威)
外部環境分析では、組織や事業に影響を及ぼす外部要因を列挙し、機会と脅威を分析します。マーケットの調査から市場動向や顧客ニーズの把握や、業界や地域に適用される法律や規制が自社与える影響などを洗い出します。
外部要因の分析方法には、PEST分析や5フォース分析などがありますが、「業界で伸びている・落ちている領域はないか」「最近話題になっているテクノロジーは何か」といった質問にかみ砕いて要因を出しても構いません。この時、どんな些細な要因でも列挙することが重要です。より多くの視点からの意見を取り入れるために、様々な立場の関係者を巻き込んで複数人で行うと良いでしょう。
3. 内部環境分析:Strength(強み)・Weakness(弱み)
内部環境分析では、組織や事業、従業員といった内部要因を分析することで、自社の強みと弱みを特定します。
たとえば、資金や税理士以外の有資格者の人数などは明確な数値として出せるため、他社との比較がしやすい傾向にあります。従業員のスキルを一覧にすることで、リーダーシップを発揮できる人材が多い、営業に強い人材が少ないといった状況が見える場合もあるでしょう。
さらに、従業員個人のスキルだけではなく、組織としての業務プロセスや運営体制も評価してみましょう。自社と他社のサービスを比較して、自社もしくは他社にしかない特長を洗い出すことでも、自社の強みや弱みが見えます。顧客からの評判も非常に参考になる意見です。
以上の手順でSWOT分析は完了となりますが、分析結果を出して終わってしまわないように注意してください。分析結果を出すことは、目的を達成するための通過点でしかありません。行動計画を策定し、目的達成や事業成功につなげることを忘れずに取り組むことが重要です。
税理士の広告について~広告を出す際に注意すべきこと~
税理士に限ったことではありませんが、多くの士業では長い間、広告を出すことが厳しく規制されていました。また、すでに税理士と顧問契約を結んでいる企業に、他の税理士が営業をかけることも禁止されていました。
税理士人口がまだ少ない時代は、紹介だけで顧客獲得が十分に可能であり、積極的な営業活動をしなくても、問題なく営業を続けられた時代だったのです。
かつては、「事務所名・住所・電話番号」という最小限の税理士広告しか許されていませんでしたが、2002年から「嘘・大げさ・紛らわしい」国民の税理士選択に支障をきたすおそれがある内容でない限り、税理士広告を原則として自由に出せるように変更されました。
税理士が広告を出す際に注意すべきポイント
税理士の業務広告の中には、出してはいけない広告と記載してはいけない項目・表現があります。
出してはいけない広告
事実無根な広告や、顧客に誤解を与えるような広告は、そもそも出してはいけません。特定の同業者や事務所を比べるような広告も禁止されています。顧客に正確な情報を提供し、税理士の信用を損なわない広告であることが原則です。
記載してはいけない項目
プライバシー保護の観点などから、広告に記載してはいけない項目もあります。たとえば、過去に税務行政庁に在籍していた場合、自身の経歴として当時の役職名を記載するのはNGです。また、一部業務を委嘱している場合、委嘱者の氏名や事務所も記載できません。その他、過去に受けた案件や現在進行中の案件も記載してはいけない項目に該当します。
気を付けなければならない表現
広告への記載に制限はないものの、表現に気を付ける必要があるケースもあります。代表的な例は、「税金を半額以下にできる」などの誇張表現です。これは顧客を過度に期待させ、実際に税金が半額以下にならなかった時に大きなトラブルにつながる可能性があります。また、金品の贈答やサービスの提供といった契約の対価を記載するのも、業務の公平性の観点から好ましくありません。
詳細は、下記の記事で詳しく解説しています。
【関連記事】
税理士の広告規制とは?禁止される広告とNG広告表記一覧
独立前に準備できることもある?
ここまでは開業後の営業におけるポイントを解説してきましたが、独立する前にできることもあります。
成功している事務所の代表税理士の営業方法を知る
どんな取り組みにおいても、成功事例から学ぶことが大切です。顧客からの評判が良く、事業の拡大に成功している事務所の営業方法を調査しましょう。成功事例から具体的な手法を学び、自分なら強みを活かしてどのように営業していくか、具体的な戦略のイメージを持つことが重要です。多くの税理士が経験している失敗談から自社にも起こりうるリスクを想定して、リスクを回避することも可能です。
自分に合う方法を選ぶ
営業手法の中には、地域や事務所の特徴により、自分に合うものと合わないものがあるでしょう。合わない方法で営業すると、コストだけを消費して結果が伴わない事態に陥りかねません。
効率的に営業活動を進めるためには、自分の性格や想定しているサービスのスタイルに合った営業方法を選びましょう。営業に楽しんで取り組むことができればモチベーションが維持され、成果を出しやすくなります。
弊社MS-Japanは、税理士をはじめとする士業と管理部門に特化した転職エージェント「MS Agent」を提供しています。「MS Agent」では、将来的に独立を目指していて、独立につながる経験を積める事務所への転職をしたい方からのご相談も歓迎です。事務所によっては、独立を目指す若手税理士を育てたいという思いを持った所長も多く、実際にそういった事務所から独立した場合は、独立後も良好な関係を保っているケースも多いです。
独立するなら営業力は必要!
税務案件の処理能力は、税理士試験に合格している限り、そこまで大きく差が付きません。
税理士としての実績に差が付くのは、自己アピールやコミュニケーション能力など、顧客を取ってくる営業力です。営業力が高いほど、売上に直結しりだけでなく、業務経験を積み上げられるペースも上がります。
初対面の相手とすぐに仲良くなれる、社交性が高い税理士であれば、異業種交流会やパーティなど、人が集まる場での営業に強いでしょう。自主開催のセミナーを開いて、自分が欲しい属性のクライアント候補を集客する人もいます。
積極的な社交が苦手な税理士でも、事務所の広告を有効に出すことで、新規顧客の獲得は十分に可能です。WEB上で情報発信し、コミュニケーションを取ることができれば、不特定多数の人々へ、個性や人柄を継続的に伝え、強い結びつきを構築できるのです。
とはいえ、営業が苦手だからといって、税理士失格というわけではありません。弊社では一度開業したものの、やはり所属税理士に戻りたい、企業で働きたいといった方々のご転職を支援させていただいた実績もあります。
税理士専門のアドバイザーがサポートさせていただきますので、お気軽にオンラインカウンセリングにお越しください。
この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、不動産会社にて個人向けの営業を経験。その後MS-Japanへ入社。会計事務所・コンサルティングファーム・監査法人・法律事務所・社会保険労務士事務所等の法人側担当として採用支援に従事。現在はキャリアアドバイザーも兼務し一気通貫で担当しております。
会計事務所・監査法人 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 税理士科目合格 ・ USCPA を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
あなたへのおすすめ求人
同じカテゴリの最新記事
弁護士の初任給はいくら?経験年収別・勤務先別の年収や年収アップの方法など
経理は年収が低い?真相を独自データで解説!年収が高い経理の特徴など
経理の転職情報|経理転職のプロMS Agentが徹底解説!
公認会計士の転職ならMS Agent|転職先の選び方やオススメ求人を紹介!
【弁護士も副業をする時代に】おすすめの副業と注意点を解説!
令和6年度弁理士試験合格発表|最新の合格率や合格後の流れを解説!
社会保険労務士(社労士)試験の難易度・合格率は?勉強時間や資格を活かせるキャリアなど
法務の転職・求人|最新の転職市場や転職成功のポイントを解説!
人事の転職ならMS Agent|経験・未経験別の人事転職成功のポイントを解説!
サイトメニュー
業界最大級の求人数・転職支援実績!管理部門・士業の転職に精通した専門アドバイザーがキャリア相談~入社までサポートいたします。
新着記事
求人を職種から探す
求人を地域から探す
セミナー・個別相談会
業界最大級の求人数・転職支援実績!管理部門・士業の転職に精通した専門アドバイザーがキャリア相談~入社までサポートいたします。