2023年06月29日

ビジネス会計検定は役に立たない?難易度や簿記との違いなどを解説

管理部門・士業の転職

これから会計業界・経理職として働きたいと考え、資格の取得を検討している人も多いのではないでしょうか。
会計業界は人手不足に悩んでいることから、資格取得は大きなアドバンテージになるため、ビジネス会計検定・簿記などの資格は人気があります。

しかし、巷では「ビジネス会計検定は役に立たない」という意見も聞かれるため、取得すべきかどうか悩んでいる人も少なくないようです。

この記事では、そんなビジネス会計検定について、有用性や難易度・簿記との違いなどについて解説します。

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そもそもビジネス会計検定とは?

ビジネス会計検定とは、大阪商工会議所が主催している検定の一つで、財務諸表に関する知識や分析手法について問う試験です。
財務諸表とは、いわゆる決算書の中で、金融商品取引法で上場企業に作成が義務付けられている書類のことをいいます。

特に重要な書類は、企業の経営状況を明らかにする貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書で、これらは「財務三表」とも呼ばれています。
財務諸表を適切に読み取れるようになると、企業の経営状況が健全なのか、それとも黄色信号なのか、安定性・成長性などを判断できるようになります。

ビジネス会計検定で設定されているレベルは、3級・2級・1級の3種類で、それぞれの級の到達目標は以下の通りです。

3級:会計用語、財務諸表の構造・読み方・分析等、財務諸表の基本的な分析ができる状態になっている

2級:企業の経営戦略・事業戦略を理解して、財務諸表の応用的な分析ができる状態になっている

1級:企業の成長性や課題、経営方針・戦略などを理解・判断するため、財務諸表を含む会計情報に関する総合的な知識を身につけ、財務諸表を含む会計情報のより高度な分析ができる状態になっている

なお、1級受験者のうち、不合格者の得点上位者(120点以上得点した受験者)については、準1級として認定されます。


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ビジネス会計検定って役に立たない?

ビジネス会計検定は、財務諸表を読み解き、会計情報の分析ができる人材であることを証明する資格です。
しかし、各種簿記検定に比べて知名度が低いことから、本当に役に立つ資格なのか不安を感じている人もいるようです。

実際のところ、ビジネス会計検定の勉強で得られる知識は、営業・企画担当者、財務・経理担当者、経営者、学生など、立場を問わず役立てられるものです。
以下、具体的なメリットをいくつかご紹介します。

財務諸表が読めるようになる

ビジネス会計検定で特に力を入れているのが、財務諸表の作成ではなく「分析」です。
財務諸表を読み解けるようになると、企業の状態が良くなっているのか、それとも悪くなっているのかが分かるようになります。
複数の分析指標を駆使して、企業の体力をチェックできれば、取引先選びや転職活動に役立てることができるでしょう。

株式投資の基礎が身につく

日経経済新聞などに載っている株式ニュースなどは、前提となる知識がないと、なぜそのニュースが注目を集めているのか背景を読み取りにくいものです。

しかし、ビジネス会計検定の受験に向けて勉強を続けるうちに、各種指標に関する知識が頭に入っていくと、株式投資に役立つ基礎知識もインプットされていきます。
会計業界を目指していない場合でも、株式投資にチャレンジしたい人であれば、ビジネス会計検定を受験するメリットは十分あります。

経営に関わるキャリアを積める

財務諸表を読み解く力は、経営者だけでなく、経営幹部や管理職にも必要です。
自分が所属する部門が、経営にどの程度貢献しているのかを読み解くことで、成果をアピールする材料としても活用できます。
ビジネス会計検定の勉強をしておくと、将来のキャリアアップの布石となるでしょう。

簿記の勉強につながる

簿記の資格では、主に仕訳など「財務諸表を作成する」プロセスについて学ぶ必要があります。
これに対してビジネス会計検定では、財務諸表が示す数値の意味を読み解くことに重きを置いているため、間接的に簿記のルールにも触れていることになります。
よって、ビジネス会計検定を取得後は、簿記検定の受験も視野に入れた学習スケジュールを立てやすくなるはずです。

ビジネス会計検定の試験内容や開催時期、受験料は?

ビジネス会計検定の試験内容・開催時期・受験料などの受験要項をまとめました。

受験資格について

ビジネス会計検定は、学歴・年齢・性別・国籍の制限なく受験することができます。
また、誰もが3級からスタートする必要はなく、希望する級から受験して問題ありません。

もし、3級・2級をセットで受けたい場合は、連続する2つの級の同時受験が認められます。
2級レベルまで勉強したものの、合格できるか自信がない人は、同時受験で実力を試すことができます。

ビジネス会計検定3級の受験要項

2023年・2024年における、ビジネス会計検定3級の受験要項は以下の通りです。

試験日 2023年10月15日(日)
2024年3月10日(日)
試験会場 札幌、仙台、さいたま、東京、横浜、新潟、金沢、静岡、
名古屋、京都、大阪、神戸、岡山、広島、山口、松山、福岡の中から受験地を選択
受験料 4,950円(消費税450円)
試験方式 マークシート方式
試験内容

1.財務諸表の構造や読み方に関する基礎知識
・財務諸表の役割と種類について
・貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書の構造と読み方について

2.財務諸表の基本的な分析について
・基本分析
・成長率および伸び率の分析
・安全性の分析
・キャッシュ・フロー情報の利用
・収益性の分析
・1株当たり分析
・1人当たり分析

試験時間 2時間

ビジネス会計検定2級の受験要項

2023年・2024年における、ビジネス会計検定2級の受験要項は以下の通りです。

試験日 2023年10月15日(日)
2024年3月10日(日)
試験会場 札幌、仙台、さいたま、東京、横浜、新潟、金沢、静岡、
名古屋、京都、大阪、神戸、岡山、広島、山口、松山、福岡の中から受験地を選択
受験料 7,480円(消費税680円)
試験方式 マークシート方式
試験内容

1.財務諸表の構造や読み方、財務諸表を取り巻く諸法令に関する知識について
・会計の意義と制度
※金融商品取引法・会社法の会計制度・金融商品取引所の開示規則などにも触れる
・連結財務諸表の構造と読み方
※連結貸借対照表・連結損益計算書等
※個別財務諸表の内容も含まれる

2.財務諸表の応用的な分析について
・基本分析
・安全性の分析
・収益性の分析
・キャッシュ・フローの分析
・セグメント情報の分析
・連単倍率と規模倍率
・損益分岐点分析
・1株当たり分析
・1人当たり分析

試験時間 2時間

ビジネス会計検定1級の受験要項

2024年における、ビジネス会計検定1級の受験要項は以下の通りです。

試験日 2024年3月10日(日)
試験会場 札幌、仙台、さいたま、東京、横浜、新潟、金沢、静岡、
名古屋、京都、大阪、神戸、岡山、広島、山口、松山、福岡の中から受験地を選択
受験料 11,550円(消費税1,050円)
試験方式 マークシート方式および論述式
試験内容

1.会計情報に関する総合的な知識
・ディスクロージャー
※概要、会社法上、金融商品取引法上、証券取引所向け、任意開示、電子化等
・財務諸表と計算書類
※体系、連結に関する内容
・財務諸表項目の要点
※金融商品、棚卸資産、固定資産と減損等の幅広い範囲が対象
・財務諸表の作成原理
※概念フレームワーク、会計基準、内部統制

2.財務諸表を含む会計情報のより高度な分析について
・財務諸表分析
・分析の視点と方法
・収益性の分析
・生産性の分析
・安全性の分析
・不確実性の分析
・成長性の分析
・企業価値分析
・企業価値評価のフレームワーク
・割引キャッシュ・フロー法による企業価値評価
・資本コストの概念
・エコノミック・プロフィット法による企業価値評価
・乗数アプローチによる企業評価
・これからの企業価値評価

試験時間 2時間30分


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ビジネス会計検定の難易度や合格率は?

ビジネス会計検定の難易度は、3級<2級<1級の順に上がり、級が上がるごとに合格率も低くなる傾向にあります。

以下、ビジネス会計検定試験の公式サイトで公開されている各種データをご紹介しつつ、各級の難易度について解説します。

ビジネス会計検定試験の合格率

ビジネス会計検定試験における、各級の2020年3月~2023年3月までの合格率は、以下の通りとなっています。

実施年月 1級 2級 3級
2023年3月 21.3% 59.1% 61.7%
2022年10月 実施なし 53.3% 67.2%
2022年3月 10.8% 54.2% 63.5%
2021年10月 実施なし 52.1% 68.9%
2021年3月 24.4% 51.5% 67.7%
2020年10月 実施なし 46.3% 70.5%
2020年3月 19.7% 54.3% 62.5%

実施年月によっても違いはありますが、3級・2級の難易度はそれほど高くなく、概ね2人に1人が合格できる試験と言えます。
しかし、1級になると途端に難易度が上がり、10人に1人ほどしか合格できなかった実施年月も見られます。

各級の難易度と合格ライン

ビジネス会計検定試験の、各級の難易度と合格ラインは、概ね以下の通りです。


難易度 合格ライン
3級 基本的な事項を確認するレベルの試験
難問や奇問といった問題はほとんどない
100点満点中70点で合格
2級 基礎知識をビジネスに応用することを想定したレベル
会計経験者向けの問題も多く、3級よりやや難しい
100点満点中70点で合格
1級 論述式が加わり、マークシートの選択肢に頼らず、
自力で解答しなければならない
難しい計算や専門知識が問われる問題も多く、
足切りもあるので、総じて難易度は高い
論述式50点以上+全体で140点以上の得点(200点満点)
不合格者のうち、120点以上の受験者については「準1級」として認定

3級・2級と比較して、1級はより専門的な知識が求められ、計算・論述にも時間を割かなければなりません。

論述問題に関しては、解答用紙のスペースが限られていることもあり、伝えるべきことをコンパクトにまとめる技術も求められるでしょう。


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ビジネス会計検定の勉強時間ってどれくらい?

ビジネス会計検定試験の受験にあたり、どのくらいの勉強量が必要なのか把握する上で参考になるのが、勉強時間の目安です。
以下、3級~1級合格に必要な勉強時間の目安と、勉強方法について解説します。

3級合格に必要な勉強時間の目安

ビジネス会計検定3級は、公式テキスト・過去問題集を使って勉強すれば十分合格できるレベルの、基本的な問題が出題されます。
合格に必要な勉強時間としては、50~100時間を想定しておけばよいでしょう。
なお、必須ではありませんが、簿記・会計の知識があると、その分だけ理解も早まるでしょう。

2級合格に必要な勉強時間の目安

ビジネス会計検定2級は、3級の内容に加えて連結会計・損益分岐点分析などが出題範囲に含まれ、3級と比較して多少難しくなります。
しかし、簿記・会計の知識がある人にとっては、さほど苦労しない問題も少なくありません。
公式テキスト・過去問題集を使って取り組んだケースを想定すると、合格に必要な勉強時間は、100〜200時間が目安となるでしょう。

1級合格に必要な勉強時間の目安

ビジネス会計検定1級は、ある意味では「経営者以上」のレベルが求められ、経理財務管理職・役員レベルの実力を問われます。
出題範囲が広く、知識を体系的に理解している必要があるため、公式テキスト・過去問題集を使った勉強だけでは論述試験に不安を感じる人も少なくありません。合格に必要な勉強時間は、300~500時間が目安となります。


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いきなり2級や1級からの受験ってアリ?

いきなり 2級や1級からの 受験ってアリ?ビジネス会計検定は、年に1~2回しか試験が開催されないため、3級からではなく2級・1級からの受験を検討する人も多く見られます。

しかし、初めてビジネス会計検定を受験するのであれば、まずは3級からの受験をおすすめします。
数学などと同じで、ビジネス会計検定の試験は、基礎の積み重ねが合格につながる試験です。
そのため、3級で基礎固めをして、2級で応用問題に取り組み、最後に1級で発展問題にチャレンジするという流れがスムーズです。

2級で出題される問題は、3級の知識を前提として構成されているため、知識・理解の欠損を防ぐ上でも3級からチャレンジするのがよいでしょう。
仮に、3級を飛び越えて2級を取得できたとしても、実際の業務で活用できないケースも珍しくありません。

ビジネス会計検定と簿記は何が違うの?

会計に関する資格の中で、日本でもっとも知名度が高いものの一つが「簿記検定」です。
日商簿記や全経簿記に関しては、1級の合格が税理士試験の受験資格に数えられるなど、社会的な信用度も高い資格と言えるでしょう。

しかし、簿記検定とビジネス会計検定は、そもそも試験の成り立ちや目的が異なります。
以下、それぞれの違いについて解説します。

ビジネス会計検定と簿記検定の違い

ビジネス会計検定と簿記検定の違いを端的にまとめると、財務諸表を「読み解く」のか「作成する」のかという違いがあります。
仕訳や試算表作成など、主に経理の実務で財務諸表を「作成する」ことが多いのであれば、簿記を選択するのが妥当な判断です。

これに対して、会計情報を「読み解」くスキルを学ぶビジネス会計検定は、実に様々なフィールドで役立てられます。
経営状況を踏まえた提案が必要な営業・販売職、購入すべき株式を決めるために財務諸表の分析が必要な投資家、取引先を見極めたい経営者など、それぞれのニーズを満たす試験内容となっているからです。

ビジネス会計検定合格者は希少性が高い

ビジネス会計検定は、2007年7月からスタートした、比較的新しい資格です。
受験者数は年々増えているものの、1954年11月から行われている簿記検定と比較すると、相対的に合格者は少ない検定試験です。

合格者が少ないということは、財務諸表等を読み解くスキルを持っている

人材、あるいはそれをアピールできる人材が、日本ではまだまだ少ないとも解釈できます。
よって、ビジネス会計検定に合格することで、自らの希少性を高めることにつながります。

簿記に比べて合格率が高い

ビジネス会計検定は、日商簿記検定に比べて、合格率が高い傾向にあります。
以下、大まかな合格率の違いをまとめました。

ビジネス会計検定 日商簿記
3級 約60~70% 約30~40%
2級 約45~55% 約20%程度
1級 約10~20% 約10%

1級こそ大きな違いが見られないものの、2・3級の合格率に関しては、ビジネス会計検定の方が20~30%ほど高くなっています。
よって、合格率が少しでも高い会計の試験を受験したいのであれば、ビジネス会計検定がおすすめです。

なお、簿記検定について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

【関連記事】
簿記の概要と各級の概要・合格率・合格後のキャリアなどを紹介!


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まとめ

ビジネス会計検定は、業種・職種を問わず、様々なフィールドで活かせる資格です。
財務諸表を作成するのではなく、情報を読み解いて活用する方法を学ぶ試験のため、ビジネスパーソンにとっては重要度の高い資格と言えるでしょう。

級が上がるにつれて、難易度も高くなるため、合格するにはしっかり対策を講じる必要があります。
しかし、同じ会計の資格である簿記検定に比べると、総じて合格率は高めのため、合格できれば希少性の高さをアピールできることでしょう。

この記事を監修したキャリアアドバイザー

森澤 初美

カナダ州立大学卒業後、新卒でMS-Japanへ入社。求人企業側の営業職を経験した後、2014年にキャリアアドバイザーへ異動。2016年からは横浜支社にて神奈川県内の士業、管理部門全職種を対象にこれまで3000名以上のカウンセリングを担当。現在は関東全域を対象に経理・財務・経営企画・CFO・公認会計士・税理士・税理士補助スタッフなどの会計系職種を幅広く担当。

経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 外資・グローバル企業 ・ 会計事務所・監査法人 ・ 役員・その他 ・ IPO ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ USCPA ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!

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