司法修習って何?最新の司法修習スケジュールや司法修習生考試(二回試験)について解説!
法曹(弁護士・検事・裁判官)として働くためには、まず司法試験に合格してから司法修習の課程を経て、最終的な試験に合格しなければなりません。
中でも司法修習は法曹になるための実務を学ぶ場であり、1年間という長期の研修になるため、その内容を詳細に知っておく必要があります。
この記事ではまず、司法修習から司法修習生考試(通称、二回試験)までの流れを解説し、最終的な試験に合格した後のキャリアについても紹介します。
これから法曹界を目指す皆さんは、司法修習のガイドとして参考にしてください。
司法修習とは
一般社会では司法試験とは非常に難しく、合格した人だけが法律に関わる仕事に就けると考えられています。しかし、司法試験に合格することは、あくまでも法曹になるための資格取得に過ぎません。
司法試験合格者は司法修習の場で、はじめて法律に関する実務を学びます。司法修習は1年間にわたる法務の実務研修であり、同一のカリキュラムのもと弁護士・検事・裁判官それぞれの立場から実務を学びます。
司法修習に臨むためには、司法試験合格後1週間のうちに司法修習生採用選考に申し込む必要があります。
この時、最高裁判所には司法試験合格証書のコピーや、大学・大学院での成績証明書などを提出しなければなりません。また司法研修所には、主に司法修習の実施に関わる書類を提出する必要があります。
その結果採用が決まると、司法修習生として研修に臨むことになります。スケジュールは大きく分けて、実務修習と集合修習の2つが中心です。研修が修了した時点で司法修習生考試を受け、合格すると晴れて法曹界にデビューできます。
この試験で不合格になると、翌年まで待って再度受験しなければなりません。また3回連続で不合格になった場合には、あらためて司法試験の受験からやり直す必要があります。
司法修習のスケジュール
例年司法修習は12月から翌年11月まで実施されていましたが、司法試験制度の改正により、司法試験の日程が2024年(令和6年)から7月に変更されました。
それに伴い司法修習のスケジュールも大幅に変更されました。
ここからは、その新しいスケジュール(77期)と、具体的な修習の内容を解説します。
まず主要な日程は以下の表のとおりです。
修習内容 | 実施期間 |
---|---|
導入修習 | 2024年3月21日~ 4月12日 |
分野別実務修習 | 2024年4月16日~ 11月20日 |
集合修習① 東京・横浜など※ |
11月中旬~ 2025年1月中旬 |
集合修習② ①の地域以外 |
2025年1月中旬~ 2月下旬 |
選択型実務修習① 東京・横浜など |
2025年1月中旬~ 2月下旬 |
選択型実務修習② ①の地域以外 |
11月中旬~ 2025年1月中旬 |
※①の修習地:東京・立川・横浜・さいたま・千葉・大阪・京都・神戸・奈良・大津・和歌山
次に、それぞれの修習内容について概要を紹介します。
導入修習
最初に約1カ月間実施されるのが、司法実務に関する基礎的な知識と能力を高める導入修習です。
司法試験に合格したばかりの司法修習生全員が、埼玉県和光市の司法研修所で集中的な研修を受けます。この期間の住居や食事は、修習生自身で手配しなければなりません。
分野別実務修習
分野別実務修習は最も長期にわたる研修で、民事裁判・刑事裁判・検察・弁護の4分野を、それぞれ2カ月ずつ実務的に学びます。
ここからは全国各地に分散して修習が実施され、主に地方裁判所・地方検察庁・弁護士会の実務家が指導を担当します。
実際の裁判を傍聴するのはもちろん、裁判官や検察官との意見交換や、法律相談のような弁護士会の活動を体験するなど、法曹の実務全般を幅広く学びます。
選択型実務修習
分野別実務修習を修了してから、今度は選択型実務修習でさらに具体的な実務を学びます。
複数の個別修習プログラムの中から、今後の進路に関わるものや興味のあるものを選択し、より深く実務の知識や能力を磨くことになります。
修習は分野別実務修習で弁護修習を体験した弁護士事務所を拠点に実施され、既定のプログラムに加えて自ら修習先を開拓することも可能です。
集合修習
集合修習は、民事裁判・刑事裁判・検察・民事弁護・刑事弁護の5科目について、再度司法研修所で実習が行われます。科目ごとにクラス分けされ、担当教官が指導を実施するシステムです。
修習用の事件記録をもとにした起案に関する指導が中心で、修習生同士による討論や教官による添削などが行われます。期間は約2カ月です。
分野別実務修習が終わってから、選択型実務修習に進むか集合修習に進むかは、修習を受ける地域ごとに異なります。いずれにしても、すべての修習を修了した時点で司法修習生考試を受け、合格すると司法修習が完了します。
司法修習生考試(二回試験)とは
司法修習を無事に修了すると、卒業試験にあたる司法修習生考試、通称「二回試験」が待っています。この二回試験に合格しないと、法曹界にデビューできません。
合格率は100%近い試験ですが、難易度はかなり高いので油断はできません。
試験科目は民事裁判・刑事裁判・検察・民事弁護・刑事弁護の5つで、各科目100ページほどの事件記録簿をもとに、起案作成に関する設問に答えるという内容です。
これらは集合修習で実施される内容に準拠しているため、どれだけまじめに集合修習に取り組むかが合否を分けることになるでしょう。
合格率が高いとはいえ、試験は1科目あたり7時間半もかかり、それが5日間続くという精神的にも肉体的にもハードなものです。もしも不合格になると、再度受験するためには翌年まで待つ必要があることも、大きなプレッシャーになるかもしれません。
司法修習生は二回試験の受験前に、通常は就職先から内定をもらっています。そのため不合格になってしまうと、ほとんどの場合は内定が取り消されます。絶対に落とせない試験だといえるでしょう。
2024年5月時点では、まだ司法修習生考試の日程は発表されていません。ただし、過去のスケジュールを参考にすると、2025年3月上旬に実施されて、3月中には合格発表が行われると予想されています。
司法修習生の給与事情
司法修習生は修習専念義務により、やむを得ない事情で最高裁判所の許可を得る場合を除き、アルバイトなどの副業は禁止されます。そのため司法修習の1年間は、国からの給付金によって生活することになります。
2017年に裁判所法が改正され、修習給付金制度により司法修習生には月額135,000円が支給されます。35,000円を上限に住居手当も支給され、転居が必要な場合は移転距離に応じた移転給付金も付与されます。
いずれも貸付ではなく給付なので、将来返済する義務はありません。
もしも扶養家族がある場合などで、給付金だけでは生活が難しいケースでは、最高裁判所が貸与する修習専念資金を利用することも可能です。基本額は1単位100,000円で、最大13回の貸与により130万円まで借りられます。
実際に毎月給付される170,000円を基準に生活を考えると、首都圏では家賃が高いため、住居費がかなりの負担になるでしょう。
修習に通う場合も交通費は自己負担であり、水道光熱費などの固定費も含めれば、食費や自由に使えるお金を節約することになるはずです。
修習期間中は何度か転居が必要になるため、その都度敷金や礼金が発生する物件ではなく、短期賃貸マンションなどを利用する修習生が多いようです。
また修習給付金は雑所得扱いになるので、確定申告もしなければなりません。
司法修習後のキャリア
法科大学院在学中の受験が可能になったことにより、2023年の司法試験合格者数は大幅に増加しました。今後も同程度の合格者数で推移すると予測されることから、司法修習後のキャリアプランは早めに立てておく必要があるでしょう。
裁判官や検察官を目指す場合には、実務修習、集合修習及び司法修習生考試の成績と面接により採用の可否が決まります。
弁護士として働くケースでは、法律事務所や一般企業に就職するか、自分で事務所を開設するかを選択します。以下に司法修習後のキャリアについて、簡単にまとめてみます。
裁判官
裁判官として働く場合、まずは判事補という役職からスタートして、3人以上で審議を行う合議審を担当します。
さらに判事補で10年以上の経験を積むと、判事として単独の審議を担当できるようになります。
法曹の中でも最も狭き門とされるのが裁判官ですが、一度弁護士を経験してから弁護士任官という方法で裁判官になることもできます。
検察官
検察官は主に検察庁に所属して、刑事事件の捜査や訴訟への対応などを行います。 新任の検察官は検事としてキャリアをスタートし、経験と実績によって検事正、さらに検事長へとキャリアアップします。
また法務省の管轄下で、刑法や刑事訴訟法などの検討・見直しを担当する業務もあります。
弁護士
弁護士として最もメジャーな働き方は、法律事務所に就職することです。大手法律事務所を目指す場合には、司法試験前に就職活動を始めて、合格発表前には内定をもらう必要があります。
一般的な法律事務所では、合格発表後に採用が決まるケースも多いようです。
インハウスローヤー
近年増えてきた働き方の1つで、一般企業に就職し専門家として企業法務全般を担当します。
法務以外に携わるチャンスもあり、経営に関わるポジションを狙えるなど、法曹とは異なるキャリアを積むことができます。
独立開業(即独)
リスクは大きいですが、司法修習後に独立開業することも可能です。自分だけで法律事務所を開設するほか、別の事務所を間借りして開業したり、自宅で開業するケースもあります。
まとめ
法曹を目指す皆さんにとって、司法試験は1つの大きな関門ですが、そこを通過すればすぐに仕事で活躍できるわけではありません。
司法修習で1年間実務経験を積んでから、最終試験にパスしてはじめて法曹界に進めるのです。
司法修習の1年間は、その後のキャリアを決めるための非常に重要な期間です。この研修にどれだけ真剣に取り組むかで、職に就いてからの評価が変わってしまいます。
1年間、精神的にも肉体的にも、そして金銭的にも厳しい経験をすることになりますが、即戦力として活躍するためのチャンスととらえることが重要でしょう。
この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、新卒でITベンダーに入社し、営業としてエネルギー業界のお客様を担当。その後、損害保険会社で法務業務に従事。
キャリアアドバイザーとしてMS-Japanに入社後は、法務、弁護士、法科大学院修了生などリーガル領域を中心に担当。
人事・総務 ・ 法務 ・ 法律・特許事務所 ・ 役員・その他 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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