税理士試験の合格者数・合格率は?受験者増と難化の要因を分析

税理士試験は、例年8月上旬に試験が行われ、11月下旬に合格発表があります。
令和7年度(第75回)の試験は8月5日~7日に実施予定で、合格発表は11月28日を予定しています。
この記事では、税理士試験の合格発表に関する情報や、過去の合格率の推移、試験後の就職・転職活動について詳しく解説します。
過去5年間における税理士試験の受験者数・合格者数・合格率の推移
以下は、過去5年間の受験者数と合格者数、合格率の推移をまとめた表です。
年度 | 第70回 令和2年度 (2020) |
第71回 令和3年度 (2021) |
第72回 令和4年度 (2022) |
第73回 令和5年度 (2023) |
第74回 令和6年度 (2024) |
---|---|---|---|---|---|
受験者数 | 26,673人 | 27,299人 | 28,853人 | 32,893人 | 34,757人 |
一部科目 合格者数 |
4,754人 | 4,554人 | 5,006人 | 6,525人 | 5,184人 |
官報合格者数 | 648人 | 585人 | 620人 | 600人 | 578人 |
合格者合計 | 5,402人 | 5,139人 | 5,626人 | 7,125人 | 5,762人 |
合格率 | 20.3% | 18.8% | 19.5% | 21.7% | 16.6% |
上記の表を見てわかる通り、令和5年度の受験者数は前年比+4,040人と大幅に増加しました。
これは、受験資格要件の緩和により、新たな層が試験に挑戦しやすくなったことを示しています。
令和6年度はさらに1,864人増加し、過去最高の受験者数となりました。
このことから、受験資格緩和の影響は一過性のものではなく、継続的に受験者数の増加につながっていることがわかります。
一方で、受験者数が過去最高を記録した令和6年度は、合格率が16.6%と大幅に低下し、過去5年間で最も低い水準となりました。
※参考
・
国税庁「令和6年度(第74回)税理士試験結果」
・
国税庁「令和5年度(第73回)税理士試験結果」
・
国税庁「令和4年度(第72回)税理士試験結果」
・
国税庁「令和3年度(第71回)税理士試験結果」
・
国税庁「令和2年度(第70回)税理士試験結果」
【年齢別】税理士試験の合格者数と合格率
以下は、年齢別に見た受験者数、合格者数の比較表です。
年齢 | 令和5年 (2023) 受験者数 |
令和6年 (2024) 受験者数 |
前年との差 |
---|---|---|---|
25歳以下 | 7,023人 | 7,781人 | +758人 |
26〜30歳 | 4,916人 | 5,775人 | +859人 |
31〜35歳 | 4,973人 | 4,990人 | +17人 |
36〜40歳 | 4,619人 | 4,668人 | +49人 |
41歳以上 | 11,362人 | 11,543人 | +181人 |
令和5年度と令和6年度の年齢別受験者数を比較すると、すべての年代で受験者数が増加しました。
特に25歳以下および26~30歳の若手層が大きく増加しています。
これは簿記論・財務諸表論の受験資格撤廃により、試験へのハードルが下がったことが背景にあると考えられます。
高齢化が進む税理士業界にとって、若手の受験者層の拡大は、業界の将来を担う人材確保の観点から歓迎すべき傾向です。
年齢別 | 令和5年 (2023) 合格者数 |
令和6年 (2024) 合格者数 |
前年との差 |
---|---|---|---|
25歳以下 | 2,175人 | 2,103人 | -72人 |
26〜30歳 | 1,332人 | 1,131人 | -201人 |
31〜35歳 | 1,168人 | 887人 | -281人 |
36〜40歳 | 962人 | 669人 | -293人 |
41歳以上 | 1,488人 | 972人 | -516人 |
次に、令和5年度と令和6年度の合格者数を比較すると、すべての年代で合格者数が減少しました。
合格者数の減少要因を詳しく分析するため、次に科目別の受験者数・合格者数・合格率を見ていきましょう。
※参考
・
国税庁「令和6年度(第74回)税理士試験結果(学歴別・年齢別)」
・
国税庁「令和5年度(第73回)税理士試験結果(学歴別・年齢別)」
【科目別】税理士試験の受験者数・合格者数・合格率
以下は科目別に受験者数・合格者数・合格率をまとめた表です。
科目 | 6年度 受験者数 |
6年度 合格者数 |
6年度 合格率 |
[参考] 5年度合格率 |
前年との差 |
---|---|---|---|---|---|
簿記論 | 17,711 人 | 3,076 人 | 17.4% | 17.4% | 0.0% |
財務諸表論 | 13,665 人 | 1,099 人 | 8.0% | 28.1% | -20.1% |
所得税法 | 1,195 人 | 150 人 | 12.6% | 13.8% | -1.2% |
法人税法 | 3,593 人 | 588 人 | 16.4% | 14.0% | 2.4% |
相続税法 | 2,515 人 | 471 人 | 18.7% | 11.6% | 7.1% |
消費税法 | 7,206 人 | 740 人 | 10.3% | 11.9% | -1.6% |
酒税法 | 528 人 | 64 人 | 12.1% | 12.7% | -0.6% |
国税徴収法 | 1,670 人 | 217 人 | 13.0% | 13.9% | -0.9% |
住民税 | 461 人 | 84 人 | 18.2% | 14.7% | 3.5% |
事業税 | 249 人 | 34 人 | 13.7% | 16.4% | -2.7% |
固定資産税 | 893 人 | 161 人 | 18.0% | 17.3% | 0.7% |
合計 | 49,676 人 | 6,684 人 | 13.5% | 18.8% | -5.3% |
令和5年度と令和6年度を比較して、簿記論の合格率は前年と同じ17.4%で、変動は見られませんでした。
最も大きく合格率が変動した科目は財務諸表論であり、令和6年度は8%、令和5年度は28.1%と、20.1ポイントも合格率が減少しています。
財務諸表論の合格率は例年10〜20%台で推移しているため、令和6年度の8.0%という数値は際立って低く、試験の難易度が著しく高かったことを示唆しています。
税法科目の中では相続税法の合格率が大きく上昇しており、令和5年度から7.1ポイント増の18.7%となりました。
18.7%は令和に入ってから最も高い合格率であり、難易度が高いことで知られる相続税法において、例年に比べて多くの合格者が出た年度となりました。
また、同様に試験難易度の高い法人税法も2.4ポイント増の16.4%と、こちらも令和に入って最も高い合格率となっています。
税法科目においては相続税法を除いておおむね3%前後の合格率増減となっているため、合格者数・合格率の減少は財務諸表論の試験難度が非常に高かったことが大きな要因といえるでしょう。
※参考
・
国税庁「令和6年度(第74回)税理士試験結果(科目別)」
・
国税庁「令和5年度(第73回)税理士試験結果(科目別)」
税理士試験の受験資格緩和について
令和4年の税理士法改正により、令和5年度の税理士試験から受験資格要件が大幅に緩和され、特に学識に関する要件が広がりました。
以下をご参照ください。
簿記論・財務諸表論
【従来】
高校生や大学1・2年生が受験するには
簿記1級合格等の受験資格要件を満たす必要あり


【令和5年度から】
受験資格要件が撤廃
(誰でも受験可能)
税法科目
【従来】
「法律学又は経済学」に属する科目を少なくとも
1科目は履修


【令和5年度から】
「社会科学」に属する科目を少なくとも
1科目は履修
従来は、簿記論と財務諸表論について、日商簿記1級や大学・専門学校の学識要件などを満たす必要がありましたが、改正後は受験資格が撤廃されたため、どなたでも受験が可能です。
税法科目については、「社会科学」に属する科目を少なくとも1科目履修していれば受験できるため、文学部や理工学部の大学生・卒業生の方にも受験の可能性が広がっています。
※「社会科学」に属する科目とは、「法律学又は経済学に属する科目」に該当していた科目のほか、社会学、政治学、行政学、政策学、ビジネス学、コミュニケーション学、教育学、福祉学、心理学、統計学等の科目が該当します。
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まとめ
この記事では、税理士試験の合格者数や合格率について、過去5年間のデータに基づいて解説しました。
税理士試験は毎年8月に実施され、11月下旬に合格発表が行われます。
令和6年度は受験者数が増加した一方で、財務諸表論をはじめとした一部科目の難化により、合格率は全体的に低下しました。
受験資格の緩和によって若年層の受験者が増加するなど、受験環境にも変化が見られます。
合格後はすぐに税理士として働けるわけではなく、税理士登録の手続きや、勤務先の選定など、次のステップへの備えが必要です。
特に合格発表直後は、多くの会計事務所が採用活動を活発化させる一方で、求職者の動きも加速するため、出遅れてしまうと希望条件に合う求人を逃す可能性があります。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー

大学卒業後、新卒でMS-Japanに入社。
法律事務所・会計事務所・監査法人・FAS系コンサルティングファーム等の士業領域において事務所側担当として採用支援に従事。その後、事務所側担当兼キャリアアドバイザーとして一気通貫で担当。
会計事務所・監査法人 ・ 法律・特許事務所 ・ コンサルティング ・ 金融 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 税理士科目合格 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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