税理士の平均年齢は60歳以上!? 5つの理由とリアルな現状を解説
税理士の平均年齢は60歳以上となっており、年齢層の割合を見ても60歳代が最も多いです。これから税理士を目指す若い世代においては、「なぜ税理士業界で高齢化が進んでいるのか」「若くても税理士の需要はある?」などと気になっている方もいるかもしれません。
そこで今回は「税理士の平均年齢」に注目し、高齢化している理由や若手税理士の需要について詳しくまとめました。また、税理士になるまでの流れも解説しながら、税理士の転職成功事例もあわせてご紹介します。
税理士の平均年齢は60歳以上
税理士の平均年齢は60歳以上といわれています。 その実態は、税理士の年齢ごとの割合を見てみるとわかります。
出典:日本税理士連合会『第6回税理士実態調査』(平成26年1月1日現在、32,747人対象)より作成
上のグラフは、日本税理士連合会により行われた「第6回税理士実態調査」から、税理士の年代別の割合をまとめたものです。 このグラフを見ると、一般の企業や官公庁などでは定年となる年齢である「60歳代以上」が過半数を占めています。
それに対して、20代はわずか1%(正確なデータでは0.6%)、30代も10%です。 税理士が高齢化しているのがわかります。
税理士試験の年齢割合
税理士の高齢化には、「税理士試験」の実態も大きく関係しています。ここでは国税庁によって公表されている「令和5年度(第73回)税理士試験結果」をもとに、税理士試験受験者の年齢割合をチェックしてみましょう。
年齢層 | 税理士試験受験者数 | 税理士試験合格者数 |
---|---|---|
20歳以下 | 1,328人 | 481人 |
21~25歳 | 5,695人 | 1,694人 |
26~30歳 | 4,916人 | 1,332人 |
31~35歳 | 4,973人 | 1,168人 |
36~40歳 | 4,619人 | 962人 |
41歳以上 | 11,362人 | 1,488人 |
合計 | 32,893人 | 7,125人 |
税理士試験受験者で一番多い年齢層は「41歳以上」で、全体の34.5%を占めています。対して、若年層である「20歳以下」は4.0%、「21~25歳」は17.3%となっています。
また、税理士試験合格者においては「21~25歳」が1,694人と最多であるものの、次点で「41歳以上」が1,488人と続く結果となりました。若年層の合格者数は年々増えてきているものの、41歳以上が占める割合は未だに大きく、その点も税理士の平均年齢を上げているひとつの要因であると考えられます。
税理士の平均年齢が高い理由は?
税理士の平均年齢が高い理由としては、主に下記の5点が挙げられます。
・定年がない
・税理士の試験制度
・長期的に続けやすい業務
・後継者不足
なぜ上記の点が税理士の高齢化に関係しているのか、以下で詳しく見ていきましょう。
税務署OBの税理士が多い
税理士が高齢化している理由の第一は、税務署OBが税理士になるケースが多いことがあげられます。 税務署OBが税理士になることが多いのは、税務署OBは税理士試験が、一部あるいはすべて免除されるからです。 まず、10年または15年税務署に勤務した国税従事者は、税理士試験のうち税法に関する科目が免除されます。 また、23年または28年以上税務署に勤務した国税従事者は、税理士試験のうち会計学に属する科目が免除されます。 すなわち、税務署に23年または28年勤務した場合には、税理士試験を全く受けずに税理士になることができるわけです。
税務署に23年間勤務してから税理士になると、22歳で税務署に入署したとして45歳。 新人として税理士になった時点で、すでに40代半ばになっているわけです。 税務署のOBは、定年まで税務署に勤務して、60代になってから税理士になる人も多くいます。
このことが、税理士が高齢化する大きな理由だといえます。
定年がない
税理士が高齢化する理由として、「定年がない」ことも大きいです。 税理士は自分で「やめたい」と思わない限り、いくらでも税理士を続けることができます。
また、税理士は多くが企業と「顧問契約」をした上で業務をします。 企業にとっては、長年にわたって自社の経営状態を把握している顧問税理士を変更することにはリスクがあるため、一度顧問契約をした税理士は、顧問税理士を長く続けるケースが多くあります。
税理士の試験制度
税理士試験制度にも、税理士が高齢化する理由があります。 上のグラフで見たとおり、税理士試験の受験者数および合格者数は、「41歳以上」が最も多くなっています。
税理士試験は「科目合格」の制度があります。 ある科目に合格すれば、その「合格」は生涯にわたって有効です。 したがって、多くの人が5年~10年の期間をかけ、1科目ずつの合格を積み重ねながら税理士資格を目指します。
税理士試験の5科目合格までに「7年」がかかったとすれば、大学1年生である19歳から取り組んだ場合でも、26歳になっていることになります。 この科目合格の制度も、税理士試験の受験者・合格者が高齢化する理由であるといえるでしょう。
長期的に続けやすい業務
税理士は法人税や所得税といった各種税金における納税のアドバイスをはじめ、申告書の作成や経営・存続に関するコンサルティングなどを行う仕事であり、業務内容としても長期的に続けやすい印象です。また、顧問契約によってクライアントとの結びつきが強くなりやすいため、高齢になっても税理士を続ける方が多い点も税理士の高齢化を加速させている要因となっています。
後継者不足
後継者問題を抱える税理士事務所が多いことも、税理士の平均年齢が高い理由のひとつです。税理士になるためには難関資格を突破しなければならず、他の職種と比較すると跡継ぎ探しが難航しやすい傾向があります。
いくら「早く現役を引退したい」と思っても、後継者が見つからなければ自分ができる限り続けるか、事務所を畳むしかありません。もちろん廃業することはなるべく避けたいと考える方が多く、高齢になっても退かずに現役で税理士の仕事をし続けるケースが多々みられます。
若手税理士は需要がある!
平均年齢が高い税理士業界において、若手税理士の割合は非常に少ないです。なかには「若手だと採用されにくいのでは?」と不安を感じる方もいるかもしれませんが、実は若手が少ないからこそ『ビジネスチャンス』とポジティブに捉えることもできます。
ここでは若手税理士の概要や強みを押さえておきましょう。
若手税理士とは
明確な定義はありませんが、一般的には20~40代の税理士を「若手税理士」と表現します。若手税理士にはベテラン税理士とは異なる魅力があり、その違いを強みとして税理士業務に発揮することで他者との差別化を図ることが可能です。
若手税理士の強み
若手税理士には、主に下記のような強みがあります。
・AIツールの活用
・トレンドに対する情報取集力
具体的にどのような点でベテラン税理士との差別化を図れるのか、以下で詳しく見ていきましょう。
SNSの活用
若手税理士はTwitterやインスタグラムといったSNSの活用に慣れていることが多く、集客や知名度向上への取り組みを効率的に遂行できます。
AIツールの活用
AIツールなどの最新技術をスムーズに取り入れられることも、若手税理士ならではの強みです。単純な事務作業をAIに任せ、自身は専門性の高い業務に特化するなど、効率的な働き方を実践できます。
トレンドに対する情報取集力
税制は頻繁に改正されることから、常にアンテナを張って最新の情報をキャッチする必要があります。若い世代の方は情報取集力に長けているほか柔軟性も高いため、常にトレンドを取り入れながら世の中のニーズにマッチした業務を提供できるでしょう。
税理士になるまでの流れは?
税理士になるためには、まずは税理士試験への合格が必要です。税理士試験の会計学科目(簿記論・財務諸表論)に受験資格がなく誰でも受験可能ですが、税法科目(簿記論・財務諸表論)については下記で挙げる「学識」「資格」「職歴」「認定」のいずれか1つに当てはまることが求められます。
学識 |
・大学、短大又は高等専門学校を卒業した者で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者 ・大学3年次以上の学生で社会科学に属する科目を含め62単位以上を取得した者 ・専修学校の専門課程(①修業年限が2年以上かつ②課程の修了に必要な総授業時数が1,700時間以上に限る。)を修了した者等で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者 ・司法試験に合格した者 ・旧司法試験法の規定による司法試験の第二次試験又は旧司法試験の第二次試験に合格した者 ・公認会計士試験短答式試験合格者(平成18年度以降の合格者に限る。) ・公認会計士試験短答式試験全科目免除者 |
資格 |
・日商簿記検定1級合格者 ・全経簿記能力検定上級合格者 ・会計士補(もしくは会計士補となる資格を有する者) など |
職歴 |
・弁理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、不動産鑑定士などの業務 ・法人又は事業を営む個人の会計に関する事務 ・税理士、弁護士、公認会計士などの補助の事務 ・税務官公署における事務、またはその他の官公署における国税あるいは地方税に関する事務 ・行政機関における会計検査などに関する事務 ・銀行などにおける貸し付けなどに関する事務 |
認定 |
国税審議会により受験資格に関して個別認定を受けた者 |
出典:
受験資格について|国税庁
なお、税理士試験に合格するためには、必修科目である「簿記論」と「財務諸表論」、および選択必修科目および選択科目の全11科目から5科目の合格が必要です。ただし、1度の受験で5科目すべて合格する必要はなく、1度合格すると生涯有効となることから、受験者の多くは、毎年1~2科目を受験しながら数年かけて5科目合格を目指します。
税理士試験に合格したら、管轄の税理士会に登録申請を行い、日本税理士会連合会の名簿への登録が完了すると税理士業務を開始できます。
税理士としてのキャリアを目指すために転職された方々の事例
ここでは、税理士としてのキャリアを目指すために転職された方々の事例をご紹介します。
税理士試験合格を機に大手企業への転職に成功!30代・女性の事例
Kさん(35歳・女性)
転職前:中小企業 年収580万円
転職後:大手企業 年収560万円
税理士試験に合格されたことを機に、「より専門的な税務会計業務にチャレンジしたい」といった新たな目標に向けて転職活動を開始。当初は税務未経験でも希望年収へのこだわりが強く、そのギャップによって転職活動は難航します。
しかし、年収ではなく「実務経験を積める企業」へとターゲットを移して活動を行ったところ、いくつかの企業で選考へと進めるようになりました。そして、最終的には外資系企業から内定を獲得し、成果をしっかりと評価してくれる社風を気に入られて入社へと至りました。
働きながら税理士資格を取得!税務未経験でも大手企業へのキャリアチェンジに成功!
Yさん(39歳・男性)
転職前:中堅税理士法人 年収700万円
転職後:大手国内上場メーカー 年収700万円
税理士法人のバックオフィスで勤務しながら税理士試験取得に向けて猛勉強し、合格を機にキャリアチェンジを決断されたYさん。税務未経験ながらも大手メーカーで海外展開を積極的に実施している企業への転職を志し、入念な面接対策によって見事内定を勝ち取ります。
就業しながら税理士試験勉強に励んだことや、税務分野に向けた興味・関心の高さを効果的にアピールできたことが転職成功へとつながった印象です。
税理士試験合格を機に、独立開業への夢を叶える転職に成功した40代男性の事例
Bさん(46歳/男性)
転職前:個人事務所 年収450万円
転職後:小規模税理士法人 年収530万円
Bさんは小規模会計事務所で勤務しながら税理士資格の勉強を続け、合格をきっかけに独立開業への想いが強まります。しかし、リスクへの不安も大きかったことから「今すぐに独立すべきかどうか」とMS Agentへ相談。まずは独立の夢を叶えるための準備を行えるような転職先を探すことを提案し、最終的には将来の共同経営者候補を募集しており、業績連動型の報酬体系をもつ共同事務所への転職を遂げられました。
資格取得後すぐの開業はリスクが大きいですが、その準備として独立を疑似体験できるような事務所を選んだことで、よりスマートに独立開業の夢を目指せるでしょう。
税理士の求人例
上場企業のコンサル及びPBに強みをもつ優良会計事務所にて会計士税理士有資格者の募集
仕事内容 |
・資産税、事業承継コンサルティング ・連結納税コンサルティング ・組織再編税務コンサルティング ・財務デューデリジェンス、企業価値算定業務 ・税務意見書作成業務 <PB業務> ・事業承継(相続)コンサルティング ・事業再編、M&A業務 ・資産流動化サービス(金融商品等含む) |
必要な経験・能力 |
・会計士、税理士、税理士科目合格者、会計士試験合格者 |
想定年収 |
340万円 ~ 1,200万円 |
東証プライム上場/売上1兆超の独立系商社より経理担当者の募集
仕事内容 |
ご経験やスキルに応じて、以下の業務をお任せ致します。 ・連結決算業務(制度会計)、決算に関わる分析業務 ・決算単身、会社法書類、金融商品取引法書類の作成業務 ・確定申告業務(法人税、消費税、地方税)、海外子会社の監査対応 ・その他各種プロジェクト案件への対応(新収益基準整備など) ・グループ、子会社の単体決算対応 |
必要な経験・能力 |
<必須> ・単体もしくは連結決算のご経験を含む経理経験(3年以上目安) <歓迎> ・会計士、税理士資格(USCPA等関連する資格を含む)お持ちの方 ・上場企業での経理経験 ・子会社の管理経験 ・文書読解やメールやり取り程度の英語力 |
想定年収 |
600万円 ~ 1,200万円 |
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まとめ
税理士の平均年齢は60歳以上といわれており、その要因としては税務署OBの税理士が多いこと、定年がないこと、長く続けやすい業務であることなどが挙げられます。とはいえ、「若年層=税理士への転職が難しい」といったわけではなく、むしろ若さゆえの強みによってベテラン税理士との差別化を図ることで転職成功やキャリアアップを目指しやすい職種です。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、大手信用金庫に入庫。個人・法人営業及びビジネスマッチング等に従事。
MS-Japanに入社後は、横浜支社の立ち上げに加え、経理・人事・法務・経営企画・公認会計士・税理士等、幅広い職種のマッチングに従事。
2021年より東京本社へ異動後は、公認会計士・税理士・弁護士・社労士等の士業を専門とするJ事業部の管理職を務める傍らプレイヤーとしても従事。
会計事務所・監査法人 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 税理士科目合格 ・ USCPA を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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