税理士試験とは?科目別合格率と難易度、おすすめの科目は?
税理士資格は、取得することができれば転職や独立する際に有利に働き、今後のキャリアに活かせる資格です。税理士試験を受けるにあたり、「日商簿記試験と難易度はどの程度違うのか」「複数ある中でどの科目を受けるべきか」と気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、税理士資格を受験する上で税理士試験の概要や簿記との違い、キャリアと科目選択などについて解説します。
税理士試験とは?税理士試験の試験科目や日程
税理士試験とは?
税理士試験とは、税理士資格を取得するための試験であり、会計学に属する科目と税法に属する科目の受験が必要です。
資格取得のためには合計5科目の合格が求められますが、5科目全てを一度に合格する必要はなく、受験の回数制限も設けられていません。
累計5科目以上合格できたら、税理士試験に合格ということになります。
税理士になる流れ
税理士になるためには、まず税理士試験に合格しなくてはなりません。
税理士試験は、後述する必修科目、選択必修科目および選択科目全11科目のなかから5科目の合格が必要です。
科目の合格は生涯にわたって有効です。
したがって多くの税理士試験受験者は、毎年1~2科目を受験しながら数年をかけて5科目合格を目指します。
税理士試験に合格したら、税理士事務所所在地の税理士会に入会金と会費を支払い、登録申請を行います。
日本税理士会連合会の名簿に登録されれば、税理士としての業務を行うことができます。
税理士試験の試験科目
税理士試験の試験科目を見てみましょう。
税理士試験の必修科目は会計学に属する
・簿記論
・財務諸表論
の2科目です。税理士試験に合格するには、これら2つは必ず合格しなくてはなりません。
選択必修科目は、
・所得税法、
・法人税法、
の2科目です。どちらか1科目以上の合格が必要です。
選択科目は、
・消費税法または酒税法(どちらか1科目のみ選択可能)
・相続税法
・固定資産税
・国税徴収法
・住民税または事業税(どちらか1科目のみ選択可能)
の7科目です。このうち2科目以上の合格が必要です。
(選択必修科目を2科目合格している場合は、1科目のみの合格でも可。)
試験日程
税理士試験は、例年8月上旬の3日間で実施されます。
試験日程は、2024年(令和6年)の場合には以下のとおりです。
項目 | 日程 |
---|---|
試験実施官報公告 | 令和6年4月5日 |
受験申込受付開始 | 令和6年4月22日 |
受験申込受付締切 | 令和6年5月10日 |
試験実施 | 令和6年8月6日~ 令和6年8月8日 |
合格発表 | 令和6年11月29日 |
※日程については変更される可能性があります。国税庁の公告はまめに確認しましょう。
参考: 令和6年度(第74回)税理士試験実施スケジュールについて
受験料
受験料は、受験を申し込む科目数に応じて次のようになっています。
受験申込科目数 | 1科目 | 2科目 | 3科目 | 4科目 | 5科目 |
受験手数料 | 4,000円 | 5,500円 | 7,000円 | 8,500円 | 10,000円 |
受験地
税理士試験の受験地は、以下のうちから希望のものを選択します。
北海道、宮城県、埼玉県、東京都、石川県、愛知県、大阪府、広島県、香川県、福岡県、熊本県、沖縄県
ただし、受験者数などの状況に応じて変更になることがあります。
税理士試験の受験資格
税理士試験は会計学に属する2科目は誰でも受験が可能ですが、税法に属する科目には受験資格が必要です。受験資格は「学識」「資格」「職歴」「認定」の4種類に分かれており、いずれか1つに当てはまることが必要です。
学識
・大学、短大又は高等専門学校を卒業した者で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者
・大学3年次以上の学生で社会科学に属する科目を含め62単位以上を取得した者
・専修学校の専門課程(①修業年限が2年以上かつ②課程の修了に必要な総授業時数が1,700時間以上に限る。)を修了した者等で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者
・司法試験に合格した者
・旧司法試験法の規定による司法試験の第二次試験又は旧司法試験の第二次試験に合格した者
・公認会計士試験短答式試験合格者(平成18年度以降の合格者に限る。)
・公認会計士試験短答式試験全科目免除者
資格
・日商簿記検定1級合格者
・全経簿記能力検定上級合格者
・会計士補(もしくは会計士補となる資格を有する者)
など
職歴
・弁理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、不動産鑑定士などの業務
・法人又は事業を営む個人の会計に関する事務br>
・税理士、弁護士、公認会計士などの補助の事務
・税務官公署における事務、またはその他の官公署における国税あるいは地方税に関する事務
・行政機関における会計検査などに関する事務
・銀行などにおける貸し付けなどに関する事務
「認定」に関する受験資格は「国税審議会により受験資格に関して個別認定を受けた者」となっています。
税理士試験と簿記の比較
税理士試験の試験科目である「簿記論」は、日商簿記検定と重なる内容が多くあります。
簿記検定の3級であれば30%が、2級であれば60%が、そして1級であれば90%が、簿記論の試験範囲と重なるといわれています。
したがって、まず簿記検定を受験し、それから税理士試験を目指す人は多いです。
また、日商簿記1級の取得は、税理士試験の受験資格ともなっています。
もし受験資格がほかに当てはまらない場合には、まず簿記1級を取得することをおすすめします。日商簿記1級は難易度の高い試験のため、日商簿記1級を保有していること自体の評価も高く、転職や就職活動において有利に働くためです。
ただし、簿記検定の試験範囲や出題傾向は、簿記論と違うところも多くあります。
したがって、もし簿記1級を取得しなくても受験資格を満たす場合は、税理士試験を直接受験しても何も問題ありません。
【関連記事】
・
簿記から始める税理士試験!~簿記1級と簿記論の比較~
税理士資格を取得するメリット
税理士資格を取得するメリットを見てみましょう。
独立開業できる
税理士資格を取得すれば、税理士として独立開業ができます。
「一国一城の主」を目指す人にとっては、税理士は大きな選択肢だといえるでしょう。
生涯働ける
税理士として独立すれば、定年はありません。
自分が働きたいときまで、生涯にわたって働くこともできます。
転職しやすい
税理士資格取得者の転職市場におけるニーズは高いです。
したがって、転職しやすいことも税理士資格取得のメリットです。
引っ越しなどで、どのような地域へ行っても転職先を見つけることができるでしょう。
税理士資格を取得するデメリット
資格取得までに時間や費用が必要
もちろん人にもよりますが、税理士資格取得までには、一般的に約4,000時間程度の勉強が必要と言われています。
多くの時間を要するとともに、教材や予備校代など、経済的な負担も大きいです。
科目別の受験者数・合計合格者数・合格率
11科目ある税理士試験の令和5年度の受験者・合格者数・合格率です。
科目 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 前年度合格率 |
---|---|---|---|---|
簿記論 | 16,093人 | 2,794人 | 17.4% | 23.0% |
財務諸表論 | 13,260人 | 3,726人 | 28.1% | 14.8% |
所得税法 | 1,202人 | 166人 | 13.8% | 14.1% |
法人税法 | 3,550人 | 497人 | 14.0% | 12.3% |
相続税法 | 2,428人 | 282人 | 11.6% | 14.2% |
消費税法 | 6,756人 | 802人 | 11.9% | 11.4% |
酒税法 | 463人 | 59人 | 12.7% | 13.2% |
国税徴収法 | 1,646人 | 228人 | 13.9% | 13.8% |
住民税 | 462人 | 68人 | 14.7% | 17.2% |
事業税 | 250人 | 41人 | 16.4% | 14.1% |
固定資産税 | 846人 | 146人 | 17.3% | 18.4% |
合計(延人員) | 46,956人 | 8,809人 | 18.8% | 16.7% |
<令和5年度税理士試験の振り返り>
・令和5年試験より受験資格が緩和されたことで、合計(延人員)の受験者数は前年度と比較して9,283人増加。
・簿記論と財務諸表論は受験資格の制限がなくなった影響もあり、科目別の合格率は簿記論が5.6%減少、 財務諸表論が13.3%増加と大きく変動。
・令和5年度の税理士試験で唯一財務諸表論は合格率が20%台であった。
評価される税理士試験科目は?
ここでは評価されやすい試験科目をご紹介します。
法人税法
法人税は国税収入額の中でも2番目に多く、どの会計事務所でも法人税関連の知識は必要とされ、実務で使う機会が多いことから重要視される科目です。
所得税法
国税収入額トップであり、個人の一年間の所得に対して課される国税で、実務でも使われる大変重要な科目です。
消費税法
消費税法は会計事務所の業務では、ほぼ必ずと言っていいほど利用する知識が体系的に身につくため、評価されています。
法人税法、所得税法と同じく、実務に活かせる科目として評価されます。
簿記論・財務諸表論・法人税法・消費税法・所得税法は、評価される王道の科目で長年会計業界から支持されてきました。
これらの科目に加えて、近年人気上昇中の科目として、相続税法、固定資産税が挙げられます。
相続税
相続税関連業務が増加する中で、特化型以外でも実務で使う機会が増えてきており、実務にもつながる機会が多いです。
固定資産税
相続関連業務のニーズの高まりに伴い、評価が高まってきた科目です。
地主の相続・不動産オーナーの財産承継等、固定資産税に関して知らなければならない案件も増えてきているため注目は高まっています。
一般的には、学習量の多い科目ほど評価される傾向にあります。特に、国税三法と呼ばれる法人税法・所得税法・相続税法の三科目は試験合格の難易度も非常に高いですが、それだけ高い評価を得られます。
逆に、ミニ税法と呼ばれる酒税法や国税徴収法は、学習量も少なく済むため、合格難易度はそこまで高くありませんが、実務上使用する機会は少ないため、必ずしも高い評価を得られるとは限りません。
キャリア別の評価される科目
税理士科目は、就職先や、歩みたいキャリアによっておすすめの組み合わせや科目は異なります。
法人向けサービスを展開する会計事務所
日本の全企業数のうち、99.7%が中小企業です。つまり、会計事務所が取り扱うマーケットが一番大きいのも中小企業支援であると言えます。
その分野は、簿記論・財務諸表論といった会計科目の基礎的な知識が必要です。
また、規模が大きくなるにつれ、特に上場企業を含む大企業向けの支援には、法人税の深い知識が必要とされます。
そういったことから、法人向けの支援をしている会計事務所では、簿記論・財務諸表論・法人税法がおすすめ科目といえるでしょう。
相続税に強い会計事務所
相続対策・申告に強い会計事務所での就職となると、実務で相続税や固定資産税の知識が不可欠となります。
近年、相続税のニーズが高まるにつれ、一般法人の支援をサービスとして取り扱わない相続税特化型の事務所も創業されてきています。
このような特化型の事務所では、相続税(または固定資産税)の税理士試験科目合格者を採用したい事務所が多いです。
科目別の難易度・合格までに要する学習時間
税理士試験の科目別勉強時間は、一般的に以下の表のように言われています。
科目名 | 平均勉強時間(目安) |
---|---|
簿記論 | 400~500時間 |
財務諸表論 | 400~500時間 |
所得税法 | 600~700時間 |
法人税法 | 600~700時間 |
相続税法 | 400~500時間 |
消費税法 | 300時間 |
酒税法 | 150時間 |
国税徴収法 | 150時間 |
住民税 | 200時間 |
事業税 | 200時間 |
固定資産税 | 250時間 |
選択科目、選択必須科目に関してはかなりの学習時間を要するため、1年に1科目のペースで合格することができれば、非常に順調なペースで試験合格が進んでいると言えるでしょう。
簿記論と財務諸表論に関しては、同時に学習を進めて、1年で2科目受験する方も多いです。税理士試験は基本的に計算問題と理論問題から構成されますが、簿記論だけは問題すべてが計算問題となります。
計算と理論をバランスよく学習するためにも、簿記論だけを学習するのではなく、財務諸表論も一緒に学習する方が多いためです。
上述の通り、国税三法に関しては評価が高いため、会計科目2科目と国税三法に合格すると就職・転職において非常に有利に働きますが、税理士試験受験者は社会人の方も非常に多いため、学習時間の確保が難しいケースも多いと思います。
また、試験科目との相性から、何年も苦戦していた税法科目合格が、受験科目を切り替えたら1年で合格できたケースなども少なからずありますので、ご自身の状況や、学習した際の手ごたえを勘案して、柔軟に受験科目を選択すると良いでしょう。
税理士試験合格を応援する会計事務所も増えている!
前述のとおり、多くの税理士試験受験者は、毎年1~2科目を受験しながら数年をかけて5科目合格を目指しますので、働きながら税理士試験の合格を目指す場合は勉強時間の確保が必要です。
近年は税理士試験受験者の減少傾向も影響して、人材の確保に努める会計事務所も増えてきており、税理士試験受験者の勉強を支援する事務所も増加中です。
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まとめ
税理士試験を5科目合格するためには努力が必要です。
5科目同時に一発合格するということは不可能に近いと言われるほど難易度が高く、ここ数十年の間でも同時合格者は数えるほどしか出ていないようです。
それだけ難しい税理士試験だからこそ、計画性を持って、あなたのキャリアに必要な科目合格に全力を尽くしていただきたいと思います。
必ずしも、上記のような科目を受験しなければならないということではありませんが、今後の受験計画を立てていく上でご参考にしていただけますと幸いです。
この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、大手出版系企業を経て現職へ入社。
主に大手・新興上場企業を対象とする法人営業職を4年、キャリアアドバイザーとして10年以上に及ぶ。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 会計事務所・監査法人 ・ コンサルティング ・ 役員・その他 ・ IPO ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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