税理士科目合格とは?科目ごとの難易度や年収への影響、転職市場での評価について解説
税理士試験は、科目ごとに合格することで資格取得への道を進められる特徴的な試験制度となっています。
資格取得までの道半ばであっても、転職市場や社内評価においては科目合格者であると評価されます。
この記事では、税理士試験の科目合格とは何かを解説し、各科目の難易度、年収への影響、そして転職市場での評価について詳しく見ていきます。
税理士を目指しながらキャリアを築こうとする方にとって、有益な情報をまとめていきますので、是非今後の参考にしてください。
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税理士科目合格者とは?
資格試験によっては、一回の試験ですべての科目の合計が合格基準点を超えていない限り、最初からやり直しになる流れが一般的です。司法試験などがそれにあたります。
一方で、一回の試験ですべて合格しなくても、科目ごとに一定の基準を超えていれば、その科目に関しては合格と判定され、次回以降にはその科目の受験が免除される試験もあります。
その資格試験の代表的な一つが、税理士試験です。
税理士科目は、以下の通りです。
会計学(必修2科目)
・簿記論
・財務諸表論
税法(選択3科目)
・所得税法
・法人税法
・相続税法
・消費税法
・酒税法
・国税徴収法
・住民税
・事業税
・固定資産税
(ただし、法人税法か所得税法は、必ずどちらか1科目を受験しなければならない、選択必修科目となります。)
税理士試験では、一回の試験で5科目すべてに合格しなければならないわけではなく、「税理士科目別合格」が適用されます。
一度合格すれば、5つの税理士科目に最終合格するまで、生涯にわたって、その税理士科目は合格として扱われます。
他の試験のように、総合点で不合格になれば、また最初からやり直しというようにはなりません。
社会人が働きながらでも、数年かけて着実に合格を目指していけるのが税理士試験の最大の特長であり、魅力でもあります。
税理士試験科目合格は、就職・転職で有利になるのか?
税理士科目5科目すべてに合格し、税理士資格を確保できていれば、それに越したことはありません。
しかし、税理士資格に満たないとしても、1〜2科目に合格しているなら、就職や転職時に採用担当者へのアピールが可能です。
税理士や公認会計士が開業している会計事務所・税理士事務所や、一般企業の経理部などでは、経理や会計コンサルティングを任せられるだけの知識や能力を身につけている人材(身に着けていけるポテンシャルがある人材)を求めています。
税理士試験の科目は全部で11科目あり、どれも合格率が低い難関試験です。
たとえ1科目であっても、合格には専門的な知識や計算力、論理的な思考力が欠かせません。
つまり、合格者は税務・会計に関する知識や能力が十分に備わっている人材として高く評価されます。
企業の採用試験に応募する際に、税理士試験の科目合格者である旨を履歴書に記載すれば、所有資格の面でアピールできるため、有利に就職活動を進められます。
企業にとって即戦力になり得る有望な人材と判断されるケースが多いことから、必ずしも税理士科目5科目すべてに受かっている必要はありません。
税理士試験は、一度ですべての科目に受かるより、数年かけて複数の科目に合格する人が多い試験です。
求人に応募した時点で合格科目が少なくても、ほかの科目試験も勉強中であることを採用担当者に対してアピールしましょう。
求人で必要資格に「税理士試験科目合格者」と記載されている場合は、基本的に1科目だけでも合格していれば、応募資格を満たしています。
近年では、税理士などの人材不足もあり、採用に苦戦する企業が少なくありません。
そのため、税理士資格保有者だけに限らず、科目合格者や未経験者を採用して育成するケースも増加している状況です。
科目合格者が評価される転職先は?
会計事務所・税理士法人
会計事務所・税理士法人は、税理士資格保有者しか行えない、税務代理や税務書類作成代理などの業務を取り扱う事務所もしくは法人です。
税理士試験科目合格者は、高度な会計・税務知識を活かして、税理士補助の業務に取り組めると見なされるので、採用担当者から高く評価されます。
会計事務所・税理士法人は、法人によって契約しているクライアントの規模や提供するサービスの種類などが異なります。
一般的に、中小企業や個人事業主を取引先とする事務所が多数派です。
ほかにも、上場企業やグローバルな企業を取引先とする大手税理士法人、新興企業やベンチャー企業を取引先とする国内独立系大手~中堅税理士法人などに分類されます。
それぞれ実務や求められる知識が異なるため、実務で役立つ科目を保有しているとなお有利です。
大手税理士法人への転職を目指す場合は、1科目でも可応募は可能ですが、2~3科目合格していると有利でしょう。
応募時の年齢が高くなると、合格科目数の多さも重視される点に注意しましょう。
会計事務所や税理士法人での勤務は、将来税理士を目指すにあたって、保有していない科目を勉強しながら税理士の実務を学べるなどのメリットがあります。
特化型の事務所
特化型の事務所とは、特定の分野を取り扱う会計事務所や税理士法人のことです。
医療や飲食業、建設業、資産税など、専門の分野・業種に関する会計・税務サービスを提供します。
ほかの会計・税理士事務所と異なるのは、特定の分野に関するノウハウを有し、一定の業種に対する充実したサービスを提供している点です。
特化型事務所の場合は、実務で使用する税務知識が限定されるケースもあるので、業務に関係する科目の知識を備えていることが重要で。
たとえば、資産税特化型の事務所の場合、「法人税法」よりも「相続税法」の科目保有者の方が採用時にアピールしやすく、有利に就職活動を行えます。
一般企業
一般企業の経理部門における経理・税務などの業務に応募する際にも、税理士試験科目に合格していると有利です。
特に会計に関する科目に合格している場合、会計処理に関する知識を企業の経理・会計業務に活用できるため、採用担当者から評価されやすくなります。
税務関連の担当者を募集している企業への応募では、各税法に合格していると、税金に関する知識が実務で活かせることを面接でアピールできます。
ただし、税務関連の業務を顧問税理士に依頼している企業などでは、簿記などの資格や実務経験を持つ人材を求めており、科目合格が重視されないケースもあります。
コンサルティング会社
コンサルティング会社は、企業の経営戦略・事業戦略・財務戦略の策定、M&A支援、企業組織の変更支援、株式公開支援など、企業の経営に関するさまざまな課題解決のサポートを行う会社です。
税理士資格保有者が評価されるのは、経営系、会計・税務系、戦略系などのコンサルティング会社です。
科目保有者は、財務会計や税務などの高度な知識が認められるため、企業の経営課題解決を行うコンサルティング会社への就職に有利です。
会計・税務の知識のほかに、論理的思考力や課題解決力、コミュニケーション能力なども求められます。
コンサルティング会社にはIT系などの分野もあり、取り扱っている内容によっては、科目合格が有利にならないケースもあります。
求人情報は、企業の事業内容を確認して判断しましょう。
どの税理士科目に合格していれば、転職に有利か
選択必須科目に合格している場合、転職時に高い評価を受けやすい傾向が見られます。
法人税法や所得税法は国税の中でも実務に直結する重要な科目であり、法人税法は企業向けの税務業務、所得税法は個人の所得に対する業務で必須となります。
消費税法は限定選択科目ですが、実務で頻繁に使うため、特に中小企業向け業務では重宝されます。
科目の評価は、学習範囲の広さや実務での使用頻度に左右され、法人税法・所得税法・相続税法のような広範囲にわたる税法科目ほど高い評価を得やすくなります。
税理士試験科目ごとの評価や難易度は?
直近2年の税理士試験科目別合格率
令和5年度・令和4年度の税理士試験の科目別合格率は以下のようになっています。
科目 | 令和5年度 | 令和4年度 |
---|---|---|
簿記論 | 17.4% | 23.0% |
財務諸表論 | 28.1% | 14.8% |
所得税法 | 13.8% | 14.1% |
法人税法 | 14.0% | 12.3% |
相続税法 | 11.6% | 14.2% |
消費税法 | 11.9% | 11.4% |
酒税法 | 12.7% | 13.2% |
国税徴収法 | 13.9% | 13.8% |
住民税 | 14.7% | 17.2% |
事業税 | 16.4% | 14.1% |
固定資産税 | 17.3% | 18.4% |
税理士試験の各科目の特徴
簿記論
税理士試験の必須科目で、企業活動の取引を帳簿に記録し、企業の財務状況を明確にする方法を学びます。
実務でも頻繁に使用されるため、科目合格は転職で評価されやすいです。
財務諸表論
税理士試験の必須科目で、企業の財務諸表を作成し、外部に報告するためのルールや方法を学びます。
簿記論と併せて重要で、実務に直結する科目です。
所得税法
選択必修科目の1つで、個人の所得に課税される所得税の種類や計算方法を学びます。
難易度が高く、個人事業主の税務に役立つため、転職時に高く評価されやすい科目です。
法人税法
選択必修科目の1つで、法人の所得に課税される法人税の計算方法を学びます。
実務でも頻繁に使用され、特に法人税関連業務に強みを持つ事務所から高評価を得やすい科目です。
相続税法
選択科目で、相続税・贈与税の計算や適用範囲を学びます。
近年、相続税業務が増加しており、相続税法に精通していると特定分野での転職に有利とされています。
消費税法
選択科目で、消費税の課税対象や税率、納税義務者の範囲を学びます。
実務に直結するため、中小企業や個人事業主向けの税務では特に重要視されます。
酒税法
選択科目であり、酒類に関する課税や製造方法を学びます。
実務での使用頻度は低いため、単独では評価されにくいものの、他科目と併せて合格すると一定の評価を受けられます。
国税徴収法
選択科目であり、国税の徴収方法や滞納処分について学びます。
実務で使用する機会は少なく、他科目と併せて科目合格しておくと、早期合格を期待できる受験者として評価されます。
住民税
選択科目であり、都道府県や市町村が課す住民税の課税方法を学びます。
実務での使用頻度は少なく、他科目との組み合わせで評価を狙う科目です。
事業税
選択科目であり、事業を営む個人や法人に課税される事業税の計算方法を学びます。
実務での使用頻度は低く、評価へとつなげるには他科目と併せて合格する必要があります。
固定資産税
選択科目であり、不動産や事業用資産に対する固定資産税の計算を学びます。
実務での使用頻度は低いが、特定の場面では役立つ知識として評価されます。
税理士試験科目ごとの学習時間目安
税理士試験の科目ごとの勉強時間の目安は以下のようになっています。
だいぶバラつきがありますが、その大きな理由は学習範囲の広さです。
科目 | 勉強目安時間 |
---|---|
簿記論 | 500時間 |
財務諸表論 | 500時間 |
所得税法 | 1,200時間 |
法人税法 | 1,200時間 |
相続税法 | 1,000時間 |
消費税法 | 600時間 |
酒税法 | 300時間 |
国税徴収法 | 300時間 |
住民税 | 400時間 |
事業税 | 400時間 |
固定資産税 | 500時間 |
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下記は、MS-Japanの転職エージェントサービスMS Agentに2023年1月~12月の期間にご登録いただいた税理士科目合格者と税理士の方の平均年収です。
税理士試験合格科目数 | 平均年収 |
---|---|
税理士1科目合格 | 420万円 |
税理士2科目合格 | 446万円 |
税理士3科目合格 | 480万円 |
税理士4科目合格 | 495万円 |
税理士有資格者(未登録) | 517万円 |
税理士登録済み | 683万円 |
これを見ると、合格科目数と年収水準は比例していることが分かります。
科目合格者については、1科目の取得ごとに15~30万円強年収が増加しており、科目合格を重ねることで着実に年収アップが見込めることが分かります。
また、税理士登録した際の平均年収は未登録の税理士と比べて166万円ほど上昇することから、税理士になると市場価値が跳ね上がるという事実も見て取れます。
科目合格者の転職成功事例
個人税理士事務所
簿記論、財務諸表論、法人税論、および消費税論の4科目合格者である25歳女性のTさんは、勤務していた税理士法人の業務量が多いため、試験勉強との両立が難しくなっていました。
そこで、勉強が両立できる職場への転職を決意。弊社MS-Japanを活用し、しっかりと情報収集を行った結果、試験勉強に理解があり、優良顧客が多いため質の高い業務に従事することも期待できる個人税理士事務所に転職することができました。
⇒ 勉強も両立させて、最後の1科目に合格したい!4科目合格の税務スタッフの事例
資産税特化型
簿記論と財務諸表論の2科目に合格し、中堅税理士法人に勤務していた30歳男性のFさんは、30歳になるのを機に、将来の独立も射程に入れ相続税の経験を積みたいと考えました。
しかし、勤務していた税理士法人に相続税の案件に関わらせてほしいと打診をしても、希望が受け入れられません。
そこで、Fさんは転職を決意。早々に4件の内定を獲得し、そのなかから、相続税の経験が積め事務所経営のイロハも学べる、資産税特化型の個人事務所を選びました。
⇒ 4社内定、迷った末に本来の転職動機に立ち返った30代・男性税理士の成功事例!
税理士科目合格者向けの求人例
中堅税理士法人の資産税部にて、資産税務スタッフの募集!
仕事内容 |
・税相続申告業務 ・お客様の資産管理会社に係る法人業務 ・確定申告業務 |
必要な経験・能力 |
【必須】
【歓迎】 |
想定年収 |
400万円 ~ 800万円 |
柔軟な働き方が可能/通常期残業ほぼなし/少数精鋭の会計事務所よりスタッフの募集です!
仕事内容 |
・決算書の作成業務、指導業務(クラウド会計を積極的に採用) ・税務申告書(相続含む)の作成業務 ・会計や税務に関する相談業務 ・経営に関する資金調達や投資等に関する相談業務 ・事業承継に関する株価評価 |
必要な経験・能力 |
【必須】 ・会計事務所での実務経験がある方 ・税理士有資格者または科目合格者の方 |
想定年収 |
440万円 ~ 600万円 |
ある分野の国内最大手企業/経理スペシャリスト募集
仕事内容 |
・日常経理、事業部門、関連会社との調整及び相談への対応 ・単体決算、連結決算 ・計算書類、有価証券報告書の作成、監査対応 ・税務相談、税務申告、税務調査対応 |
必要な経験・能力 |
【必須】 ※下記いずれかに該当する方 ・会計士(科目合格者含む)の有資格者 ・税理士(科目合格者含む)の有資格者 |
想定年収 |
600万円 ~ 1,000万円 |
まとめ
税理士試験の科目合格は、税理士資格取得への一歩として重要な意味を持つだけでなく、転職市場でも高く評価される要素であり、専門分野でのスキル向上や年収アップにつながる可能性を秘めています。
特に法人税法や所得税法といった選択必修科目は、難易度が高く、実務でも頻繁に使われるため、転職において高い評価を受ける傾向があります。
消費税法や相続税法などの選択科目も、実務でのニーズが高い分野では大きなメリットとなります。
税理士試験合格を目指しながらキャリアを積み重ねていくには、自身のキャリアプランに合った科目を選択し、目指す分野で評価を得られるよう取り組むことが大切です。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、大手出版系企業を経て現職へ入社。
主に大手・新興上場企業を対象とする法人営業職を4年、キャリアアドバイザーとして10年以上に及ぶ。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 会計事務所・監査法人 ・ コンサルティング ・ 役員・その他 ・ IPO ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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