「中途採用における募集時のポイント」

第45回2008/10/14

「中途採用における募集時のポイント」


「中途採用における募集時のポイント」

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"戦略論の父"と言われるイゴール・アンゾフは、「戦略は組織に従う」という言葉で、
組織力が会社の継続的発展に必要不可欠なものであると説いています。
つまり、「IPO達成」「国内トップシェア」
「宇宙一の企業をつくる」どんな高いビジョンを掲げ、
緻密な戦略を立てたとしても、達成するためには、会社の組織力、
つまり社員の経験・スキル・可能性、
それらのシナジーがなければ机上の空論に終わってしまうということです。
ビジョンの実現を成し遂げるためには、現在と将来を見越した的確な人材採用を行い、
組織力の強化を図ることが大切です。


採用による組織強化の観点から言えば、ポテンシャルを秘めた新卒者及び未経験者を採用し、
教育するよりも、即戦力となる経験者の中途採用の方が、早期に効果を得るには有効です。
しかし、これはただヒトを多く入れれば良いという話ではないのです。
限られた経営資源の中で持続的な組織強化を行っていくためには、
効率良く、コストパフォーマンスの高い採用を行っていくことが必要です。


これから3回にわたり、組織を強化するための中途採用の採用戦略について、
「募集時」、「選考時」、「内定時~入社後」の3つのフェーズに分け、説明していきます。
(1)募集時:いかにターゲットとなる母集団を集めるか
(2)選考時:いかに求める人物像かを見極めるか
(3)内定時~入社後:いかに内定辞退を避け、入社後に活躍してもらうか


今回は、(1)中途採用における募集時のポイントについて説明していきます。
上手な採用を行うためには、
・どんな人物を集めるか
・どんな手法で集めるか
以上の2点を中心に考えて、進めていくことが大切です。
募集時の流れとしては、
1)採用方針・計画を立てる
2)求める人材ターゲットを明確にする
3)ターゲットにアプローチする
この流れにより、自社の求める人材を集めていきます。


1.採用方針、計画を立てる:現在と将来との溝を採用でどう埋めるか

(1)-1、現在の自社の成長ステージを見極める。
 組織力を高めていくためには、適切なタイミングに適切な人材を採用し、
  配置していくことが大切です。
  なぜなら、会社のステージと社員の希望業務にミスマッチが生じれば、
  社員が辞める可能性もあり、せっかく労力をかけた採用が徒労に終わりかねないからです。
  そうならないためにも、現在の自社のステージを見極めることが肝要です。
  方法としては、自社の現在の顧客、市場環境などの外部要因、
  ヒト、カネ、モノの経営資源などの内部要因を分析していきます。


(1)-2:採用方針を基に、計画を立てる
 自社の現状分析を行った後は、現状と将来目指すべき姿とのギャップをヒトを用いて、
  どう埋めていくかの方針、計画をたてます。これが採用方針の骨子となります。
 この時大切なことは、会社の中長期計画に合わせた形での、人員計画を立てていくことです。
  これは、会社の資金力、組織力などの
  ヒトを受け入れていくための体制をつくっていくことが重要だからです。


(1)-3:採用方針・採用計画を社内で再検討し、浸透させる
 一度、採用活動を行えば、かなりの時間と労力をかけることになります。
  経営陣、現場双方に負担がかかるため、全社的なプロジェクトとして、
  必ず成功させなければなりません。
  だからこそ、どのような採用を行うかを会社全体で再検討し、
 意識の共有を図ることが大切なのです。


2.求める人物像のスペックを明確にする:ターゲットセグメント

(2)-1:社内で検討し、人物像を明確にする
 採用計画に基づき、新しく採用を行う際には、採用戦略立案のベースであり、
 施策実施検討に不可欠な「採用すべき人材像」の明確化を行います。
 この時に重要なことは、企業のトップだけでなく、同僚となる人々、
 人事担当を含めた多角的な視点から、社内に必要とされている資質(キャラクター)、
 資格、スキルなどを持った人材像を明確にしていくことです。
 社内の既存資源とのシナジー、新たな戦略を行っていくための経験・スキルを得るためには、
 どんな人物像が必要かを洗い出していくのです。


(2)-2:競合他社、市場状況を知る
 求める人物像を基に採用を行うわけですが、
 求職者はひとつの企業だけに絞った活動をするわけではありません。
 ましてや、優秀な経験・スキルの方は、多くの企業から引く手数多となります。
 採用におけるライバル企業に勝つためには、採用市場の状況、競合他社の調査を行い、
 何が必要なのかを徹底的にリサーチし、
 それをしっかりと採用活動に反映することも重要となります。
 求める人物の希望条件の市場状況、競合企業のアプローチ方法を知り、
 いかに他社と差別化し、確実に採用を行っていくかを検討することが大切です。


(2)-3:明確にした人物像を社内で共有する
 選考も最終段階になり、候補者が最終面接まで進んでいる。
 現場、人事担当からの評価も高かった。
 しかし、経営者が実際会ってみると、求める人物とは違う。
 こんな経験は少なくないでしょう。
 これでは、選考が振り出し戻るだけでなく、
 候補者にとっても時間や機会の損失つながります。
 それを避けるためにも、求める人物像を社内で共有し、浸透させることが不可欠なのです。


3.ターゲットにアプローチする

(3)-1:関心を持ってもらうためのシナリオの作成
求人を出し、採用活動をただ行うだけでは、求める人物の確保は難しいでしょう。
ターゲットとなる人物に魅力を感じてもらい、関心を持ってもらうためには、
具体的で分かりやすいシナリオを作成し、理解してもらうことが効果的です。
 シナリオ作成の際の要素としては、
1)自社のビジョン、戦略、トップメッセージ
2)自社の魅力(風土、ポリシーなど)
3)入社後のキャリアパス、得られるスキル、やりがい(社会貢献、環境対策等)があります。


これらの要素を基に自社独自のシナリオを作成し、
ターゲットに魅力を感じてもらい、入社意欲を上げるアプローチをするのです。


(3)-2:効果的な「採用ツール」を選定する
自社独自のシナリオを作成し、ターゲットにアプローチをかけるわけですが、
効果的なアプローチをするためには、いかに有効な採用ツールを用いるかが重要です。
昨今の雇用の流動化の中で、採用ツールは多様化し、
何が有効か分かりづらくなっている状況です。以下に主要な採用ツールの特徴を説明します。


1.人脈・縁故
前職等での経験・スキル・人物面が採用時に見えやすく、
適した人材を採用できる可能性が高い手法です。
金銭的コストがかからないという利点もあります。
集められる人数に限界があり、短期間で複数名の採用を行うには適しません。
なお、採用後の業務の中で、やりづらさを残すケースがしばしばあるようです。


2.ハローワーク
無料で簡単に利用でき、
離職中の求職者中心に不特定多数の候補者にアプローチすることができます。
ただし、選別の効果が少なく、ターゲット以外からの応募が来ることも少なくありません。
またキャリア層が比較的少ない点も認識しておく必要があります。


3.Web求人広告・媒体(リクナビNEXT、マイナビ転職など)
インターネットの発展により不特定多数の候補者にアプローチでき、
現在多くの企業において主流となっている採用ツールです。
スカウトメールなど、能動的にアプローチできる機能があること、
テキスト・画像・動画などで自社の情報を訴求できることが特徴です。
多くの場合、初期コスト、ランニングコストがかかりますが、
採用できるかは不確実です。
年齢、性別などの条件の記載ができないため、
ターゲット以外からの応募も多数来る場合があります。


4.人材紹介会社
条件を詳細に伝えることで、ターゲットとなる人物のみ紹介を受けることが出来、
人材の入社が決まるまで、費用がかからない成功報酬型が基本となっているため、
効率的な採用ができます。
面接日程の調整等の代行サービスを受けられるなど、
人が介在することによる付加価値の高さもポイントです。
候補者との間にフィルターが出来るため、情報伝達に細心の注意を払い、
誤認識を防ぐ必要があります。
また市場的に報酬額が高くなりつつあります。(現在:想定年収×30-35%)

上記、4つの他にも新聞広告、採用コンサルティング、
ヘッドハンティングなどのツールがあります。
それぞれのメリット・デメリットを認識した上で、
複数のツールを組み合わせてリスクヘッジを考えながら、
候補者の母集団形成をしていきます。
また、人材紹介会社を利用する際は、
会社毎に異なる強みを見極めて、選定することが成功の鍵となります。


4.効果的な選考を行うためには

採用を成功させるには、興味を持ってくれた候補者に対し、
自社への入社意思を固めてもらえるように、いかに選考を行うかが重要となります。
面談では、多くの魅力的な候補者の方々と会うことになるでしょう。
だからこそ、社内で共有した採用方針の再認識が重要なのです。
自社が求める人物を選定するための選考を行うためにはどんな選考を行うべきか。
次回は、「中途採用における選考時のポイント」について、解説していきます。

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