「年俸制」
第19回2006/04/12
「年俸制」
「年俸制」
これまでの日本の企業は終身雇用を前提とした年功序列を、
人事制度の中核に置いてきました。
しかしながら企業のグローバル化、競争の激化など変化の中で日本の人事システムは崩壊し、
新しい人事システムである能力主義・成果主義導入が定着してきております。
その成果主義の代表的な賃金制度として、働くことによって生み出される成果に対し、
賃金を支給する制度が検討されるようになり、
1年程度の業務遂行期間を評価して賃金を決定する、
いわゆる「年俸制」を導入する企業が増えてきました。
現在、成果・業績主義の浸透に伴い、
大手企業を中心にベンチャー企業にいたるまで広く普及してきており注目されております。
今回のテーマでは、「年俸制」に焦点をあて解説いたします。
1.「年俸制」とは
社員の能力や実績に基づき、毎年の契約交渉によって翌年の年間賃金を決定する制度。
1年間の仕事のミッションに対する発揮能力や成果、
さらに期待に対する実績や行動を評価して年収を決めます。
一般的には経営幹部や管理職中心に導入されるケースが多い傾向にあります。
2.「年俸制」導入のメリット
○仕事に対する成果が、給与に反映されるという意識が浸透し、
社員のやる気やモチベーションを高めることにつながり、
個人の能力は最大限に発揮され、企業の総合力を最大限に高めることにつながります。
○社歴・年齢・ポジションを超えた社員同士での競争風土が生まれ、
組織が活性化し、企業全体の業績アップにつながります。
○優秀な人材の確保・定着につながります。
従来の勤続年数や年齢にとらわれず、その人材の成果や実力に応じた待遇を提供できるため、
優秀な人材の外部流出防止や外部から実力のある中途採用が可能となります。
また新卒採用に関しても、やる気のある学生には、
応募や入社への積極的な動機付けとなります。
○学歴や勤続年数と実績・成果との間のミスマッチによるコスト高解消にもつながります。
デメリットとしては、減俸によるモチベーションダウン、
従業員が自分の業績にとらわれるあまり、
組織全体の業績向上への配慮を失う傾向が生じることです。
また一部に賃金の抑制を目的として年俸制を導入する企業もありますが、
これは本来の年俸制の意義をはき違えたものと言わざるをえず、
従業員の大きな反発を招きかねません。
3.「年俸制」導入時の注意点
年俸制を導入するには、(1)仕事の成果を客観的に評価できる制度が確立していること
(2)従業員の理解が得られていること、などの条件が整っていることが前提です。
○公正な評価基準
具体的な賃金額の決定が社員の成果や業績の評価に大きく依存するため、
その評価が重要になってきます。
目標管理・業績管理を確立し、プロセス評価なども実施し社員の納得性を上げ、
それに応じた仕事の成果をきちんと客観的に評価でき、
評価理由の説明や苦情処理などのフォロー制度も確立しておく必要があります。
○時間外手当の支給
年俸制導入により、支払われる賃金は年俸額のみで、時間外手当、
深夜手当て等の割増賃金は支払わなくてもよいと認識されがちですが、
労働基準法上、時間外労働や休日労働にはその量に応じて、
割増賃金を支払わなくてはなりません。
時間外手当を支払わなくてもよいとされるのは
管理監督者(経営者と一体の立場にある者)に対してのみです。
年俸制を導入した場合に時間外の割増賃金を年俸に含めることが
一切認められないというわけではありません。
時間外労働が毎月ほぼ一定している場合には、
あらかじめ割増賃金を年俸に固定残業代として含めて支給することは認められます。
○社員の納得・同意
年俸制を導入するのはなぜか?「社員の業績目標に対する達成度を給与に反映させたい」、
「給与額を固定することにより、
賃金の予算管理を容易にしたい」など会社は社員に何を求め、
社員は会社に何を期待するのかを明確にする。
○対象者・対象職種などを明確にする
*適用対象者の検討(社員・契約社員、管理職以上の者だけに適用されるのか)
*適用対象職種の検討(専門職、研究職、営業職、管理など)
賃金制度の改革を通じて、評価の納得性を高めた人材の育成や
社員のやる気・モチベーションを高めて業績成果に連動した
賃金制度に組織風土を改革していくことが年俸制の目的です。
昨今、大手企業を中心に年俸制は管理職以上だけでなく管理職以下にも適用されてきており、
全社的に年俸制を導入する動きがあるように年俸制は注目されております。
先にも述べたように、単に「年俸制」を導入すれば、
社員が活性化しどんどん業績をあげてくれるかというとそう簡単にはいかないものです。
年俸制を導入する前段階として、経営計画・経営方針の徹底、
個人個人の役割の明確化、評価制度の確立、
社内コミュニケーションの改善等のさまざまな課題に取り組み、克服していく必要があります。
会社が求める「理想的な姿」とは何なのかを考えた上で、
その会社の実情にあわせて「年俸制」を検討してみてはいかがでしょうか。
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