「社内公募制」
第18回2006/03/13
「社内公募制」
「社内公募制」
これまでの日本の人事管理制度は、終身雇用制と年功序列制度の下に
社員の長期雇用を保障した上で、社員の配置・異動を会社の全社的ニーズに基づいて決め、
社員は会社から与えられた仕事・処遇を
当然のこととして受け入れるといった一方向的なものでした。
ところが今やこの日本型雇用システムは崩壊しつつあり、
企業側が終身雇用制・年功序列に代わって、業績連動型賞与や成果主義によって
各社員を所属部門の業績や担当職務の成果に応じて処遇すると同時に、
社員は自らの意思で選択し責任を負う時代になりました。
雇用形態の多様化・フレックスタイム制・早期退職優遇制などは、
いずれもその流れに沿い派生してきた制度であり、
自己申告制・社内公募制や社内FA制もその一環と考えられます。
今回はその中でも、社員活用の新たな手法とも言われる
「社内公募制」に焦点を当て解説します。
1.「社内公募制」とは
会社が必要としているポストや職種の要件を、
あらかじめ社員に公開し応募者の中から必要な人材を登用する仕組みのことです。
これは、通常会社が外部に対して行なう人材公募が、
内部で行なわれているようなものであって、内部ジョブポスティングとも言われます。
社員自身に職務の目標・遂行状況・問題点などを自己評価させ、
特技・専門知識・希望職種などを申告させる人事管理方法の一つで、
社員の自己啓発やモラルの向上を図り的確な人事管理を進めることが目的です。
2.なぜ今「社内公募制」なのか
個人の仕事に対する認識が、「与えられるもの」から「自分で勝ち取るもの」へと変化し、
就社するのではなく就職するという意識が明確化する中で、優秀な社員をいかに定着させるか、
いかに能力発揮させるかが、企業側の新たな課題として浮上してきました。
企業側がポジション・業務を一方的に社員に与えるのではなく、
社員自身に自己評価させ希望職種などを申告させる「社内公募制」が、
社員の会社への定着性を高め業務への満足度を高める一つの手法として注目されています。
3.「社内公募制」導入のメリット
社内公募制を実施すると、以下のメリットがあるとされています。
◇社員のポテンシャル活用・モチベーションアップ
社員自身のチャレンジ精神を実現することによる能力開発が期待出来ます。
また、社員が職場や仕事の内容を選択出来る環境が生まれ、
社員のモチベーションを喚起する効果が期待出来ます。
◇社内活性化
仕事に対する意識が、「与えられるもの」から「自分で勝ち取るもの」へと変化し、
社内人材流動化による活性化が期待出来ます。
◇有能な人材の社外流出防止
「やりたい仕事に就きたい・新しい能力が身に付く仕事に就きたい」という
希望を適時叶えることで、有能社員の社外流出(退職)を防止する手段につながります。
◇管理職層の部下管理能力の向上
管理職層には、今まで以上に部下の能力開発と公正な業績評価に取り組まなければ、
有能な部下に逃げられてしまう、といった危機感と緊張感が生まれます。
4.「社内公募制」の導入方法(例)
・各部門が、人材の公募を申請
↓
・職務を選定し、社内メール・社内イントラネットなどで社員に向けての公募
※その際、「入社3年目以降の社員のみ応募可」など、制約をつけることが
出来ます
↓
・社員は職場の上長を経由せず、直接人事部へ応募
↓
・書類選考の後、募集部門と人事部により面接を実施
↓
・選考結果により、異動を発令
5.「社内公募制」導入時の注意点
社内公募制導入時は、以下の点に注意が必要です。
◇秘密の厳守
採用・不採用どちらの結果となっても同じです。
情報が漏れた場合、本人が職場にいづらくなってしまうことが考えられます。
秘密が守られるよう、細心の注意が必要です。
◇人材が引き抜かれる部署の、「拒否権」の有無
引き抜かれる人材が優秀であればあるほど、所属長が抵抗することが予想されます。
・拒否権は一切認めない
・ケースバイケースで、認める
・事情によって、異動を一定期間猶予する
など、幾つかの方策が考えられますが、拒否権を認めすぎると制度が形骸化します。
拒否権は必要最小限にとどめましょう。
◇人事部門の役割
人事部門は、これまで以上に情報収集力と調整力が求められます。
以下の点をしっかり把握し、適切な人材マッチングを行うことが求められます。
・ 社内にどんな人材ニーズがあるのか
・ 社内にどんな人材がいるのか
◇アフターケア
希望が叶わなかった社員に対して、登用を見送る理由等を示すなど、
モチベーションダウン・モラル低下につながらないような工夫やアフターケアが重要です。
2005年働きやすい会社ランキング(日経調査)で
第1位にランキングされたのは松下電器産業。
中でも、「社員の意欲に応える制度」への評価において高く、
部署ごとに配属希望の社員を募集する社内公募制が充実していたことが要因でした。
このことからも分かるように、限られた人材を「適材適所」に配置する制度が定着すれば、
社員のキャリアアップだけではなく、
会社側にも社員のモチベーションアップ・会社のイメージアップなど、
多大なメリットをもたらすことが可能です。
ベンチャー企業では、少数精鋭のため敢えて社内公募制を導入する必要は少ないですが、
新規事業展開・拠点展開などといった企業ステージ拡大の転機に、大変有効な手法です。
状況に応じて一度検討されてはいかがでしょうか。
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