「目標管理制度」
第16回2006/02/14
「目標管理制度」
「目標管理制度」
日本経済は景気拡大期に突入し、守りの経営から攻めの経営にシフトしており、
今まで以上の競争時代に突入しています。
企業業績も急拡大する中、経営者には従来以上のマネジメント力が要求されるようになり、
人的資源の効率性向上や更なる組織活性化の実現等、
新たな人事システムの必要性を迫られています。
今回のテーマでは、
組織拡大に伴う企業統率力の強化を目的としたマネジメント手法として存在する
「目標管理制度」に焦点をあて、概要・ポイントを整理しています。
1.目標管理制度とは
正式名称は目標による管理
(Management By Objectives through Self Control:略してMBO)と呼ばれ、
米国の経営者P・F・ドラッカーらにより開発・提唱されました。
望ましい目標を設定し、達成に向けて導いていくマネジメントと定義できます。
目標によって管理する対象は、目標そのものではなく仕事や部下の活動です。
上司が一方的に従業員に目標を指示し、その目標を管理するのではなく、
従業員自らに目標を設定させ、その目標が適正かどうか上司と相談し、
合意がとれたら目標に向けての活動を従業員自らが自己統制しながら進める事をいいます。
よく目標管理を「目標を管理する事」ととらえがちですが、
本来の意味の目標管理(目標による管理)は、
あくまでも従業員自らが自己統制のもと目標を設定し、
上司とすりあわせをした上で目標達成に向けたプロセスを側面支援する事をいうのです。
2.目標管理制度導入のメリット
(1)全員のベクトルが組織目標に向かう為、企業業績の拡大につながる。
会社のビジョン、戦略達成のために部門が担うべき目標を設定し、
部門目標を達成するために各担当者が貢献すべき役割・努力を目標に集中させるため、
業績拡大につながります。
(2)社員の行動力強化
会社側からの目標設定ではなく、従業員自らに考えさせ、自らが目標設定を行う事により、
当事者意識を向上させ、経営方針に基づいた行動力の強化につながります。
(3)公正な処遇・社員の自主性の醸成
社員自らが目標を設定する事により、組織として業務難易度や達成度評価が明確となり、
双方納得性の高い公正な処遇を可能とします。
また、目標管理を人事考課と連動させる事により
従業員にとって自主性の発揮が切実なものとなり、
目標を真剣に考え、行動することで、こうした意識が組織全体の活性力強化にもつながります。
(4)社員の能力向上
管理者にとっては部下への動機付け能力、指導・支援力、従業員にとっては目的意識、
計画立案力、責任感等、目標達成に向けてのプロセスにおいて様々な能力が磨かれます。
3.目標管理導入のポイント
(1)経営ビジョンや目標の共有により全社の一体感を醸成する
目標管理導入を考えるのであれば、まず経営者が管理職に夢を語る事が望ましいです。
夢といっても非現実な話ではなく、イメージしやすい事が重要で、
管理職との意思疎通を円滑化し共有感を持つ事が重要です。
何故なら経営者と管理職のずれが発生すれば、
管理職から従業員への指導にも会社側との誤差が生じ意思疎通も遮られ、
企業の一体感が欠如してしまう恐れがあります。
目標管理制度とは全社に一体感があってこそ、理想的な運営を実現できるのです。
(2)納得性のある目標設定を行う
目標管理とは従業員の自己統制を元に目標設定を行いますが、
裁量権を与えすぎてしまうと
目標の個人的解釈による個人目標化になってしまう可能性が高いです。
現場担当者に全て一任するのではなく、管理職から現場への指導・育成も重要です。
目標設定の目安としては「組織目標達成に貢献できる目標である事」、
「本人が努力をすれば達成可能な水準である事」を前提に双方すり合わせを行い、
それらの指導育成や援助、動機作りや環境を提供できる管理職の配置も重要となってきます。
(3)管理者サイドの能力開発を行う
経営方針と現場の方向性の調整役として企業の中核を担う管理者の能力開発も重要です。
現場に対しては経営方針に基づく目標設定や指導、
経営者側には現場からの要望やアイディアの汲み取り等、
管理職の能力開発・素養も目標管理制度導入の成功の鍵を握っています。
(4)業績評価、処遇システムに反映させる
従業員の成果を公正に評価しそこから仕事への熱意を駆り立てる為に、
目標設定から評価への流れを形作り、従業員のモチベーション向上につなげていきます。
但し、達成が望めない明らかに高すぎる目標からの評価や、
公正を強調しすぎ他メンバーとの差が殆ど無くなってしまった等の現象にならないよう、
双方のバランスが重要です。
4.最後に
目標管理は組織の要求と個人の要求を統合する統合マネジメントといわれますが、
多くの物事が二面性を持つように、目標管理も相反する2つの面を持っています。
具体的には社内コミュニケーションが良くなる反面、
目標設定のための資料作り・面接時間等が増大し
本業への時間を欠いてしまう「時間浪費」の恐れや、
従業員が個人目標を追求する程に他メンバーとの協力をおしみ、
企業統率力が欠けてしまう「個人主義の蔓延」の恐れがあります。
これらの問題は導入後の検証や改善によって解決はできますが、
組織の要求が過度に優先する程に従業員に負担をかけ、
不当行為に走らせてしまう等大きな問題を生む可能性があります。
目標管理の真意を明確に理解し、組織一体となり社員一人一人の意識を高めていく事が、
今後の企業成長を左右する事につながると考えられます。
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