「採用を成功させる採用担当者の条件」
第109回2016/03/23
「採用を成功させる採用担当者の条件」
「採用を成功させる採用担当者の条件」
2014年、2015年に引き続き今年も転職市場は絶好調で、当社でも年始から多くの求人依頼を頂いております。求職者にとっては非常に喜ばしい状況ですが、一方で企業の人事を悩ませていることも事実です。そこで今回の人事コラムでは、採用担当者が採用を成功させるための条件についてお伝えいたします。貴社の採用成功の一助となれば幸いです。
採用の成功とは
そもそも「採用の成功とは何か」ということは一言では語れません。そこで「成功」の定義を下記のように定めた上で、お話したいと思います。
・採用人数のノルマを達成すること
こちらは大手企業やベンチャーによってニーズが異なりますが、いずれも母集団形成をするために求人広告やエージェントを利用するのはもちろんのこと、採用対象者が集まる交流会や、ベンチャーであればベンチャー企業が集まるようなイベントに参加し、リクルーティング活動をすることもあります。様々な手段で母集団を形成し、採用人数の目標をクリアすることは一つの成功と言えるでしょう。
・採用した方に中長期的に活躍してもらうこと
採用をしてもすぐに退職してしまっては、一時的な人員不足を回避できるものの、採用に成功したとは言えません。中長期的に活躍してもらい、社内からも「●●がいたおかげ」だと言われるような人材の採用が最も理想的な形ではないでしょうか。
そのためには、自社(会社全体と各部署)の課題とニーズをどこまで把握し、理解できるのかがポイントになります。
いま、転職市場はどうなっているのか?
近年、新聞でもニュースでも多く取り上げられているように、中途採用の求人数は増加し続けています。社会人経験の年数別に見てみますと (MS-Japanで)最も多いのが、①社会人経験3~5年程度のいわゆる若手ポテンシャル人材、続いて②社会人経験5~10年くらいの即戦力人材(リーダー~プレイングマネージャー)、ここ最近は③社会人経験15年以上の知識豊富な管理職人材(マネージャー~部長クラス)のニーズも増えています。
業界からみたニーズとしては、飲食サービス業、情報通信業などが、深刻な人手不足に陥っています。2016年度の採用において、正規社員の採用に占める中途採用の比率を前年より高める企業は9.8%、中でも建設業(12.4%)、流通業(11.8%)、サービス・情報業(11.7%)となっており、これらの業界は他業界よりも高く、詳細別では、飲食サービス業(25.7%)、医療・福祉(18.4%)が相対的に高くなっています。(※)
採用するにあたって必要な情報収集では、異業種よりもまず同業他社の採用ニーズはいったいどの程度あるのか、どのような職種、年齢層、年収で採用しているかが重要です。
※リクルートワークス研究所調べ
https://www.works-i.com/pdf/160118_midcareer.pdf
求職者の就職活動における心理を理解する
続いては、求職者の心理についてです。
求職者の心理を理解しないと、どれだけ優秀な方に内定を出したとしても、なかなか入社の意思を示してもらえません。最も大切な要素となるのは、「転職理由」です。求職者は人生のキャリアプランにおいて、現職で叶えられない何かがあって転職を考えます。それを叶えられる企業はどこなのかを考えて、自分の「譲れない条件」を決めます。それを理解せずに、例えば自社のニーズのみを考えて選考を進めてしまうようでは、良い採用担当者とは言えません。
最近、私がキャリアアドバイザーとして日々求職者の方とお会いする中で、求職者の転職理由に変化が出てきているように感じています。「どうしても転職しなければならない」、から「いいところがあれば転職したい」という方が非常に増えました。
「現職に大きな不満はないが、日々不満に思っていることはある。しかしすぐにやめるほどではない。」
「不満はあるが年収がいいから我慢しよう、でも同じ年収を出してくれる企業があれば移りたい。」
などといった転職市場が好調のタイミングを狙って、より良い職場へ転職したいと考える方が多い印象です。
つまり、本来転職のつきものとしてあるリスクを取らずに、転職したいと考える方が増えている傾向があります。年収、通勤、社格、社風などいずれもより良い条件であれば転職をするため、実際に内定を出しても辞退するケースが増えています。そういった、マーケットの状況による候補者の心理の変化も察知できると、採用を成功させる可能性が上がるでしょう。
採用を成功させるために必要な5つのポイント
では、内定を出した方に入社してもらうためにはどうすればよいのか、についてお伝えします。
ここでは下記の5つのポイントについてお伝えします。
1.採用部署の課題と求職者の本音(転職理由)をしっかり把握すること
2.「この人!」と思ったら、すぐに連絡をすること
3.面接の時間は、1次面接~最終面接までが「候補者を口説く時間」だと意識すること
4.できる限り求職者の活動状況と心理状況を理解するよう努めること
5.エージェントを利用する場合は、自社の代理人として候補者と接触してもらうため、エージェントとも深いリレーションを築くこと
転職理由はどの企業でも聞くことだと思いますが、実際にどのくらい本当の理由を聞ける企業があるのでしょうか。求職者は建前と本音のどちらの理由も持っている方がほとんどです。企業にはもちろん建前を話すことが多いのですが、実際の理由を確認することでその人の真の姿・考え方、目指している目標がわかります。その転職理由を踏まえた上で「自社であればそれを解消することができるのか」「やめる理由になった時と自社が同じ環境になった時でもやめずにしっかり働いてもらえるのか」という疑問を解消することで、候補者に入社後のイメージがわかせることができます。
これらを踏まえた上で、「この人を採用したい」と思った際に重要になるのが『スピード感』です。書類選考~内定を出すまで、どのタイミングでどのようなアクションをとるかはとても大事なことです。書類選考の結果、1次面接の結果、2次面接の結果、最終面接の結果・内定通知書の発行など、どのようなタイミングでも面接官が「この人を採用したい」という思いがあれば、できる限り早く結果を出しましょう。また、結果を出せない場合でも迅速に面接官の印象を聞き、求職者に早く伝えましょう。そうすることが求職者の心をつかむことにつながります。
求職者の心理として、志望度が高くても低くても、書類選考や面接で良い結果を早くもらえることは、自分が評価されている証しであり、それだけ企業に求められていると捉えられ、それだけでも企業に対して良い印象を持ちます。面接中での会話や会った方の印象ももちろん大切なことですが、その場でいくら良い話ができたとしても正式な結果をもらえているのといないのでは、対応の誠実さが違います。
また、求職者の活動状況をしっかり把握することも大切です。転職活動を始めたばかりなのか、それともすでに他社の選考も複数社進んでいるのか、その中でも自社は何番手に位置しているのか、その状況に応じて適宜柔軟に対応することが望ましいです。少なくとも入社した後に相違がないよう、ざっくばらんに話す機会を設けることは必要です。条件面談を行っている企業は比較的多いと思いますが、人事と上司の方以外にも現場の方、一緒に働く同部署の方々との面会や、職場見学、中にはランチや会食を交えて話す企業もあり、これらは求職者の気持ちを握るには効果的です。そのためにも、求職者とのリレーションがあるエージェントと協力することもポイントとなります。
採用担当者としての意識の持ち方
最後に、ここ最近は転職市場の好調により、当社の企業担当が、採用担当者様から「全然、候補者がいないです。どうしたらよいでしょうか。」「内定を出しても採用に至らないです。」といったご相談を受けることが増えているようです。景気が良くなるとどうしても候補者が有利な立場になってしまい、採用はますます難しくなります。
それでは人事としてどのような役割を果たさなければならないのでしょうか。それは「そもそも採用の目的は何か、何のために採用をしているのか」を一番に意識することだと思います。人が足りないから採用する、とりあえず人手が欲しい、それだけで採用をしてしまうと一時的な措置でしかなく、人が入れ替わることによってまた採用をしなければいけない、といった負のサイクルに陥ります。
採用した方が社内で活躍している、会社に貢献している、本人もこの会社に入ってよかった(経験を積むことができた)と思えて初めて採用が成功したのだと思います。
もちろん、これは理想ですが、その理想に少しでも近づくためには、もっとも大事な入口である人事のアピール方法によって応募者が集まることに繋がります。面接の中でも、入社して頂きたい方がいれば、ぜひその方に響くようなお話をして口説いていくことが必要です。しかし、それ以上に企業の良いところだけではなく、自社の抱えている課題を伝えることで理解をしてもらうことも重要であり、求職者にも誠意が伝わります。更に採用の際にもう一つ大事なのが、『スピード』。ご縁とタイミングと言われるように、こちらも欠かせません。
人事はただの「つなぎ役」ではなく、人事から決裁者への提案をしていく立案者でなければいけません。
採用する際の条件として業務内容/経験/年収/社風などといった項目を記載した募集要項ももちろん必要ですが、その裏にある背景を人事はどれだけ知っているのか、どれだけ理解できているのかどうかが重要であると考えます。
(文/チーフキャリアアドバイザー 櫻井晨江)
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