弁護士は「就職できない」?就職難という噂の真相や就職活動を成功させるポイントなど
弁護士を目指している方、あるいは弁護士になりたてでこれからのキャリアプランを思い描いている方は、「弁護士は就職できない」などのネガティブな噂を耳にしたことがあるかもしれません。
しかし就職難易度の実態や「弁護士は就職できない」といわれる理由を明確に知ることは難しく、弁護士の就職について悲観的に考えてしまう方もいるのではないでしょうか。
この記事では、弁護士としての就職を考えている方に向けて、弁護士の就職の実情や、就活のポイントなどについて解説します。
弁護士が「就職できない」といわれる理由
司法制度改革による司法試験合格者の大幅な増加
弁護士が「就職できない」と言われる理由の1つに、2006年に施行された新司法試験制度の影響があります。
新司法試験制度とは、司法試験の合格者数を増やし、法曹人材を拡充することを目的に、従来の試験制度を改革したものです。
この制度により、従来よりも多くの合格者が司法試験に合格できるようになりました。
新司法試験制度の導入に伴い、2005年には1,464人だった司法試験合格者数が2010年には2,133人に増加しました。
合格者数の増加は一見ポジティブな変化に思えますが、実際にはこの制度改変により、新人弁護士の就職が困難になってしまったのです。
合格者数の増加に対して、新人弁護士を受け入れる法律事務所の数が追い付かなかったことが要因で、「弁護士は就職が難しい」という状況が生まれる結果となりました。
また、2023年の司法試験合格者数は1,781人と、近年では合格者が2,000人を超えることはなくなりましたが、弁護士全体の人口は増加を続けています。
一方で、増加する弁護士数に対し、事件の数はほぼ横ばいの状態が続いています。
司法統計によると、平成29年の民事・行政事件は1,529,392件、平成30年は1,552,739件、令和元年は1,523,332件と、ここ数年にわたり大きな変動は見られません。
増加する弁護士数に対し、事件数は変わらないため、案件の受注競争が激化しており、これが弁護士の就職難につながる要因の1つとなっています。
2010年頃のマスコミによる過熱報道
上記の弁護士増加に伴い、テレビや雑誌など各メディアやマスコミが「弁護士の就職難」を大々的に報道しました。
その結果、大衆において必要以上に「弁護士は就職が難しい」というイメージが植え付けられた側面があることも否めません。
AIの進出
さまざまな業界でAIを活用した業務改善が実施されていますが、弁護士業界にも少しずつAI導入の波が押し寄せています。
日々進化するAIが活用されれば、人間にしかできない仕事は減っていくことが考えられます。
そのため、弁護士も「就職が難しくなる」と予想されているのです。
実際、弁護士は就職難なの?
ここまで、弁護士が就職難といわれる理由を解説しましたが、実際に弁護士の就職は難しいのでしょうか。
結論は、弁護士だからといって就職が難しいことはありません。
もちろん、「弁護士資格があれば、絶対に大手事務所に入れる」など、就職を保証することはできません。
しかし、それはどのような職種・資格においてもいえることでしょう。
むしろ弁護士は就職のチャンスが多いともいえます。
近年はコンプライアンス強化などの目的で、企業内弁護士(インハウスローヤー)を採用する企業も増えています。
現代は「弁護士でも希望収入や理想のライフスタイルなどを考慮して、就職先を選べる時代」と言えるようになっています。
また、弁護士業界におけるAI導入について前述しましたが、AIが弁護士の仕事をすべて代替するのは非現実的です。
弁護士は法律知識だけを有していればいいというわけではなく、その時々の心情なども考慮した、「人に寄り添った対応」が必要不可欠です。
その点において、弁護士業界は人の力が大きな役割を果たします。
AIが浸透したからといって、弁護士の仕事がなくなるとは考えにくいです。
このように、弁護士はまだまだ需要の多い職業の1つです。「事件が発生しなければ弁護士の仕事はない」というわけではありません。
近年では「法的トラブルを防ぐために弁護士を採用する」という企業も増えてきました。
これらの理由から、「弁護士は就職難である」と一概にはいえません。
弁護士の主な就職先
弁護士の主な就職先は「法律事務所」「一般企業」「官公庁や公的機関」です。また、その他にもいくつかの選択肢もあります。
各就職先について解説します。
法律事務所
法律事務所は弁護士にとって、真っ先に思いつく就職先でしょう。
一口に法律事務所といっても規模はさまざまで、数人の弁護士だけで経営しているところもあれば、100人を超える弁護士が所属している大手もあります。
また、事務所によって取り扱う案件や得意とするジャンルにも違いがあります。
事務所を選ぶ際には自分の希望するライフスタイルや、今後のキャリアプランなどを考慮しましょう。
一般企業
近年、企業内弁護士(インハウス・ローヤー)として一般企業に就職する弁護士も増えています。
その背景には、コンプライアンス経営の強化や、グローバル化の進行に伴う、国際間での取引やM&A・組織再編の加速などがあります。
多様化する法的トラブルの解決や予防を目的に、弁護士を採用する企業が増えているのです。
また、企業内弁護士は法律の知識だけでなく、自社の取り扱う商品やサービスに関する知識、税務に関する知識なども求められます。
法律事務所と比較して、「残業が少ない」「福利厚生が整っている」など、ワークライフバランスを整えやすい傾向にあるようです。
官公庁・公的機関
一般企業と同様の目的で、官公庁や公的機関でも弁護士を採用しているところがあります。
任期付公務員や常勤・非常勤職員など、雇用形態も多種多様であり、働き方や給与体系なども異なります。
司法試験合格者を対象にした国家公務員試験もあるため、公的機関への就職を検討している人は挑戦してみるとよいかもしれません。
官公庁や公的機関での就業経験は、他の弁護士との差別化になり、以降の転職活動において有利に働くケースもあります。
その他
上記に挙げた就職先以外には「法テラス」があります。
法テラスとは、法的トラブルで困っている人から相談を受けたり、経済的理由から弁護士等への依頼が難しい人を支援したりする機関です。
また、弁護士は「独立」も選択肢の1つです。中には、司法研修直後に独立する弁護士もいます。
顧客数や案件数によって年収は大きく左右されますが、自分の裁量で働けるというメリットもあります。
就職活動で注目されやすい要素
弁護士の就職活動の際に注目されやすいのは「受験回数や成績」「学歴」「面接時の印象」「サマークラークなどの参加歴」「その他の資格・スキル」です。
それぞれ見ていきましょう。
受験回数や成績
法律事務所の中には、司法試験の受験回数や成績を気にする場合もあります。とくに実績のアピールが難しい新米弁護士は、司法試験の結果を見られることが増えます。
ただし、すべての法律事務所が受験回数や成績を重視しているわけではありません。
司法試験の結果に自信がないからといって、法律事務所への就職を諦める必要はないでしょう。
学歴
出身大学や出身ロースクールなど、いわゆる「学歴」を見る法律事務所や企業もあります。
ただし学歴を見る場合でも「学歴が低いから不採用」というわけではなく、「学歴が高いと有利になる」というケースの方が多いようです。
面接時の印象
人間性や雰囲気、態度などは評価ポイントであり、面接時の印象は合否に大きな影響を与えることが少なくありません。
これは、どのような就職先においてもいえることです。司法試験の結果や学歴に自信がない方でも、面接で挽回できる可能性は大いにあります。
サマークラークなどの参加歴
サマークラークなどへの参加歴は、それを実施している事務所の就職試験を受ける場合には優位に働きます。
希望の事務所がある場合は、実施概要などを確認しておくとよいでしょう。
その他の資格・スキル
ファイナンスに関する知識や資格、語学力など、実務に関連する資格やスキルを有していれば、評価は高くなる傾向にあります。
海外案件の多い事務所や企業では、とくに英語力はアピールポイントになります。
弁護士の就職活動のポイント
弁護士の就職活動を成功に導くポイントは「動機とキャリアの言語化」「判断軸の決定」「応募先の要件や雰囲気を確認する」「効果的な自己アピールを行う」の4つです。 各項目について、詳しく説明します。
なぜ弁護士になったのか・今後のキャリアを言語化する
「なぜ弁護士になったのか」という動機や、「どんな弁護士になりたいのか」という理想のキャリアなどを伝えることは、就活において非常に重要です。
動機やキャリアが明確であれば、「なぜその事務所(企業)に就職したいのか」という志望理由もうまく説明できるようになります。
わかりやすく、独自性のある志望理由は、他者との差別化ポイントになり得ます。
応募先を決める判断軸を決めておく
業務内容や、取り扱う案件のジャンル、福利厚生の充実、ワークライフバランスの取りやすさなど、就職先に求めることは人それぞれ異なります。
「これだけは譲れない」「ここを重要視したい」という項目を洗い出し、優先順位や判断軸を決めておくことで、就職活動がスムーズになります。
判断軸を設けずに就職してしまい早期退職に至った場合、次の就職活動で「前職の就業期間の短さ」を指摘されることにもつながってしまいます。
応募先が求めている要件や雰囲気などを確認する
応募先がどのような人材を求めているのか知ることで、効果的な自己アピールができるだけでなく、ミスマッチを事前に防げます。
また、求人票では応募要件はわかっても、所内の雰囲気まではわかりません。ホームページを見たり、可能ならば事務所を訪問したりして、実際の雰囲気を知ることも重要です。
自己アピールは「具体性」と「客観的評価」を意識する
自己アピールが根拠のない自慢になってしまうと、逆効果になりかねません。
具体的なストーリーや根拠を添えることで、説得力が増します。また、客観的な評価を加えることで「長所が他者にも認められている」と証明できます。
転職エージェントを活用すると就職活動の成功率UP
法律事務所や一般企業、公的機関など、さまざまな就職先の選択肢がある弁護士ですが、それぞれで特色が異なるため、応募先選びに悩まれる方も多いです。
また、「自分の長所がよくわからない」「司法試験の結果がよくなかった」など、転職活動に不安を抱かれる方も少なくありません。
そのような場合におすすめしたいのが「転職エージェントの活用」です。
応募先の選定から、書類作成のアドバイス、面接対策など、転職活動を幅広くサポートしてくれるため、成功率が格段に上がります。
特にMS-Japanが提供する「MS Agent」は、弁護士を含む士業や管理部門に特化した転職エージェントとして、30年以上の実績があり、弁護士求人も数多く扱っています。
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転職活動の際には、これまでの実績やノウハウを活かし、転職を成功に導くためのきめ細やかなサポートを行っています。
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まとめ
「就職が難しい」といわれている弁護士ですが、実際の需要は少なくありません。法律事務所だけでなく、一般企業や公的機関など、就職先も多種多様です。
一方で弁護士人口が増えており、就職の競争が激化しているのも事実です。
就活の際には「動機やキャリアプランを言語化する」「自己アピールに具体性と客観性をもたせる」など、他者と差別化できるような対策を行うことも重要でしょう。
もし自分1人での転職活動が難しい場合、転職エージェントを活用するのもおすすめです。応募先の選定や作成書類の添削、面接対策など、さまざまなサポートを行ってくれます。
管理部門と士業に特化して30年以上の転職支援実績をもつ「MS Agent」は、弁護士の求人も多く取り扱っています。ぜひ一度、ご相談ください。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、飲料メーカー営業、学習塾の教室運営を経て19年MS-Japanに入社。キャリアアドバイザーとして企業管理部門、会計事務所などの士業界の幅広い年齢層の転職支援を担当。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 会計事務所・監査法人 ・ 公認会計士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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