五大(四大)法律事務所とは?転職するならどこ?特徴や年収を解説!
日本に数ある法律事務所の中でも、特に所属弁護士数の多い事務所を「五大(四大)法律事務所」と呼びます。いずれも500名以上の弁護士を抱えており(※1)、取り扱う案件も大型のM&A(Mergers and Acquisitions:企業の合併・買収)やファイナンス、国際法務などの大手事務所ならではの大型案件が集中しています。
トップクラスゆえに入所は容易ではありませんが、待遇は高水準であり、いずれかの法律事務所に所属すれば弁護士としてのキャリアに価値がつくことは確実です。
本記事では、五大(四大)事務所の勤務実態や年収、各事務所の特徴を紹介し、さらに五大(四大)事務所に転職するにはどうすればよいかについて解説していきます。
五大(四大)法律事務所の成り立ちと現在
2000年代以前、法律事務所の所属弁護士数は、大手といわれるところでも50名程度でした。その後、法律事務所が拡大化しはじめた背景としては、M&Aの件数が急増したこと、司法制度の改革によって弁護士数が増加したことなどが挙げられます。
特にM&Aをはじめとした大型案件を適切に処理するには、短期間に数多くの弁護士が必要で、大規模事務所でなければ対応できません。
結果的に法律事務所同士の合併が進み、次第に一部法律事務所に弁護士が集中するようになりました。こうして形成されたのが四大法律事務所(西村あさひ、長島・大野・常松、アンダーソン・毛利・友常、森・濱田松本)であり、その後、急成長を遂げ、四大法律事務所と同様の案件を扱い、規模も同等になったTMI総合法律事務所を加えて、五大法律事務所と呼ばれるようになっています。
五大(四大)法律事務所とは?
五大(四大)法律事務所に共通しているのは、以下の2点です。
- ・メインの拠点を東京に置いている
- ・企業法務を専門にしている
事務所ごとの特長については、以下でくわしく紹介します。
弁護士法人西村あさひ法律事務所
650名弱の弁護士(2023年10月時点)が所属している、国内最大手の法律事務所です。弁護士だけでなく、税理士や弁理士、法学者なども在籍しており、金融、不動産、事業再生、M&Aなど、多種多様な業務で高い評価を得ています。国内には東京を含めて5か所の拠点を構えるほか、アジアを中心に海外展開も進め、全世界には計20か所の拠点があります。
同事務所の大きな特徴は、団体主義的な文化が醸成されていることです。弁護士個々の裁量より、組織の規律が重視される傾向があります。業務量の多さは五大(四大)法律事務所の中でも一二を争いますが、チームでの業務体制が整っており、新人教育が充実している事務所に入所したいという人にはおすすめです。
弁護士法人長島・大野・常松法律事務所
もともと渉外案件や企業の大型法務案件を扱っていた大手事務所(長島・大野法律事務所)と、国際証券や金融全般を扱っていたブティック事務所(常松関根簗瀬法律事務所)とが合併してできた法律事務所です。国内拠点こそ東京の1か所のみですが、ニューヨークや上海、東南アジアにも拠点を拡大しており、金融、キャピタル・マーケット、紛争解決など、多彩な業務を展開しています。海外のビジネス法務にも強い点が特徴です。
西村あさひ法律事務所と同じく、団体主義的な色合いが強く、弁護士の育成に注力しています。同時に実力主義的な側面もあり、評価が厳しい反面、歩合給の割合が高いとされています。実績を上げれば、若いうちから高収入を得られる可能性のある法律事務所です。2023年10月時点での所属弁護士数は530名弱で第5位です。
弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所
日本における国際法務の草分けとして、1952年に設立された、歴史ある法律事務所です。金融、キャピタル・マーケット、事業再生、M&Aなどをはじめとして、幅広い法律分野を得意としており、海外の顧客や外資系企業からも高い評価を得ています。国内拠点は東京を含む3か所で、東南アジアを中心に海外拠点も拡大しています。
同法律事務所ではセクション制が採用されていません。分野ごとの専門性を高めるのには時間がかかる可能性がありますが、さまざまな分野の業務に関わることができ、横断的に経験を積める点が特徴です。2023年10月時点での所属弁護士数は580名強で第2位です。
弁護士法人森・濱田松本法律事務所
企業活動に必要とされる多種多様な法務をカバーし、ワンストップでクライアントの法務ニーズに応えられる法律事務所です。訴訟や倒産などの国内案件を得意としていた森綜合法律事務所が、渉外金融法務や知的財産法務を強化するために、濱田松本法律事務所やマックス法律事務所と統合して設立されたという背景を持ちます。そのため、訴訟・紛争分野では国内トップクラスの実績と評価を誇っています。
大手法律事務所の中では海外案件の比重が比較的小さいという見方があるものの、ITやライフサイエンスなど、新しい分野の案件にもチャレンジしており、若手の育成にも注力していることが特徴です。国内拠点は東京を含む5か所、所属弁護士数は560名強で第3位です。
TMI総合法律事務所(弁護士法人)
近年、急速に規模を拡大しており、国内には東京を含めて6か所、海外ではアジア、アメリカ、ヨーロッパなどに25か所の拠点を持つ法律事務所です。企業法務、金融、知的財産、危機管理などの業務に加えて、海事法や環境・エネルギー関連業務などにも対応しています。弁理士も多く所属しており、また大手事務所の知財部門出身弁護士らによって設立されたという経緯もあるため、IP(知的財産関連)案件に強みを持っています。
業務分野は大きく4グループ【コーポレート】【ファイナンス】【IP(知的財産)】【訴訟・倒産】に分かれているものの、グループ間の垣根は低く、アソシエイトが希望すれば別グループの案件にアサインしてもらうことも可能な点が特徴です。
「所員がつながる力」を伝統として掲げ、かつ多様性を尊重する風土もあって、風通しがよい雰囲気が漂っています。所属弁護士数は560名強で第4位です。
(※1 2023年10月時点における日本弁護士連合会への登録弁護士数)
参照元:
日本弁護士連合会
五大(四大)法律事務所は激務といったイメージだが・・・
五大(四大)法律事務所の業務は基本的に企業をクライアントにしたリーガルサービスであり、国境をまたがる渉外案件(クロスボーダー案件)を数多く扱っています。
これらの法律事務所では専門性の高い大規模案件を中心に取り扱っているため、業務難度の高いことはもちろん、多数の弁護士や関係各所と連携しながら業務を進めることが求められます。そのため業務のコントロールが難しく、労働時間は長時間化する傾向があります。知力だけでなく、体力も要求されるのが五大(四大)法律事務所です。
事務所に所属する弁護士はまず「アソシエイト」として採用されます。五大(四大)法律事務所ではほとんどの場合、特定セクターの専属となり、パートナーや先輩アソシエイトとチームを組んで案件をこなしながら、弁護士としての基礎を築いてゆきます。
その後、実績やパートナーからの評価によって(もちろん個人差はありますが)弁護士経験10年前後のタイミングで、法律事務所のパートナー(共同経営者)にプロモートされます(アソシエイトとして採用された人が必ずパートナーになれるわけではありません)。
業務内容は多岐にわたりますが、中心となっているのは大企業から依頼される企業法務関連案件です。特徴的な業務としてはメガディールのM&Aやコーポレート案件、大手事務所でしか取り扱うことのないファイナンス案件などが挙げられます。
五大(四大)法律事務所の業務は激務ではありますが、日本や世界の経済を支える役割を果たしていると実感できるものです。やりがいを感じられる仕事であることは間違いありません。
五大(四大)法律事務所の年収は?
五大(四大)法律事務所は激務ではあるものの、入所後の待遇はほかの法律事務所に比べれば遥かによく、入所1年目から1,000万円以上に達します。一般的な法律事務所であれば1年目の年収は600万円前後が相場です。2~3年目以降は歩合制となるケースもあるため、一概にはいえませんが、入所3年目で1,500万円、入所5年目で2,000万円に達することもあります。
アソシエイトを経てパートナーとなった場合、報酬は億を超えるケースも多く、その後も自身の努力次第で上げていくことが可能です。
五大(四大)法律事務所に入所できるのは、同じ弁護士でもロースクールでトップクラスの成績を取っていた人などの、いわばエリート中のエリートであり、そもそも入所すること自体が非常に難しいのが現実です。
入所後もハードワークであり、結果を出し続けることも求められます。ただし、日本で最高峰の事務所で弁護士として働けるという充実感や、努力に見合った報酬が得られる満足感には代えがたいものがあるはずです。
五大(四大)法律事務所の中でどこが一番いいのか?
五大(四大)法律事務所では、特定の分野に特化するようなことなく、広範囲にわたる法務領域をカバーしている点が共通しています。しかしながら、もともと得意にしていた分野があり、事務所の個性もあるため、転職を目指す場合には自分に適した事務所を選ぶことが重要です。
「どこが一番いいのか?」という問いに対して、客観的な評価を下すことは簡単ではありません。五大(四大)事務所においては分野ごとにチームが分かれていることもあり、採用は当該セクターのパートナー主導で行われることが多くあります。セクターによって雰囲気や所属弁護士の人柄などがまったく違うということは往々にしてあります。
大手事務所の中途採用は、その時その時でニーズが流動的であり、一概に傾向をまとめることは困難です。就職・転職希望時はエージェントに相談し、そのタイミングでの事務所の採用ニーズなどの情報を収集しながら、自身に適していると思える事務所を選択しましょう。
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五大(四大)法律事務所で働くメリットは?
五大(四大)法律事務所で働くことは、法務に携わる者にとって非常に魅力的なステータスです。しかし、それ以外にも働くことで得られるメリットが数多くあります。ここではその中から、五つのメリットを紹介します。
年収水準が高い
五大(四大)法律事務所では、1年目から年収1,000万円以上であることは上述した通りです。一般的な法律事務所の600万円前後に比べれば、年収はかなりの高水準です。
さらに役職に就けば年収は大幅に上がり、数千万円から場合によっては数億円の年収を得ることも夢ではありません。
経歴として一目置かれる
五大(四大)法律事務所で働いた経歴は、将来的に独立や転職を目指す際に大きな効力を発揮します。ほかの法律事務所や法務関係者から一目置かれる存在となり、法曹界での立場や実際の業務において優位に立てる要因になります。
多くの弁護士と切磋琢磨してスキルを磨ける
優秀で熱意ある弁護士たちと一緒に仕事ができるため、若手からベテラン弁護士に至るまで、非常に刺激的な経験ができる環境です。弁護士の中でも優秀な人が集まる事務所であり、そのような仲間とともに働くことは、自身のスキルを磨く上でも大きな経験になります。
プロフェッショナル集団の中で成長できる
五大(四大)法律事務所でしか取り扱っていないような大型案件は多く、独自のノウハウも有しているため、弁護士として貴重な経験を積めます。専門性を持った、さまざまな弁護士と仕事をすることで、自身も高度な知識・経験を有した、稀有な存在へと成長できます。
独立を見据えているならやりがいのある環境である
将来的に独立を考えている場合にも、五大(四大)法律事務所で働いたという経験には大きな価値があります。上述したように高い専門性を得られることはもちろん、五大(四大)法律事務所出身という箔が付き、なにより優秀な弁護士たちとの貴重な人脈を築けます。
実際に五大(四大)法律事務所に勤務してから、新しい法律事務所、ビジネスを立ち上げた先駆者は数多く存在します。
五大(四大)法律事務所に転職するには?
先述の通り、五大(四大)法律事務所の年収は初年度であっても1,000万円を超え、待遇面では日本でもトップクラスです。しかし、入所が難関であるのも事実で、時間をかけてほかの法律事務所で経験を積んでも、中途採用の選考に合格するのは難しいといわざるを得ません。
もし、キャリア志向で将来的に五大(四大)法律事務所に転職を考えているのであれば、いわゆる「ブティック系法律事務所」で実力を付けるという方法があります。
ブティック系法律事務所とは、企業法務における知的財産、倒産などの特定の分野に強みを持つ専門性の高い法律事務所のことです。こうした事務所で特定の能力を磨けば、五大(四大)法律事務所に入所できるチャンスが高まります。
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五大(四大)法律事務所に転職するには出身大学が重要?
五大(四大)法律事務所に転職するためには、実績や資格以外に出身大学も重視されます。東京大学、京都大学、一橋大学、早稲田大学、慶應義塾大学などの超難関大学の出身者がその代表です。さらに法科大学院でも、超難関大学のロースクール出身者が五大(四大)法律事務所には多く在籍しています。これは事務所側が出身大学を選り好みしているというよりは、業務上の知識やスキルを身に付けるためには、一定以上の学力が必要であると判断しているからだと考えられます。
各事務所在籍者の出身大学には特徴が見られ、アンダーソン・毛利・友常法律事務所では東大出身者がおよそ半数を占めています。西村あさひ法律事務所、長嶋・大野・常松法律事務所、森・濱田松本法律事務所の3事務所は、東大・早稲田・慶應の各大学出身者がやはり半数以上を占めています(単純に学生数や立地の関係もあるため、一橋や京大の出身者が少ないというわけではありません)。
一方でTMI総合法律事務所の人員構成には異なる特徴があり、ほかの事務所のように特定大学の出身者による寡占状態が進んでいません。超難関大学出身者が多いのは間違いありませんが、比較的バランスよく出身大学が分散しています。
転職には超難関大学の肩書きが必ず求められるというわけではありません。どの法律事務所も、予備試験合格者の採用が全体のかなりの割合を占めています。
予備試験と司法試験を上位の成績で通過できれば、出身大学にかかわらず採用される確率が高くなる傾向にあります。
五大(四大)法律事務所への就職難易度
五大(四大)法律事務所への就職難易度は非常に高いレベルにあります。前述の通り、各事務所の在籍者は難関大学出身者が占める割合が高く、大学時点での学力は重要です。
しかし、難関大学出身者でなければ就職できないというわけではありません。予備試験・司法試験の上位合格や、ブティック系法律事務所で実務経験などがあれば、入所の可能性を上げられます。また、英語(TOEIC800点以上)や中国語、スペイン語の語学力などで付加価値を高めることも重要です。
もちろん、これらの条件を満たしているからといって、必ず就職できるわけではありません。選考における面接内容も重要な評価対象です。弁護士は正義感や責任感、向上心などの人間性が求められる職業であるということを理解しておきましょう。
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まとめ
五大(四大)法律事務所は激務ですが、それに見合った好待遇である点は大きな魅力です。弁護士のキャリアとしても一目置かれるため、国内トップクラスの環境で働きたいのであれば、必ず就職・転職先として候補に入ります。
ただし、組織規模が大きい分、希望通りの業務ができないケースも考えられます。キャリア形成のあり方も組織の方針に沿ったものになる可能性が高いので、入所を検討する場合、先々のキャリアプランを立てることが重要です。
五大(四大)法律事務所で働くことは、弁護士にとっては一種のステータスになることは間違いありません。キャリア志向の弁護士を目指していたり、高度な業務に挑戦したりしたいのであれば、ぜひ挑戦してみてください。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、新卒でMS-Japanへ入社。企業側を支援するリクルーティングアドバイザーとして約6年間IPO準備企業~大手企業まで計1,000社以上をご支援。
女性リクルーティングアドバイザーとして最年少ユニットリーダーを経験の後、2019年には【転職する際相談したいRAランキング】で全社2位獲得。
2021年~キャリアアドバイザーへ異動し、現在はチーフキャリアアドバイザーとして約400名以上ご支援実績がございます。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 法律・特許事務所 ・ 役員・その他 ・ 社会保険労務士事務所 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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