2024年06月24日

外国法事務弁護士とは?日本の弁護士や外国弁護士との違いや取扱業務について

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弁護士の方であれば、「外国法事務弁護士」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。近年における国際的なビジネス紛争の活発化を背景に、外国法の知識を持つ外国法事務弁護士の活躍の場が広がってきています。

今回は「外国法事務弁護士」をテーマに、概要日本の弁護士・外国弁護士との違い、業務内容を詳しくまとめました。また、外国法事務弁護士になるための方法活躍フィールド年収相場についてもあわせてご紹介します。
外国法事務弁護士に興味をお持ちの方は、ぜひ参考にしてみてください。

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外国法事務弁護士とは?日本の弁護士との違い

日本では弁護士法72条に基づき、外国で弁護士資格を保有している方であっても、日本の弁護士または弁護士法人ではない場合、報酬目的で国内法関連の法律事務を行うことが禁止されています。そのため、海外で実績を挙げている弁護士であっても、来日して日本の法律に関わる仕事を業とすることはできないわけです。

ただし例外として、日本の法律ではなく一定の外国法に関係する法律事務を取り扱う場合に限り、報酬目的での活動が認められています。 この外国法関連の法律事務を扱う専門職が「外国法事務弁護士」です。

『弁護士白書2023年版』によると、外国法事務弁護士の登録者数は2023年4月時点において458人であり、1987年に外国法事務弁護士の制度が発足して以降、年々増え続けています。それでもまだまだ人数としては少なく、人材不足の声があがっているのが現状です。

外国法事務弁護士と一般的な弁護士との大きな違いは、外国法事務弁護士は日本の弁護士資格を保持していないという点にあります。あくまで、外国の法域に関する業務を行うのみで、日本の弁護士・弁護士法人と同等の活動をするわけではありません。 しかし近年、日本の多国籍企業において海外進出は活発化しており、外国法の知識を持つ外国法事務弁護士へのニーズが高まっています。

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外国弁護士と外国法事務弁護士の違いは?

続いて、「外国弁護士」「外国法事務弁護士」の違いについて押さえておきましょう。

「外国弁護士」は、単に外国の弁護士資格を有する人のことを指します。外国の弁護士資格は該当国や州においてのみ有効であり、外国弁護士が日本国内で原資格国に関する法律事務を行うことはできません。

一方、「外国法事務弁護士」に登録していれば、原資格国に関する法律事務を日本国内で実施できます。つまり、日本で外国弁護士の資格を用いて活動するためには、外国法事務弁護士への登録が必要不可欠です。

なお、ホームページ上の弁護士紹介ページなどで外国弁護士を「弁護士」と記載するなど、日本国の弁護士資格を有するような誤解を与える表記は禁止されています。きちんと「外国弁護士」であることがわかるように記載する義務があり、違反すると弁護士法によって2年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられる点に注意が必要です。

【出典】第二東京弁護士会「外国弁護士の業務等に関するご注意」

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外国法事務弁護士になるには

外国法事務弁護士となるには、法務大臣の承認を受け、日本弁護士連合会(日弁連)において外国法事務弁護士として登録する必要があります。日弁連への登録をせずに、外国法事務弁護士として業務を行うことはできません。

登録を行うには、入会を希望する弁護士会(東京弁護士会や第一・第二東京弁護士会、大阪弁護士会など)を経由して、日弁連に登録請求書と必要な添付書類を日弁連に提出することで行います。登録請求書類を提出して登録が済めば、当該の弁護士会と日弁連に入会し、外国法事務弁護士として活動できるわけです。なお、入会する弁護士会と日弁連には別途登録料も納める必要があります。

外国法事務弁護士となるための資格要件は、現行制度では外国弁護士となる資格を取得した後、3年以上の実務経験が必要です。ここでいう実務経験とは、以下の3つのいずれかに該当する必要があります。

  • ①資格取得国での実務経験
  • ②それ以外の外国での実務経験
  • ③日本国内での実務経験

尚、③日本国内での実務経験は、通算して2年までしか実務経験に算入することができないため、少なくとも1年以上日本国外での実務経験を積む必要があります。
日弁連への登録請求時に、外国法事務弁護士となる資格を持つことを証明する書面も提出する必要があります。

【出典】法務省「外国法事務弁護士 承認・指定申請手続の概要」

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外国法事務弁護士の活躍フィールド

日本企業の海外進出が増える中、外国法に精通し、現地法人とのトラブルに対処できる外国法事務弁護士は、国内の法律事務所では高く評価されるのが通例です。

例えば国内には多国籍企業の渉外業務を扱う「五大法律事務所」(西村あさひ法律事務所、長島・大野・常松法律事務所、アンダーソン・毛利・友常法律事務所、TMI総合法律事務所、森・濱田松本法律事務所)があります。これらの法律事務所では、外国法務事務弁護士が活躍できる場は多く、高待遇で迎えられることが多いです。

また、国際紛争に強いブティック型法律事務所でも、紛争解決の専門家として外国法事務弁護士が活躍しています。大手の法律事務所に比べると事務所としての規模は小さいです。しかし収入面での条件がよく、外国法に関する知識をいかんなく発揮できます。

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外国法事務弁護士が取り扱える業務内容

外国法事務弁護士が取り扱える業務内容

続いて、外国法事務弁護士が取り扱える業務内容について解説します。外国法事務弁護士は、主に下記の4つの業務を行うことが可能です。

  • ・原資格国法に関する法律事務
  • ・指定法に関する法律事務
  • ・第三国法に関する法律事務
  • ・国際仲裁事件および国際調停事件の手続き代行

具体的にどのような業務を担当できるのか、以下で詳しく見ていきましょう。

原資格国法に関する法律事務

外国法事務弁護士の基本的な職務は、原資格国法に関する法律事務を行うことです。たとえばニューヨーク州の弁護士資格を有する場合は、ニューヨーク州法が原資格国法に該当します。

ただし、次の6つの業務は外国法事務弁護士の職務外にあたり、取り扱いが禁止されています。

1.国内の裁判所や検察庁、その他の官公署における手続き代行のほか、これらの機関に提出する文書の作成
2.刑事事件における弁護人としての活動や、少年の保護事件における付添人としての活動、さらには逃亡犯罪人引渡審査請求事件における補佐の業務
3.原資格国法以外の法の解釈や適用についての鑑定、その他の法的意見の表明
4.外国の裁判所または行政庁を対象とした手続き上の文書送達
5.民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第二十二条第五号の公正証書を当事者に代わって作成
6.国内の不動産に関する権利や工業所有権、鉱業権、その他の国内の行政庁への登録によって成立する権利等の得失または変更を主な目的とする法律事件に関する代理業務や文書の作成

なお、外国法事務弁護士が取り扱える業務であっても、次に該当する場合は弁護士と共同するか、弁護士の書面による助言を受けたうえで行う必要があります。

・国内の不動産に関する権利や工業所有権等の得失または変更を主な目的とする法律事件のうち、上記6の法律事件以外のものに関する代理業務や文書の作成
・親族関係に関する法律事件で、その当事者として日本国民が含まれるものについての代理業務および文書の作成
・国内に所在する財産で、国内居住者が所有するものに係る遺言あるいは死因贈与に関する法律事件、あるいは国内に所在する遺産の分割や管理、その他の相続に関する法律事件で、その当事者として日本国民が含まれるものについての代理および文書の作成

指定法に関する法律事務

外国法事務弁護士は、法務大臣から指定を受け、かつ外国法事務弁護士名簿に指定法の付記を受けた場合は、指定法に関する法律事務を行うことが可能です。ただし、次の5つの項目に該当する業務は行うことができません。

1.国内の裁判所や検察庁、その他の官公署における手続き代行のほか、これらの機関に提出する文書の作成
2.刑事事件における弁護人としての活動や、少年の保護事件における付添人としての活動、さらには逃亡犯罪人引渡審査請求事件における補佐の業務
3.外国の裁判所または行政庁を対象とした手続き上の文書送達
4.民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第二十二条第五号の公正証書を当事者に代わって作成
5.国内の不動産に関する権利や工業所有権、鉱業権、その他の国内の行政庁への登録によって成立する権利等の得失または変更を主な目的とする法律事件に関する代理業務や文書(鑑定書を除く)の作成

なお、指定法関連の法律事務のうち、弁護士との共同または助言を受けたうえで行う必要がある業務は以下の通りです。

・国内の不動産に関する権利や工業所有権等の得失または変更を主な目的とする法律事件のうち、上記5の法律事件以外のものに関する代理業務や文書の作成
・親族関係に関する法律事件で、その当事者として日本国民が含まれるものについての代理業務および文書の作成
・国内に所在する財産で、国内居住者が所有するものに係る遺言あるいは死因贈与に関する法律事件、あるいは国内に所在する遺産の分割や管理、その他の相続に関する法律事件で、その当事者として日本国民が含まれるものについての代理および文書の作成

第三国法に関する法律事務

外国法事務弁護士は、下記の弁護士からの書面による助言を受けた場合のみ「第三国法」に関する法律事務を行えます。(上記の指定法に関する法律事務において行うことができないものについては対象外)

・外国弁護士(当該特定外国における外国弁護士であり、外国弁護士となる資格をベースに当該特定外国法に関する法律事務に従事している者)
・外国法事務弁護士(当該特定外国法が、原資格国法または指定法に該当する者)
・外国法事務弁護士法人(原資格国法または指定法が当該特定外国法である社員が業務を執行する場合に限る)
・弁護士・外国法事務弁護士共同法人(原資格国法または指定法が当該特定外国法であり、外国法事務弁護士である社員が業務を執行する場合に限る)

なお、第三国法に関する法律事務で、弁護士との共同または書面による助言を受ける必要がある業務は指定法に記載の内容と同様です。

国際仲裁事件および国際調停事件の手続き代行

外国法事務弁護士は、ここまでご紹介した「原資格国法に関する法律事務」「指定法に関する法律事務」「第三国法に関する法律事務」の概要に関わらず、外弁法に規定する国際仲裁事件および国際調停事件の手続きについては代理対応が可能です。

・国際仲裁事件 (外弁法第2条第14号):民事に関する仲裁事件であり、次の3つのいずれかに該当するもの
1.当事者のすべて、または一部が外国に自宅や事務所、本店を有する
※当事者のすべて、または一部の発行済株式(議決権のあるものに限る)、出資の総数・総額の百分の五十を超える数や額の株式(議決権のあるものに限る)、持分を有する者等が外国に住所や主たる事務所、本店を有する場合を含む
2.仲裁廷が仲裁判断において準拠すべき法(当事者が合意により定めたもの)が日本法以外の法である
3.仲裁地が外国である

・国際調停事件 (外弁法第2条第15号):民事に関する調停事件であり、次のいずれかに該当するもの
1. 当事者のすべて、または一部が外国に自宅や事務所、本店を有する
※当事者のすべて、または一部の発行済株式(議決権のあるものに限る)、出資の総数・総額の百分の五十を超える数や額の株式(議決権のあるものに限る)、持分を有する者等が外国に住所や主たる事務所、本店を有する場合を含む
2.当該紛争に関する民事上の契約や取引によって生じる債権の成立および効力について適用すべき法(当事者が合意により定めたものに限る)が日本法以外の法である

【出典】法務省「外国法事務弁護士の概要と職務の範囲」

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外国法事務弁護士の年収

外国法事務弁護士の年収を集計した公的なデータは公表されていないため、ここでは参考までに外国法事務弁護士が多く所属する大手・外資系法律事務所の年収に注目してみましょう。

大手・外資系法律事務所における国際弁護士の年収は、初年度でも1,000万円以上を見込める傾向があります。そして、入社3年目には1,200万円超、5年目には2,000万円ほどに到達するケースも珍しくなく、一般的な弁護士と比較するとかなりの高年収を期待できる印象です。

もちろん、これらの数字がすべての外国法事務弁護士に当てはまるわけではありませんが、目安として捉えておくとよいでしょう。

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まとめ

「外国法事務弁護士」とは外国法関連の法律事務を扱う専門職であり、登録すると外国の法域に関する業務を日本国内で行う場合に有効です。日本国内の弁護士や弁護士法人と同等の活動を行えるわけではありませんが、経済のグローバル化が進む昨今においてニーズが高まりつつあります。

海外で弁護士資格を取得し、現地で実績を積んでから外国法事務弁護士に登録すれば、日本への帰国後も活躍の場は多くあるでしょう。

この記事を監修したキャリアアドバイザー

町田 梓

大学卒業後、新卒でMS-Japanへ入社。企業側を支援するリクルーティングアドバイザーとして約6年間IPO準備企業~大手企業まで計1,000社以上をご支援。
女性リクルーティングアドバイザーとして最年少ユニットリーダーを経験の後、2019年には【転職する際相談したいRAランキング】で全社2位獲得。
2021年~キャリアアドバイザーへ異動し、現在はチーフキャリアアドバイザーとして約400名以上ご支援実績がございます。

経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 法律・特許事務所 ・ 役員・その他 ・ 社会保険労務士事務所 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!

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