会計事務所の給料は安い?年収を上げる3つの方法
「会計事務所の給料は安いのでは?」と、転職をためらっている方もいるでしょう。
確かに、会計事務所の初任給は20万円程度であり、大卒初任給の全国平均と比べてみてもそれほど高い数値とはいえません。「零細会計事務所が多い」という業界ならではの事情もあり、給与体系や福利厚生の整備も難しい状況です。
しかし資格やスキルを身に付けたり、より待遇の良い事務所に転職したりすることで、着実にステップアップができる環境でもあります。
そこで今回の記事では、会計事務所の初任給や給料が安いといわれる理由、キャリアアップに必要な要素について詳しく解説します。
年収別習得スキルの目安や年収をアップさせる方法など、役立つ情報もあわせて紹介しておりますので、ぜひ参考にしてください。
会計事務所の初任給はどのくらい?
どのような組織に属するにせよ、初任給が気にならない人はいないでしょう。
会計事務所の初任給はどれくらいなのか、また全国平均と比べてどれくらいの数値なのかについて見ていきます。
会計事務所の初任給
会計事務所の初任給は、20万円程度が相場とされています。すべての会計事務所が初任給の詳細を公開しているわけではないため、正確な数値までは分かりません。
ただ就職サイトやハローワークなどの求人を見てみると、20万円前後に設定しているところが多いようです。
ただし会計事務所の給料については、未経験者か経験者によって若干異なります。未経験者の場合は、上記のように20万円程度が相場であり、年収は250万円〜350万円程度になります。
ただし未経験であっても、税理士試験の科目合格状況によっては、給料が高くなるケースもあるようです。具体的には、23万円以上が相場となります(年収300万円程度)。
経験者であれば、当然未経験者に比べて多少待遇が良くなります。初任給は、25万円〜30万円程度が相場のようです。年収ベースで考えると、350万円〜450万円程度になります。
全国平均との比較
2021年の厚生労働省の調査によれば、大卒初任給の平均は22万5,400円となっています(年収でいえば250万円程度)*。会計事務所の初任給は、場合によっては大卒初任給の平均を下回ることがあるようです。
*厚生労働省: 令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況(第9表 新規学卒者の性、学歴別賃金及び対前年増減率)
大学院卒の平均はさらに高くなります。ここまでのデータを見ると、「会計事務所の給料はそこまで高くない」ことが分かります。世間的にも、会計事務所の給料はそこまで高くないイメージです。
会計事務所の年収目安
それでは、会計事務所の年収の目安を見てみましょう。
会計事務所の年収は、大きく「経験」と「資格」によって決まります。
経験年数による年収は、以下がだいたいの目安です。
経験年数 | 年収目安 |
---|---|
~1年未満 | 280万円~350万円 |
1年~3年未満 | 350万円~450万円 |
3年~5年未満 | 450万円~550万円 |
5年~10年未満 | 550万円~700万円 |
10年以上 | 700万円以上 |
これだけ見ると「ずいぶん低い」と思うかもしれませんが、会計事務所の年収は、上の数字に資格による金額が加わります。
資格とは、税理士試験の科目合格のことです。何科目合格しているかによって、数十万円~100万円程度が上乗せされます。
したがって、全くの未経験でも、3科目合格なら、400万円程度で採用されることもあります。
会計事務所の給料が安いといわれる理由は?
会計事務所の給料が安いといわれる理由を、2つのトピックにわけて解説します。
給与体系や福利厚生が整っていない
会計事務所は、約9割が「従業員5人未満の零細事務所」であるといわれています。零細企業がそうであるように、小規模の会計事務所もまた、給与体系や福利厚生が整備できていない状態です。
たとえば大企業の従業員であれば、有給休暇を取得したり、福利厚生施設を利用できたりするのが一般的です。
しかし零細会計事務所は、そのような設備や待遇を用意できる資金力がなく、結果として給料が低くなってしまう傾向にあります。
もっと簡単にいえば、こうした零細会計事務所は、「資金力」や「人材」に乏しい状態です。大手の事務所に就職できれば話は別ですが、基本的に待遇面で期待するのは難しいでしょう。
正社員以外の従業員が平均を押し下げている
会計事務所の給料が低い原因として、「正社員以外の従業員が平均を押し下げている」という事情があります。
会計事務所は、数人の有資格者と無資格の補助スタッフにわかれているところがほとんどです。
有資格者の給料が高かったとしても、ほかの従業員が平均を押し下げており、「平均給与」の面では低く見えます。大卒初任給の平均よりも低くなるケースがあるのは、この事情が大きいでしょう。
年収別スキルの目安
次に、得られる年収とスキルの関係を見てみましょう。
年収300万円~
全くの未経験で資格もない場合には、会計事務所の年収は300万円程度からスタートするのが一般的です。
担当するのは会計データの入力と、庶務や雑務などの補助業務となるでしょう。補助業務をこなしながら、事務所全体の業務の流れをしっかりと覚えていくことが、年収アップのポイントです。
年収350万円~500万円
会計事務所スタッフはクライアントを担当し、月次および年次決算、税務申告、クライアント巡回などが主な業務です。
これら業務を滞りなく行えるようになり、担当クライアントの数が増えていくにつれ、年収はアップしていきます。
クライアントを一人で担当できるようになれば、年収350万円~が見えてきます。また、チームリーダーとして部下の管理・育成にも関われば、年収は500万円程度となることもあるでしょう。
ただし、以上の数字は税理士資格がない場合の話です。税理士資格が取得できれば、年収はさらに高いものが期待できます。
年収500万円~
年収が500万円を超えるためには、税理士資格の取得がひとつのポイントになります。会計事務所に勤務している税理士有資格者の平均年収が、500万円~600万円程度だからです。
ただし、税理士資格がない場合でも、500万円~の年収を得ることは可能です。そのためにはまず、1つの会計事務所に長く勤務し、役職を上げていく方法があります。
また、転職も年収アップに繋がることがあります。 資産税・事業承継や組織再編・M&A、IPO、連結納税、国際税務などに特化した会計事務所に転職し、これら業務を行う会計事務所への転職で身に付けられれば、やはり500万円~の年収が期待できるでしょう。
会計事務所によっては、新規案件受注や保険代理店業務の営業実績を給与で還元するところもあります。 そのような会計事務所では、営業スキルの習得も年収アップにつながるでしょう。
会計事務所で年収アップさせる3つの方法
会計事務所で年収をアップするための3つの方法を見ていきましょう。
資格を取得する
会計事務所で年収をアップするためにもっとも確実といえるのは、税理士資格の取得です。 一般的に税理士資格は、科目合格を積み重ねた末に取得します。 1科目合格するごとに、年収は10万円~30万円程度アップするのが一般的です。
経験値を高める
経験値を高めることも、年収アップには有効です。 会計事務所に入所したら、複数のクライアントを一人で担当できるだけの経験を身に付けていくにつれ、年収もアップしていくでしょう。
ただし、一定年数勤務して、一通りの仕事を覚えてしまうと、その先にさらに経験値を高めていけるかは人によって違いがあります。多くの人は、日常業務以外のチャレンジをしなくなる傾向にあり、年収が横ばいになります。
前述のとおり経験値を高めるためには、専門スキルを身に付けられる会計事務所への転職が方法のひとつです。 しかし、転職までしなくても、日常業務をつづけながらの経験値アップは可能です。
たとえば、クライアントへの提案に新たな工夫を加える、あるいは業務の効率化を図るなどは、経験値アップの身近な方法といえるでしょう。 会計事務所スタッフとしての経験値は、しっかりと意識してさえいればどこにいても高められます。
営業スキルを磨く
営業スキルを身に付けることも、経験値アップの方法のひとつです。 営業というと「テレアポ」などを思い浮かべる人もいることでしょう。 しかし、会計事務所での営業スキルは、既存クライアントのニーズをどれだけ汲み取れるかがポイントです。
既存クライアントの会社の状況を深く把握し、隠れている課題を発見できれば、その課題を解決するための新たな施策を提案できます。
このように、クライアントとしっかり向き合いながら仕事の領域を拡大していくことが、会計事務所における営業では重要です。
キャリアアップしたい税理士が求められるスキルは?
キャリアアップ転職したい税理士に求められるのは、「年齢に見合った実務経験」「資格内容」「科目の取得状況」などです。
最もウエイトが高いと考えられるのは、やはり税理士としての実務経験です。
一連のクライアント対応や税務申告書の作成はマストといえます。もちろん業務内容や目指すキャリアプランによって変わりますが、会計や税務に関する知識を身に付けておくと間違いないでしょう。
また中小から大手への転職を考えている場合は、資格の取得状況と年齢が大切です。
最も役立つのは、会計関連の資格です。日商簿記検定であれば2級以上、さらにはTOEICや税理士資格も良いでしょう。
税理士資格は、一部の科目に合格しているだけでもプラスになります。どの科目を取得しているかが、転職先を選ぶ際にポイントとなることもあります。たとえば、税法(国税三法)・ミニ税法を取得していれば、大手・ブティック系などの転職に役立つでしょう。
年齢に関しては、当然ではありますが、20代のうちに転職を決めておいた方が有利です。
30代でも転職はできますが、その分実務経験を積み、自分の能力を証明できるようにしておく必要があります。年齢に関しては、当然ではありますが、20代のうちに転職を決めておいた方が有利です。
30代でも転職はできますが、その分実務経験を積み、自分の能力を証明できるようにしておく必要があります。
現在は売り手市場であり、税理士試験受験者数も減少しているため、求人は比較的選びやすくなっています。やりたいことや実現させたい働き方を明確化しておきましょう。そして、転職を考えている場合は、なるべく早い段階で動き出すことがおすすめです。
転職する場合は「どう働きたいか」を明確にしましょう!
まずは転職することで何を変えたいのかを明確にしておきましょう。
転職することで現状の課題から何が改善でき、今後どうなっていきたいのかを明らかにすることで、より理想に近い働き方が叶います。
年収以外の面でよくある転職理由は下記です。
ワークライフバランスを整えたい
よくあるのがワークライフバランスに関する理由です。
会計事務所は年収帯が低めであり、ブラックなイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし昨今では、新型コロナウイルスの影響を受け、在宅勤務やフレックス制度を導入するなど、働き方改善に努める会計事務所も増えてきています。
勉強時間を確保できる環境に移りたい
勉強時間を確保できる環境に移りたいと考える人もいます。
これから税理士を目指すのであれば、勉強時間の確保が必要です。資格取得を応援し、仕事と勉強が両立できるよう調整してくれる事務所もあります。
専門性を高めたい
専門性を高めてキャリアアップをするために、転職を考える人もいます。
自分の専門性を高めるためには、事務所での業務内容がとても重要です。応募先事務所が特化している分野や、入所後の業務内容をしっかりと把握することが重要です。
将来の独立に向けた準備をしたい
独立を志望しており、そのためのキャリアを考えている人もいます。
独立を考えている場合は、独立支援をしてくれる事務所を選択するのが良いでしょう。ここ数年のトレンドとして、税理士や公認会計士は、独立や非常勤ポジションでの働き方を希望する方が増えています。
働き方が多様化し、個人のキャリアを尊重する事務所も増えているため、そうした事務所を見つけて転職するのも、有効な選択肢といえます。
会計事務所の求人事例
未経験可/残業10時間程度/7時間半勤務の会計事務所からアシスタントの募集
仕事内容 |
・会計ソフトへの入力業務(月次) ・申告書作成及び決算業務の補助 ・確定申告業務の補助 ・年末調整業務の補助 ・その他税務会計スタッフのサポート業務 |
必要な経験・能力 |
以下のいずれも必須 ・大卒以上 ・日商簿記2級以上をお持ちの方 ・社会人経験がある方 |
想定年収 |
350万円 ~ 450万円 |
学校や家庭との両立可能/定着率高い/スポットでM&AやIPO支援等/税務スタッフ募集
仕事内容 |
・記帳・入力 ・月次決算業務(帳簿作成) ・決算申告書の作成 ・顧問先の売上チェック ・税務届出書類の作成 ・年末調整業務 ・確定申告書作成業務 ・お客様対応 ・その他上記に付随する業務 等 |
必要な経験・能力 |
・会計事務所経験者 |
想定年収 |
450万円 ~ 600万円 |
年間200件近くお客様が増えている急成長中の事務所です!
仕事内容 |
最終チェック担当者として、 ・決算 ・申告書作成 ・巡回監査 ・税務相談対応など |
必要な経験・能力 |
いずれかに当てはまる方 ・税理士事務所、会計事務所での勤務経験7年以上 ・国税庁・税務署での勤務経験 |
想定年収 |
560万円 ~ 700万円 |
会計事務所の求人を確認したい方はこちら
会計事務所(会計・税務)の求人情報
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まとめ
会計事務所の給料は、確かに高いとはいえません。
しかし、経験と資格などのスキルによって年収アップの可能性があります。また、会計事務所をよく見極めて転職することで、年収アップだけでなく、自分にとっての理想的な働き方ができる可能性もあります。
転職では、実務経験や資格、税法科目の取得状況などが重要視されます。
税理士資格を取得できれば、将来の独立開業も視野に入るでしょう。ステップアップしたいと考えている場合は、積極的に転職を狙い、専門性を高めてキャリアを切り拓いていきましょう。
この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、製薬会社へ勤務。主に病院、クリニックのお医者様へ新薬の情報提供に従事。MS-Japanに転職後は、キャリアアドバイザーとして転職活動を支援。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 会計事務所・監査法人 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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