20代税理士は高く評価されるのか?キャリアアップの秘訣は?
国家試験である税理士資格は、学識・資格・職歴による受験資格は定められていますが、年齢制限はありません。そのため、20代のうちに試験に合格して税理士として活動を始めることもできます。
では、20代で税理士となった場合、平均年収はいくらいなのでしょうか。また、その後、どのような道筋のキャリアアップが考えられるでしょうか。
今回は「20代税理士」に焦点を当てて、その実態について詳しく紹介します。
税理士試験の5科目到達者 20代は最も少ない
国税庁は毎年、その年度の税理士試験の結果を発表していますが、合格者数の年齢別の人数についても公表しています。
令和5年の税理士試験結果における、年齢別の5科目到達者数は以下の通りです。
年齢層 | 受験者数 | 5科目到達者数 |
---|---|---|
20歳以下 | 1,328人 | - |
21~25歳 | 5,695人 | 53人 |
26~30歳 | 4,916人 | 74人 |
31~35歳 | 4,973人 | 107人 |
36~40歳 | 4,619人 | 97人 |
41歳以上 | 11,362人 | 269人 |
合計 | 32,893人 | 600人 |
最も多いのは「41歳以上」で、年齢が下がるにつれて5科目到達者数は減少傾向です。20代、30代、40代、50代と年代別に見た場合、20代の合格者の数は最も少ないです。
難関試験であるため、働きながら何年も時間をかけて資格取得を目指す人が多く、20代のうちで合格する人は極めて少ないのが実情です。
20代の税理士は高く評価されるのか?
一般的に20代では業務経験が浅いです。特に、20代のうちに税理士試験に合格している人は、それまで試験勉強を中心に生活してきた人が多いので、基本的な社会人経験が少ないケースが多くあります。
そのため、転職・就職の際、即戦力を求めている会計事務所などでは、経験と人脈が豊富なベテラン税理士を高く評価することもあります。
ただ、20代であれば将来的に成長し、1からキャリアアップを図れる年代です。
将来的な戦力を求める会計事務所では、20代で実務経験が不足している税理士であっても、将来性が見込めれば積極的に採用します。
20代税理士の年収は?
国税庁の「令和4年分民間給与実態統計調査結果」によると、20~24歳の給与所得者の平均年収は約273万円、25~29歳では約389万円です。そのため、20代全体で見れば、年収は300~350万円程度と予測できます。
一方、2023年に管理部門・士業特化型転職エージェントの「MS Agent」に登録のあった税理士の転職希望者データでは、20代における現年収の平均は520万円でした。
そもそも20代で税理士試験に合格すること自体が非常に難しいため、多くの人は税理士試験に何科目か合格して就職、または働きながら合格を目指して勉強する人がほとんどです。
その場合は、5科目合格して税理士資格を取得した人よりも年収は低くなるでしょう。
500万円台というと同世代の他の業界に比べると給与面でかなり恵まれているといえますが、それだけ試験合格が難しいことを示しているわけです。
20代で税理士がキャリアアップするためには?
キャリアアップを目指す方法・秘訣は、自分が将来的にどのような税理士になりたいかによっても異なります。先に述べた通り20代では税理士としての経験が少ないため、まずは実務経験を積んでいかなければなりません。
もし税理士として専門分野を持ち、特殊業務に従事したいと考えているのであれば外資系の企業に就職・転職することがおすすめです。
外資系企業であれば、海外拠点とやり取りすることも増え、税理士としての交渉力、語学力を大きく高めることができ、専門性の高いスキルを身に付けることが期待できます。
一方、安定した高収入を得て、将来的に税理士としての年収を着実にアップさせていきたいならば、大手の税理士事務所・会計事務所に就職・転職するのがおすすめです。
税理士全体の年収は700~800万円程ですが、勤務先によって年収は大きく変わります。大手の事務所であれば、「税理士資格保持者」は、給与も高くなるのが一般的です。
また、将来的に独立を希望しているなら、個人で経営している会計事務所で働くことも有益といえます。
実地で税理士としての経験を積めることに加えて、勤務時代に培った「人脈」を、独立後に活用できるでしょう。
税理士向けの求人例
将来の独立も視野に、横断的に経験を積める環境に
Kさん 20代男性
転職前:大手税理士法人(年収:650万円)
転職後:準大手税理士法人(年収:520万円)
資格:税理士(簿記論、財務諸表論、消費税、税法科目免除)
大手税理士法人で働いていたKさんは、SPC特化チームに所属しており、ほとんどが証券化関連だったため、よりクライアントと近い距離で貢献したいという思いがありました。加えて将来的には独立も視野に入れることができる経験を積みたいとご相談に来られました。
Kさんの希望は「中規模で横断的に経験を積めること」だったため、弊社からは総合型の独立系コンサルティングファームの税務専門ポジションをご紹介しました。面接ではご自身の強みや思いをプレゼンし、スムーズに内定を獲得。年収が下がるものの、経験を重視し、ご紹介したポジションでの入社を決意しました。
M&Aという角度で後継者不在の会社を支援したい!
Kさん 20代女性
転職前:中堅税理士法人(人数:120名) (年収:500万円)
転職後:独立系M&Aコンサル (人数:10名)(年収:520万円)
資格:税理士試験科目5科目合格(簿記論 財務諸表論 法人税 固定資産税 消費税)
Kさんは中堅税理士法人にてオーナー企業の税務顧問業務をメインに担当していました。その中で、後継者不在により廃業を選択しなくてはならない会社に遭遇。この経験がきっかけでKさんはオーナー企業の後継者問題に興味を抱くようになり、より支援できるポジションへの転職を決意しました。
転職の方向性として、「事業承継コンサルティングに強い会社」と「M&A支援に強い会社」のどちらでキャリアを積むか決め兼ねていたKさん。そんな中、内定をいただいた独立系M&Aコンサルティング会社の社長から「うちは後継者不在により事業廃止を選ばざるを得ないような会社を救いたい。素晴らしい技術を持った会社であれば、まだ市場価値はあるのだから。」という発言に共感し、入社を決められました。
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想定年収 |
400万円 ~ 800万円 |
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必要な経験・能力 |
<必須> ・経理業務のご経験1年以上 ・大学、大学院ご卒業の方(第二新卒歓迎) <歓迎> ・税理士試験の科目合格者、簿記1級の有資格者 ・日商簿記2級以上の有資格者、または同程度の知識、経験を有する方 |
想定年収 |
421万円 ~ 450万円 |
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まとめ
20代で税理士試験に合格することは困難ですが、有資格者であることを正当に評価してくれる事務所であれば、就職・転職にあたって一定の処遇を約束してくれます。
通常、20代のうちは働きながら税理士を目指す人が多く、既に資格を持っている人は、就職・転職において非常に優位です。
どのような税理士を目指すかによって、キャリアアップの仕方は変わります。
自分が得意とする専門分野を持ってキャリアアップを図るのか、安定した企業で年収を着実に増やしていきたいか、独立開業したいか等、まずは自分の将来像を20代のうちにしっかりと固めておくことが大切です。
この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、新卒でMS-Japanに入社。法律事務所や会計事務所、監査法人、社労士事務所、FAS系コンサルティングファームなどの士業領域の採用支援、及びその領域でのご転職を検討されている方の転職支援を行っています。
会計事務所・監査法人 ・ 法律・特許事務所 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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