裁判官から弁護士にキャリアチェンジは可能?法律事務所からの評価など、転職について解説
社会において非常に大切な役割を担っている裁判官という職に就いていても、様々な理由から裁判官の職を離れ、弁護士としてのキャリアをスタートする方も少なくありません。
この記事では、裁判官から弁護士へのキャリアチェンジについて詳しく解説します。
裁判官としての経験が弁護士としてどのような強みとなるのか、またキャリアチェンジを検討する際の注意点など、裁判官から弁護士になりたいと考えている方に参考としていただける情報をたっぷりと盛り込んでいきます。
裁判官から弁護士にキャリアチェンジする人はいる?
定年前に裁判官を退任して弁護士に転身する方を指す「ヤメ判」という呼び名が広く知られているように、弁護士の中にも元裁判官の経歴を持っている方は一定数います。
裁判官は司法試験、司法修習修了試験に合格しているため、退官して各種弁護士登録手続きを完了すれば、弁護士になることができます。
「ヤメ判」を選ぶ理由としては、裁判官は定年まで転勤が続くため、家庭のことを考えると裁判官として働き続けるのが難しいという事情が主とされています。
また、弁護士として働くにあたって、裁判官の経歴がプラスに働くという考えもあります。
裁判官の手の内を知っており、上手な書類作成や尋問のやり方も見てきているため、これらを応用しながら弁護士業務に従事できるからです。
弁護士白書2022年版で弁護士登録者および、弁護士登録前の職業の内訳を見ることができます。
年度によってバラつきがありますが、40名~50名ほどが弁護士登録前の職業が裁判官となっているのを確認できます。
1500人ほどが各年度に弁護士登録しているため、ヤメ判の割合は3%前後といえます。
裁判官から弁護士にキャリアチェンジするよくある理由
裁判官から弁護士に転職する主な理由として、以下の3つが挙げられます。
全国転勤
裁判官の職務は、公平・中立の立場で「人を裁く」重要な仕事を担います。
ひとつの地域に長く留まることで私的な交流が生まれ、その結果として業務に支障が出ないよう、裁判官はおおよそ3年ごとに全国の裁判所に転勤となることが一般的です。
この制度は定年まで続くため、家庭の事情や子育てを理由に特定地域に留まりたいと考える裁判官も多く、これを理由として弁護士への転身を検討するケースも増えています。
給与が弁護士と比べて高くないことも…
裁判官の年収は、「裁判官の報酬等に関する法律」により決められており、平均値で約577,846円/月、中央値で341,600円/月とされています。
一方、弁護士の年収を見てみると、弁護士白書2021年版によれば、年収の中央値は1,437万円、所得の中央値は700万円とされており、裁判官よりも上の給与水準となっています。
大手法律事務所では1年目から1000万円以上の収入が期待でき、パートナーになると数千万円から数億円の収入が得られることもあるので、収入面を重視して弁護士へと転職する裁判官も少なくありません。
業務が多忙
裁判官は膨大な量の資料を読み解き、公平かつ正確な判決文を執筆する日々を繰り返すため、業務が極めて多忙であるといえます。
常に集中力を要されるにも関わらず、一年を通してその忙しさは途切れることがありません。
このため、ワークライフバランスを重視して転職を希望する裁判官も珍しくありません。
裁判官からのキャリアチェンジがうまくいかない理由
高い専門性と豊富な専門知識を兼ね備えている裁判官のキャリアを持っていても、転職がうまくいかない場合もあります。
その理由としてまず挙げられるのが、裁判官対象の求人そのものが少ない点です。
司法試験の合格者の中で裁判官になる人は極めて少なく、その数は全体の数パーセントに過ぎません。
このため、法律事務所側が元裁判官からの応募をあまり想定しておらず、求人が少ない状況が生じています。
その他、弁護士としてのキャリアイメージが固まっていないのも、裁判官の転職がうまくいかない理由のひとつです。
面接の際に「どのような弁護士になりたいか」という質問に対して、具体的な答えが用意できなければ、法律事務所側が採用を躊躇する可能性が高くなってしまいます。
元裁判官は法律事務所から評価される?
裁判官になるためには、難関の司法試験を合格すること、成績が優秀であること、が必要です。
特に後者については、裁判官の仕事は読み書きがメインであり、起案能力などは非常に高い水準が求められることから、検察官や弁護士と比較しても、裁判官としての採用においては成績が重視される傾向があります。
このような背景より、法律事務所がアソシエイトを募集する際には、その事務所で取り扱っている特定の案件の経験がない、もしくは少ない応募者であっても、元裁判官のキャリアを持つ人材はポテンシャルを持った人材であると評価され、転職に成功する可能性は十分にあるといえます。
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裁判官が弁護士にキャリアチェンジする際の強み
裁判官が弁護士にキャリアチェンジした場合の強みとして、以下の3点があります。
訴訟・紛争解決の専門性
元裁判官は、裁判所と裁判官の特徴を深く知っているのが強みです。
裁判所の手続きについて精通しており、訴訟活動をスムーズに進めることができます。
これまでの経験から、裁判官が判決や和解などの方向性をどのように考えているのかも読みやすいため、裁判官を説得するという弁護士の主要な役割を担うにあたって優位であるといえます。
書面での作業に強い
弁護士には、証拠探しや文献の精査などの緻密な作業が求められるため、新人弁護士の多くがストレスを抱えてしまいがちです。
しかし、裁判官は日常的に大量の文書や訴訟記録、判例、証拠書類を精査する必要があるため、キャリアを通じて地道な書面作業に対する耐性やスキルが養われています。
裁判所・裁判官とのネットワーク
元裁判官は、裁判所内での人間関係やネットワークを持つため、これらを活かして訴訟活動を進めることができます。
元同僚や後輩が裁判官となれば、法廷の進行方法や必要な準備について鮮明なイメージを描きやすいため、訴訟の戦略を練る際に優位となる可能性があります。
裁判官が弁護士にキャリアチェンジする際に気を付けるポイント
裁判官が弁護士にキャリアチェンジする際に気を付けるポイントとしては、年齢、転職先の事務所の取り扱い分野、の2点があります。
弁護士は経験やクライアントからの信頼などが重要なので、年齢がハンデとなりにくい職種であり、年齢を重ねるほど有利に働くこともあります。
しかし、裁判官から転職した場合、そこから弁護士としてのキャリアがスタートすることとなりますので、年齢が高くなるほど経験や信頼を積み重ねていくための時間的余裕が少なくなってしまいます。
よって、20代・30代の若手裁判官は、弁護士経験がなくてもそのポテンシャルを評価されて採用される可能性が高いものの、40代以降で転職する場合にはハードルが高くなってしまいがちといえます。
一般論として、転職に成功するためには前職の経験を最大限に活かせる応募先を選ぶことが基本とされていますが、弁護士への転職でも同様です。
例えば、刑事訴訟の経験があるのに企業内の法務職を希望すれば、経験が活かしづらい選択となるため、採用されない可能性が高くなります。
反面、訴訟の経験が豊富な裁判官であれば、訴訟を専門に扱う法律事務所での採用の可能性が高くなります。
自身の経験や専門性を十分に理解し、それを活かせる環境を選ぶことは採用につながるだけでなく、その後のキャリアにおいてもキーとなってきます。
まとめ
裁判官から弁護士へキャリアチェンジすることは可能です。
裁判官としての豊富な経験は、裁判所の手続きに精通していること、裁判官の意図や考え方を深く理解していること、は訴訟活動や紛争解決の分野で大きな強みとなるため、他の応募者との差別化を図る点で非常に有利です。
しかし、転職を成功させるためには年齢や経験、そして応募を検討している法律事務所の取り扱い分野をしっかりと見極めることが重要です。
自身の専門性や経験を活かせる法律事務所を選ぶことができれば、よりスムーズにキャリアチェンジを実現しやすくなります。
これから弁護士に転職しようとお考えであれば、弁護士の転職支援実績を豊富に持つMS-Japanの利用も選択肢のひとつとしてみてはいかがでしょうか。
この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、新卒でMS-Japanに入社。
法律事務所・会計事務所・監査法人・FAS系コンサルティングファーム等の士業領域において事務所側担当として採用支援に従事。その後、事務所側担当兼キャリアアドバイザーとして一気通貫で担当。
会計事務所・監査法人 ・ 法律・特許事務所 ・ コンサルティング ・ 金融 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 税理士科目合格 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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