2024年10月08日

移転価格コンサルティングとは?業務内容や評価されるスキルについて解説!

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現代のグローバルなビジネス環境では、異なる国にまたがる企業グループが日常的に取引を行うことが増えています。
これに伴い必要とされている役割が、適正な「移転価格」を専門的にアドバイスできるコンサルタントです。
この記事では、移転価格コンサルティングの基本的な業務内容から、求められるスキルやキャリアについて詳しく解説します。
移転価格に関心をお持ちの方や、将来的にこの領域でキャリアを構築したい方は、ぜひお役立てください。

移転価格コンサルティングとは?

そもそも移転価格とは

移転価格とは、海外の関連企業との間で取引される商品やサービスの取引価格を指します。
異なる国や地域に拠点を持つ企業が、グループ内での取引を行う際には、その取引価格が公正な市場価格に基づいていなければなりません。
移転価格の調整が適切でない場合、国際的な税制上の問題や企業の信頼性に影響が及ぶ可能性があるのです。

>移転価格コンサルティングとは?

例えば、A国に本社を置く企業が製品を製造し、B国にある子会社が販売を担うとしましょう。
A国の本社がB国の子会社へ、本来の市場価格よりも不当に低い価格で製品を提供した場合、子会社に利益が偏りすぎてしまいます。
その際問題となるのが、A国・B国の双方で納めるべき税金に変化が生じることです。
関連企業間の取引価格が不適切に設定されると、利益が国境を越えて移動することにより、税務当局がどちらの国でどれだけの税金を徴収できるのかという理不尽な状況に陥ります。
適正な移転価格で取引が行われていなければ、結果的に税務当局から「課税逃れ」と判断され、税額の修正申告や追徴課税を求められることになりかねません。

このような状況を防ぐために導入されているのが、「移転価格税制」というルールです。
移転価格税制は、関連企業間の取引による所得の移転を規制して、双方から適正な税金を徴収することを目的としています。
関連企業間で取引が行われた場合、関連しない第三者と取引する場合と同水準の取引価格(独立企業間価格)が適用されたものとみなされ、課税するしくみです。

移転価格には、企業の不当な利益配分という問題だけでなく、国境を越えた「税収のせめぎ合い」に陥るようないびつな側面があります。
企業のグローバル化が進む中で、移転価格を適切に取り決めることは、健全な企業活動や税務コンプライアンスの観点からも重要と言えるでしょう。

移転価格コンサルティングとは

移転価格コンサルティングは、関連企業間の取引において移転価格の規制を遵守し、適正な価格設定を行うためのアドバイスと支援を提供するサービスです。
国際的な税務法や規制の複雑性から、企業は移転価格に関する意思決定を行う際に専門知識を必要とします。
そのため、法律、経済学、会計、税務などの専門分野に精通している移転価格コンサルタントが、クライアント企業の事業モデルや市場状況を分析し、取引価格を適切に設定する手助けを行います。
併せて、移転価格の文書化や税務申告の準備、国際的な税務調整に関する支援も提供します。
専門的なコンサルティングによって、企業の合法的な税務コンプライアンスを確保し、国際取引におけるリスク管理に貢献しているのです。

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移転価格コンサルタントの業務内容

移転価格コンサルタントの業務内容

移転価格コンサルタントの主な役割は、クライアントの国際取引に伴う税務リスクを継続的にサポートしながら、適正な移転価格の設定に導いていくことです。

そのためには、クライアントの業務内容に対する理解が不可欠です。
会計を扱う経理部門をはじめ、事業を実行する各部門とも連携し、国際取引にかかわる業務内容や価格設定に関する情報を収集します。
取引の実態を把握するために製造部門などにヒアリングを行うことも業務の一環です。
その上で、国際取引を行う複数の企業を分析対象とし、取引パターンや取引数量、利益率などを比較することによって、クライアントのグループ内取引の妥当性を評価します。

一方、税務調査では、妥当性の評価において当局と意見が異なるケースが少なくありません。 合意に向けて長期間に及ぶ税務調査に対しても、移転価格コンサルタントはクライアントと連携しながら対策に尽力するのです。

以下に、移転価格コンサルタントの具体的な業務内容を見ていきましょう。

移転価格ポリシーの構築サポート

企業が健全な移転価格ポリシーを構築することは、税務リスクの回避だけでなく、社会的評価を得るためにも重要です。
移転価格コンサルタントは、企業のビジネスモデルや取引実態に基づいて、移転価格ポリシーの構築をサポートします。

事前確認制度(APA)の支援

移転価格に関する事前確認制度(APA)は、税務当局との事前協議を通じて今後の取引価格を確定するものです。
移転価格コンサルタントは、申請書の作成や国税当局への提出、クライアントの方針を代弁する役割を含めて、APAのプロセスを支援します。

移転価格文書の作成と提出

2015年の税制改正により、グループ企業内で合計収入が一定の金額を超える場合は、国別報告事項、マスターファイル、ローカルファイルの3つの移転価格文書の提出が義務化されています。
特にローカルファイルは、取引金額にかかわらず税務調査によって提出を求められることがあるため、そのような状況にも細やかに対応します。

移転価格の更正リスク評価

移転価格の設定が適正でない場合、税務当局からの更正要求が生じる可能性があります。
海外の関連企業との取引価格と独立企業間価格との差がどの程度あるかを調べ、問題がある場合には適切な修正策を提案します。

相互協議関連のアドバイス

異なる国の税務当局との間で移転価格に関する相互協議が必要な場合、クライアントにアドバイスを提供し、協議の進行や解決策の検討をサポートします。

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移転価格コンサルへの転職で評価されるスキル・経験

移転価格コンサルタントへ転職する際には、どのようなスキルや経験が評価されるのでしょうか。
求められる人材像を以下に整理します。

関連領域での経験者・有資格者

監査法人や税理士法人など、税務に関連する領域での実務経験が一定年数以上あれば、転職時に有利です。
これに加えて、公認会計士や税理士、米国公認会計士(USCPA)の有資格者も高く評価されます。

国際的な税法・法規制の知識

基本的に、異なる国の税法や関連する法規制に精通していることが必要です。
報告書の作成や法的コンプライアンスについても国際感覚を身につけておくべきでしょう。

英語力

他国の税務に関与するため、採用の条件として英語力は必須のスキルです。
クライアントとのコミュニケーションや国際的な法規制に対応できるだけのビジネス英語(読み書き、会話)が欠かせません。

国際ビジネスへの理解

グローバルなビジネス環境を理解し、異なる国の法律・文化に適応できる柔軟性が求められます。
国際市場の変化に敏感に対応する視点も重要です。

データ分析能力

取引内容や財務情報を調べ、価格設定の根拠を提供するためには、データを細かに分析する能力が必要です。
Excelやデータベースツールの使用経験が評価の基本となるでしょう。

コミュニケーションスキル

複雑な税務問題や専門知識をわかりやすくクライアントに説明する能力も求められます。
これは、円滑なコミュニケーションで信頼関係を築き、プロジェクトを進めるために必要なスキルです。

問題解決能力

論理的で綿密なアプローチによって、クライアントのニーズに合った解決策を見つけ、提案できる能力は評価に値します。


総じて、 移転価格コンサルタントに求められるのは、専門知識実務経験に加え、国際的な視野英語力を備え、複雑な課題に対して柔軟に解決策を提供できるスキルです。
また、クライアントとの信頼関係を築き、高い倫理観を持ちつつ仕事を行う姿勢も重視されるでしょう。

プロの転職支援を受ける

移転価格コンサルティングの求人事例

ここでは、MS-Japanの転職エージェントサービスMS Agentで取り扱う移転価格コンサルティング求人から一部をご紹介いたします。

移転価格アドバイザリー(金融移転価格コンサルタント)/Transfer Pricing Advisory(Financial Services)

仕事内容
  • グローバル移転価格ポリシーの立案・策定支援
  • 移転価格リスク分析評価
  • 移転価格文書化対応支援
  • 移転価格税務調査対応の支援
  • 移転価格オペレーションの最適化(サプライチェーン、ITソリューションを含む)
  • M&Aに関する移転価格デューデリジェンス
  • 日系企業向けBEPS2.0 GloBE税制対応支援
必要な経験・能力
【スタッフ/Staff】
MUST
  • 移転価格業務に興味があり、移転価格の専門家として多国籍企業をグローバルに支援したい人(移転価格関連業務の経験は不問)
  • 日本語及び英語ビジネスレベル以上
WANT
  • 会計事務所、事業会社等における会計・税務に関する実務経験者尚可
  • 企業コンサルティング経験者尚可
  • 海外駐在経験者尚可
  • 未経験者歓迎(学部の専攻は問いません)
想定年収
450万円 ~ 1200万円

移転価格スペシャリスト候補(アソシエイト~マネージャー)

仕事内容
  • 国際税務顧問
  • 海外進出支援
  • 連結実効税率最適化支援
  • M&A支援
  • 組織再編支援
  • 移転価格リスク分析、ポリシーの立案
  • ドキュメンテーション作成支援・・・ほか
必要な経験・能力
■経験及びスキル(シニアアソシエイト〜)
下記いずれかのご経験が必須となります
  • 会計事務所における移転価格税制に関する業務のご経験(5年)
  • 国税局における移転価格税制関連の調査のご経験(3年)
  • 企業における移転価格関連のご経験(5年)
想定年収
500万円 ~ 1200万円

【事業開発企画室】移転価格プロジェクトメンバー

仕事内容
移転価格プロジェクト(海外展開戦略支援)の中核メンバーとしてご活躍頂きます。
但し、私共の移転価格ビジネスは、これまでこの分野を中心とすることをコミットするメンバーが不在であったため、現状、十分なビジネスボリュームがありません。
そのため、プロジェクトリーダーについては、スクラッチから事業を立ち上げる気概と粘りを有して頂きたいと考えております。
希望すれば、移転価格関連業務だけにとどまらず、グローバル関税関連業務や知的財産関連業務などの経験もでき、外国人メンバーと海外税務事案の解決にも携われます。
必要な経験・能力
  • 移転価格業務への関心をお持ちのお方
  • 業務にて英語を用いた経験をお持ちの方
想定年収
670万円 ~ 1500万円

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まとめ

移転価格コンサルティングは、グローバルなビジネスにおいて不可欠な役割を果たしています。
関連会社間の適正な取引価格設定は、企業の税務戦略やリスク管理に直結するとともに、ビジネスの持続可能性を支える上でも重要です。
国際税務法の理解や分析力、交渉力といったスキルを備えることは、コンサルタントを目指す方にとって着実なステップとなるでしょう。
ビジネス環境のグローバル化が進んでいくにつれ、企業の経済活動に欠かせない移転価格コンサルタントの役割は、ますます重要性を増していくことでしょう。

この記事を監修したキャリアアドバイザー

河本 俊範

大学卒業後、食品メーカー営業を経て2005年MS-Japan入社。企業側営業担当を1年半経験し、以降はカウンセラー業務を担当。若手中堅スタッフの方から、40~50代のマネージャー・シニア層の方まで、年齢層問わず年間500名以上をカウンセリングさせていただいています。
企業管理部門全般~会計事務所など士業界、会計士・税理士・弁護士資格者まで弊社の特化領域全般を担当しています。

経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 会計事務所・監査法人 ・ 役員・その他 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!

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