中小企業の法務職は転職市場でどう評価されるのか、大手企業への転職は可能か?
まず、法務職は法律関係のプロとして、所属する企業の法律問題を統括する部署です。企業活動にともなう法的リスクの最小化など、法律問題への対処を担当し、問題解決へと導く仕事であり、その業務は多岐にわたります。また近年コンプライアンスの徹底が強く求められているなか、法務職が担う役割の重要性は増しています。
一言で「法務」といっても、総務等他の部署との兼務で法務を担当する場合が多い中小企業と、独立した「法務部」をもっている大手企業では求められるスキルや能力にも違いがあります。
この記事では、中小企業の法務担当がなぜ大手企業に転職したいのかの理由に触れつつ、中小企業の法務職は転職市場でどう評価されるのか、また大手企業への転職は可能であるのかをお伝えします。
中小企業の法務職の仕事内容はどんなものがある?
法務職は、法律に関連した業務一般に携わります。企業の活動にともなう法的リスクの最小化など、企業が直面する法律問題を対処し、問題解決へと導く仕事です。以下に具体的な仕事内容を説明していきます。
契約法務
契約書作成、契約書レビュー、交渉、締結までがメインの業務になります。企業において、他社との取引の際に必要となるのが契約であり、契約に関する業務は法務職にとってもっとも重要な仕事です。
契約書が法的に妥当であるかチェックする「リーガルチェック」という作業も行うため、英語のスキルも求められます。
コンプライアンス
コンプライアンスとは一般的には「法令遵守」のことを指します。企業の信頼性を維持するためにも、コンプライアンスの徹底は必要不可欠です。法律、法令を遵守するのはもちろんですが、社内ルールを明文化し、社内の秩序を保つことも法務職の重要な役割の1つといえます。
大手企業を中心に「コンプライアンス推進室」や「内部監査室」などの専門部署を設置する傾向があります。
訴訟対応
取引先とのトラブルや、顧客からのクレームがあった際に対応することがあります。訴訟への対応に加え、次に起こりうる問題を防止するための予防対策も含まれます。「カスタマーセンター」や「お客様相談室」といった専門部署がある企業もあります。
労働問題対応
就業規則をめぐる問題や、雇用契約の終了をめぐる問題、サービス残業の問題などに対応します。またセクハラ、パワハラ、マタハラ等のハラスメント行為など、組織内で隠れてしまいやすい不正を発見し、被害拡大を防止する役割もあります。
その他
独立した法務部をもっている大手企業とは違い、中小企業は比較的内部の組織が確立されていない場合が多い傾向にあります。そのほとんどが、法務・総務のように他業務と兼務し取り組んでいます。
総務職の仕事としては備品・施設の管理、郵送物の仕分け、来客対応、契約書の管理、取締役会や株主総会対応等、多岐にわたります。法務環境が整っていないため、一般的な事務仕事も業務に含まれ、対応することになります。
中小企業の法務経験者が転職する理由とは
一言で「中小企業の法務」といっても、所属している企業のフェーズや、独立した法務部門の有無によって転職動機は変わります。なかでも比較的多く挙げられる理由を3点お伝えします。
スキルアップ
非上場の国内事業がメインで新規事業も発生しにくい環境の場合、定型外の契約が多くありません。そのため法務職のメイン業務である「契約法務」などにおいて、スキルアップできる機会に恵まれません。また、M&A(企業の買収や合併、業務提携)や英語を使った仕事も少ない傾向にあります。
法務としての仕事が少ないので、結果的に総務などの庶務業務と兼務することが多く、専門性のあるスキルを伸ばしていきたい人には物足りなく感じてしまうかもしれません。
一人法務が不安
中小企業の場合、法務職が部門として独立しておらず、そもそも法務職の担当者が自分ひとりというケースは多い傾向にあります。新しく法務環境を整えていくなど、開拓のチャレンジが可能であり、積極的な姿勢や取り組みが求められます。
しかし担当が1人しかいないと気軽に業務内容について相談できる相手がおらず、我流の仕事の進め方しかできずに、不安を感じてしまうことがあります。そのことから、大きな組織のなかで、上司や他社からも学びながら仕事をしていきたいと考える人は少なくありません。
評価体制への不満
「一人法務」や法務部門が確立されていない場合、仕事を理解してくれる人が会社内にいないというケースがあります。またグループ会社や子会社に所属する場合、親会社の意向に従う必要もあります。
法務職としての発言力や自らの決定権がないこと、自分に対する会社からの評価について、満足ができないという人は少なくありません。そのため法務部門の組織が数名以上の規模で、仕事を理解してくれる上司がおり、きちんと評価してくれる環境にて就業したいと思う人は多くいます。
中小企業での法務実務経験は転職市場でどう評価されるのか?
近年コンプライアンスの徹底が強く求められているため、大手企業を中心に人材の採用は積極的に行われている傾向があります。しかし専門性の高い法務部は、即戦力として採用しようとしている企業が多く、求人数に対して求職者が不足している状況になっています。
最も評価されやすい?中小企業からの評価
中小企業や小規模なベンチャー企業では法務部門を独立させているケースは少なく、総務や人事など他の業務と兼務しているケースが多くあります。
一定規模の企業になると、独立した「法務部」を設置するため、求められるキャリアや能力の専門性は高くなる傾向にあります。仕事の流れや環境、経験や知識を踏まえると、現職におけるフェーズに近い企業への転職が、即戦力として1番評価を得やすいといえるでしょう。
経験によっては大歓迎!ベンチャー企業からの評価
一定規模の企業になると、海外企業との取引を想定した英語力や、リサーチ能力、契約書作成に関わる文書作成能力など、多岐にわたる専門性の高いスキルや知識が求められます。
変化の多い環境で、新規事業などに関連する法務サポートを幅広く行ってきた経験がある場合、これから成長していくベンチャー企業からの評価を受けやすく、即戦力として魅力的に映るようです。
転職するなら早めが吉?大手企業からの評価
大手企業へ転職を希望する場合、早めに転職するのが良いとされています。大手企業の場合、法務部として組織が独立していて、メンバー数も多いため、その分各業務に対する専門性を深めることを求められます。
また、法律知識の広さ、深さだけでなく、それを実務に適用して解決に導く力や柔軟さも大事になってきます。
中小企業の場合は法務以外の業務と兼務するケースが多いため、比較的広く浅くの知識・経験になりやすいので、大手企業の求めるキャリアとは少し性質が異なってしまいます。一般的に、配属後はOJTや各種研修を通じて教育、育成が行われ、独り立ちまで8年前後といわれているため、早いタイミングでの転職を目指すのが良いでしょう。
まとめ
以上、転職市場での中小企業の法務職の評価や、大手企業の法務部との違いなどについてお伝えしてきました。
近年、大手企業を中心に法務の人材採用は積極的に行われている傾向にありますので、法務の経験があるということは強みになるといえます。
しかし、所属している企業のフェーズにもよりますが、独立した法務部を持っている大手企業と、総務などと兼務して法務を担当する中小企業とでは求められるキャリアや能力に違いがあります。そのため、同じような規模の企業からの評価が得られやすいといえるでしょう。
中小企業の法務担当者が現状以上に、法務の業務に専念し、キャリアを積みたいと考えた場合、業務の量が多いことに加え、求められる能力の専門性の高い大手企業の法務部は、転職活動をする際、積極的に狙う選択肢になってきます。
OJTや各種研修を通じ、独り立ちするまでにも時間を要することから、大手企業への転職は早いタイミングですることをおすすめします。より深く、広く法律知識や高い適応能力も必要となりますので、「キャリアアップ=御社に貢献するため」といった向上心を強く持ち、転職活動を進めることで、大手企業への転職も可能であるといえます。
今まで得た経験や知識を有効活用し、新しいフィールドを目指して欲しいと思います。 この記事の内容が法務職でのキャリアアップをお考えの方の参考となれば幸いです。
【参考URL】
・厚生労働量『企業法務担当』
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