衛生管理者とは?資格概要や第一種・第二種の難易度・合格率、勉強方法などを解説
企業は、従業員全員が健康的に働ける職場環境となるように努める必要があります。安全かつ衛生的な職場環境を実現するための業務に従事するのが「衛生管理者」です。
衛星管理者は、労働安全衛生法で定められた国家資格であり、一定規模以上の事業場では選任を義務付けられています。
この記事では、衛生管理者資格について、概要や難易度、受験資格などを解説します。
衛生管理者とは
衛生管理者は、業務を起因とする体調不良や職業性疾病、死亡事故などを防ぐために、専門家として作業環境の管理や作業管理、健康管理に従事するための国家資格です。
公益財団法人安全衛生技術試験協会によって全国7ブロックの安全衛生技術センターで毎月1~3回ほど試験が実施されます。
衛生管理者は、第一種衛生管理者と第二種衛生管理者の2種類に分かれ、資格の有効期限がなく、一度取得すれば生涯更新不要です。
衛生管理者の資格概要
第一種衛生管理者・第二種衛生管理者の試験科目や出題数、配点は以下の通りです。
試験科目 | 第一種 | 第二種 |
---|---|---|
労働衛生・有害業務に係るもの | 10問(80点) | - |
労働衛生・有害業務に係るもの以外のもの | 7問(70点) | 10問(100点) |
関係法令・有害業務に係るもの | 10問(80点) | - |
関係法令・有害業務に係るもの | 7問(70点) | 10問(100点) |
労働生理 | 10問(80点) | 10問(100点) |
以下は第一種衛生管理者・第二種衛生管理者共通です。
試験時間 | 3時間 |
受験料 | 8,800円(非課税) |
試験会場 | 安全衛生技術センター(北海道、東北、関東、中部、近畿、中国四国、九州) |
参照:公益財団法人安全衛生技術試験協会「受験資格 衛生管理者(第一種及び第二種)」
衛生管理者の選任義務とは
冒頭でもお伝えした通り、企業には衛生管理者の選任義務があり、常時50人以上の従業員が働く事業場には、専属の衛生管理者を必ず1人選任する必要があります。
また、201人以上なら2人、501人以上なら3人と事業場の規模が拡大するほど、衛生管理者の必要人数は増え、企業は選任義務があるにもかかわらず、衛生管理者を選任できなかった場合、罰則まで課せられる為、衛生管理者は企業にとって欠かせない存在となっています。
事業場の解釈は、「同一の場所にあるものは原則として1つの事業場とし、場所的に分散しているものは原則として別個の事業場」であるとされています。
つまり、本社、支店、店舗など、地理的に離れた組織がそれぞれ事業場となり、常時50人以上の従業員がいる組織には、衛生管理者の選任義務が発生します。
通常、衛生管理者が事業場を兼任することはできません。しかし、1つの事業場に2人以上の衛生管理者を選任し、その中に労働衛生コンサルタントが含まれている場合に限り、1人は事業場の兼任が可能です。
また、衛生管理者は専門職の給与ではなく、企業の一般的な給与に資格手当が付与される企業が多い傾向にあります。
合格率は比較的高めですが、企業内での必要性から年収アップや転職の武器となり得るため、大きいメリットを得られる資格です。
衛生管理者の「第一種と第二種の違い」とは
資格概要で紹介したように、第一種衛生管理者と第二種衛生管理者では試験内容が異なります。
第二種衛生管理者は、労働衛生と関係法令に関して、「有害業務に係るもの」が試験範囲に含まれません。
そのため、第一種衛生管理者はすべての業種の事業場で業務を行えますが、第二種衛生管理者は、有害業務と関連の少ない業種の事業場に限定されています。
有害業務と関連の少ない業種とは、金融・保険業、情報通信業、卸売・小売業などデスクワークをメインとする業種です。
第一種衛生管理者試験の難易度と合格率
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
---|---|---|---|
2022年 | 68,066人 | 31,207人 | 45.8% |
2021年 | 68,210人 | 29,113人 | 42.7% |
2020年 | 43,157人 | 18,916人 | 43.8 % |
2019年 | 68,498人 | 32,026人 | 46.8 % |
2018年 | 67,080人 | 29,631人 | 44.2% |
2017年 | 65,821人 | 29,636人 | 45.0% |
2016年 | 61,500人 | 28,003人 | 45.5% |
2015年 | 55,129人 | 30,587人 | 55.5% |
2014年 | 53,111人 | 29,922人 | 56.3% |
合格率は45%前後です。2015年までは55%ほどの合格率でしたが、2016年度から45%ほどとなっており、難易度が上がっているといえます。
安全衛生技術試験協会が公表している合格基準は、「試験科目ごとに40%以上、かつ全科目の合計で満点の60%以上」です。
第二種衛生管理者試験の難易度と合格率
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
---|---|---|---|
2022年 | 35,199人 | 18,089人 | 51.4% |
2021年 | 36,057人 | 17,922人 | 49.7 % |
2020年 | 22,220人 | 11,729人 | 52.8 % |
2019年 | 33,559人 | 18,511人 | 55.2 % |
2018年 | 32,985人 | 17,271人 | 52.4% |
2017年 | 31,537人 | 17,302人 | 54.9% |
2016年 | 29,186人 | 16,189人 | 55.5% |
2015年 | 25,716人 | 16,983人 | 66.0% |
2014年 | 25,069人 | 17,365人 | 69.3% |
第二種衛生管理者の合格率は近年50~55%のあいだを推移していますが、年々合格率が低くなっています。
2014年と比べると合格率は15%強低下しました。2021年には合格率が50%を下回り、2022年も51.4%と2021年に次ぐ低さです。
なお、合格基準は、第一種衛生管理者の試験と同様です。
衛生管理者の受験資格は学歴と実務経験
衛生管理者の試験には、学歴や実務経験などを求める16種類の受験資格が定められており、誰でも受けられる試験ではありません。
試験を申し込み時に、卒業証明の写しや事業者証明書など、受験資格を証明できる書類を添付する必要があります。学歴によって求められる年数に差は生じますが、実務経験は必須です。
例えば、学校教育法による大学(短期大学を含む)や高等専門学校を卒業した人であれば、労働衛生の実務に1年以上携わっていれば受験が可能です。
高等学校や中等教育学校を卒業した人や、高等学校卒業程度認定試験に合格した人は、3年以上の実務経験が求められます。
また、労働衛生の実務経験が10年以上あれば、学歴は不問です。
実務経験を証明する事業者証明書は、社長・支店長・工場長など事業場を代表する人か、人事部長や総務部長など業務履歴を管理する部門長の職名で作成する必要があります。受験希望者が個人で作ることはできません。
受験資格の内容について、詳しくは下記の安全衛生技術試験協会が公開している受験資格のページをご確認下さい。
衛生管理者試験の勉強時間・勉強方法
衛生管理者の試験対策は独学でも可能です。講習会なども開催されていますが、参加ができない場合は、参考書を購入するなどして学習を進めると良いでしょう。
参考書選びは、実際に本屋へと足を運んで、自分の目でチェックしながら自分に合ったものを選ぶようにするのがおすすめです。
そして、選んだ一冊を最初から最後まで一通り、しっかりやり通すことが大切です。
参考書やテキストを何種類も買いそろえてしまうと、すべて中途半端に終わってしまう可能性があります。一冊の参考書をやり終えた段階で、問題集や過去問にチャレンジし、知識を固めていくといいでしょう。
衛生管理者に合格できるだけの知識を身につけるための勉強期間の目安は3か月ほど、勉強時間でいえば50~100時間程度とされています。
衛生管理者は転職にも有利
衛生管理者の専任義務は、業種を問わずすべての企業で適用されます。また、衛生管理者は原則として他の企業や事業場を掛け持ちできません。
そのため、衛生管理者は様々な企業からニーズが高く、資格取得しておけば転職時に有利に働くと期待できます。
衛生管理に係る業務は、総務部や労務部で担当していることが多く、これらのバックオフィス部門への転職を希望しているのであれば、より幅広い選択肢に恵まれます。
まとめ
衛生管理者の資格取得は独学でも可能であり、勉強期間の目安も3か月ほどで挑戦しやすいと言えるでしょう。
一定規模以上の事業場は必ず専任の衛生管理者を置かなくてはならないため、業種を問わず市場価値の高い資格です。求人数が安定しているほか、取得すればキャリアの選択肢が広がる資格であり、チャレンジしてみる価値は十分にあります。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、現職(MS-Japan)へ入社。
入社後は、RA(リクルーティングアドバイザー)として100社以上を担当し、業界問わずスタッフクラス~管理職クラスまで幅広い中途採用支援に従事。
異動の機会をいただき、2021年4月からCA(キャリアアドバイザー)として、管理部門及び士業領域幅広い方の転職支援に従事しています。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 役員・その他 ・ 社会保険労務士事務所 ・ 公認会計士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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