簿記のメリットは?有利になる転職先や面接でのアピール方法など
転職活動にあたって、何か資格を習得しようとするとき、簿記の資格はメジャーな候補の一つです。
名前だけは知っていても、「そもそも簿記って何?」「簿記資格のメリットは?」「どう勉強すれば取得できるの?」といった疑問を持つ方も少なくないでしょう。
この記事では、簿記の資格がどのようなもので、転職活動においてどういったメリットがあるのかについて解説していきます。
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簿記の取得メリットとは
簿記とは、企業活動で発生するお金の出入りを帳簿に記録する作業のことです。この作業は全企業に義務付けられている決算書の作成に必要不可欠であり、記録方法には共通のルールがあります。このルールを一定のレベルで習得したことを証明するのが簿記資格です。
簿記を取得することで得られるメリットは主に以下の三つがあります。数字に対する正確な理解力が養える
簿記の業務では、領収書や請求書、支払記録などの数字をルールに則り正確に帳簿に反映します。膨大なデータを正しく管理するスキルは、細かな数字の確認能力や情報管理能力の強化にもつながります。
決算書から会社の経営状況を読み解けるようになる
決算書の作成には、複式簿記での帳簿記録が必要です。複式簿記は、勘定科目を「借方」と「貸方」2つを用いて記録する方法で、取引の結果が財務状況にどのような影響を与えたのかを記録することができます。
決算書は、企業の財務状況を正確に反映するものであり、株主や金融機関、顧客などの信頼を得るために重要です。簿記によって身につけた決算書を正確に作成するスキルは、企業の経営状況を把握し、ビジネスの現場で役に立ちます。
他の資格取得の土台になりやすい
税理士や公認会計士、中小企業診断士、ファイナンシャルプランナーなど、企業の経営に深く関わる資格は共通して、簿記で学んだ内容が土台にあります。
簿記資格を取得しておくことで、難易度の高い他の資格へのステップアップもしやすくなります。
各級別の取得メリットとは
日商簿記は最も知名度が高く、日商簿記を応募条件にしている求人も多いため、就職・転職活動で有利に働くでしょう。
学習範囲と難易度に応じて1級、2級、3級の三段階に分かれており、得られるメリットも異なります。
ここでは、各級における取得メリットを解説します。
簿記3級
会計用語の理解や帳簿への記録方法、決算書の作成方法など、簿記の中でも基礎的なスキルを習得していることを証明できます。
簿記3級を取得することで、経理関連書類を読み取ることができるようになるため、コスト管理という点から営業職や販売職でも活用できるでしょう。
簿記2級
簿記3級の内容に加えて、決算書の分析方法や精算処理の計算方法、固定資産の取扱い、株式会社の税務処理など、経理・財務活動における実践的なスキルを習得していることを証明できます。
経理の応募条件として簿記2級を設定している企業も多く、転職活動で有利に働くでしょう。
簿記1級
経営分析や企業会計の理解、会計監査の法規制、税務処理など高度な会計スキルを習得していることが証明できます。
1級の難易度は非常に高く、合格すると税理士試験の受験資格が得られるため、税理士や公認会計士への登竜門とされています。
大手企業の経営管理部門に迎えられるなど、キャリアアップのチャンスも広がるでしょう。
簿記資格があると有利な転職先
お金の出し入れを記録する簿記は、ビジネスの基盤を成すスキルであることから、多くの業界で評価される資格です。簿記資格をもつことで、有利になる転職先をご紹介します。
一般企業の経理部門
経理部門は、企業の財務状況を管理する重要な役割を担っています。その基盤を支えるために求められるのが、簿記資格に伴う知識です。
簿記資格は、財務諸表の作成や経理処理の正確な実施、会計ソフトの操作などに役立てられます。また、財務分析や会計コンサルティングなどの業務にも、簿記の知識・スキルは重要です。
会計事務所・税理士法人
会計事務所・税理士法人は、法人や個人事業主に対して、税務・会計業務と付随業務などを行います。簿記取得者が会計事務所・税理士法人に転職した場合、税理士が行う税務代理・税務書類作成・税務相談の補助や不随業務を担当します。
中でも、記帳代行、決算申告、年末会計などの業務は、簿記の知識・スキルが必要不可欠です。そのため、簿記資格を必須の応募条件としている事務所が少なくありません。
監査法人
監査法人では企業の財務諸表などを調査し、正確性や適切性を評価する業務を行います。
監査業務は公認会計士の独占業務ですが、監査アシスタントとして簿記取得者を採用する監査法人が増加しています。
面接では簿記の取得理由を伝えよう
簿記資格は転職に有利に働く一方で、それだけが採用判断の決め手にはなりません。簿記保有者は多く、年々増加していることからも、資格単体では他の採用候補者と差別化しにくい点はよく理解しておきましょう。
簿記資格を転職活動でアピールするためには、なぜ簿記資格を取得したのかを伝えることが重要です。
簿記資格に興味を持ったきっかけや、応募先企業での簿記資格の活かし方、将来的なキャリアパスなどなどを具体的に伝えましょう。
採用側にとって簿記のスキルがあることは大切ですが、自分の考えをもって主体的に動ける人か、わかりやすく伝えるコミュニケーション能力があるか、目標に向けて忍耐力をもって取り組める人かなどの、基礎的な能力や資質の方が重視されます。
簿記資格自体をアピールするだけでなく、資格取得までの過程を伝えることで、前述の能力や資質について評価を得られるでしょう。
【2024年最新版】簿記試験の概要・試験日程・合格率
日商簿記試験概要
検定級 | 試験科目 | 試験時間 | 受験料 |
---|---|---|---|
3級 | ・商業簿記 5題以内 |
60分 | 3,300円(税込) |
2級 | ・商業簿記 ・工業簿記 (原価計算を含む) 5題以内 |
90分 | 5,500円(税込) |
1級 | ・商業簿記 ・会計学 ・工業簿記 ・原価計算 |
180分 【内訳】 商業簿記、会計学:90分 工業簿記、原価計算:90分 |
8,800円(税込) |
日商簿記は受験要件がなく、誰でも受験可能です。
試験日程は全国共通ですが、受験の申込方法や期間は各都道府県(地域)で異なり、申込窓口も各都道府県(地域)の商工会議所となっています。
2024年度日商簿記の試験日程
回:級 | 試験日 |
---|---|
第167回:1〜3級 | 2024年6月9日(日) |
第168回:1〜3級 | 2024年11月17日(日) |
第169回:2〜3級 | 2025年2月23日(日) |
また、2020年から2級と3級はネット試験が始まりました。
指定のテストセンターのパソコンを使って受験する方式で、各テストセンターが設定する任意の日となります。
申込方法がインターネット方式と会場問い合わせ方式の2種類で、上記の受験料に加えて事務手数料が発生します。
日商簿記の直近合格率
日商簿記の統一試験(紙方式)の直近データを紹介します。※ネット試験のデータは含みません。
検定級 | 受験者数(申込者数) | 実受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
3級 | 37,493名 | 31,556名 | 11,516名 | 36.5% |
2級 | 15,103名 | 12,033名 | 2,983名 | 24.8% |
検定級 | 受験者数(申込者数) | 実受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
1級 | 12,286名 | 9,828名 | 1,027名 | 10.4% |
簿記を独学で学ぶメリット・デメリット、勉強時間目安は?
簿記の資格を取るためには、どうやって勉強を進めればよいのでしょうか。
講座を受講するという手段もありますが、独学の勉強でも資格取得は不可能ではありません。
ここでは、簿記を独力で学ぶ場合のメリット・デメリット、勉強時間について整理してみます。
独学のメリット
-
・自分のペースで学べる
スケジュールを立て、自分のペースで学習できます。理解できるまで何度も復習したり、時間があるときに集中して勉強したりすることも可能です。
-
・自分で学び方を決められる
教材や学習方法を自分で選べるため、自分に合った学習に取り組めます。
-
・費用を節約できる
講座や講師の費用を支払う必要がありません。通学費や教材費などを抑えることができます。
独学のデメリット
-
・学習の評価が難しい
わからないことや疑問点があっても、客観的な視点でサポートを受けられません。そのため、自分の学習の正確性や実践的な応用力を評価することが難しいでしょう。
-
・スケジュール管理が難しい
学習に必要な時間を想定以上にかけてしまうなど、スケジュール管理がうまくできなければ、勉強を進める効率が悪くなる可能性があります。
-
・モチベーションが維持しにくい
人から指導・評価を受けられないと、励みになる目標を立てられず、学習意欲が保ちにくくなります。
独学で必要な勉強時間
簿記を独学で目指す場合、資格取得までの勉強時間は、個人の学習ペースや目的、前提知識などによって異なりますが、一般的には以下のような目安があります。
2級:200~400時間程度
1級:500~1,000時間程度
簿記を活かして未経験から経理に転職した事例
未経験でも簿記資格を活用して経理に転職することも十分に可能です。
ここでは、弊社MS-Japanの転職エージェント「MS Agent」を利用して転職を成功させた方の事例を紹介します。
簿記2級でフィールドエンジニアから経理へキャリアチェンジ
Zさん(20代/男性)
転職前:フィールドエンジニア (年収:400万円)
転職後:上場子会社経理(年収:420万円)
Zさんは未経験ながらも希望通り経理職に就くことができました。
転職活動開始当初の書類通過率は1~2割程度で、20社応募をして2~5社程度面接に入るかどうか、という状況でした。
そこで、職務経歴書の自己PR欄を、他業種の人が見ても頭で映像がイメージできる文章を意識しつつ、事務処理の速さや正確性、業務改善の実績など、主体的に行動した経験をアピールすることで、書類通過率を向上することができました。
また、Zさんが面接で最も評価された点は『素直さ』と『既存メンバーとの相性が良さそう』なところでした。未経験ポジションの面接において重要なのは、資格や経歴だけではなく『経理としてのポテンシャルを感じられるか』と『企業側が育てやすいと思える方かどうか』という部分です。
最終的にZさんは、予定よりも1つ上の等級のオファーを受け、未経験経理の相場を超える年収となりました。
簿記2級の資格を活かして販売職から経理にキャリアチェンジ
Iさん(20代/男性)
転職前:販売職(年収350万)
転職後:経理職(年収350万)
Iさんは前職が販売員だったこともあり、即戦力が求められる経理の転職市場では不利であると自覚されていました。
そこで、Iさんは「経理職を希望する理由」「経理職としてのキャリアパス」を徹底的に考え、一貫性のある理由を明確に伝えられるようになるまで準備しました。経理として決算業務の経験を積み、ゆくゆく経営企画など幅広く業務に関わりたかったIさん。内定を獲得した企業も今後の成長戦略を掲げている企業であったためIさんの前向きな志向がマッチしました。
Iさんは今回が初めての転職であり、未経験職種への挑戦でもあったため、転職活動開始当初はキャリアパスや志望動機などを明確にお話できる状況ではありませんでした。
弊社MS-Japanのキャリアアドバイザーとのカウンセリングを通して、「ご自身がやりたいこと」、「なぜその選択をしたのか」など動機やイメージの深堀りを重ねていきました。これにより、具体的なキャリアパスのイメージを見つけ、ご面接でご評価もいただき、無事転職成功に至りました。
転職活動においては「なぜ転職するのか」、「転職して何を叶えたいのか」など背景や今後のキャリアイメージを持つこと、また、それを言語化できることが非常に重要です。
Iさんのより詳しい体験談を読みたい方はこちら>
このお2人は、簿記資格を応募書類の資格欄に記載するだけで終わらせず、自己アピールに説得力をもたせる材料として活用しています。
応募先企業が求める人物像について具体的に仮説を立てたうえで、志望動機や過去の実績、今後のキャリアパスをつなげて説明しています。
まとめ
簿記資格は多くの企業で共通して必要とされるものなので、取得することで損をすることは決してありません。
簿記資格を転職活動で活用するポイントは「単なる資格で終わらせない」ことです。
資格を取得した動機や勉強期間などの過程を伝えることで、自分の考えに説得力をもたせる材料として活用しましょう。
大切なのは応募先企業のニーズに合致した自己アピールをわかりやすく伝えることです。
経理で活かせる自身の経歴が分からない方や、自己アピールの方法に悩んでいる方はプロのキャリアアドバイザーに相談することで、効率よく転職活動を進めることができます。
この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、化粧品会社へ入社し美容部員として店舗販売業務に従事。
その後キャリアアドバイザーとしてMS-Japanに入社し、
主に経理財務や会計事務所などの会計転職希望の方を中心に担当。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 会計事務所・監査法人 ・ 税理士科目合格 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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