2024年社労士試験の概要 | 試験日程や受験者数の推移、試験後のキャリアを解説
毎年8月の第4日曜日に実施される社労士試験ですが、第56回となる2024年の日程は8月25日(日)です。
本記事では2024年の社労士試験の概要と過去の試験結果、合格後のキャリアについてまとめました。
今年受験される予定の方だけではなく、来年以降の受験をお考えの方も是非参考にしてください。
社労士(社会保険労務士)・社労士試験とは
社労士とは
社会保険労務士(通称:社労士)は、労働・社会保険の問題に関する専門家として、社会保険労務士法に基づいて、行政機関に提出する書類や申請書等を依頼者に代わって作成する国家資格です。
社労士は、労働者の権利保護や企業の人事・労務管理を支える重要な役割を担い、具体的には以下のような業務を行っています。
- ・給与計算、労働災害における申請等の事務手続
- ・社会保険(健康保険・厚生年金等)における私傷病、出産、死亡等に関する申請等の事務手続
- ・労働保険(労災保険・雇用保険)における申請等の事務手続
- ・労働者名簿および賃金台帳など法定帳簿の調製、就業規則等の作成・改訂など
また、社労士は、個人からの依頼による年金に伴う相談、申請代行(老齢、遺族、障害、離婚時分割等)なども行います。
これらの業務を通じて、社労士は労働者と企業の間に立ち、公正な立場で誠実に業務を行い、労働環境の改善や労働者の権利保護に貢献しています。
社労士試験とは
社労士試験の受験資格
社労士試験には受験資格があり、「学歴」、「実務経験」、「厚生労働大臣の認めた国家試験合格」の3つのうち、いずれか1つを満たす必要があります。
【学歴】
・大学、短期大学卒業
・大学(短期大学を除く)における修得単位数
・専門学校卒業
など
【実務経験】
・労働社会保険諸法令の規定に基づき設立された法人の役員又は従業者
・国又は地方公共団体の公務員等
・日本郵政公社の役員又は職員
など
【厚生労働大臣の認めた国家試験合格】
・社労士試験以外の国家試験合格
・司法試験予備試験等の合格
・行政書士試験の合格
試験科目と合格基準
社労士試験は以下の科目/配点にて行われます。
試験科目 | 選択式 計8科目(配点) | 択一式 計7科目(配点) |
---|---|---|
労働基準法及び労働安全衛生法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
労働者災害補償保険法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
雇用保険法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
労務管理その他の労働に関する一般常識 | 1問(5点) | 10問(10点) |
社会保険に関する一般常識 | 1問(5点) | |
健康保険法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
厚生年金保険法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
国民年金法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
合計 | 8問(40点) | 70問(70点) |
合格基準点は、選択式試験および択一式試験のそれぞれの総得点と、それぞれの科目ごとに定めます。
一定の合格点はなく、合格発表日にその年の合格基準点が公表されるため、受験される方は注意が必要です。
下記、昨年(2023年)の社労士試験合格基準です。
次の2つの条件を満たしたものを合格とする。
①選択式試験は、総得点26点以上かつ各科目3点以上である者。
②択一式試験は、総得点45点以上かつ各科目4点以上である者。
総得点の得点率を見ると、選択式試験では67.5%、択一式試験では約62.9%が合格得点率で、例年約65%だと言われています。
しかし、総得点だけではなく、各科目にも合格基準が定められている為、受験者は全科目偏りなく学習する必要があります。
2024年社労士試験について
2024年に実施される第56回社労士試験の申し込みから合格発表までの流れは以下の通りです。
内容 | 日程 |
---|---|
申し込み | 2024年4月15日(月) ~5月31日(金) |
試験日 | 2024年8月25日(日) |
合格発表 | 2024年10月2日(水) |
合格証書発送 | 2024年10月15日(水) |
官報にて 合格者受験番号公告 |
2024年10月下旬 |
なお、成績(結果)通知書に関しては、途中棄権者や不正者を除いた受験者全員に2024年10月15日(火)に普通郵便で発送予定です。
この通知書は第57~59回社労士試験の受験資格証明書として使用可能なため、再受験を予定している方は保管しておきましょう。
2024年社労士試験当日の時間割
時間 | 内容 |
---|---|
9:30 | 開場 |
10:00 | 着席 |
10:00~10:30 | 注意事項の説明など |
10: 30~11:50 | 選択式試験 |
11:50~12:50 | 昼食 |
12:50 | 着席 |
12:50~13:20 | 注意事項の説明など |
13:20~16:50 | 択一式試験 |
選択式試験は11:10~11:40、択一式試験は14:10~16:40の間のみ監督者の案内に従ったうえで、トイレなどの離席と飲水が可能です。
着席時間に間に合わない場合は受験できないため、時間に余裕を持って行動しましょう。
過去の社労士試験の結果
過去10年間の 社労士試験の受験者数や合格率など推移は以下のようになっています。
社労士試験の受験申込者と受験者数推移
受験者数は2014年から緩やかに減少しており、新型コロナウイルスの影響が大きかった2020年は直近10年間で最も少ない34,845人でした。
その後は徐々に回復傾向にあり、2023年は42,741名となっています。
社労士試験の合格者数と合格率推移
社労士試験の過去10年間における合格率の平均は6.2%です。
2015年に合格者数・合格率が低い理由としては、2014年の合格者数が多かったため、問題の難易度を調整した可能性があることや、2015年に社労士法が改正された影響があったことが考えられます。
その後の合格率は6%前後を推移しているものの、2014年と2023年の合格者数を比較すると、約34.6%減少していることが分かります。
これらのことから、社労士試験は比較的難易度の高い試験であると言えるでしょう。
年齢/職業/性別から見る合格者の特徴
年齢別でみると、最多は30~34歳の16.9%で、30~40代が全体の6割以上を占めています。
職業別で比較すると、会社員が58.8%と最多となっており、働きながら資格取得を目指す人が多いことが分かります。
男女別の割合を見てみると、女性が38.8%と合格者の3人に1人が女性であることが分かります。
2023年の公認会計士試験最終合格者における女性比率は22.3%、税理士試験合格者の女性比率は29.7%であるため、他の士業と比較して女性が多いという特徴があります。
社労士試験合格後にするべきこと
実務未経験者は事務指定講習
社労士試験に合格された方は、社労士となるための資格要件として、「2年以上の実務経験」が必要です。
ほとんどの方は、実務経験がないと思いますので、事務指定講習を受けなければなりません。
社労士の事務指定講習は、例年2月〜5月にかけて実施される4ヶ月間の通信指導過程と、4日間の面接指導の2過程によって行われます。
事務指定講習を受けるメリットとデメリット
事務指定講習を受けるメリットとしては、以下の3つがあります。
- ・「2年間の実務経験」が免除される
- ・独立開業した社労士の講義が聞ける
- ・社労士試験合格者の仲間ができる
また、事務指定講習を受けるデメリットとしては、
- ・面接指導日程の予定が合わせにくい
- ・受講料が高い
などが挙げられます。
面接指導過程は平日4日間連続であるため、サラリーマンにとっては休みを取れるかどうかがネックとなるでしょう。
また、受講料は約7万円かかり、面接指導日程の時は交通費や宿泊費もかかります。
さらに、全国社会保険労務士連合会に登録する際、「登録手数料」と「登録免許税」がそれぞれ3万円程度、それ以外にも「入会金」や「年会費」もかかります。
独立開業型(開業会員)か、勤務型(勤務等会員)かによっても費用は変動しますが、合格後は20万円以上かかるとみておいたほうがよいでしょう。
金額だけみると高額に感じますが、社労士資格は稼げるチャンスが十分ある資格といえます。
最初の出費は痛いですが、それを取り返せる可能性も高いといえるので、合格後はできるだけ登録に向けて動くことをおすすめします。
社労士合格後のキャリア
社労士事務所に勤務する
資格を活かして社労士事務所に転職し、「勤務労務士」になるのも順当な道といえるでしょう。
主な業務として、顧問先企業の社会保険手続きや簡単な労務相談などを行います。
顧問先となる顧客は主に中小・ベンチャー企業となることが多いですが、数十人規模の事務所で幹部クラスになれば、大手企業の労務担当者とやりとりすることもあるでしょう。
人事・労務制度に関するコンサルティングやセミナーなどを行うこともあります。
企業の人事・総務部に転職する
社労士資格の取得者は、その分野のプロとして一般企業でも重宝されます。
社内の社労士の方が、信頼性が高いだけでなく、顧問報酬のコスト削減といった観点からもメリットがあるためです。
社労士として人事・総務部に所属すれば、昇格の可能性も高まり、業務の幅も広がるでしょう。
社労士として独立開業
独立開業を目的として社労士の資格を取得した方も多くいると思います。
独立して顧客が確保できれば、年収1,000万円以上稼ぐことも十分可能です。
独立開業において鍵となるのは営業力です。
中小企業相手の営業活動が苦手で、顧問先を確保できないと、単発的な相談や依頼に依存せざるをえず、年収が不安定になります。
ただ単に、聞かれたことに答えたり、法律知識を説明したりするだけでは、企業の経営者の心を掴むことはできません。
収益に繋がるような実践的アドバイスができると、大きな強みとなるでしょう。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、新卒でMS-Japanに入社。
法律事務所・会計事務所・監査法人・FAS系コンサルティングファーム等の士業領域において事務所側担当として採用支援に従事。その後、事務所側担当兼キャリアアドバイザーとして一気通貫で担当。
会計事務所・監査法人 ・ 法律・特許事務所 ・ コンサルティング ・ 金融 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 税理士科目合格 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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