経理に簿記1級は必要なのか?簿記1級の評価ポイントや転職先について
経理職でのキャリアアップを目指す際に、簿記1級を取得する必要があるかどうか検討することがあるかもしれません。
簿記1級は経理や会計の専門知識を深めるための重要な資格ですが、実際に経理職においてその価値はどのように評価されるのでしょうか。
本記事では、複数ある簿記検定の中で受験者数が最も多い「日商簿記検定」から、簿記1級に焦点を当て、年収事情や経理での評価ポイント、転職先などを取り上げていきます。
経理で簿記1級は評価される?
経理職において簿記1級はどのように評価されるのでしょうか。
ここでは、簿記1級の評価要素に着目してみます。
専門知識を持っている
簿記1級は、企業会計に関する高度な専門知識を持っていることを証明する資格です。
連結会計や減損会計、税効果会計、退職給付会計などの複雑な会計処理を理解し、実務で対応できる能力があることを示します。
大企業や外資系企業の経理部門では、これらの能力が重要視されており、簿記1級を通じてその専門知識を身につけている人材は高く評価されます。
向上心がある
簿記1級の取得は、その難易度の高さから、挑戦すること自体が向上心の表れと見なされます。
特に、高度な会計スキルを求められる大企業では、取得における過程での向上心や意欲を評価する傾向があります。
自己成長に積極的で、高い目標に向かって努力する姿勢は、採用や昇進の際にプラス評価となるでしょう。
募集要項で簿記1級を求める求人も
実際に、経理や財務部門の求人で簿記1級の保有を必須条件としているケースは少なくありません。
連結会計システムを導入している大企業では、システムの操作だけでなく、子会社や関連会社で取り扱う連結決算の知識・スキルが求められます。
それを可能にする簿記1級保有者は、企業会計に欠かせない即戦力として積極的に求人が行われているのです。
経理が簿記1級を取得すると年収は上がる?
簿記1級を取得することで年収は上がるのでしょうか。
MS-Japanの転職エージェントサービスMS Agentを利用して、2023年4月~2024年3月の1年間で転職を決定された簿記1級保有者と簿記2級保有者のオファー年収は以下のようになっています。
平均年収(中央値) | 簿記2級 | 簿記1級 |
---|---|---|
20代 | 373万円(360万円) | 400万円(403万円) |
30代 | 452万円(431万円) | 555万円(506万円) |
40代 | 577万円(551万円) | 671万円(615万円) |
50代 | 647万円(630万円) | 733万円(721万円) |
60代以上 | 572万円(600万円) | 677万円(677万円) |
全体 | 466万円(432万円) | 574万円(599万円) |
※当データは2023年4月~2024年3月の1年間で、MS-Japanの転職エージェントサービスMS Agentを利用して転職された方のオファー年収に基づいて算出しております。
※オファー年収とは、月額給与及び定期的に支給される賞与の合計額です。別途支給される時間外手当や決算賞与等の変動要素がある金額に関しては含んでいません。
※上記には弁護士・公認会計士・税理士などの国家資格保有者は含んでいません。
上記の表を見ると、簿記1級保有者はすべての年代において簿記2級保有者よりも高い年収でオファーを受けていることがわかります。
これには、簿記1級を保有していることで資格手当などが給与に含まれるといった直接的な要因もありますが、簿記1級が間接的に給与アップにつながっている可能性もあります。
例えば、簿記1級を保有している人材は大手・上場企業などからの評価が高いため、「大手・上場経理などの待遇が良い職場に就職・転職できる=年収が上がりやすい」といったケースです。
また、簿記1級の知識を活かしてキャッシュ・フロー計算書の作成や連結税効果の処理といった、高度な経理業務を任されているといったケースも考えられます。
いずれにしても、簿記1級保有者の年収が簿記2級保有者よりも高いことは事実であるため、年収アップを狙いたい人は簿記1級を取得することは有効な手段でしょう。
経理以外に簿記1級が活かせる転職先は?
簿記1級は経理以外でも様々な職種で高い評価を得られます。
以下に、簿記1級保有者が活躍できる経理以外の転職先を紹介します。
会計事務所・税理士法人
会計事務所や税理士法人でも、簿記1級の知識は重宝されます。
主な業務としては、企業や個人の税務申告、会計処理などのサポートが中心です。特に、確定申告や仕訳の記帳代行、監査、アドバイザリー業務の補助など、専門知識を活かせる場面は少なくありません。
さらに、税理士試験の受験資格も得られるため、働きながらキャリアアップを目指すことも可能です。
コンサルティングファーム
コンサルティングファームでは、企業の経営課題を解決するためのアドバイスを提供します。特に、M&AやIPOの分野で簿記1級の知識が役立ちます。
M&Aコンサルティングでは、企業の財務状況を分析し、買収後の業績評価を行います。
また、IPOコンサルティングでは、株式公開に伴う財務関係の手続きや会計処理をサポートします。
簿記1級の高度な会計知識は、経営全般のコンサルティングに反映するポテンシャルを秘めているのです。
簿記1級の概要
簿記1級は日商簿記検定の中で最難関の階級です。
まずは、簿記1級の試験概要について整理してみましょう。
受験資格
簿記1級を含め簿記検定には特に受験資格はありません。年齢や学歴、実務経験も問われないため、誰でも受験が可能です。
ただし、試験の内容が高度であるため、簿記2級に合格していることが望ましいとされています。
出題範囲
簿記1級の出題範囲は非常に広く、商業簿記、会計学、工業簿記、原価計算の4つの分野にわたります。 商業簿記と会計学は企業会計の基礎と応用を扱い、工業簿記と原価計算は製造業の経理処理やコスト管理に関する知識を必要とします。
試験科目と配点
試験科目は、商業簿記、会計学、工業簿記、原価計算の4科目(試験時間は3時間)です。
各科目の配点は25点ずつで、100点満点中70点以上が合格基準となります。
ただし、4科目のうち1科目でも40%以下の点数を取ると、不合格となる「足切り制度」があります。
この制度のため、全ての科目でバランスよく点数を取ることが求められます。
試験難易度
簿記1級の試験は難易度が高く、平均合格率は直近の5年間で9.9%、過去16年では10.2%という低水準です。
また、検定試験を実施する日本商工会議所は簿記1級を、公認会計士や税理士などの国家資格への登竜門とも位置付けています。
難易度が高い理由として、試験範囲の広さと問題の複雑さが挙げられます。
簿記2級の知識が前提となり、それらの応用になる高度な会計処理を理解しなければなりません。
単なる暗記では対応しきれない出題が多く、論理的思考力や高度な計算力が必要とされることも大きな一因です。
必要な学習時間
簿記2級を取得している場合でも、試験合格には約800〜2,000時間の学習時間が必要とされており、日数に換算すると毎週20時間勉強する場合で約10ヶ月から2年程度となります。
このため、計画的な学習と継続的な努力が不可欠です。
簿記1級保有者向け!経理の求人事例
MS-Japanの転職エージェントサービスMS Agentの取り扱い求人から、簿記1級を応募条件としている求人をいくつかご紹介します。
未経験応募可【経理】東証プライム上場/年間休日120日以上
仕事内容 |
経理職全般の業務をお任せします。 ・日次業務 ・月次決算業務 ・年次決算業務 ・税務業務 ・監査法人対応 ・開示資料作成 |
必要な経験・能力 |
<必須> ・簿記1級 もしくは同等の知識をお持ちの方 ・会計士や税理士の資格取得のために勉強されていた方など <歓迎> ・年次決算業務のご経験 ・原価計算のご経験 |
想定年収 |
400万円 ~ 650万円 |
経理【東証スタンダード上場企業】※残業月平均10時間
仕事内容 |
・月次・四半期・年次の決算業務 ・上場企業として必要な決算開示業務 ・財務に関する管理や金融機関との折衝 ・部内のマネジメント業務(将来的に) ・監査法人対応 |
必要な経験・能力 |
<必須> ・年次決算業務のご経験 ・日商簿記1級をお持ちの方 ・公認会計士資格をお持ちの方もしくは公認会計士試験合格者の方 <歓迎> ・上場企業でのご経験 ・公認会計士もしくは税理士の方 |
想定年収 |
500万円 ~ 900万円 |
(会計士、簿記1級合格者歓迎)大手金融機関から経理担当の求人です
仕事内容 |
・財務諸表の作成など決算に係る各種業務(米国会計を含む) ・決算に係る各種開示書類及び当局報告等の作成 ・決算業務の高度化・プロセス効率化 |
必要な経験・能力 |
<必須> ・事業会社での会計実務経験、監査法人、コンサルティングファーム等経験者 ・CPA試験合格者(日・米)または日商簿記1級合格者 <歓迎> ・TOEIC(L&R)テスト 730点以上 ・Excel VBAベーシック、Access VBAベーシック ・決算業務高度化・プロセス効率化、それらのコンサルティング |
想定年収 |
450万円 ~ 1,200万円 |
まとめ
経理に簿記1級の資格は必須というわけではありませんが、持っていることで転職や年収、実務において有利になることは明らかです。
特に、大手企業の経理や会計事務所、税理士法人、コンサルティングファームなどの転職先で高く評価される資格です。
日商簿記1級を取得することで、専門知識の証明だけでなく、自身の向上心と能力をアピールする強力な手段となります。
キャリアの可能性を広げる上でも、日商簿記1級の取得を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、新卒で人材会社へ入社し福祉業界の派遣営業として従事。
退社後海外留学やカスタマーサポート業を経験し、MS-Japanに入社。
キャリアアドバイザーとして企業の管理部門、会計事務所などへの転職支援を担当しています。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 会計事務所・監査法人 ・ 社会保険労務士事務所 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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