企業内弁護士が増えると顧問弁護士の仕事はなくなってしまうのか?
「顧問弁護士」は法律的なトラブルが発生する前に、トラブルの芽になりそうな要素を早めに摘む「予防法務」の担い手です。ただ、会社に勤務する企業内弁護士(インハウスローヤー)も、組織の予防法務を担当します。両者の業務は重なり合うため、同じパイを争い合う関係になるのではないかと、気になる方も多いのではないでしょうか。
顧問弁護士の必要性
まず、顧問弁護士という存在の社会的必要性について見てみましょう。
顧問弁護士は、クライアントとの継続的契約に基づいて、定期的に、あるいは現実にトラブルが起きるごとにクライアントからの相談を受けて、適切なアドバイスを送ったり、必要な交渉などに臨む立場の弁護士をいいます。
個人が弁護士と顧問契約を結ぶこともできますが、顧問弁護士の利用者のほとんどは大企業です。ただ、顧問料の額を抑えることで、中小企業と顧問契約を結んでいる弁護士も増えてきました。
顧問弁護士を利用している企業にとっては、ひごろから法律相談ができる態勢を整えておくことで、常にコンプライアンスを意識しながら、リーガルリスクを排除した安定経営を進めることができます。
顧問弁護士は、よく「かかりつけの医師」の法律家版として例えられます。トラブルが起きてから、慌てて相談するのが一般的です。しかし、起きる前から弁護士と気軽に話せるようにしておくことが、トラブルを未然に防ぎ、起きたトラブルもこじれないうちに早期に解決することができるのです。
急に弁護士の力が必要な事態になっても、慌てて探さずに済みます。日頃から人柄を知っていて、信頼の置ける顧問弁護士に依頼すればいいのです。
弁護士と顧問契約を結んだからといって、会社の売上増に直結するわけではありません。しかし、遵法経営を継続し、適切な契約書を取り交わすことで、顧客や取引先からの信頼を蓄積することができますし、企業の人材や知的財産権などを有効に管理していくことも、長い目で見れば企業活動にとってプラスに作用します。
一方で、毎月定期的な顧問料が入ってくる顧問契約は、法律事務所にとって安定経営に繋がる大きな源泉となります。お互いに利益が相反しない限り、同時に複数の企業の顧問弁護士になることもできます。
顧問弁護士と企業内弁護士とで重複しそうな業務
顧問弁護士が主に行う業務は、クライアントからの法律相談です。具体的な揉め事が起きていなくても、就業規則などの内部ルールの整備や、株主総会の運営、知的財産や業務提携などに関する戦略など、顧問弁護士に相談できるジャンルは意外と多岐にわたります。
必要に応じて、契約書のチェックやトラブルの相手方へ送付する内容証明郵便などの書面などを作成します。
この他にも、訴訟対応や不祥事対応、企業活動に関わる法律問題に広く携わります。ただし、訴訟代理人の業務などは報酬が数十万円単位にのぼることもあります。顧問弁護士が訴訟代理人となった場合、顧問料の範囲内でまかなえず、別途の報酬の支払いが必要となることもあります。
ただし、これらの予防法務関連業務は、企業内弁護士にとっても業務範囲内にあります。
企業内弁護士は、企業や役所、各種公益的法人などに勤務して、組織の内側から法律家としてのスキルを提供する弁護士を指します。企業内弁護士は、その組織の事情に精通していますし、経営陣とも近い関係で、予防法務に関するアドバイスも送りやすい立場にあります。
また、企業によっては、他の企業や個人を相手に知的財産権の侵害などを主張する機会が多い業態があり、企業内弁護士がその組織の訴訟代理人を担当するケースもあります。この場合、顧問弁護士に依頼するよりも、組織が雇用している弁護士に代理人を務めさせた方がコストダウンになり、訴訟進行で必要なコミュニケーションも取りやすいと考えられているためです。
企業内弁護士が増えると、顧問弁護士の仕事はなくなるのか?
弁護士同士での経営的な競争に巻き込まれることに、不安をおぼえている若手弁護士の間では、就職して企業内弁護士になることを目標とする人も増えてきました。特定の組織の中に入って、法律的なアドバイスを経営者や従業員に提供したり、対外的には組織の代理人を務めることもあります。
企業内弁護士が増えれば増えるほど、法律トラブルを企業内で処理できてしまいます。そのため、外部にいる顧問弁護士に相談する機会は減るようにも思えます。
しかし、実際には企業内弁護士が日頃の業務から法的課題を積極的に見つけ、発掘していくため、「この場合、他の企業や業界では、どうなっているのだろうか?」と気になる場面も続々と出てくるはずです。
企業内弁護士は、組織の外の事情については、あまり詳しく知らない場合があります。その点においては、様々な企業の顧問として普段から付き合いがある弁護士に分があるのです。
よって、企業などに勤務する企業内弁護士が増えるほど、外部の顧問弁護士に相談したり、互いに連携して課題解決に取り組んだりする機会は、むしろ増加していくものと考えられます。
まとめ
顧問弁護士は、正義と真実を追求し、法廷などで戦う弁護士像のイメージとは懸け離れているように思われがちです。しかし、日常の業務の中から法律トラブルの種になりうる要素を見つけて、無事に経営が回っていくようサポートする顧問弁護士も、法治国家社会の大切な担い手なのです。
<参考>
・ひまわりほっとダイヤル-顧問弁護士
・日本組織内弁護士協会-組織内弁護士が増えると、顧問弁護士の仕事はなくなってしまうのでしょうか?
・湊総合法律事務所-顧問弁護士とは
・片山法律会計事務所 中小企業の顧問弁護士-顧問弁護士・顧問契約の概要
・ヴィクトワール法律事務所-顧問弁護士とは何ですか?
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