2024年10月01日

女性を監査役に迎えたい会社が増えている?背景や監査役の役割・待遇について解説

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2021年に改定されたコーポレートガバナンス・コードの中で「中核人材の多様性の確保」が要請されたことを受け、スタートラインとして性差の解消に取り組もうと動いている企業が多く見られます
政府の思惑や、女性役員の社内登用の難しさなど、諸々の事情から女性を監査役に迎えたい企業は増えている状況です。

監査役に興味がある女性の方にとっては、ある意味“追い風”となっている状況といえますが、実際に監査役に就任した場合、どのような仕事を任されるのかよく分からない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、女性監査役に求められる主な役割や待遇について、女性監査役が求められる背景に触れつつ解説します。

なぜ女性が監査役として求められるのか?

近年、多くの企業が女性を監査役として採用しようと動いている主な理由として、女性役員比率に関する政府の方向性が固まった点があげられます。
2023年(令和5年)11月27日に内閣府男女共同参画局から発表された「女性版骨太の方針2023」では、プライム市場上場企業を対象に、女性役員比率の数値目標が次の通り設定されています。

  • ・2025年を目途に、女性役員を1名以上選任するよう努める
  • ・2030年までに、女性役員の比率を30%以上とすることを目指す

また、上記の女性役員に含まれる役職は次の通りです。

・取締役
・監査役
・執行役
・執行役員またはそれに準じる役職者

内閣府の資料によると、プライム上場企業における男性役員は、その60.4%が社内登用という状況です。
これに対して、女性役員はその87.0%が社外役員となっています。

その背景には、女性役員の社内登用につき「数年で急速に推し進めるのは難しい」という認識があり、具体的には次のような問題が懸念されています。

・研修や能力向上支援が求められること
・女性管理職への登用、役員選任までのキャリア構築支援を行う必要があること

そのような事情もあって、女性役員比率を上げるため、社外から女性監査役を迎えようと考えている企業が増えてきています
2024年2月6日に発行された日本監査役協会『第24回 定時株主総会後の監査役等の体制に関する年次調査集計結果』によると、上場会社における監査役は社外が69.8%を占めており、社外から女性監査役を迎えることへの抵抗は比較的少ないものと推察されます。

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監査役の役割・業務内容

実際に監査役に就任した場合、どのような役割・業務を任されることになるのでしょうか。
以下、監査役の主な役割や業務内容について解説します。

監査役の役割は「代表取締役に対する抑止力」

監査役は、第三者的な立場に立って、代表取締役の経営判断を監視しつつ評価する役割を担います。
あえて極端な言い方をすれば「代表取締役が横暴な経営をしていないかどうか抑止する」ことが、監査役のミッションです。

例えば、代表取締役の経営職務・意思決定が法令を遵守しているかどうか、倫理上の問題をはらんでいないかどうか確認し、不正行為について慎重に捜査を進めることが求められます。
実際に問題が生じる前に、不正行為のリスクを最小化すべく、何らかの対案を準備するのも重要な役割の一つです。

万一不正行為が見つかった場合は、利害関係者の信頼を失わないよう、必要な手続きを踏んで問題解決につなげていきます。
監査役には、利害関係者の信頼維持のため、コーポレートガバナンス・コンプライアンスを持続的に強化し企業価値を高め続ける役割が求められているのです。

監査役の主な業務内容

監査役の業務内容を大きく分けると、次の2つに分類されます。

監査内容 詳細
会計監査 ・財務諸表や取引につき、その合法性や透明性を検証するために行う監査
・収支計算書、貸借対照表などの財務諸表を審査した上で、その内容が正確であること、違法性がないことを検証する
・不正または重大なミスの兆しを発見できるよう、「企業の取引記録=実際の取引」であるかどうか確認する
・必要に応じて、経済面でのリスクを最小化するためのアドバイスも行う
業務監査 ・取締役の職務遂行が、各種法令や社内規則に適合しているかどうかを確認する監査
・コンプライアンス体制の維持を行い、代表取締役の行動が法的要件等から逸脱していないかなどのチェックをするとともに、不適切な行動を防止するのか注目する
※(非公開会社に関しては、定款で監査役の職務を会計監査に限定することにより、業務監査の除外が可能)

会計監査・業務監査を進めるにあたり、監査役は独立性および客観性を保てるよう、様々な権限を有しています。
必要があれば、社内における重要文書や情報を確認したり、取締役会などに出席して意見・提案したりすることが可能です。

その他、事業に関する報告を取締役に請求したり、業務・財産状況を調査したりする権限も持ち合わせています。
監査役は、企業の内部統制を支える縁の下の力持ちでありながら、代表取締役をはじめとする経営陣を見張る番人でもあるといえるでしょう。

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社外監査役の報酬はどれぐらい?

社外監査役の報酬はどれぐらい?社外監査役の報酬に関しては、2019年11月15日公表というやや古いデータではありますが、公益社団法人日本監査役協会ケース・スタディ委員会の「監査役の選任および報酬等の決定プロセスについて」に詳細が記載されています。
同資料におけるアンケート結果の中で、社外常勤・社外非常勤監査役の報酬額については、それぞれ上場区分別に次のような報酬傾向となっています。

社外常勤

Range 1部上場 2部上場 新興市場 非上場 (IPO準備中) 非上場
~200万円 4名 (2.9%) 6名 (2.7%)
200万円~500万円未満 2名 (0.9%) 4名 (10.5%) 25名 (22.5%) 37名 (26.8%) 19名 (8.6%)
500万円~750万円未満 25名 (11.3%) 4名 (10.5%) 26名 (23.4%) 68名 (49.3%) 27名 (12.2%)
750万円~1,000万円未満 23名 (10.4%) 6名 (15.8%) 32名 (28.8%) 19名 (13.8%) 28名 (12.6%)
1,000万円~1,250万円未満 37名 (16.7%) 11名 (28.9%) 21名 (18.9%) 8名 (5.8%) 60名 (27.0%)
1,250万円~1,500万円未満 32名 (14.5%) 7名 (18.4%) 3名 (2.7%) 1名 (0.7%) 30名 (13.5%)
1,500万円~1,750万円未満 21名 (9.5%) 4名 (2.7%) 1名 (0.7%) 28名 (12.6%)
1,750万円~2,000万円未満 30名 (13.6%) 1名 (2.6%) 1名 (0.7%) 9名 (4.1%)
2,000万円~2,500万円未満 37名 (16.7%) 1名 (2.6%) 10名 (4.5%)
2,500万円~3,000万円未満 8名 (4.1%) 3名 (1.4%)
3,000万円以上 5名 (2.3%) 2名 (0.9%)

社外非常勤

Range 1部上場 2部上場 新興市場 非上場 (IPO準備中) 非上場
~200万円 42名 (6.1%) 24名 (19.7%) 64名 (27.7%) 109名 (54.5%) 323名 (59.9%)
200万円~500万円未満 256名 (36.9%) 84名 (68.9%) 150名 (64.9%) 83名 (41.5%) 136名 (25.2%)
500万円~750万円未満 215名 (31.0%) 13名 (10.7%) 16名 (6.9%) 6名 (3.0%) 36名 (6.7%)
750万円~1,000万円未満 83名 (12.0%) 1名 (0.8%) 1名 (0.4%) 29名 (5.4%)
1,000万円~1,250万円未満 65名 (9.4%) 1名 (0.5%) 7名 (1.3%)
1,250万円~1,500万円未満 22名 (3.2%) 5名 (1.9%)
1,500万円~1,750万円未満 6名 (0.9%) 1名 (0.5%) 2名 (0.4%)
1,750万円~2,000万円未満 1名 (0.4%)
2,000万円~2,500万円未満 3名 (0.4%) 1名 (0.2%)
2,500万円~3,000万円未満
3,000万円以上

数値を見る限り、社外常勤の監査役の報酬がある程度分散しているのに対し、社外非常勤に関しては200万円~750万円未満に人口が集中しているのが分かります。
また、非常勤に比べると、常勤の監査役は高額の報酬を得ている人が多い傾向にあります。

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社外監査役にはどのような人がなる?

2024年2月6日に発行された日本監査役協会『第24回 定時株主総会後の監査役等の体制に関する年次調査集計結果』によると、社外監査役等の前職・現職のうち、上位を占めているものは次の通りです。

(社外監査役等の合計に占める比率) 社外監査役 社外監査等委員 社外監査委員
公認会計士/税理士 24.1% 28.0% 15.6%
弁護士 19.6% 25.7% 16.2%
会社と無関係な
会社の役職員
19.3% 23.5% 46.8%

このことから、公認会計士・税理士、弁護士が社外監査役等になるケースは、比較的多い傾向にあることが分かります。
以下、上記を踏まえた上で、公認会計士・税理士と弁護士がなぜ社外監査役に適しているのかについて解説します。

公認会計士・税理士

公認会計士・税理士が監査役に向いているとされる、最も大きな理由の一つに「会計・財務のプロフェッショナル」である点があげられます。
時折ニュースをにぎわせる粉飾決算などの不適切会計に関する問題は、取引先や株主の信頼を著しく損なう問題のため、それを未然に防ぐべく、会計・財務のプロフェッショナルである公認会計士・税理士を監査役に迎えたいと考える企業は数多く存在しています。

弁護士

不正・不祥事を防ぐという観点からは、各種法律や法律違反の事例等に詳しい弁護士を監査役に招き入れることも、理想的な選択肢の一つです。
企業法務やコーポレートガバナンスに関する知識・経験が豊富な弁護士を監査役に立てることで、自社の経営上問題となる兆候をつかみ、早期改善に結びつけることが期待できるでしょう。

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まとめ

プライム市場上場企業を中心に、女性役員として監査役を採用しようとする動きは、政府の意向もあり加速化することが予想されます。
その一方で、社内から女性役員を登用することは難しい傾向にあるため、社外から女性監査役を迎える企業が増えてきています。

よって、監査役を目指す女性にとっては、転職のチャンスが近づいている状況といえます。
常勤・非常勤を問わず、1部上場企業であれば報酬も魅力的であることから、チャレンジする価値は十分にあるといえそうです。

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この記事を監修したキャリアアドバイザー

佐藤 颯馬

大学卒業後、新卒でMS-Japanに入社。
法律事務所・会計事務所・監査法人・FAS系コンサルティングファーム等の士業領域において事務所側担当として採用支援に従事。その後、事務所側担当兼キャリアアドバイザーとして一気通貫で担当。

会計事務所・監査法人 ・ 法律・特許事務所 ・ コンサルティング ・ 金融 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 税理士科目合格 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!

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