「知財部はいらない?」誤解の理由と知財部の重要性を解説!
知財部は、企業にとって重要な知的財産を取り扱う部門であるにもかかわらず、「知財部はいらない」「不要な部門」という否定的な評価が一部では下されているようです。
コストの観点から知財部の人員を他部署に充てようとする方針も見受けられますが、本当に知財部は不要な存在なのでしょうか。
ここでは、知財部が誤解されている理由や具体的な業務内容を取り上げ、知財部の重要性について考えていきます。
知財部がいらないと言われる理由
そもそもなぜ、「知財部はいらない」と言われるのでしょうか。その理由は、以下のような誤解が発端となっているようです。
知財部はコストがかかるから
知財部は、専門知識を要する担当者の人件費だけでなく、特許の出願や商標登録に関連する費用など、さまざまな経費が必要です。
例えば、特許出願には、特許庁への出願費用や特許事務所への手数料などがかかります。
さらに、特許を権利化する手続きや、特許権を取得したあとの維持・管理にも多額の費用が必要です。
これらの費用は一見すると自社の利益に直結すると認識しづらいため、企業経営にどのように貢献するか疑問視されることがあります。
また、権利にかかわる紛争が発生した場合も、法的費用がコストとして加算されます。
例えば、知的財産権の侵害訴訟や特許無効審判などでは、高額な費用を求められることが珍しくありません。
このようなコストは企業にとってかなりの負担になる場合もあるでしょう。
知財部は、営業部や開発部のように直接的な成果・実績を目にすることが難しく、そのためにコストがかかると誤解されるのです。
知財部の仕事内容が理解されにくいから
組織的な情報の共有不足により、知財部の仕事内容が理解されにくいことも誤解を招く理由の一つです。
知財部では、開発チームからの提案や発明を受け付け、知的財産として保護するための出願手続きを行います。
しかし、出願されたあとの対応は知財部の業務範囲となるため、その後の展開が開発部に伝わりにくいことが実情です。
開発部としては、発明に関する進捗状況が気になる一方で、知財部の活動や結果についての情報が一向に届かないことに疑念を抱かざるを得ません。
こういった状況から、知財部の仕事内容が不透明であるとの誤解を生むこともあります。
自らの発明がどのように扱われ、利用されているのかを知りたいという開発者の思いに応えるためには、組織間でのコミュニケーションや情報共有が重要です。
また、知財部が持つ専門知識や技術的な専門用語がわかりにくい場合、コミュニケーション自体に障壁が生じやすくなります。
経営陣や他部門との意思疎通が円滑でなければ、知財部の活動が適切に説明されず、その重要性が理解されない可能性もあるでしょう。
企業における知財部の役割とは
知財部の役割は「知的財産の管理」
知財部は、企業の知的財産を管理・運用するための部署です。知的財産は特許、商標、著作権、ノウハウなどのかたちで現れ、企業の競争力や成長に欠かせない資産となります。
貴重な資産を適切に取り扱う知財部は、企業にとって重要な役割を担っているのです。
知財部の具体的な仕事内容
知的財産の発掘と権利化
企業内で新たな技術やアイデアを調査・発掘し、それらを特許や商標といった知的財産権に変える業務です。自社独自の権利を活かすことで、市場での優位性や競争力を向上させます。
知的財産の戦略的管理
知的財産をどのように保護し、どう活かすべきかを戦略的に管理していくことも知財部の仕事です。これには特許戦略の策定や知財ポートフォリオの作成も含まれます。
契約・紛争対応
知的財産の権利にかかわる契約や交渉を行うのも業務の一環です。ライセンス契約や技術移転契約、ビジネスモデルのフランチャイズ化などがその代表例です。
同時に、他社からの特許侵害を防ぐための監視も行い、紛争が生じた場合は、必要に応じて法的手続きに当たります。
知的財産権の教育
従業員に対して、知的財産権に関する教育や啓蒙を行います。知的財産への意識を高め、適切に取り扱えるようにサポートすることで、権利保護の強化につなげます。
知財部は、知的財産の発掘から権利化、管理、教育まで多岐にわたる業務を担当しており、企業の知的資産を保護し、活用するために不可欠な部門です。
知財部がない企業はどのようにしている?
知財部の重要性は、企業の競争力や成長に直結しています。前述のとおり、知的財産は企業の貴重な資産の一つであり、特許や商標などの知的財産権を適切に管理し、保護することは極めて重要です。
また、知的財産権は、企業の独自性や革新性を示し、優位なポジションを確立するためにも有力な手段です。そのため、自社に知財部がない場合、企業は次のようなリスクに直面することになります。
知的財産の損失や法的紛争のリスク
まず、知的財産の無秩序な管理に伴う弊害です。企業内で知的財産権の管理が不十分な場合、他社による模倣や侵害を招き、企業の技術とブランド価値を脅かす可能性があります。
権利を適切に保護しないことで、法的紛争や損失を引き起こすリスクも高まります。
業界や競合の情報不足
自社のイノベーションに伴う戦略を明確にするためには、競合他社の動向や技術を把握する情報が不可欠です。
自社に知財部がなければ、市場での競争力を維持・調整するための重要な情報源を失います。
一方で、知財部がない企業は「知財部をアウトソーシングする」という選択肢も考えられます。
特に中小企業やベンチャー企業など、自社内で知財部を抱えることがコスト的に難しい場合、外部の専門家や知財管理サービスに委託するという手法が有用です。
知財部のアウトソーシングは、外部の専門知識と経験を活用し、貴重な知的財産を適切に管理・運用することを可能にします。
ただし、外部委託には情報セキュリティのリスクを伴うため、信頼性の高い委託先を選択することが重要です。
知財部の将来性
知財部の役割は、今後も大手企業を中心に重要性が増していくものと考えられます。その主な理由は以下のとおりです。
大手企業を中心とした知財活動の経営戦略化
まず、多くの大手企業が知財部の活動を経営戦略の一環として位置づけています。
特許や商標がビジネスの収益に寄与するという認識が広まっており、知的財産権の取得に力を入れている企業は少なくありません。
例えば、大手の総合化学メーカーや電機メーカーなどでは、独自の技術を保護し、事業の成長につなげるために知財戦略を重視しています。
グローバル化に伴う、知財競争の激化
経済活動のグローバル化に伴い、特許や商標を巡る争いが激しさを増していることも主な要因です。
特に海外進出が目立つ大手企業では、自社の知的財産権を異なる国の法律や規制に対応させる必要があり、そのための専門知識と情報力が欠かせません。
国際市場で競争力を維持するためには、知財部の専門的な役割がますます重要となります。
IPランドスケープの普及
IPランドスケープの普及と活用も、知財部の将来性に大きく関与します。
IPランドスケープとは、知財情報を分析し、経営戦略や事業判断に活かす取り組みです。
多くの上場企業では、将来の成長に向けて舵を切るために、IPランドスケープを知財の貴重な情報源として積極的に取り入れています。
このような背景から、知財部は企業戦略における重要な部門として必要とされるため、その将来性は明るいと言えるでしょう。
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まとめ
「知財部はいらない」という考え方は、知財部の役割や重要性を正しく理解していないことが起点です。
特許を取得することで競合他社からの技術的な模倣や侵害を防ぎ、市場での競争力を維持することができます。また、ライセンス契約を通じて他社との協業や収益化を図ることも可能です。
これらの利点は直接的ではないため、費用対効果が見えにくいかもしれません。しかし、知財部への理解を深めることが自社の利益につながることは、しっかりと見定めておくべきでしょう。
この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、旅行代理店にて法人営業を約3年。20代でMS‐Japanへ入社。
企業の採用支援(リクルーティングアドバイザー)を約8年、求職者の転職支援(キャリアアドバイザー)を約5年経験。
両ポジションでチームマネジメントを経験し、キャリアアドバイザーとしては複数回にわたり支援実績数NO1を獲得。リクルーティングアドバイザーにおいても入社1年半後にチームマネジメントを経験させていただきました。現在は子育てと両立しながら、常に社内でトップ10以内の採用支援実績を維持。
経理・財務 ・ 法務 ・ 役員・その他 ・ IPO ・ 公認会計士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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