2024年08月13日

税理士試験の受験資格緩和について解説

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税理士試験の受験資格緩和について解説

令和4年(2022年)の税理士法改正にともない、令和5年4月1日以降に実施する税理士試験につき、受験資格が緩和されます。
一部の科目については誰でも受験が可能となり、大卒者等の受験資格要件についても履修科目要件が緩和されたことから、より多くの人が受験できるようになりました。

税理士試験の科目合格者は、会計業界での転職において有利に働くため、今後は受験者および資格取得者が増加するものと推察されます。
この記事では、税理士試験の受験資格緩和について、転職市場の反応を予想しつつ解説します。

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なぜ税理士試験の受験資格要件が緩和されたのか

令和5年というタイミングで、なぜ税理士試験の受験資格要件が緩和されたのでしょうか。
以下、その背景について解説します。

受験者数の減少

税理士試験の受験資格要件が緩和された大きな理由は、受験者の減少にあります。
国税庁が公開している各年の税理士試験結果を見ると、受験者は総じて減少傾向にあります。

年度 受験者数
平成27年(2015年) 38,175人
平成28年(2016年) 35,589人
平成29年(2017年) 32,974人
平成30年(2018年) 30,850人
令和元年(2019年) 29,779人
令和2年(2020年) 26,673人
令和3年(2021年) 27,299人
令和4年(2022年) 28,853人

令和元年以降、受験者数が30,000人を割り込み、会計業界の将来的な人材不足が危惧されています。
税理士は多くの事業者にとって重要なアドバイザーであり、社会的にも頼られる存在であるため、後継者が育たないと日本経済に大きな損失をもたらすことが予想されます。

これまでの受験制度を見直し、受験者数を増やすことが、法改正のねらいと言えるでしょう。

税理士試験にチャレンジしやすくなる

詳しくは後述しますが、今回の法改正では、簿記論・財務諸表論の受験資格が撤廃されました。
これまで、一定の条件を満たすこと・所定の資格を取得することなどが受験の条件に含まれていたことから、税理士試験の受験者に求められる高いハードルが一つ減った形になります。

公認会計士は受験資格が設けられておらず、合格者は税理士として登録することも可能です。
そのため、税理士試験ではなく、公認会計士試験合格を目指して勉強する受験者も少なくありませんでした。

他の国家試験の受験を考えている人に対して、税理士試験を受験するメリットをアピールすることも、法改正の目的に含まれています。

多様な人材を会計業界に集める

税理士になるためには、基礎的素養を求められる分野があり、これまでは法律学・経済学を履修した人材に受験資格が限られていました。
しかし、法改正により履修科目の条件が「社会科学」に拡大されたことで、より多様な人材が会計業界を目指せるようになりました。

税理士のクライアントは多種多様であり、一般事業会社だけでなくNPO法人の税務を担当することもあります。
そのようなケースでは、福祉学についての造詣が深い人材が会計業界に参入することで、より詳細なニーズを満たすことが可能になるでしょう。

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1.会計科目の受験資格撤廃

税理士試験の受験資格緩和のポイントは、大きく2つに分かれます。
まずは、法改正における2つの柱のうちの1つ、会計科目の受験資格撤廃について解説します。

簿記論・財務諸表論の受験資格撤廃

これまでの税理士試験においては、会計科目2科目と税法科目3科目につき、受験するためには受験資格を満たす必要がありました。
そのため、大学生が受験を検討する場合、大学3年生以降にならなければ学歴要件を満たせず、その点が受験者のハードルになっていました。

これまでも、資格取得によって受験のタイミングを早めることができましたが、日商簿記1級・全経上級の難易度は高く、誰もが合格できるものではありませんでした。
しかし、今回の法改正により、会計科目の「簿記論」・「財務諸表論」に関しては受験資格が撤廃されたため、学歴・資格などの要件に関係なく、税理士試験の勉強をスタートすることができるようになったのです。

受験資格が撤廃されたメリット

会計科目につき、受験資格が撤廃されたことで、受験生は税理士試験に合格する道筋を立てやすくなりました。
大学に入学してから合格を目指すのではなく、高校生以下のタイミングから勉強して、税理士合格を目指せるようになったのです。

高校生のうちに簿記論・財務諸表論に合格していれば、大学進学後に合格しなければならない科目が減る分、受験勉強に費やす時間が少なくなります。
進路を変更したいなどの理由から、いったん税理士試験の勉強を中止したとしても、合格した実績は残ります。

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2.税法科目の学識要件の拡充

会計科目だけでなく、税法科目に関しても、法改正で要件が緩和されました。
以下、具体的な要件の変化について解説します。

学識要件の拡充

これまでの税理士試験において、受験資格を満たす学識要件は、法律学または経済学に属する科目(少なくとも1科目履修)に限定されていました。
そのため、法学部・経済学部の学生以外にとっては、比較的高いハードルとなっていたものと推察されます。

しかし、法改正によって、学識要件は「社会科学に属する科目」に緩和されています。
社会科学に属する科目には、先述した法律学・経済学のほか、以下のような科目が該当します。

  • ・社会学
  • ・政治学
  • ・行政学
  • ・政策学
  • ・教育学
  • ・福祉学
  • ・心理学
  • ・統計学
  • ・ビジネス学
  • ・コミュニケーション学 など

学識要件が拡充されたことにより、文学部・理工学部などの学部の学生およびその卒業生は、新たに受験資格が得られることになりました。

学識要件が拡充されたメリット

社会科学を学ぶ大学生にとって、税理士試験を受験できるチャンスが得られることは、将来の可能性を広げることにつながります。
会計・税務の知識と、自分が学んだ分野の知識を掛け合わせて仕事に活かすことで、新たなビジネスチャンスをつかめる可能性が高まるでしょう。

経理専門学校などの卒業生であっても、学校で社会科学に属する科目を1科目以上履修していれば、学識要件を満たすことができます。
簿記の資格合格が必ずしも求められるわけではないため、受験にあたっての負担が少なくなります。

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受験資格の問い合わせ先

学識要件が拡充されたことで、税理士試験の受験に対する意欲が生まれる、あるいは高まる人は増えるものと考えられます。
しかし、一口に「社会科学に属する科目」といっても、自分がこれまで学んできたジャンルが社会科学に該当するのかどうか、よく分からない人も多いのではないでしょうか。

実は、これまで自分が履修した科目が社会科学に属するものかどうかは、最寄りの国税局・沖縄国税事務所の人事課税理士試験担当係に照会することができます。
例えば、北海道が受験地の場合は札幌国税局が管轄となりますし、大阪府が受験地の場合は大阪国税局に問い合わせる形です。

自分ではどうしても判別できない場合、授業内容の詳細が記された学生便覧(科目名、担当教授、時間数、授業内容等が記載されているもの)を用意して、国税局等に確認するのがよいでしょう。
ちなみに、社会科学に属する科目が「教養科目」や「共通科目」として位置づけられている場合であっても、履修していれば受験資格を満たすものと考えられています。

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科目合格も転職で有利に

科目合格も 転職で有利に

税理士試験の科目は、すべて合格していなかったとしても、数科目合格していればそれだけで一定の評価を得られます。
会計科目だけ合格している人材であっても、事業会社や会計事務所などで「会計の素養を身につけている」ものと評価されるでしょう。

特に、国税三法と呼ばれる法人税法・所得税法・相続税法は難易度も高い分、転職時の評価も非常に高いです。

確定申告の代行業務が主な収入源となる会計事務所では、所得税法・法人税法の科目合格者が重宝されます。
可能であれば、消費税法にも合格しておくと、年収アップにも期待が持てます。

また、主に相続関連や資産管理を任されている会計事務所で働く場合は、相続税法の科目に合格しておくと有利です。
まとめると、所得税法・法人税法・消費税法・相続税法のいずれかに合格することで、転職活動を有利に進められます。

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科目合格者の転職成功事例

当社・MS-Japanの転職エージェントにご依頼いただいたことで、数多くの科目合格者の方が、理想のキャリアへの挑戦に成功されています。
以下、税理士試験の科目合格者にスポットを当てて、主な転職成功事例についてご紹介します。

最後の転職にしたい!40代男性管理職の挑戦(税理士3科目合格)

Nさん:40代男性
年収1,100万円→1,100万円
投資会社→事業会社(サービス製品企画等)

管理職も含め、複数社の転職で様々な職域を経験されたNさんは、自分がよりのびのびと力を発揮できるような企業への転職を希望されていました。
しかし、家族の生活を守る観点から、アーリーベンチャーでの勤務に不安を感じていたため、当社で一定の規模感・基盤がある企業様をご提案させていただきました。
最終的に、東証プライム上場企業で、執行役員とともに財務・IR・M&A業務などに携われるポジションを獲得されています。

4社内定、迷った末に本来の転職動機に立ち返った30代男性の成功事例!(税理士2科目合格)

Fさん:30代男性
年収350万円→350万円
中堅税理士法人→資産税特化型個人事務所

中堅税理士法人で幅広い経験を積まれていたFさんは、30代になったことを機に、将来の独立を想定して相続に関する専門的な経験を積みたいとお考えでした。
当社で数件ご提案をさせていただいた結果、大手税理士法人・中堅税理士法人など早々に4件の採用内定を獲得されました。
最終的に、独立・事務所経営のイロハを学べる、資産税特化型個人事務所への転職を決意されています。

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まとめ

受験者数の減少という課題を解決するため、税理士試験の受験資格要件は大幅に緩和されました。
会計科目の受験資格に至っては完全に撤廃されたため、高校生など早い段階から受験をスタートさせることができます。

法学部・経済学部以外の学生も、社会科学に属する科目を履修していれば、税理士試験の受験資格を得られます。
今回の法改正によって、税理士試験はより身近な国家試験として再認識されることでしょう。

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