IPOにおける法務の役割・業務とは?IPO準備企業へ転職する際のポイントもご紹介
IPO(新規公開株)を目指す企業は、法的な手続きやコンプライアンスの強化が不可欠であり、法務は極めて重要な機能を担います。
このため、専門知識を活かしつつ、新たなキャリアを積み重ねたいと考える法務経験者にとって、IPO準備企業への転職は有力な選択肢のひとつになり得ます。
本記事ではIPOを目指す企業における法務の具体的な役割や業務内容、そして転職する際の重要なポイントについて詳しく解説しますので、是非今後の参考にしてください。
IPOとは?
IPOを実施して証券取引所に上場することで、誰でもその株式を取引できるようになるため、IPO実施企業は金融市場から直接資金を調達できるようになります。
上場するには厳しい審査をクリアしなければなりませんが、社会的信用が向上するのもIPO実施のメリットです。
より大きな信用の創造は、金融機関からの円滑な融資を期待できるだけでなく、高度なスキルを持つ人材の確保も容易になるなど、優位にビジネスを展開するための様々なメリットも期待できます。
IPOの決定から実際の上場までには、一般的に少なくとも3年の準備期間が必要です。
まず、監査法人やIPO準備を支援する会社を選んで簡易的な監査を受けるとともに、社内体制を整えます。
申請の2年前からは、外部監査が開始され、その結果をもとに社内体制の強化を進めていきます。
申請の1年前には、さらに強化された社内体制で運営を続け、上場申請書類の作成と主幹事証券会社の審査を受けます。
以上のステップを経た後、申請期には監査証明書を含む申請書類を提出し、証券会社による審査を経ることで、全ての基準を満たせば上場が認められます。
上場が確定したら、証券会社と上場契約を結び、IPO実施企業の株式は一般公開されます。
IPOにおける法務の役割
IPOにおける法務の役割は極めて重要です。
IPOによって、証券取引所に株式を公開した企業は知名度や社会的信用を高められるとともに、資金調達を容易にすることができます。
しかし、IPOは簡単に達成できるものではありません。
少なくとも3年の準備期間が必要であるケースが多く、この期間中に内部体制の整備や厳しい審査を突破するための準備を進めていきます。
会社が上場するためには、取引所による上場審査を受ける必要があります。
上場審査には形式要件と実質審査基準があり、形式要件を満たした後に実質審査基準をクリアしなければなりません。
実質審査基準の中でも、特に「企業のコーポレートガバナンス及び内部管理体制の有効性」は重要な項目であり、法務は法律違反や不祥事が起きない体制づくりのために大きな役割を担います。
IPOの準備段階では、企業のコーポレートガバナンスや内部管理体制の健全化の確保に努めます。
上場企業の場合には、適切なコーポレートガバナンスを維持し、法律や規制に準拠することが求められます。
IPOを決定した企業は、契約した顧問弁護士と連携し、法的な支援を受けながら準備を進めます。
これらのように、法務担当者は法律に関する専門知識と対応力をもって、企業のそのときの状況に合わせた対応を行います。
IPOにおける法務の業務
IPOにおける法務の業務は、以下の5つが主なものとして挙げられます。
コンプライアンスの強化と管理体制の構築
企業が法律や規制を遵守するための内部体制を整えることは、上場審査の重要な要件です。
法務は社内の各部門と連携し、法令順守のための教育や指導を行い、コンプライアンス違反を防止するためのチェック体制を構築します。
この体制が整備されることで、企業の信頼性が高まり、上場成功の確率が向上します。
コーポレート機能の管理と運営
株主総会や取締役会の運営を通じてコーポレートガバナンスを強化し、企業の健全な経営を支えます。
また、企業統治指針への対応や社内規程の整備も行い、企業が法令を遵守しながら持続的に成長できる基盤を構築します。
J-SOX対応
J-SOX(内部統制報告制度)への対応は、法務の重要な役割の一つです。
法務は財務部門と連携し、企業の内部統制を整備・評価し、リスク管理体制を強化します。
内部統制の有効性を確保するために、リスクの特定や評価、内部監査の実施を主導し、法令遵守を徹底します。
J-SOX対応により、企業の透明性と信頼性が向上するため、投資家からの信頼獲得へとつながっていきます。
知的財産の確保と管理
特許、商標、著作権などの知的財産権を適切に保護し、企業の技術やブランドを守るのも法務の仕事です。
知的財産権の出願や登録、侵害対策を行い、他社との紛争を未然に防ぐほか、ライセンス契約や技術移転契約の交渉・締結も行い、企業の競争力を強化します。
契約などの見直し
既存の契約が最新の法律や規制に適合しているかを確認し、不備があれば修正・更新します。
これには取引先との契約、労働契約、顧客との利用規約などが含まれます。
リスク管理の観点から契約条項を精査し、企業が法的トラブルに巻き込まれないようにすることで、企業の法的安全性が高まります。
IPOを経験した法務担当は市場価値が高い
会社が上場するためには多大な時間とコストがかかります。IPO準備は非常に忙しいですが、その分、高い経験値を得ることができます。
経済産業省の令和元年経済センサスによると、令和元年6月1日時点の事業所数は639万8912事業所でした。
また日本取引所グループの上場会社数推移によると2024年6月末の上場企業数は3,946です。
厳密な比較ではありませんが、事業所数と比べた上場企業の数をみると、それだけ、IPOを経験した人材は貴重です。
IPOを経験した法務人材を欲する企業は多くあります。
仕事量は多いですが、IPOを経験するメリットは大きく、年収アップも見込みやすいでしょう。
IPO準備企業の法務に転職する際のポイント
IPO準備企業の法務に転職するには、多岐にわたる要素を慎重に検討する必要があります。
まず、企業選びの段階で代表の方針と役員陣が同じ方向性を向いているかを確認することが不可欠です。「IPO準備に入れば必ずIPOが実現する」というわけではありません。
たとえ代表がIPOに意欲的であっても、役員陣がその方針に共感していなければ、上場準備が頓挫するリスクがあります。
キャリアアップにつなげるためには、入社を決める前に可能な限り温度感を確認しましょう。
こういった内容は求人には記載されていないことがほとんどであるため、転職エージェントを利用すると見極めるための情報が得やすいです。
また、自分の強みを客観的にアピールできるように準備することが大切です。
過去の業務を振り返り、どのような成果を上げてきたかを整理し、自分の強みを明確にすることが求められます。
IPO準備企業では、法務の役割が多岐にわたるため、契約書の見直しや知的財産の管理だけでなく、コンプライアンス強化やJ-SOX対応などの内部統制の整備も求められます。
これらの業務に携わった経験を具体的に示すと、企業にとって即戦力の人材として評価されやすくなるでしょう。
IPO準備企業×法務の求人例
MS-Japanは、管理部門・士業特化型転職エージェント「MS Agent」を展開しています。
以下に、「MS Agent」で取り扱っているIPO準備企業の法務求人例をご紹介します。
暗号技術で大注目のベンチャー企業/法務担当/リモート可
仕事内容 |
・契約書作成・レビュー ・知的財産の管理 ・労務コンプライアンス体制の運用 ・社外弁護士、弁理士、社労士等とのやり取り ・社内規程類の整備・運用 ・株主総会・取締役会等の運営 ・ISO等の認証取得対応 ・上場申請書類の作成 |
必要な経験・能力 |
・事業会社または事務所にて法務実務経験のある方 |
想定年収 |
600万円 ~ 850万円 |
不動産テックのスタートアップ企業/法務【リモート・副業OK/フレックス】
仕事内容 |
・個人情報保護、広告審査等の法令遵守に必要な体制構築 ・リスクコンプライアンス委員会の事務局 ・株主総会、取締役会の運営事務局 ・各種規程整備、運用 ・許認可(宅建免許)に関する手続き ・IPO準備に伴うコーポレート業務 |
必要な経験・能力 |
・法務経験2年以上~ ※不動産業界での経験不問 |
想定年収 |
500万円 ~ 700万円 |
IPO準備企業への転職成功事例
IPO準備企業への転職成功した2つの事例をご紹介します。
初めてのインハウスへの転職を成功させた事例
Yさん(40代前半・男性)資格:弁護士
法律事務所
年収:600万円
IPO準備中企業
年収:800万円
Yさんは、法律事務所で約10年間、中小企業の一般民事案件を扱ってきました。
40代を迎え、今後のキャリアパスを考えた結果、インハウスの法務部門で弁護士としての経験を活かしたいと考えるようになりました。
初めての転職で企業選びに悩んでいたYさんは、当初大手企業の法務部門を目指していました。
しかし、面接を通じて業務内容に物足りなさを感じ、ベンチャー企業への転職も視野に入れて活動を進めたところ、小規模な企業での法律相談経験を活かせるベンチャー企業の内定を得ることができました。
就業経験がなくても大丈夫!IPO準備中企業へ入社した事例
Sさん(20代前半・男性)資格:司法試験短答式合格/TOEIC600点
法科大学院を修了後
就業経験なし
IPO準備企業
年収:400万円
Sさんは大手企業の法務部門でのキャリアを希望していました。
当初は大手プライム系上場企業を中心に選考を受けていましたが、向上心が強くチャレンジングな性格が大手企業とマッチせず、面接に合格できない日々が続きました。
そこで、自分の強みを活かせる環境を見直し、上場準備企業にも範囲を広げて就職活動を進めることにしました。
その結果、1か月で3社のIPO準備企業から内定を獲得し、その中でも好条件の企業へ入社を決定しました。
まとめ
IPOにおける法務は、コンプライアンスの強化や管理体制の構築、コーポレート機能の管理と運営、J-SOX対応、知的財産の確保と管理、契約の見直しなど、多岐にわたる業務を担うため、自身の更なる成長を実現しやすいキャリアです。
しかし、IPO準備企業への転職を検討する際には、給与体系や労働環境、経営陣の方針など多岐にわたるポイントに注意しなくてはなりません。
これらの判断の精度を上げるには、転職エージェントの利用がおススメです。
「MS Agent」は、管理部門・士業特化型転職エージェントであり、IPO準備企業への転職支援実績も豊富に持っています。
IPO準備企業への転職に興味のある方は、この機会に「MS Agent」を是非チェックしてみてください。
- #IPO準備企業の法務
- #IPO準備企業の法務に転職
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この記事を監修したキャリアアドバイザー
大学卒業後、新卒でMS-Japanへ入社。企業側を支援するリクルーティングアドバイザーとして約6年間IPO準備企業~大手企業まで計1,000社以上をご支援。
女性リクルーティングアドバイザーとして最年少ユニットリーダーを経験の後、2019年には【転職する際相談したいRAランキング】で全社2位獲得。
2021年~キャリアアドバイザーへ異動し、現在はチーフキャリアアドバイザーとして約400名以上ご支援実績がございます。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 法律・特許事務所 ・ 役員・その他 ・ 社会保険労務士事務所 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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