2023年04月01日

文系出身でも弁理士になるには?年収は理系出身より低いって本当?

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一般的に弁理士は理系の資格とイメージされる方が多いかも知れません。
そもそも弁理士は知的財産の専門家であり、特許事務所に勤める弁理士の業務内容は、企業からの依頼による知的財産に関する案件を扱うケースが大半です。
企業から依頼される依頼のほとんどは高度な専門的技術・発明に関わるものであるため、その内容を十分に理解するには理系的素養が求められます。
では文系出身者の場合、弁理士になることは難しいのでしょうか。
この記事では、文系出身者でも弁理士になれるのかといった点について解説します。

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文系出身でも弁理士になれる!

弁理士の仕事は特許・商標・意匠の出願関連業務が中心です。
文系出身者の場合、技術的・科学的領域に関わる特許ではなく、商標、意匠関連の仕事を希望するケースがよく見られます。

ただ、2022年7月に公表された、特許庁の「特許行政年次報告書(統計情報)」によると、商標の2021年度出願件数は特許出願件数の約6割、意匠は約1割ですので、こうしてみると、商標・意匠の案件数は実は多いことが分かります。
文系出身者が全面的に不利になるわけではありません。弁理士全体の割合としては少ないものの、一定数の文系出身者はいます。
もし、後で述べるような文系的素養を活かした強みを発揮できれば、逆に希少価値を生み出せるかも知れません。

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弁理士になるには?

一から弁理士を目指す場合は、まず国家試験の弁理士試験を受験し、合格することが必要です。
合格後に実務研修を済ませ、日本弁理士会に必要な書類を提出して登録するといった流れが基本です。

弁理士なるための流れ

弁理士試験は、弁理士として仕事をしていくうえで必要な知識や思考が身に付いているかどうかを確認するために行われます。
次のように「短答式筆記試験」「論文式筆記試験」「口述試験」といった3段階のテストを受け、合格点に達すれば最初のステップはクリアです。
なお、論文式試験は必須科目と選択科目があります。

  • ・短答式筆記試験:特許法・実用新案法、意匠法、商標法、著作権法、不正競争防止法、条約
  • ・論文式筆記試験(必須科目):特許法・実用新案法、意匠法、商標法
  • ・論文式筆記試験(選択科目):理工I~V及び法律(弁理士の業務に関する法律)の中からいずれか1つ
  • ・口述試験:特許法・実用新案法、意匠法、商標法

引用元: 特許庁「弁理士試験の案内」

弁理士になれる人とは

弁理士になるには、
(1)弁理士試験に合格した者
(2)弁護士となる資格を有する者
(3)特許庁において審判官又は審査官として審判又は審査の事務に従事した期間が通算して7年以上になる者
と弁理士法第7条に明記されています。

上記いずれかに該当し、実務修習を修了することで、弁理士となる資格を得られます。
もし短答式や論文式に合格して口述試験が不合格だった場合は次回受験する際、免除される仕組みもあります。
ただし、難易度はかなり高く、ここ数年は合格率が10%を下回っている状況です。
受験資格は設けられていないため、年齢や学歴に問わず誰でもチャレンジ可能です。

引用元:
弁理士法第7条
特許庁「過去の試験結果」

弁理士になれない人

弁理士法第8条では、「弁理士になれない」ケースが明記されています。
主に以下の内容です。

刑事処分を受けた者

  • ・禁固以上の刑に処せられた者
  • ・弁理士法、特許法、実用新案法、意匠法又は商標法の罪を犯し、罰金の刑に処せられ、その刑の執行が終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から、5年を経過しない者
  • ・関税法、著作権法、半導体集積回路配置に関する法律又は不正競争防止法の罪を犯し、罰金の刑に処せられ、その刑の執行が終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から、3年を経過しない者

業務上の処分を受けた者

  • ・公務員で懲戒免職の処分を受け、その処分の日から3年を経過しない者
  • ・弁理士法第23条第1項の規定により弁理士登録の取り消し処分を受け、その処分の日から3年を経過しない者
  • ・弁理士法第32条の規定により業務の禁止の処分を受け、その処分の日から3年を経過しない者
  • ・法律に基づく懲戒処分により、弁護士会からの除名、公認会計士の登録の抹消又は税理士業務の禁止処分を受けた者でこれらの処分の日から3年を経過しないもの
  • ・弁理士法に定める業務の停止の懲戒処分を受け、停止期間中に弁理士登録が抹消されて、停止期間を経過しない者

制限行為能力者など

  • ・未成年者
  • ・破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者

上記に該当する場合は、たとえ弁理士試験に合格し登録をしたとしても弁理士として業務できないため、注意が必要です。

引用元:
日本弁理士会「弁理士とは」
弁理士法第8条

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弁理士試験の合格率から見た文系出身者の割合は?

特許庁によると令和4年度弁理士試験の志願者数3,558人であり、そのうち「理工系」出身者が2,485人で全体の69.8%「法文系」が797人で全体の22.4%を占めていました。
全体の割合としては、理工系が約7割で法文系が約2割、その他が1割となっています。
この割合自体、毎年大きな変動はありません。

志願者のうち受験して合格したのは193人で、出身校(大学)系統別の内訳では理工系が148人で全体の76.7%法文系が29人で15.0%、その他が16人で8.3%といった結果でした。
合格者数で見ると理工系が全体の約8割、法文系が約1割となっています。
合格率でみると、理工系出身者の場合は約6%であるのに対して法文系出身者では約4%と、法文系の方が、合格者の割合はやや低くなっています。

結果だけみると、文系出身者の方が難しいと思われるかも知れません。
しかし少数ではあるものの、毎年一定数、文系出身の弁理士試験合格者が誕生しているのは間違いなく、「弁理士は理系資格である」とは必ずしも言えません。

参照元:
令和4年度弁理士試験志願者統計
令和4年度弁理士試験最終合格者統計

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弁理士が求められる3つの文系的素養

弁理士は理系出身者が多いといったイメージが強いものの、実際に知的財産に関わる業務に従事すると、少なからず「文系的素養」が要求されます。
ここからは、弁理士に要求される文章力コミュニケーション能力語学力のそれぞれについて解説します。

文章力

弁理士の主な仕事は、特許庁への特許、商標、意匠の出願業務です。
出願にあたっては、知的財産の内容について詳しく明文化し、文章で説明することが求められます。
特許の出願においては、その技術的、科学的内容を熟知している必要があるのと同時に、その内容を文字で分かりやすく伝える文章力が必要です。

コミュニケーション能力

弁理士が出願業務を行う際、クライアントと詳細にコミュニケーションをとり、その内容を深く理解することが求められます。
その際、クライアントとのやりとりをスムーズに行うだけの対人能力、人間力が不可欠です。
理系出身者の場合、学生時代から数字と向き合い、理詰めで物事を考えるタイプのひとが少なくないため、この点を苦手とするひともいます。
こうしたコミュニケーションに関わる部分は、言葉や文字(メールなどでのやりとり)をうまく扱う能力に関わることであり、文系的素養の範囲と考えられます。

語学力

弁理士には専門とする分野に関する高度な知識が要求されます。
しかし近年、グローバルに活動する企業が増えていることから、専門知識に加えて語学力が求められるケースも少なくありません。
例えば外国へ特許出願する場合、あるいは外資企業からの依頼を受けて日本の特許庁に出願する場合、一定水準以上の語学力がなければ適切に対応できません。
英語であれば、TOEICや英検などで評価される標準的な語学力だけでなく、専門用語やその分野独特の表現・用法も理解する必要があります。
これからますますグローバル化が進んでいくのに高い語学力を持つことは、弁理士として大きな強みとなるのに違いありません。


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文系出身の弁理士が活躍できる勤め先は?

文系出身弁理士がキャリアを積んでいく方法としては、商標や意匠の出願を多めに扱う特許事務所で働く、あるいは企業内弁理士として働く方法があります。
ここではそれぞれの特徴について解説します。

特許事務所

冒頭でも紹介したように、業務の割合としては少ないものの、特許事務所では文系出身者でも比較的取り組みやすい商標出願や意匠出願の業務があります。
これらの業務は特許業務とは異なり、高度な技術領域の知識があまり問われません。
そのため、文系出身弁理士でもキャリアを積みやすいのが特徴です。
例えば次のような業務があります。

  • ・国内顧客への報告レター、現地代理人への指示レター作成
  • ・請求書作成や送付
  • ・書類管理
  • ・出願前調査
  • ・出願に向けた書類作成など
  • ・中間処理


また、特許事務所には案件ごとに進捗をチェックし「期限管理」する仕事も大切です。
知的財産に関する権利の取得や維持においては、期限を守りながら適切な手続きを進めていくことが不可欠です。
そのため期限管理は特許事務所にとって最重要業務のひとつであり、文系や理系なく取り組みやすい仕事と考えられます。

企業内弁理士

最近では、専門的な特許事務所ではなく、一般企業に就職して、「企業内弁理士」として活躍するケースも増えています。
ただし、企業で働く場合はビジネスパーソンとしての基本的なスキルが求められるほか、プロジェクト管理者としてのマネジメント能力なども必要です。
会社の業種によるものの、文系出身弁理士の活躍できる場も少なくないため、ぜひチェックしてみてください。

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文系出身の弁理士は年収が低い!?

文系出身の 弁理士は 年収が低い!?

インターネットの世界では、弁理士の年収が低いと評価されることがあり、不安になるひとがいるかも知れません。
実際に転職エージェント「MS-Agent」に登録している弁理士の方の平均年収は約700~800万円です。
一方、国税庁「令和3年 民間給与実態統計調査」によると、正社員の平均年収は508万円です。
そのため、弁理士は他の職種よりも高い傾向にあると考えられます。

一般的には、文系出身の場合、業務範囲が狭まる可能性が高いため、年収は低い傾向にあると思われやすいですが、働き方や職場環境により大きく左右されることを覚えておきましょう。
まず、どの勤務先を選ぶかは重要なポイントです。
大手であれば大きな案件を扱うことが多く、仕事いかんによっては高い年収を目指せるチャンスもあります。
一方、小規模の特許事務所ではコツコツと少しずつ年収を上げていくイメージです。

ただ、文系出身だからといって、商標や意匠系の業務だけにこだわっていては、年収アップをあまり見込めません。
さらに今よりも高みを目指したいなら、商標や意匠系の業務だけではなく、技術的・科学的な知識も幅広く身に付け、特許などの業務もこなせるようにしていくことも大切です。


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弁理士の将来性は?

現在、国内における特許件数は減少傾向にあります。
しかし世界に目を向けてみると、特許の国際出願件数は増加中です。
特許翻訳など、海外のクライアントとやりとりすることも増えると考えられます。
そのため、もしこれから弁理士になろうとする場合は、英語のスキルもしっかりと磨いておくと有利です。

また、近年はAI(人工知能)が発達し、AIに仕事が奪われると言われている職種もあります。
しかし、弁理士は発明した研究者と連携した密なコミュニケーションが不可欠です。細かく複雑な内容も多く、AIが代わってできる仕事ではありません。
そのため、弁理士の将来性については申し分ないと考えられます。


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まとめ

弁理士と聞くと理系資格といったイメージがあるものの、実際にはそうではなく誰でもチャレンジできる国家資格です。
毎年合格率は10%以下と狭き門ではあるものの、法律など文系知識が必要な試験科目もあります。
弁理士試験合格後も、意匠出願や商標出願の業務など文系出身弁理士の活躍できる場があります。
コミュニケーション能力や英語力など、求められるスキルも幅広いのが特徴です。
そのため、文系出身だからという理由だけで、弁理士を目指すことをあきらめる必要はありません。
興味を持たれた方は、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

この記事を監修したキャリアアドバイザー

佐藤 颯馬

大学卒業後、新卒でMS-Japanに入社。
法律事務所・会計事務所・監査法人・FAS系コンサルティングファーム等の士業領域において事務所側担当として採用支援に従事。その後、事務所側担当兼キャリアアドバイザーとして一気通貫で担当。

会計事務所・監査法人 ・ 法律・特許事務所 ・ コンサルティング ・ 金融 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 税理士科目合格 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!

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