2024年06月20日

税理士はファンドに転職可能?業務内容や税理士はファンドで活躍できるのか解説

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税理士からファンドへ転職を考えているのなら、具体的な業務内容やファンドの種類などを把握しておく必要があります。
本記事では、ファンドの概要税理士の転職が可能かどうか各ファンドの特徴などを解説します。

ファンドとは?税理士は転職可能?

ファンド(fund)とは、もともと「基金」などの意味ですが、現在では資金を運用して殖やしていくことを目的としている仕組みのことを指すケースがほとんどです。また、その仕組みを実際に動かしている資産運用会社をファンドと呼ぶこともあります。
この記事では、資産運用を目的とした会社の意味で、「ファンド」の語を用います。

ファンドでは、世の中に散在する少額の資金を集約させて、投資のプロフェッショナルが運用することによって、効率的かつ大規模に資産を殖やしていき、得られた利益を各投資家へ分配・還元させるために存在しています。
出資をした多くの投資家に代わって、投資のプロがポートフォリオを組み、大規模な分散投資を行うことで、たとえ投資の素人であってもローリスク・ハイリターンの投資の恩恵を受けることができます。

ファンドにおいては、それ相応の投資に関する専門知識や、運用の実情に関して正確に数字を把握できる能力、そして投資家との円滑なコミュニケーションを図り、さらなる投資を行うよう説得できる能力などが求められます。
もし、税理士がファンドに勤務しようとするのなら、これらの知識や能力を身につけておく必要があります。

税理士がファンドに転職することは可能ですが、ファンドには大きく分けて3つ、フロント、ミドル、バックのポジションが存在するため、どのポジションを希望するかで税理士の転職可能性は変わってきます。
次章でファンドのポジションごとに求める人材について解説します。

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【ポジション別】ファンドが税理士に求めること

ファンドでの業務は、大きくフロントミドルバックに分類できます。税理士がファンドへの転職を検討するにあたっては、具体的な業務の内容や税理士としてのスキル、経験との相性などを把握しておく必要があります。

フロント

フロント業務は、運用フロント営業フロントの2つがあります。前者を担うポジションはトレーダーアナリストファンドマネージャーと呼ばれます。一方、後者は営業活動が主な業務で、自社ファンドの販売を行います。

トレーダーはファンドマネージャーや機関投資家などから注文を受け、市場で売買を行います。ときには、顧客の利益拡大につながるようなアドバイスおよび、サポートを行うのもトレーダーの仕事です。

アナリストは、企業・業界の情報収集や分析を通じて投資のサポートを行います。

ファンドマネージャーの主な業務は投資判断です。投資家たちから集めた莫大な資金を運用するには、事前にリスクを把握しなくてはなりません。そのため、投資先の企業に対する徹底した情報収集を行います。場合によっては投資先へ足を運び、従業員などから情報を得ることもあります。

ファンドの運用フロントは採用ハードルが高く、実務経験重視の採用傾向です。運用フロントのポジションに転職したい場合は、税理士法人・会計事務所での税務顧問業務に+αの評価要素が必要です。
例えば、金融機関や会計・財務系のコンサルティングファームにおけるDD、バリュエーションなどの業務経験や、戦略系のコンサルティングファームにおける経営コンサルティング経験などです。そのため、運用フロントのポジションに転職したい場合は、できるだけ若手のうちに税理士業務以外の強みを持っておく必要があります。

営業フロントポジションに関しては、その名の通り営業色が強いため、コミュニケーション能力が重視されます。税理士業務はクライアントとのコミュニケーションが重要な仕事であり、また、財務諸表も読み慣れている税理士はファンドの営業フロントポジションで評価される可能性が十分にあります。

ミドル

ミドルは、ファンドの運用状況をモニタリングするポジションであり、運用ディスクローズやリスク管理などが主な仕事内容です。ほかにも運用パフォーマンスの測定・分析や、フロント業務のサポートを行うのに各種データ管理を担うこともあります。

フロントが投資家から集めたお金を運用する際、当初の方針から大きくそれて運用してしまうケースも考えられます。このようなことがあると、投資家の利益を損なうおそれがあるため、運用リスクの観点から監視を行うのが仕事です。

運用ディスクローズは、投資家に向けた各種資料を作成する業務です。たとえば、運用状況レポートや交付目論見書などが該当します。運用状況を投資家へ正確に伝えることで信頼につなげる、大切な業務です。

ミドルポジションでは主な業務内容がファンドの管理及び、投資家へのレポーティング業務になります。
運用しているファンドの決算業務を担うケースも多く、税理士が活躍できる可能性は高いでしょう。また、ファンドの収益にも当然課税されますので、税理士ならではの専門知識や、帳簿作成、節税アドバイスや税務処理などに関する能力は、ファンドからも評価が高いです。

バック

バックの主な業務は事務処理であり、社内システムの保守や総務業務などを担います。また、資産売買および資金の流入を会計システムへ反映させ、基準価額を算出するのも大切な業務です。

企業によっては、ミドルとバックを明確に分けていないところもあります。ミドル業務のなかに、事務処理や基準価額の算出といったバック業務が含まれているケースです。ほかにも、権利保全や信託銀行とのデータ照合、キャッシュ管理、残高管理など、バック業務の種類は多岐にわたります。

バックポジションでも税理士はもちろん活躍できますが、バック業務は事務的な作業が多いため、税理士として活躍してきた方にとっては、物足りなさを感じる可能性があることは否めません。そのため、バックポジションでファンドに転職する場合は、業務内容をしっかりと確認し、ミドルやフロントへの異動可能性はあるのかなど、入念な情報収集が必要になります。

尚、上記では大きく3つに分類しましたが、ファンドによってはミドルポジションのメンバーが投資先の企業価値評価をしていたり、バックからミドルまで幅広い業務を担当しているメンバーがいたりと、業務配分は様々です。

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主なファンドの種類

ひと口にファンドと言っても、ベンチャーキャピタルファンド企業再生ファンドのようなバイアウトファンドのほか、証券投資信託不動産投資信託などのアクティビストファンドと、さまざまな種類があります。

バイアウトファンド

バイアウトファンドとは、投資家から集めた資金を用いて企業へ投資し、企業価値の向上を実現したのちに株式の売却などを行って投資家へ利益を還元するファンドです。ベンチャーキャピタルファンドや企業再生ファンドなどが該当します。

ベンチャーキャピタルファンド(VC)

ベンチャーキャピタルとは、起業したばかりで社会的な信用が低いスタートアップ企業や、将来性が見込める企業を対象に投資を行う組織です。

ベンチャービジネスに取り組むスタートアップ企業が、金融機関などから莫大な資金を調達するのは現実的とは言えません。企業としての実績が少ないことが主な理由です。このような企業へ投資を行うファンドのひとつがベンチャーキャピタルファンドです。

将来有望なスタートアップ企業が十分な資金を得ることで、加速度的な成長が見込めるケースがあります。資金提供によって企業を支援し、成長へと導いたうえで、利益を回収します。

企業再生ファンド

企業再生ファンドは、経営が立ち行かなくなった企業や業績不振に陥っている企業の株式を取得し、再生したうえで売却しリターンを得るファンドです。もともと価値が低下していた企業であるため株式を格安で入手できる可能性が高く、再生に成功すれば大きな利益が生まれます。

しかし、業績が低迷している、破綻しかけているといった企業への投資はリスクが高く、注意が必要です。投資によって企業価値を高められるか、それを実現するためのリソースやポテンシャルを秘めているのか、といった部分を正確に見極める必要があります。

中長期的な投資となりやすい点がひとつの特徴です。経営不振に陥った企業を再生へと導くのは、簡単な道ではありません。積極的な投資、支援で企業を再生し、価値を高めるには相応の時間が求められ、その分投資リスクも高まると考えられます。

アクティビストファンド

「もの言う株主」とも呼ばれるのが、アクティビストファンドです。企業経営者に対し、企業価値を高めるためのさまざまな提案をアクティブ(積極的)に行います。

アクティビストファンドの対象は、業績が著しく悪化している企業などであるケースがほとんどです。こうした企業なら多くの株式を取得しやすく、一定の発言権を得られます。それによって、株主総会などで積極的な提案や要求を行い、企業価値を高められるよう導きます。

もちろん、企業価値を高めることが最終的な目的ではありません。提案や要求によって企業価値が高まれば株価が上昇します。そして株価が上昇したところで株式を売却し、利益を得ます。

証券投資信託

証券投資信託とは、債権や短期金融商品、上場株式などを対象とする投資です。対象となるのは国内外の債権や上場株式であり、大勢の投資家から募った資金を専門機関が金融市場で運用し、得たリターンを投資家へ分配します。

資金を運用する専門機関が、投資信託委託会社です。資金運用のプロであり、金融市場の動向などを正確に把握しつつ運用を行います。なお、投資信託委託会社は信託銀行と契約を交わしたうえで、信託財産の管理を委託するのが一般的です。

信託銀行が行うのは、あくまで信託財産の保管および管理、委託会社の指示を受けての売買発注、信託財産の計算業務などであり、運用実績などについて責任を負うことはありません。

不動産投資信託(J-REIT)

不動産投資信託(J-REIT)とは、土地や建物といった不動産を対象とする投資信託です。J-REITはJapan Real Estate Investment Trustの略です。
投資家から募った資金でマンションや商業ビルなどの不動産を購入し、運用によって得た利益を投資家へ還元します。
投資家から資金を募る際の窓口は、不動産投資法人です。当該法人が証券取引所へ投資証券を上場して投資家から資金を集めます。なお、投資法人はただの窓口にすぎず、物件の取得から実際の運用などは専門機関が行います。

不動産投資信託のメリットは換金性の高さです。上場しているため市場で売買でき、しかも投資家は数万円から数十万円の少額投資が可能です。

不動産投資ファンド

不動産投資ファンドとは、投資家から募った資金でマンションや商業ビルなどを購入し、運用や売却で得た家賃収入、売却益などを出資者へ還元する仕組みです。前述したJ-REITも不動産投資ファンドの一種です。

不動産投資ファンドには、J-REITや公募・私募ファンドといった不動産投資信託のほか、不動産特定共同事業と呼ばれるものもあります。現物不動産を対象に投資を行い、収益を投資家へ分配する事業です。都道府県知事や国土交通大臣による許可がないと不動産特定共同事業はできません。

ファンドオブファンズ

複数の株式や債券などを組み合わせた投資信託が、ファンドオブファンズです。再生ファンドやヘッジファンドも投資対象であるため、より多くの個人投資家から資金を集められるメリットがあります。
一方、投資家側としてはさまざまなファンドへ分散的に投資を行えるため、リスクを抑えた投資が可能です。

幅広いジャンルへの分散投資により、リスクを低減させられるのが投資信託の魅力ですが、ファンドオブファンズはさらに投資先や運用期間が分散化されます。そのため、一般的な投資信託よりもさらなるリスク軽減が可能です。

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最近のファンド業界の傾向

最近のファンド業界の傾向

銀行預金でほとんど利息が付かなくなっている現代、多少の元本割れのリスクを承知で、さらに高い運用益を狙おうとする人々の間で、ファンドが注目を集めています。
大手金融機関などが販売している「投資信託」も、株式などに投資するファンドの一種です。ほかにも少額の資本を集約させて大規模な不動産開発をしたり、そこから得られる賃料収入や売却益などを分配したりする「不動産投資ファンド」が注目を集めています。

また、成長の将来性などに期待し、企業の未公開株式などを運用する「ベンチャーファンド」や「プライベート・エクイティ・ファンド」も人気です。他のファンドに投資するファンドである「ファンドオブファンズ」は、複数のファンド間でリスクヘッジできるため、より手堅く資金を殖やしていきたい投資家からの運用依頼が増えています。

近年注目されているのは「コンテンツファンド」や「社会貢献ファンド」です。映画やアニメ、ゲームなどのエンターテインメント産業で、制作に必要な費用の調達にファンドが使われています。映画業界では「制作委員会」のシステムが採用されていましたが、制作委員会の出資者は、興業の失敗に対して無限責任を負わなければならず、高いリスクがありました。その点、ファンド形式を採用することで、リスクを限定的にしながら、成功した際の収益もしっかり確保できるようになりました。

また、理念は立派だけれども、収益性を確保することが難しく、かねてより継続性が課題だった社会起業(ソーシャルビジネス)も、その理念に賛同する投資家からの出資をつのったり、債券化したりすることによって、ボランティアが慈善事業で終わることなく、収益を確保しながら継続させ、すべての関係者が幸福になる道を創っています。

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ファンドでのキャリア形成

ファンドによって役職名は異なるものの、担う業務内容や権限にそれほど大きな違いはありません。一般的には、以下の役職が挙げられます。

MD(マネージングディレクター)

一般的に、外資系投資銀行における最高責任者をMD(マネージングディレクター)と呼びます。ファンド全体のパフォーマンスおよび、組織の経営責任を負う役職です。

ディレクター

各案件の責任者としてプロジェクト遂行にあたる役職です。投資案件の開拓や経営者の説得などを行い、投資リターンの最大化を狙います。投資実行やデューデリジェンスなどのスキルが求められます。

VP(ヴァイスプレジデント)

提案書の作成から金融機関との交渉、財務モデリングなど、売買や取引の中核としての役割を担うポジションです。

アソシエイト

各フェーズにおけるメインプレーヤーがアソシエイトです。経営者との交渉や資料作成、分析業務などに携わります。

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まとめ

ファンドには、フロントとミドル、バックのポジションがあり、どのポジションを選ぶかで税理士の転職成功率が異なります。
本気で転職を考えているのなら、各ファンドやポジションで求められるスキルを把握し、取得したうえで転職活動を展開することが重要です。

この記事を監修したキャリアアドバイザー

椿 大樹

大学卒業後、外資系小売り業に就職、セールスマネジメントや採用、教育研修を経験。
人がいかに業績を左右するかについて認識し、現職のMS-Japanに転職する事を決断。
入社以来、東海エリアのキャリアアドバイザーとして、キャリアチェンジやスキルアップを目的とした若年層の支援を中心に担当しております。

経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 会計事務所・監査法人 ・ 役員・その他 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!

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