税理士法人設立のメリットは何か?
税理士法人は全体の1割強だが、毎年200事務所程度増加中
税理士法人は平成13年の税理士法改正により、誕生した法人制度です。それまでは税理士は税理士資格を保有した個人が開業するものであり、基本的には個人事業主でした。国税庁が公開しているデータでは、平成29年3月末現在で3,519法人登録されています。
一方、平成26年の経済センサスによると税理士事務所数は28,465事務所となっていて、それと比較しても1割強と税理士法人はまだ少数派といえるかもしれません。しかし、平成20年度は1,750事務所、平成25年度は2,748事務所と、ここ数年は平均200件程度のペースで税理士法人(本店)の登録は増加していて、今後もしばらくは増加することが考えられます。
税理士法人と税理士事務所の一番の違いは、税理士法人は2人以上の税理士が社員税理士となり、税理士法人を運営することです。一方、税理士事務所は前述したように個人事務所ですので、当然税理士が複数在籍する必要もなく、どこでも開業できます(多くの税理士が当初は自宅で開業することがあります)。
税理士法人の最大のメリットは大型化とブランド化
税理士法人を設立するには、まずパートナーとなる税理士を探さなければなりません。ここが一番難しいポイントで、社員税理士は無限責任を負いますので、「仲が良いから」とか、「考え方が近いから」といった単純な考え方で税理士法人化すると、あとで大変な目にあうことも考えられます。政党ではありませんが、理念と経営方針を明確にすり合わせたうえでの法人化を検討することが求められるわけです。そのため、平成13年の税理士法改正当初に税理士法人化したなかには、親子、夫婦、兄弟といった親類が社員税理士となる税理士法人が多く見受けられました。
一方で、大きなメリットもあります。一番のメリットは大型化しやすいということです。個人事務所の場合、どうしても所長税理士の目が行きとどく職員数には限界があり、10~15人程度とされています。これは、税理士事務所に限ったことではなく、どの企業でも最小単位のセクションは10人前後だといわれています。したがって、20人以上の職員を抱える事務所では労務管理が事務所経営の最大の課題です。
税理士法人であれば、最初から責任者が最低2人いるわけですから、職員数20~30人までは急激な規模拡大にも対応しやすくなります。
もう1つのメリットはブランド化しやすいということです。前述しましたが、近年、税理士法人の設立が多くなりつつあるといってもまだ1割強というのが実情です。単なる税理士事務所ではなく「税理士法人」という響きだけでも、ほかの事務所との差別化をしやすくなります。
目指すは総合税理士法人化か特化型税理士法人化か
税理士法人の最大のメリットは大型化が比較的容易になるということです。現在の大型税理士法人(税理士事務所)は大きく3つに分類されます。
1. 監査法人系税理士法人
2. 地域総合税理士法人
3. 特化型税理士法人
1は大手監査法人と提携を組んでいる税理士法人で全国に複数支店も開設しているのが特徴です。2は従来から地域の大型事務所として名前を知られていた事務所が多く、すでにその地域ではブランド化している税理士法人です。3は業務を特化することで、業績をグングン伸ばしている税理士法人があります。特に近年では相続税(資産税とも呼ばれる)に特化した税理士法人(事務所)が急速に事業拡大しているケースが目立ちます。
この3つのどのタイプをめざすかが、パートナーの選定にも関わってきます。特に既存の事務所同士の合併から税理士法人化していく場合、将来的にどういう税理士法人をめざすのか、そのために何が必要なのかということを明確にしておく必要があります。そこが一致していないと、お互いに無限責任を負うリスクを緩衝することは難しいでしょう。
コンピュータ化からインターネット、そしてAIの時代になり、税理士には厳しい時代が来ることも想定されます。その前に事務所の体力をつけるためにもスケールメリットがありブランド化がしやすい税理士法人化は有効な手段の一つです。だからといって安易な方法での法人化にはリスクも避けられません。法人化した先に、どうすれば差別化を推進できるかという青写真を描くこと。まずはそこが問われます。
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