【経理キャリアマップ】上場企業の経理責任者を目指すには?

上場企業の経理責任者は、決算や開示対応を統括し、経営層と並走しながら会社の成長を支える重要な役割を担います。
経理担当者にとって、経理責任者は将来的に目指すポジションの一つです。
ただし、経理責任者のポジションに就くためには、単に数字を管理するだけでなく、経営視点から事業を動かし、組織を率いるリーダーシップが不可欠です。
本記事では、経理担当者が上場企業の経理責任者を目指すうえで必要となる役割の理解、キャリアパス、そして求められるスキルについて解説します。
上場企業の経理責任者の役割
上場企業における経理責任者は、経理部門のトップにあたるポジションで、役職名としては「経理部長」と呼ばれることが一般的です。
決算や開示対応といった基礎業務に加え、チームマネジメントや経営層との連携まで、求められる役割は多岐にわたります。
ここでは、経理責任者に求められる主な役割を見ていきましょう。
決算・開示対応の最終責任
上場企業の経理責任者は、単なる帳簿の管理にとどまらず、決算書の作成から有価証券報告書・四半期報告書などの開示書類の取りまとめまでを担います。
特に上場企業では、金融商品取引法や会社法に基づく厳格な開示が求められるため、高い責任を伴います。
また、監査法人との折衝や内部統制報告(J-SOX)への対応など、外部への説明責任も含めて「企業の信頼性を守る最終責任者」としての役割が期待されます。
規模感に応じたチームマネジメント
経理責任者には、企業規模が大きくなるほど、複数の経理チームを束ねるマネジメント力が求められます。
例えば、日次・月次処理を担当するチーム、決算や開示対応を担うチーム、税務や管理会計を担当するチームなど、分業体制のもとで適切に役割を割り振り、全体を統括する必要があります。
逆に、中堅・中小規模の上場企業では少人数のチームをリードし、自ら実務にも深く関わりながら責任者としての機能を果たすケースも多くあります。
規模に応じて「プレイングマネージャー」と「管理統括者」の両面を使い分ける柔軟性が不可欠です。
経営層との連携のポイント
経理責任者は、経営層に最も近い立場の管理部門責任者のひとりです。
経営会議や取締役会に提出する数字の正確性を保証するだけでなく、経営判断に役立つ形でデータを整理し、説明する力が求められます。
単に「数字を報告する」だけではなく、「数字の裏にある事業のリスクや成長の可能性」を経営層に伝え、意思決定をサポートすることが重要です。
また、経営戦略や資金調達、M&Aといった大きな経営課題に関わる機会も多く、経理責任者は“会社の未来をつくるパートナー”としての役割を担っています。
上場企業の経理責任者へのキャリアパス
上場企業の経理責任者になるためには、経理担当者から昇進するルートが最も一般的ですが、公認会計士が監査法人で培った専門性を武器に転身するケースも珍しくありません。
ここでは代表的な2つのキャリアパスについて具体的に解説します。
経理担当者から経理責任者への昇進
上場企業の経理責任者になるには、まず上場企業の経理担当として実務経験を積み、その後マネジメント経験を経て責任者へとステップアップしていくのが一般的なキャリアパスです。
まずは担当者として、日々の仕訳や経費精算、請求書処理などの基礎業務を正確にこなすことが求められます。
これらの経験を通じて経理の全体像を理解し、ミスなく処理できるスキルを身につけます。
次に月次決算や年次決算の補助業務に携わり、決算書の作成過程や財務諸表の構造を学びます。
ここで上場企業特有の開示ルールや、内部統制の重要性を理解することが重要です。
さらに決算以外にも監査対応や税務申告のサポートなど、多岐にわたる業務経験を積んでいきます。
こうした実務経験を通じて、業務の幅を広げることが責任者になるための大きな一歩です。
また、経理知識の深化と並行して、周囲とのコミュニケーション力や調整力を磨くことも重要です。
責任者になるとチームマネジメントや他部署との連携が不可欠になるため、早い段階からリーダーシップを養っておく必要があります。
監査法人出身の公認会計士が経理責任者に就くルートも
もう一つのキャリアパスは、監査法人出身の公認会計士が経理責任者に転身するルートです。
監査法人では会計監査や内部統制監査、有価証券報告書などの開示書類レビューを通じて、上場企業の会計実務や開示制度に関する知見を得ます。
その後、事業会社に転じて決算業務や税務申告、開示資料の作成、監査法人対応などを自ら経験し、実務感覚を養っていきます。
さらにチームリーダーやマネージャーとして人材育成や業務改善に取り組むことで、組織運営や調整力を身につけます。
連結決算やIFRS対応、ERP導入、M&A対応など経営直結の業務に携わることで、経理部門全体を統括する視点も培われます。
このように幅広い経験を積み重ねることで、経理責任者として必要な基盤が形成されていきます。
上場企業の経理責任者に必要なスキル・経験
経理責任者に求められる役割は、単なる会計数値の正確性を担保するだけではありません。
経営層と密接に関わり、会社全体の方向性に影響を与える存在である以上、幅広いスキルと強い責任感が不可欠です。
ここでは特に重要とされる3つの観点を解説します。
意思決定のスピードと責任感
経理責任者には、正確さに加えてスピード感ある意思決定が求められます。
日々の経理業務では、限られた時間の中で判断を下す場面が多く、迷っている時間が業務全体の停滞につながることもあります。
特に上場企業では決算や開示に関わる期日が厳格なため、判断の遅れが重大な影響を及ぼします。
一方で、スピードだけでは不十分です。
判断には責任が伴うため、事前の準備や根拠ある説明が不可欠です。
必要な情報を的確に集め、関係者と相談しつつも最終的には自分の意思で決断し、結果を引き受ける姿勢が管理職には求められます。
数字だけではない、人を動かす力
経理は数字を扱う仕事ですが、管理職には「人を動かす力」も強く求められます。
正確な数字を出すだけでは、チームとしての成果は上がりません。
例えば、期末の繁忙期にメンバーがミスをしやすい状況では適切な声かけや負荷調整によって、精度とスピードの両立が可能になります。
また他部署との調整では、相手の立場を理解しながら折衝を進める姿勢が信頼構築につながります。
数字の裏側にある「人」の動きを読む力、感情や意図に配慮する力が、結果的に業務を前に進める鍵になります。
管理職にとって、論理性と同じくらい共感力や巻き込み力も重要なスキルなのです。
現場と経営をつなぐ「翻訳者」としての役割
経営陣が理想とする経理責任者は、現場と経営をつなぐ「翻訳者」のような存在です。
日々の業務を的確に把握しながらチームの状況やリスクをいち早く察知し、経営層に対して適切なタイミングで報告・提案ができる力が求められます。
「言われたことをやる」だけでなく、「先を読んで動ける」姿勢が信頼を生みます。
また経営方針をチームに落とし込み、メンバーの理解と納得を得ながら行動に移せる力も不可欠です。
数値管理とマネジメントを両立させつつ、会社全体の方向性を意識した判断ができる人材が経営陣にとって理想的な管理職といえるでしょう。
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経営と関わるための視点とスキル
上場企業の経理責任者は、単に決算や開示を統括するだけでなく、経営層と共に会社の未来を描く存在です。
そのためには「経営陣との信頼関係を築く力」と「数字を戦略に変換する力」の両輪が欠かせません。
経営層との対話力
経理責任者の経営層との対話力は、企業規模によって求められるスタイルが異なります。
従業員数が少ない中小規模の上場企業では、経営層との距離が近く直接対話する機会が多いため、柔軟かつ迅速なコミュニケーション力が重要です。
一方で大企業では経営層との接点が限られ、レポートや会議を通じて論理的かつ簡潔に報告するスキルが求められます。
どちらの場合も財務データの背景やリスクをわかりやすく説明し、経営判断に活かせる情報提供が求められます。
専門用語を控え、誰にでも理解できる言葉で伝えることも信頼構築のポイントです。
数字管理を超えた戦略的な思考力
中小規模の企業では経営陣と近い距離で多様な経営課題に関わるため、幅広い視点で財務情報を分析し、事業戦略に反映させる力が必要です。
大企業ではより高度な専門知識と組織横断的な調整力が重要となり、長期的な視点でリスク管理や資金調達の計画を立てる役割が増えます。
いずれの規模でも経理責任者は数字の裏にあるビジネスの動きを読み解き、経営層に対して価値ある提案を行うことが求められます。
このような戦略的思考は、経理職から経営層へのステップアップに欠かせないスキルです。
まとめ
上場企業の経理責任者を目指すには、幅広い経理業務の経験とマネジメントスキルの習得が欠かせません。
企業規模やチームの人数に応じて実務から管理、経営層との対話まで多様な役割を担うため、柔軟な対応力も重要です。
また財務データを単に扱うだけでなく、戦略的な視点を持って経営に貢献できる能力が求められます。
経理責任者は数字の裏にあるビジネスの動きを読み解き、経営層へ価値ある提案を行うことで組織全体の成長を支えます。
キャリア形成においては専門知識のアップデートと共に、人を動かす力やコミュニケーション能力の強化も忘れてはなりません。
自分の成長段階に合わせてスキルを磨き続けることで、上場企業の経理責任者として活躍できる道が開けます。
管理部門・士業特化型転職エージェント「MS-Japan」は転職活動の支援だけでなく、現在の職場を円満に退職できるようにサポートも行います。
スムーズに転職するために、転職エージェントの活用もご検討されてみてはいかがでしょうか。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー

大学卒業後、航空会社に新卒で入社し国内外各地へのフライト業務に従事。
その後キャリアアドバイザーとしてMS-Japanへ入社。
現在は主に経理財務や会計事務所などの会計転職希望の方を中心に担当。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 会計事務所・監査法人 ・ 税理士科目合格 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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